番取り! ~これはときめきエクスペリエンスですか? いいえゴールドエクスペリエンスです~   作:ふたやじまこなみ

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第23話「学園祭」

「それで香澄ちゃん、今日はみんなでどこに行くの?」

 

全員揃ったので改めて本日の予定を確認しようとしたら、香澄がニンマリと笑みを浮かべた。

 

「ほ、ん、じ、つは~ここに行くよ!」

 

そう言って取り出したのは3枚のピンク色の紙片。何かのチケットのようだ。

 

「福引!」

「全然違うよ、おたえ! これは学園祭の入場券だよ」

 

学生らしい手作りの券だった。表面には3匹のウサギが踊っている。

書かれている文字は……

 

「花咲川女子学園……え、花女? 今日って花女の学園祭だったの?」

「そうなんだよ、こがねん! というわけで、本日はここに行こうっ!」

「学園祭……お祭り?」

「うちの中学でいう文化祭みたいなものだよ。花女は中高一貫でやるから、結構本格的だってきいたけど」

 

たえはいまいちイメージできてないみたいだ。

まぁ俺も前世の中一の頃、高校の文化祭とか考えたこともなかったからな。

 

「でも花女のチケットなんてよく手に入ったね」

 

花女は女子校である。加えて言えば、割とお嬢様学校である。

この野蛮な世界で自衛が働いた結果だろうか。文化祭は誰でもウェルカム入場とはなっていない。

 

女神様が見ているというなんたら女学園のように、専用のチケットが必要なはず。

家族や教員、関係者にしか配られないなど、入手方法も限られていたはずだ。

 

しかし貴重品となった結果、かえってヤクオクに流れてたりもするらしい。

この世界にマリア様はいないからなぁ……

 

「うちは今年あっちゃんが受験するみたいだから、そのつながりでもらえたんだって」

「あ、そういえば明日香ちゃん、花女受けるんだっけ」

「うん。お母さんも乗り気になっちゃって。あーあ、あっちゃんも御谷中に来ればいいのに……」

 

うちの中学なんて来ない方がいいと思うが。ろくなもんじゃないよ。

是清みたいな原人が闊歩してる学校である。学園というより動物園だ。サファリパークに近い。

この世界、絶対女子校行った方がいいって!

 

明日香と両親の選択は全面的に正しい。できればその正しさを香澄にも適用して欲しかったなぁ。

……その場合、香澄と会えてなかったけどね。

 

 

電車に乗って花女まで移動した。

学園に近づくにつれて、人の流れが太くなっていく。ここら辺まで来るとみんな目的地は花女のようだな。

 

花女かぁ……偵察で夜中に忍び込んだことはあったけど、こうして正面から入ったことはなかったな。

 

校門は造花で彩られたアーチがかけられており、色とりどりの飾り付けがされていた。

園内からは活気のあるガヤ声がここまで響いてきている。

屋台が出ているのだろうか。美味しそうな匂いも漂う。

 

「わぁっ! 人すっごいね」

「おしるこあるかな」

 

お祭りの雰囲気に当てられて、香澄たちも嬉しそうだ。

しかし嬉しそうなのはいいんだが、俺はたえが抱えている物が気になって仕方なかった。

 

「でもたえちゃん、それ置いてこなくてよかったの?」

「それ?」

「あ、うん。私のあげたギター。学祭行くなら邪魔だったね。あとで別の日に渡した方が良かったかな」

「邪魔じゃないよ。嬉しい」

 

あー、そういうことじゃないんだけど。

 

実はあの後、直でここまで来たから渡したギターをそのまま持ってきているのだ。

途中家に寄ろうとは提案したんだけど……普通他校の学園祭にギター持ち込んだりしないよね?

ここら辺、たえにも香澄感が……ま、いっか。

 

「このチケット、3つまでタダで使えるんだって! う〜ん、悩むなぁ〜。

 どこ行こっか?」

「まずはどんなものがあるのか確認しよっ。あ、パンフ」

 

入場券には三箇所枠があり、スタンプを押せるようになっていた。

園内の屋台とか催し物は基本無料だが、中には有料のものもありそこで使えるようだ。

有料といっても100円・200円とかそんなもんだが、中学生には嬉しい配慮。

 

「この天文学部のキラキラお化け屋敷って、すっごく気になるよ!」

「動物ふれあい広場。ウサギ……」

「私の計算によると、あのケバブ屋が絶対にお得だね」

 

あーだこーだ言いながら、みんなで回る先を検討する。

こうした時間が結構楽しい。

幸せだなぁ。

 

「あ、花女にも吹部あるんだね」

 

ま、そりゃあるだろうね。

パンフのイベント欄に、香澄が目を止めたようだ。

 

「講堂でこのあと演奏みたいだけど……そのあとにやるのなんだろう? あ、英語だよ!

