赤い弓兵と仮想世界   作:カキツバタ

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どうでもよいですが、オジマンとキャスギルの誕生日ボイスの程よいツンデレ感が好きです。



教会にて

「…なぁ、エミヤ。出会ったときに俺が、『ログアウト』って言ったこと、覚えてるか?」

 

「あぁ。私もそのことに関して、少し気になっていてな…」

 

俺達はあの後、意識こそないが、なんとか一命を取りとめたユージオを抱え、今にも倒れそうな身体を引摺りながらどのくらい経ったのだろうか、ただひたすらに歩み続けてルーリッドの村へと帰ってきた。セルカは教会に戻った途端、倒れるように眠りについた。一体なにが、とボロボロの俺達を見て心配してくれるシスターに事情を説明した。シスターは暫くの間茫然としていたが、やがて『…セルカを助けてくださり、ありがとうございます。この子、あの子のことになるといつもつらそうな顔をしていたから…。とはいえ、起きたら説教をしなくては。お二人とユージオも、早くお休みになって』と言って優しくセルカの頭を撫でていた。そして俺の部屋でユージオをベッドに寝かせ、腰を下ろす。それだけで一気に疲れが溢れ出したが、俺にはまだしないといけない話があるのだ、と自分を鼓舞し、立ち去ろうとするエミヤを引き止めて今に至る。

 

今、ユージオは寝ている。話をするなら今しかない、と俺は前々から思っていたことを彼に確かめる。

 

「――現実世界の人間、だろアンタ」

 

「…ふむ。何をもって現実と呼ぶのかにもよるが、確かに私はこの世界とは全く違う世界から来たのだろう」

 

やはり、彼は現実世界からやって来たプレイヤーか。しかし、今の言い回しには少し違和感を感じた

 

「だろう…?」

 

「この世界に来た経緯が思い出せない。しかも受肉しているときた」

 

「受肉…?」

 

「あぁいや、こちらの話だ。あまり気にするな」

 

「……やっぱアンタもわからないか。取り敢えず、俺よりもこの世界のことを知らなさそうだから同じ現実世界の人間として説明しとくと、ここは『アンダーワールド』。人工フラクトライト―― AIの世界だ」

 

「……やはり、ここは電脳空間だったか。となると月の聖杯戦争か…?しかし、ムーンセルの仕業とは思えない…それに他のサーヴァントの気配は一向に…」

 

「?」

 

エミヤは俺の話を聞いてなにやら一人でブツブツと考え事をし始めた。なにか、勘違いをされている気がしなくもないが、そのまま説明を続ける

 

「えっと、説明を続けると俺達は、この世界にログインしたは良いものの出られなくなってる。だから俺は、ラースがこんなことをしてる理由と脱出方法を見つけるために央都へ行こうと思ってる」

 

「……状況は概ね理解した。この世界から、元の世界に戻る鍵が央都にあるということだな。ところでラースとは一体何かね」

 

「なっ!?……まさかラースも知らないなんて。ラースの奴ら、ちゃんと説明してないんじゃ…」

 

昨今、インフォームド・コンセントは常識だと言うのに…いや、もしかしたらエミヤは説明されたときの記憶も何らかの手違いで思い出せなくなっているのか?それならこれまでのこともうなずける。

 

「ラースは簡単に言うと、この世界を運営してる企業のことだ」

 

「ほう。ムーンセルでなく一企業か。となると、目的は営利ではないのか?これほどリアルな世界だ。公表してしまえば莫大な利益を得られるからな」

 

「いや、そうじゃない。ラースの目的は恐らく真の人工知性を生み出すことだ…何故、そんなことをするのか。俺やエミヤをこの世界に送った本当の理由は何なのか。それを俺は確かめたいんだ。エミヤだって帰りたいだろ?」

 

「確かに、ラースとやらが私をこの世界に送り込んだというのなら、その理由は気になるが…」

 

