人は誰しもその夢に対してそう宣う。
彼の最高のヒーローですら、きっとそう口にするはずだ。
だから皆、諦める。諦めてしまう。
だが、それでも諦められない。諦める訳には行かない。
そういって歯を食い縛る少年がいた。
かつて失い、そして決意した彼の辞書に、諦める等という言葉など存在しないのだから。
これは、そんな彼の織り成す物語の、ほんの一欠片である。
本格復帰、かどうかはまだ分かりませんが、その前の肩慣らし兼生存報告としての一筆です。
それではどうぞ。
『将来の夢は何ですか?』
そう問われた時、人はどう答えるだろうか。
純粋に、希望溢れる未来を語る者。
堅実に、目の前の目標を示す者。
単純に、漠然とした明日を望む者。
諦念で、ただ流れを見る者。
ああ、様々あるだろうさ。幼いものから、老いたものに至るまで、様々な形、様々な規模で人は未来を語る。
そしてそれを努力し成す者、諦め打ち捨てる者、そもそも不可能であることを悟る者。
叶えるから夢、叶わぬから夢、人の夢と書いて儚い。
どれ程使い古されて、聞き飽きてしまった言葉だろうか。どれも代わり映えもせずに、思わず苦笑を漏らしてしまうほどに、月並みな言葉だ。
人は不可能と知り、夢を諦める。
人は不可能と知り、類似した夢を抱く。
人は不可能と知り、それでも努力する。
人は不可能と知るからこそ、夢として語る。
皆の憧れる英雄。
希望を背負った勇者。
皆を守る正義の味方。
世界を救うヒーロー。
そんなものは物語でしかないと、ただの空想でしかないと人は打ち捨てる。
英雄とは世界最大の人殺しであり、勇者には巨悪が必要で、正義の味方には絶対の不義が不可欠で、そしてヒーローは、
現実となれば、その夢は氾濫した一般となり、常識と成り、そして夢から果てる。
……まあ、それでも、職業として憧れ、夢見る物であることに代わりは無いのだが。
『あなたの夢は、何ですか?』
オレの夢? オレは……そうだな………────
────────オレは、ヒーローになりたい。
◆◆◆◆◆◆
「ふっ……はっ……!」
閑散とした……失礼、静寂に包まれた雑木林の中、自然の物ではない音が響き渡る。
木と木をぶつけ合う音と、積もる落ち葉を撒き散らす音、布擦れの音。
そして、風切り音。
音源にあるのは一人の少年。その手にあるのは手製であろう木刀と、木盾。
少年は忙しなく動き、刀と盾を絶え間なく動かす。
その理由は、木々に紐で吊るされた大量の木塊が途切れることなく迫り来るからである。
彼はそれを足と動かし、体を反らし、盾で防ぎ、刀で反らし、弾き、斬りつける。
この部分だけを切り取れば、始まって間もないと思われるだろう。かいた汗は然程ではなく、呼吸も少し乱している程度だ。
だが、それは間違いと言えるだろう。
時は既に17時を過ぎ、夕刻を越えて夜の帳が降りはじめているが、少年がこの林へ来たのはこれより12時間ほど前、空が黒から瑠璃、瑠璃から青へと変わる時間帯であった。
そこから半日、彼はひたすら動き続けた。
ここまでおよそ8年間、ひたすらに己を限界まで苛め続けたその肉体は、この程度で疲弊などしない。
その膂力は、跳躍は、反射は、少年の個性……つまり、誰も持ち得ぬという意味での個人の個性である【
【無個性】………人類の大半が【個性】という名の超常の力を手に入れたこの時代、もはや旧人類の特徴として教科書に記載されつつある《個性を持っていない人間》という特徴こそ、この少年の【個性】であった。まさに個性のゲシュタルト崩壊である。
さて、そんな世界において、無個性である少年は、一つの夢を抱いていた。抱いてしまっていた。
───ヒーロー。
個性を用いて、犯罪者から民間人を守る、いわば民間警備会社の派生系とも言える職業。
個性を悪用する犯罪者を鎮圧、災害からの個性を用いた人命救助。
現代の花形と言われるその職業は、少年には向いてるとはどう繕っても言えない。ここまで言えば説明など不要であろう。
無論、無個性や弱い個性であっても人を守ることはできる。
いくらヒーローが溢れる時代であっても、レスキュー隊や消防隊、警察などの治安、救助機関はしっかりと機能しているからである。
それなのになぜ、この少年が大ケガ、最悪落命のリスクを犯してまでこの夢を抱き続け、鍛練を続けているのか。
理由はいくらか挙げられるが、大きいものの一つとして、単純に少年の諦めの悪さがあるだろう。
欲しいと思ったものは努力し求め続け、決めたことは周りを巻き込んででも成し遂げる。
そしてもう一つ。
この
それは……………
「……むっ!? この気配…この巨乳の気配は! ……………そこだぁ! とう! お嬢様ぁ!!」
唐突に先ほどまでの張り積めた糸のような緊迫感や、精悍な顔立ちをそこらの塵の上に投げ捨てた少年は、迫り来る木塊を上手く足場にし、とある方向へと洗練された