 でも最近習ったから読める! えーと。シー、シー、シヒスパ?」

 

ん?

 

「あ、香澄ちゃん。ちょっとパンフいい?」

「どうしたの、こがねん?」

 

 

講堂

14時  32「花咲川女子学園 吹奏楽部 花女音楽隊」ーー

14時半 33「CHiSPA」……

 

 

「CHiSPAぁ?」

「チスパ? おたえ知ってる?」

「お風呂?」

 

おいおい。

なんでCHiSPAがあるんだ? CHiSPA。山吹沙綾の元彼……じゃなくて元いたバンドである。

 

いや、でもあってもおかしくないのか? 別に結成時期についてアニメじゃ言及されてなかったし。

でもあいつら今って全員中1だろ? しかもガールズバンド。この世界であり得るのだろうか?

 

メンバーは? メンバーが載ってないぞ! 山吹沙綾はいるのか?

 

「なんかこがねんがブツブツ言いだしたよ」

「こういう時のこがねは放っておいたほうがいいと思う」

 

わからん。

わからない以上、行って確かめるしかないってことだな。

 

「次は講堂に行こう! 文句はないよね?」

 

この世界でCHiSPAがあるとか、ちょっとしたオーパーツみたいなもんである。

俺はメンバー構成について、ナメック星人を探すフリーザのように気になって仕方なかった。

 

「さぁ行きますよ、たーえんさん! か香澄さん!」

「別に行くのはいいけど、『か』が一個多くない?」

「たーえんって、誰?」

 

 

「誰だよっ!! こいつら!」

 

完全に別物でした。

同じなのはCHiSPAってグループ名だけ。中身はドラゴンボールのフリーザとポケモンのフリーザくらい違った。

 

誰一人として心当たりがない。

海野夏希、川端真結、森文華、そして肝心の山吹沙綾ーー俺の知っているCHiSPAのメンバーは誰もいなかった。

これは一体どういうことなのか?

 

演奏もお粗末だった。お世辞にも名演とは言えないレベルだ。

とはいえそれは前世でバンドを見慣れた俺の感想であって、周囲の評価は高いようだ。

なぜならこの学園祭に来るような層は、普段バンド鑑賞なんて体験してないからだ。

 

田舎町に来たサーカス団みたいなもんだな。レベルが高いものでなくても、物珍しさから十分目を引くものである。

事実、拍手喝采で盛況のうちに幕を閉じた。

 

「迫力あったね! これがバンドなんだぁ」

 

香澄はウキウキご満悦のようである。

せめてもう少し偽CHiSPAが、火花みたいに輝いていてくれれば……ひょっとしたら香澄の目がここでキラキラしてたかもしれない。

 

「腕はそれほどでもなかったのが残念だね」

「そうなの? こがねん」

「でも曲は結構良かった。ギターの演奏ってこうかな?」

 

つたない演奏ではあったが、たえには感じるところがあったようだ。

背負っていたギターを構えて、ジャーンと奏でた。

 

「え、嘘。スナッパーじゃん。なんでこんなところにあるの?」

 

たえの様をみて、女の子が話しかけてきた。ブラウンヘアーのデコ出しショートボブ。

制服からみて、花女の生徒かな。視線がたえの持つ青いスナッパーに釘付けだ。

 

「なんでって……持ってきたから」

「うん、まぁ、それはそうだけど……」

 

斜め上の回答を受けて、女の子は頬をポリポリとかいた。

 

まぁ、気持ちはわかるよ。普通は他校の文化祭にギター持ち込まないからね。

でも世の中にはギターを首にかけて登校し、生徒会長の前でニコニコ笑っちゃう子もいるんだ。わかってほしい。

 

でも突然話しかけられたが、こいつ誰だ?

香澄とたえの様子を見る限りだと、知り合いというわけでもなさそうだけど。

 

「えー、あなたは花女の方でしょうか?」

「あ、ごめんごめん。私、海野夏希。花女中等部の1年なんだけどーー」

 

海野夏希ーーって、この特徴的なデコ。あ、本物だ。本物のCHiSPAのボーカルじゃん。

ステージ上にいなかったと思ったら、こんな観客席で会えるとは。

 

「あはは。女の子でギター持ってるのが珍しくって、つい話しかけちゃったよ。

 制服じゃないし、見た所、あなたたちって花女の子じゃないよね?」

「はい。御谷中ですね。私は円谷こがねです」

「私、戸山香澄っ!」

「花園たえ」

 