「…アンタ、もしかして戻りたくないのか…?」

 

「…そうだな。私のいた場所は辛いことばかりだったからな。この平和な世界が、少し名残惜しいのかもしれない」

 

――そうだ。彼はいつも、こんな悲しい瞳をしているのだ。俺は以前から募っていた思いを打ち明けるように、彼に尋ねた

 

「―――なあ、人を、殺したことってあるか…?」

 

彼は少し息を飲み、暫くの沈黙の後に語りだした

 

「…あぁ、殺したさ」

 

予想はしていた筈なのに、その言葉が俺に重くのし掛かる。わかってはいたのだ。三十を越えるゴブリン達の攻撃をたった一人で受け、あのウガチを殺した。その動きは熟練しており、彼が如何に戦場慣れしているかが伺える。軍人かなにかだったのだろう。人の死など当たり前の世界で生きてきたのかもしれない。…それでも俺は心のどこかで、否定して欲しかった。俺が黙っていると、彼はそのまま話を続ける

 

「――ただ人々を、救いたかったんだ。そして、己の理想を貫くために多くの人々を殺して。殺した人間の数千倍の命を救ったよ。――けど、その先には何もなかった。」

 

――その人生は、なんて寂しく、歪んでいるのだろう。

 

「何度も後悔し、自分を責め続けた。結局私はただの愚か者だった、と」

 

「それは、」

 

――違う、と。そう口にしようとするも、何も言えない。当たり前だ。俺だってあの日あのとき、殺した奴らの顔が忘れられない。彼等を思い出す度に、自分を責め続けている。そんな奴が、彼の言葉を否定できるはずがないのだ。

 

「――けど、『答え』は得た。だから()は、自分が殺した人々を背負いながら……それでも、頑張っていくんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…はぁ、人が寝てたときになんて話をしてるのさ。まぁいいけどさ?」

 

あの後、まだ仕事があるのでな、と立ち去るエミヤを見送った俺はずっと考えに耽っていたが、突然ベッドから聞こえた声に一気に現実へ引き戻された。

 

「うぉっ!?ゆゆゆユージオ!?怪我は!?大丈夫か?」

 

「このとおり。お陰様で元気だよ。むしろ動きたいくらい」

 

そう言ってベッドから勢いよく起き上がるユージオ

 

「そうか…よかった。…もしかして、話、聞いてた?」

 

「人が寝てるのにあんな話されたら、そりゃ起きるさ」

 

しまった。いくらユージオといえど、迂闊に現実世界のことを知られては何が起こるか分かったものではない。彼等が自分自身は人工物なのだと知ったらどうなるのか。最悪、存在が消滅しまうかもしれないのだ。

 

「ユージオ…お前どこから起きてたんだ?」

 

溢れる焦燥感を悟られまいとしながら、ユージオに尋ねる

 

「んー。キリトが、殺したことあるか?とか物騒なことを言い出してからかな」

 

「そ、そうか」

 

よかった。どうやら現実世界のことまでは聞いていなかったようだ。俺は安心して力が抜けてしまい、そのまま床に崩れ落ちてしまった。

 

「ちょっ!?…危ないなぁ。疲れてるんだろ?もう休みなって」

 

そう言ってユージオは自分が寝ていたベッドに俺を寝かせた。

 

「あぁ。……っと、ユージオ。お前を助けたのは、セルカだ。礼はちゃんと言っとけよ?」

 

「分かった。おやすみ、キリト」

 

「おやすみ、ユージオ」

 

ユージオが部屋から出ていった次の瞬間に、俺は深い眠りについた。

 

 

―――こうして俺の長い一日は幕を閉じた。

 




Q,エミヤさんが無銘っぽかったり、snアーチャーっぽかったりするのは何故?

A,都合上本来は無銘なのですが、作者の個人的希望でsn要素を入れときました。snアーチャー格好いいからね。実質FGO寄り。まぁ、そこらへんは気にしないでください。
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