細かい描写って難しいですね。大まかな流れだけ決まっているので、早く展開を進めようとしてあまり描写が出来ていません。
感想、誤字報告、アドバイス等お待ちしております
ではどうぞ
からーん。
鐘が鳴ると同時に目を醒ました俺は、やればできるものだ、と思いながらベッドから降り、窓を開け放つと、大きな伸びをして朝の冷たい空気を胸一杯に吸い込んだ。
着替えてから井戸に向かう途中、朝食の準備をせっせとしているエミヤと遭遇した。
「おはよう、キリト。時間通り起きれたようでなによりだ」
「おはよ。大変そうだな、子どもたちもたくさんいるから量も多いし、他の家事もやってるんだろ?」
「いや、そうでもないさ。私の周りには大食いが多くてな、この程度では満足してくれなかったよ……キリトは洗濯か?」
俺の抱える麻の服を見つめてエミヤが訊く
「ああ、ちょくちょく洗わないと天命の減りが早いらしいからな」
「そうか…ところでキリト、セルカを知らないか?シスターが突然姿を消した、と不安げに言っていてな。彼女のことだからすぐに戻ってくると思うが」
「セルカが……?」
胸騒ぎが収まらないまま、礼拝を済ませて朝食を食べた。広場へ向かい、少し経つと広場に入ってくる亜麻色の髪を見つけ駆け寄った。
「やあ、おはようキリト」
「おはようユージオ」
「今日は休みだから、キリトとエミヤに村を案内しようと思って。あれ?エミヤは?」
「あいつは朝食の片付けをしてから、近所のルーナおばさんに手伝って欲しい事があるとか言われて連れてかれたよ」
「あー…あの人押しが強いからね…それにエミヤも頼まれたら断らないだろうし」
と、苦笑いのユージオ。確かにあの威圧感と勢いは値切りをする大阪のおばちゃんに並ぶものがあったな…
「それより…朝からセルカがいなくなったんだ。探すの手伝ってくれないか?」
「ええ?セルカが?」
ユージオは心配そうに眉を寄せる
「ああ。こんなこと初めてらしい。ユージオは、セルカの行きそうな場所に心当たりはないか?俺は昨日、セルカとアリスの話をしたから、もしかしたらーー」
そこまで言って俺は今更ながら、胸騒ぎの正体に気づいた。
「ーー果ての山脈だ!セルカはアリスの話を聞いて、そこに向かったんだ!」
「ねぇキリト……もしかしたらだけど、まだエミヤのこと信頼してないよね?」
半ば駆け足で山脈へと向かいながら、ふいにユージオが訊いてきた。
「…ああ。まだあいつが信頼できるのか分からないからな。会ってからまだ一日だ」
「そんなこといったら、僕達も出会ってから間もないでしょ。そんなことないと思うよ?たった一日で村の人からも頼りにされてるし、僕には悪人というよりはむしろ正義の味方に見えるかなぁ。何か、他に信頼できない理由があるんでしょ?」
ユージオは、こういうところで妙に勘が鋭い。溜息をつき、俺は言う
「ーーあいつは、多分、人を殺したことがある」
それが彼が望んだものなのかは分からない。だが、あの目は、かつて人を殺した、と語ったあの少女が、昔していた目にどこか似ている。彼を見たときなんとなく、彼は大切な人を切り捨てることが出来る人間なのだ、と思ってしまった。もし、その予感が本物だったら……
俺はユージオたちを少しでも殺すかもしれない存在に、たとえ村の人々があいつを受け入れても、警戒心なく接することができない。俺はもう、仲間を失いたくないんだーー
「そんな…エミヤはそんな人じゃないよ。そんなこと、できるわけがない」
ーー?ユージオの言い方に少し疑問を覚えた。もしかしたら、この世界の人々にとっての禁忌目録は強制力のあるルールなのだろうか、だとしたらそれを破れたアリスは一体ーー?
