不死鳥──the immortal──   作:カモシカ

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五話 特訓

「ただいまー!」

 

 寧々は無事新しい小学校に編入出来た。何か寅の坊主が根回ししたらしい。腐っても日本の大英雄ってことかな。

 

「お、寧々おかえり。手洗いうがいはしっかりなー」

「うん!」

 

 とてとて、と可愛い足音を立てて廊下を走る寧々。

 

「えっと、お邪魔します」

「おう。黒乃もいらっしゃい。今おやつ用意するから、寧々と一緒に手洗いうがいしてきな」

「うん」

 

 寧々とは違って落ち着いた様子で廊下を歩く黒乃。対照的な二人だが、それがむしろ噛み合っているのかもしれない。義娘(むすめ)に友達が出来て、親代わりとしては嬉しいかな。

 そんな事を考えながら、私は台所に向かった。

 

 

 

 ****

 

 

 

「はぁあああぁぁぁあ!!!」

「ほっほっほ」

 

 寧々の振るう鉄扇も、寅の坊主には簡単に防がれる。どうやら物を浮かせる事が出来るらしい寧々の能力は、やはり直接的な戦闘には向かない。勿論寧々の能力はそれだけでは無さそうなのだが、寅の坊主曰く、自分で気付かなきゃ意味が無いとの事。剣士の考える事はよくわからんね。

 

「黒乃はやんないの?」

「やる。・・・・・妹紅と」

「私?」

 

 そう告げるや否や、黒乃は立ち上がり訓練着を持って更衣室に向かう。どうやら本気でやるつもりらしい。

 

「しゃーない。寧々の練習が終わったらな」

「うん。ありがとう」

 

 私は苦笑いを浮かべながらも、我儘を言うようになった黒乃を見て安心する。

 黒乃の父親はシングルファーザーなのだそうだ。母親は生まれつき体が弱く、黒乃を産んで直ぐに亡くなってしまったらしい。この際だからと寅の坊主の道場に寧々共々入れた時に、親御さんから聞いたのだ。ありふれた話だと言ってしまえばそれまでだが、そんな話を聞いてしまったらこちらとしても頑張ってしまうだろうに。あのお父さん、あれで強かそうだからそこまで分かって言ってたかもな。

 

「はあ、はあ、ありがとう、ございました」

「うむ。精進せいよ」

 

 寧々の練習も終わったらしい。スポーツドリンクを渡して、タオルで汗を拭いてやる。

 

「お疲れさん」

「ふぅ、ふぅ・・・・・ふぅ。・・・・・またダメだった」

 

 息を整えた後は、寅の坊主に一撃も当てられなかった事が悔しいらしくしょぼくれてしまう。

 

「悔しい?」

「うん」

「じゃ、頑張ろうぜ。私も応援してるよ」

 

 そう言って寧々の頭を撫でてやる。まだ小さいからなのか、純粋な気持ちを全て自分を高める方向に持って行けるらしい。私にはもう無いものだから、何だか眩しいな。

 

「おっとそうだ。寧々、私は黒乃に練習付けてやるんだが・・・・・お前も一緒に見るか?」

「えっ、黒乃ずるい!寧々もママと練習する!」

「ええ?お前さっきまでやってたじゃないか」

「大丈夫だもん!」

「分かった分かった。黒乃の後で練習しような」

 

 なし崩し的に寧々の練習も付けてやる事になってしまった。寧々の体力とか心配なのだが・・・・・まあ、子供だから有り余ってるのかな。

 

 

 

 ****

 

 

「お待たせ黒乃」

「ううん。大丈夫」

 

 黒乃は既に霊装を展開して待っていた。黒乃の霊装は白と黒の二丁拳銃。日本人には珍しいタイプだそう。私がこの霊装を見るようになったのは一体何年前からか。そんなに古くないし、むしろ新しいものだとは記憶している。

 

「じゃ、始めるか。手加減はしなくていいぞ」

「え?危ないよ?」

「大丈夫大丈夫。黒乃に殺される程弱か無いよ」

「むう・・・・・後悔しないでよ?」

「はいはい。じゃ、始め!」

 

 そういうと、黒乃はまず左右の拳銃から大量の銃弾をばら蒔いた。確か時間を操る能力だった筈だから、その応用なのだろう。

 幻想形態で撃ち出されたそれを、私は避ける事も無く受け止めた。

 

「妹紅!」

「ママ!」

「・・・・・うーん。これだけか?」

「え」

「え」

「お前ら息ぴったりだな」

 

