2022年、<完全ダイブ>を完成させ人類は完全なる仮想現実を作り出した。そしてその要となるマシン、<ナーヴギア>の基礎設計者である茅場晶彦。

この話は、SAO事件を引き起こす前日、2022年11月5日土曜日の茅場の話である。

※このSSは、作者の勝手な解釈によって書いております。苦手な方はご遠慮下さい。

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この物語は私の勝手な解釈によって書いております。共感して頂いたら幸いです。

非常に短いです。

諸事情により、カッコが原作と変わっています。すいません。


茅場晶彦の記録~SAO事件前夜~

カタカタ、と妙に小気味良いキーボードを叩く音が部屋に響いていた。その部屋には電気が付いておらず、ただ一人の白衣を身に纏った細身の男の顔をブルーライトで照している。その鋭角的な顔とあまり感情を窺わせない金属的な瞳にはかつてないほどの集中が込められていた。

 

やがて、タンッとエンターキーを叩くと全ての処理を終えたパソコンを閉じる。ふうっ、と一息ついた男は今やこの部屋最後の光源である大型のメインフレームに目を向けた。

 

実に穏やかな、まるで神のごとき慈悲を含む様な視線を向ける男は椅子から立ち上がると、何かを噛み締めるかのようにゆっくりとメインフレームに近づき、その手をガラスケースに触れさせる。

 

「ようやく完成した。これで、始められる」

 

 

 

ここは業界最大の大手ゲーム会社アーガス本社。その地下五階の施設。

 

 

 

そして、この男の名はーーーーー茅場晶彦。

 

 

数多ある弱小ゲーム会社だったアーガスをたった一人で大手ゲーム会社に成り上げた男。そして、後に世界中の犯罪史でも最大級の犯罪。一万人の人間を二年もの間、仮想の鋼鉄の城に監禁し、その内四千人もの人間を亡き者とした狂気のゲームクリエイターである。

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

私ーーー茅場晶彦にとってそれは一つの夢だった。子供がいくつもの夢を連想するように、私も自身の夢を連想し続けていた。

 

何歳の頃の話だったか、空に浮かぶ鋼鉄の城に取りつかれたのは。私は何歳になっても、その情景を忘れることは無かった。いや、むしろ年経るごとによりリアルに、より大きく広がっていった。

 

私は信じていたのだ。ここではない、どこか別の世界で自分が望んでいた鋼鉄の城が存在することを。だけど、どうしても。どうしても自分が望んだあの城を見たいと思った。故に決意したのだ。完全な仮想世界を作り出し、その場所と現実を繋げる事を。

 

 

長い研究と努力の末、私は遂に<完全>を成功させた。<仮想世界>と<現実>を繋ぐ架け橋を私は作ったのだ。

 

 

「長かったな………」

 

誰に向けたわけでもないその言葉はいやに明瞭に響いた。ああ、本当に長かった。

 

私はこれから、恐らく犯罪史に名を残す程の大悪党となるだろう。しかし、後悔はしない。

 

 

私は、自分の理想を叶える。<浮遊城アインクラッド>のある世界、<ソードアート・オンライン>を百層攻略まで脱出不可能、ゲームオーバー=現実の死にすることでもうひとつの現実にする。

 

世界の王はーーーー神は私だ。住民はNPCじゃない。ソードアート・オンラインを買った一万人のゲーマー達だ。それでやっと、私の理想ーーーー本物のアインクラッドの完成が叶うのだ。

 

 

「……………いくか」

 

 

 

こうして、私はアーガス本社を出た。

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

私が向かったのは長野の山奥にある山荘だ。この場所は私がSAO計画を成す為に下見して見つけた場所だ。山奥なので早々見つかることはないし、電気や水道もあるのでなかなか便利な所だ。

 

 

用意しておいたベットに腰掛け、計画に使うナーヴギアを眺める。バイクのヘルメットの様な作りをした青メタリックカラーの最新端末。これを作ったのも私だ。私の夢の為に作られたこのマシンで今から一万人の人間を浮遊城に招待するのだ。

 

 

 

そして、2022年十一月六日午後一時。ソードアート・オンラインの正式サービスが始まる。

 

「始まったか………」

 

今ごろは、まだなにも知らないプレイヤー達が遊んでいるだろう。これから始まるVRMMORPGをエンジョイしているだろう。

 

 

 

これからのことを考えて、買っておいたご飯を食べる。他にも色々こなして、時計が五時を回った。

 

「時間だな………」

 

私はナーヴギアを取り付け、呟く様に起動させる。

 

 

 

 

                     「リンク・スタート」

 

 

 

 

 

 

私は|GM(ゲームマスター)アバターに切り替え、全プレイヤーの強制召集を始める。誰もが困惑している。それもしかたのない事だ。それでも、私は言葉を紡ぐ。

 

 

 

 

「プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ」

 

 

 




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