「…俺も信じたいさ。だからこそ、俺はあいつの口から本当のことを訊くまではエミヤを信じない」
「……はぁ、全く君ってやつは……分かった。セルカを見つけたあと、エミヤに本当のことを訊こう。いいね?」
「ああ」
道中の踏まれた跡から子どもが果ての山脈に向かったことはわかっている。セルカが万が一にも闇の国に入ってしまわぬように早く連れ戻さなくては。そうして俺たちは果ての山脈へと足を進めていった
「着いたよ、この洞窟だ」
俺達はようやく大きな洞窟の前に到着した。洞窟はかなりの高さと幅があり、勢いよく流れる小川の左側に、二人が並んで歩けそうな岩棚が張り出していた。奥のほうは真っ暗闇で、時折凍りつきそうに冷たい風が吹き出してくる。
「おい、ユージオ…灯りはどうするんだ?」
と、俺が訊くとユージオはいつの間にか拾っていた一本の草穂を掲げた。俺が唖然とするなかでユージオが口を開く
「システム・コール!リット・スモール・ロッド!」
シ、システムコール!?、と驚いたのも束の間。草穂の先端に青白い光が灯った。神聖術だよ、練習したんだ、とユージオは微笑む。言葉の意味は知らないらしい。俺は改めて此処が仮想世界なのだと実感する。
「…なあ、俺にも使えるか?」
「素質のある人なら一日でも使えるし、出来ない人は一生掛かっても出来ないって。さすがに今すぐには無理じゃないかな」
興味本位で訊いてみたが、魔法ーーいや神聖術を使うのはすぐには無理そうだ。ここでは一先ず諦め、洞窟の中へと足を進める。途中で凍った水溜まりに踏み割られたようなヒビが走っていた。
「…間違いないみたいだな。全く…無鉄砲というか恐れ知らずというかなんというか」
と、俺がぼやくとユージオは不思議そうな表情をして、
「別に、此処にはもう白竜もいないし、それどころかネズミやコウモリすらいないよ?」
どうやら変なエネミーとかは出てこないらしい。そうか、と力を抜こうとしたーーその時だった。
妙な音と樹脂の焼けるような匂いと僅かに混ざる生臭い獣臭、そしてーー
きゃあああ!!!…と女の子の悲鳴が聴こえてきた。
「まずい!」
「セルカ……!」
俺とユージオは同時に叫ぶと、凍りついた岩に足を取られつつも全力で走り出した。
ーー少し前、ルーリッドの村
「助かったぜ!兄ちゃん」
「いやなに、大したことはしていないさ。また何かあったら遠慮なく言ってくれ」
エミヤはルーナに連行され、荷台を動かすのを手伝った後、壊れた鍬の修理、老人の荷物運び、洗濯の手伝い、料亭の手伝いetc.…とにかく目に入った困っている人々を助けて村中を奔走していた。勿論、シスターの頼みーーセルカの捜索も兼ねてだ。しかし村中を探しても、セルカは見つからなかった。
ーーこの村を見たときには随分と驚いたものだ。喧嘩こそするが、決して力で他者を踏み躙るようなことはしない。正に私がかつて渇望していた平和な世界そのものだと言える。人間は、こんなにも善良な生物だったのだろうか、等と考えていると、出会った時のキリトの言葉が思い浮かんだ。
ーー『ログアウト』。確か、ゲーム等で使う言葉のはずだ。私はゲームなど、昔友人に誘われて一度だけやった記憶しかないが。さらにあのステイシアの窓。となると、此処は電脳空間か…?
思い浮かぶのは月の聖杯戦争。しかしあそこは精巧に作られてこそいたが、どこか無機質で機械的な空間だった。この世界にあるのは、本物としか思えない草木と街並み。人々も、とてもAIだとは……ーーふと、何か思い浮かびそうだったが、その思考はシスターの声に遮られた。
「こんにちは、エミヤさん。……セルカは…?」
「……いや、村中を探してもいなかったよ」
首を振ると、シスターは悲しげな表情をした。
「……そうだ、キリトさんとユージオに弁当を届けてくれないかしら、彼らもさっきから見かけなくて…果ての山脈の方向に少年二人が走っていったという噂を聞いたのだけれど」
……何か、嫌な予感がする。
「了解した。私が責任を持って届けよう」
と、シスターから弁当を受けとり、私は果ての山脈へと向かった
Q、なんでキリトはエミヤを信じてないの?
A、原作の今後を知っている方はご存知だと思いますが、キリト君は色々精神的に限界が見え始めています。多くの死を見てきて、もうこれ以上誰も死なせたくないので、得体の知れないエミヤさんに警戒しているのです。
Q、エミヤに話を訊く機会けっこうあったやん?
A、現実世界の話もすることになるのでアンダーワールド人がいるときは無理。朝の会話では二人とも用事があって忙しい&セルカのことで頭がいっぱいでチャンスを逃す。あとキリト君はコミュ障
これから少しずつ補足もしていきます