 穴だらけになった・・・・・ようにも見えただろう私の身体だが、生憎と体力を奪っただけでは私には勝てない。そりゃあ私だって人間だから何度も死んでしまえば疲れてダウンするが、初心者に殺られる程ヤワじゃない。

 

「うん。やっぱこれなら余裕だわ。黒乃、もう少し本気出せ」

「・・・・・分かった。《時計加速(クロックアップ)》」

 

 己の時間を加速したのだろう。文字通り刹那の間に私の周りを一周し、銃弾をばら蒔いて来た。

 

「《火焔鳥》」

 

 下方向に向かって焔を吹き出し、不死鳥の翼を広げて上空に離脱する。

 下に出す焔は小さめに。攻撃より防御と離脱を念頭に置く。これは模擬戦だしね。相手は初心者のひよっこだし。

 

「ほら黒乃、さっさとやるよ?」

「・・・・・望むところっ!」

「ははっ!その意気だよ!《自傷の火爪》っ!」

 

 下方向に向けて《自傷の火爪》を放つ。焔で形作られた巨大な爪が黒乃に襲いかかるも、簡単に避けられてしまった。

 

「おおー、ママかっけー!」

「はっはっは。そうだろうそうだろう。なんせママだからな!《自傷の火脚》!!」

 

 足に焔を纏い、斜め前方の黒乃を蹴撃する。もちろん深刻ダメージが入る程の威力では無いが、まともに受ければ数メートルは吹っ飛ぶだろう。だがまたも避けられた。

 

「すっげー!ライダーキックだ!」

「ら、らいだーきっく?」

 

 寧々が喜んでいるらしいが、生憎とらいだーきっく?とやらが何なのか私は知らない。

 終わったら聞いてみようと心に決めて、黒乃にもう一度向き直る。

 

「妹紅って、もしかしてAランク?」

「ん。現代の言い方ならそうだな」

「やっぱり。魔力を馬鹿みたいに大量消費してる」

「それが私の戦い方だからねぇ」

 

 そう会話を交わしながらも、黒乃は銃弾の嵐を生み出し続ける。しかしその全てを、私の纏う火焔が溶かし弾き防ぎ、私が傷つく事を許さない。

 

「くっ・・・・・抜けない」

「そらそらもう終わりか!?」

「ぐっ・・・・・仕方ない。全力で行くよ。妹紅、防いでね。

 

 時空干渉、範囲指定・・・・・《時空湾曲(ワールドディストーション)》ッッッ!!!

 

 」

 

 黒乃が引き起こしたのは空間そのものの湾曲。その空間に存在する限り、そこにある物は等しく捻じ切られる。

 黒乃が指定した空間は私の右腕。避けるか防ぐかしない限り私の右腕はぐちゃぐちゃになるだろう。

 

 そして私の選択は、それを受ける事だった。

 

「!?妹紅!」

「ママ!?」

 

 黒乃と寧々の視線の先には、挽肉のようにぐちゃぐちゃな私の右腕。通常なら今すぐ回復の出来る《伐刀者》を呼ばなければならないが・・・・・

 

「騒ぐな騒ぐな。私を舐めるなよ」

 

 そんなもの、私には必要ない。

 

「え・・・・・焔が」

 

 不死鳥の焔が私の右腕に集まる。それは不滅の焔。再生の火。

 

 焔が晴れた時、私の右腕には傷一つ無かった。

 

「そういやお前らには言ってなかったな」

 

 寧々と黒乃がポカーンとあほ面を浮かべている。寧々は兎も角、黒乃のこんな表情は珍しい。

 

「私の能力は概念干渉系能力《不死鳥》。その名の通り、私は不死身だ」

 




寧々や黒乃の幼少時代の設定は完全に妄想です。原作で語られる事があるかもしれませんが、その時はこの作品の独自設定って事でひとつ。

作中オリ技

《時空湾曲》・・・・・禁技《時空崩壊》の前身となる《伐刀絶技》。時空に干渉し極狭い範囲の『世界』を捻じ曲げる事でその空間上に位置する物体をぐちゃぐちゃにする。人間に使うとグロいことになる。魔力を馬鹿みたいに使うので、事前に察知して避けることは出来る。

もこたんの原作との違い・・・・・使ってる火が妖術じゃなくて《不死鳥》の概念から。《不死鳥》の繋がりで鳥を式に出来る。
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