その動きは無駄がなく、最少動作で最大効率を叩き出しながら飛び込みであった。
そして、無駄に洗練された無駄のない飛び込みの結果は、
「ああ、やっぱりここにいたんですね、コウさん」
当然のように無駄な行為として処理された。
「ごふぅ……さ、流石だぜお嬢様……オレでなければこの鉄棒は肋を粉砕していた……だろう………こふっ」
自らの本能が察知した巨乳の方向への飛び込みは、結果、地面を支えに生成された直径10cmはある鉄棒への鳩尾直撃と相成った。
「全く、朝から姿を見せないと思ったら、またこんなところに………わたくしの執事ともあろうものが、半日もわたくしの側を離れるじゃありませんわ!」
「……は、反論、反論させてお嬢様! だって一週間も鍛練怠ったら、鈍るじゃないですか!」
「我が家の鍛練場があるでしょう!」
「相手がいないんですもん!」
「………はぁ。確かに、今のあなたより強い護衛は我が八百万家にはおりませんが………だからと言って、護衛兼執事が! わたくしの側を離れるとはどう言うことですの!?」
少年………コウと呼ばれた彼に青筋を立てて見下ろしているのは、コウの幼馴染みにして護衛対象、ご主人様、そして夢を抱いた切っ掛けである少女。
…少女というには、一部非常に発達しているが。
少女の名を、八百万 百。
組成さえ識っていればあらゆる物を作り出す【生成】の個性の持ち主である。
ほら、帰りますわよ、と、本来は自分より格下であり、行う必要のない手助けをしながら、コウの体を起こす。
「ういっす、お嬢様」
「……そろそろそのお嬢様っていうの、止めない?」
「お嬢様はお嬢様だからなぁ」
「来年度からはお互い高校生ですのよ? 新しい級友に何と言われるか………」
「小中学連中には浸透してるし、へーきへーき、皆慣れるって。つか、同じ高校受かるの前提で話してる?」
「え?」
「え? ………ああ、いや、お嬢様がそう確信してくれてるなら、自信が持てるってもんだけどさ」
そういって、コウはガリガリと粗っぽく後頭部を掻き、それを見た百は微笑みを浮かべる。
コウがこの動きをするときは、大抵照れているか、面倒臭がっているかのどちらかであり、百は付き合いの長さでそれが前者だと理解している為だ。
「コウさんなら大丈夫ですって。なんせ、お父様が認めたわたくしの護衛ですもの。個性が無くたって、あなたはヒーローになれますわ」
「へいへい、そいつは嬉しいねぇ」
「ですので、いつでも名字を八百万に変えても問題ありませんわ」
「おっと話が棒高跳びしたぞぅ? あれぇ?」
他愛なく、そして遠慮のない会話は、二人の付き合いの長さを示していた。
黄昏の茜に染められて伸びる二人の影法師は、いつしかそっと触れあい、重なり、寄り添うようにその林から遠ざかっていった。
この日より、物語は動き出す。
何にも持っていない空っぽの、無能の少年は、たったひとつ抱いた無謀極まるその夢という名の誓いを胸に抱き、空っぽな自分に温もりを与え続けてくれる無二の存在への恩返しとして、その道を歩む。
たとえその道が棘であったとしても、その先に、いかなる苦しみが待っていようとも。
───さあ、
これは、そんなちっぽけな物語である。
始めません。語りません。
だって原作持ってないもん!(大罪)
原作は漫画で職場見学まで、つまりアニメ放送分しか見てないのでそもそも書けません。
先月、ようやく卒論発表が終わりまして、現在卒論手直しと引っ越し準備でドタバタはしていますが、少しばかり余裕が持てたので復帰目指してリハビリ中です。
いずれ復帰の暁には、何卒「ハイスクールG×E」および「また、もう一度(やるかは未定)」をよろしくお願いします。
以降、補足および設定
主人公「
原作主人公デクくんと同じく無個性だが、幼少より体を鍛え上げた為、身体能力はかなり高い。おっぱい魔神。
個性が自分の体に作用しないドライアイもといイレイザー先生があんな超人的な動きしてたし、無個性でも身体能力が化け物クラスならいけるんじゃね? というノリで生まれた脳筋主人公。
武器は全般的に扱え、どれも高水準の技量を持つ。その代償というか、成長期に筋肉を付けすぎた結果、背が低い。159cm。低い。
百の護衛兼執事であるが、基本的にそのあり方は姉と弟、というかこいつに落ち着きがない。なにそれ美味しいの?状態。
百とは上記に加え、幼馴染と恋人の関係である。なお親公認。婿入り確定。しかし、基本的には呼び慣れているお嬢様呼び。
幼い頃にヴィランの起こした災害で両親を失い、オールマイトに救われた後、もともと神田家が八百万家と親密な関係にあった為引き取られた。
その事でヴィランを憎んでいるかと思いきや、本人が楽観的かつ恋人のおっぱいが大きいから良いや、と宣っている模様。
ヒーロー名は『エンプティ』