夏希に重ねてこちらも自己紹介した。

香澄が元気良く手を挙げ、たえはそっと口を開く。

 

こちらの自己紹介を聞いた夏希は満足そうに頷く。

 

「でも嬉しいな。私以外に女の子でギターやる子がいるって。

 花園さんもひょっとしてバンドとかやるの?」

「バンドはやってないし、ギターもやってないよ」

「え、じゃあそのスナッパーは……?」

「これは今日、こがねからもらった」

 

理解不能ーーと夏希は目を白黒させてしまった。

 

「あー、私たち吹奏楽やってるんですよ。

 私はシンバルで香澄ちゃんがユーフォニアム、たえちゃんはトランペットです。

 だから別にバンドやってるわけじゃないですね。

 そのギターはちょっとした伝手で手に入れたので、たえちゃんにあげました」

「あげたって、スナッパーを……?」

 

「こがねはドラムやるからいらないんだって」

「ちょっ、たえちゃ……あはは」

 

「そっか! バンドやるのは円谷さんの方なんだね。そっかドラムかぁ……」

 

二十騎ィ!! 

はやく二十騎ひなこを探さないと、本当にグリグリのドラムやる羽目になりそうだ。

 

「海野ちゃんも、バンドやるの? さっきみたいなの」

 

香澄もCHiSPAをみて刺激されたのか、夏希に問いかける。

 

「まだ、予定だけどね。さっきのCHiSPAの演奏聞いてくれたんだよね?

 ーーもう少し腕が良くなったら、先輩たちに頼んで入れてもらうんだ」

「えっ! あ、そうなんですか。

 でも珍しいですね。女の子だけのーーガールズバンドなんて」

「まぁ学内バンドだからね。ライブハウスとかに行って演奏するわけじゃないし」

 

学内バンド!

 

それならこの世界でもガールズバンドがあり得る……のか。

バンドっていうとどうしてもライブハウスのイメージがちらつくから意識してなかったが、学内バンドって選択肢もあったのか。って要するに部活だよな。

ライブハウスでギターをかき鳴らすバンドではなく、どちらかというと軽音部ってイメージが近いのかもしれない。

 

「でもやっぱ人が少なくってさぁ。今の3年生が卒業したら、メンバーが足りなくなっちゃうみたいなんだよね。

 特にドラムやる人が足りないみたいなんだよね。こがねちゃんが花女だったらなー」

 

しかし運営的にはやはり厳しいようだな。バンドをやりたがるような酔狂な子は、そうポンポンいない。

花女は中高一貫なので中1~高3までが在籍しているが、その規模でも人手不足になりつつあるようだ。

 

あれ、でもすると……。

 

「あ、でもそれなら打って付けの人がいますよ。この学校に、山吹沙綾という人がいるはずです。

 彼女を誘ってみてください」

「え、確か2組にそんな名前の子がいたような気がするけど……円谷さんの知り合いなの?」

「あー、まぁ、そんな感じです。彼女は忙しい毎日を送る傍ら、実は楽器演奏に興味津々なのです。誘えばいい返事が期待できると思いますよ。特にドラム! ドラムオススメ!!」

 

知り合いではない。一方的にめちゃくちゃ知っているだけ。我ながら大したストーカー予備軍である。

 

「ふーん。よくわからないけど、誘ってみるよ」

 

半信半疑といった様子だったが、夏希は頷いてくれた。

 

よしよし。種は蒔いたぞ。

 

これで単純に沙綾がCHiSPAに入ってくれるとも思わないけど、何もしないよりはいいだろ。

アニメからだと、沙綾がドラムはじめたきっかけとかまで分からないしね。

案外、横道に逸れていった香澄とたえと違って、素直にドラム始めてくれるかもしれない。

 

 

じゃあ、またねっーー

 

ということで、海野夏希とはメアドやLIMEの交換をして別れた。

有意義な出会いであったといえよう。特にCHiSPAの現状を探れたのが大きい。

学園祭に来てあわよくば沙綾とお近づきに、とも思っていたが意図せぬ収穫だった。

 

「それにしても学内バンドかぁ……結構面白そうだね!」

「……っ!! 香澄ちゃんもやる!? バンド!?」

 

とんでも発言に思わず興奮して血走った眼で掴みかかると、香澄は引きつった笑みを浮かべた。

 

「えぇっ! えーと、面白そうだけど、私はユーフォが楽しいから今はいいかなって。あはは」

 

ちっ!

 

さすがにダメか。

無理もない。香澄がバンドに興味を示すためには、条件が足りていないようだ。

ゲーム的に言えば、「ランダムスターを手にいれる」「キラキラ輝くガールズバンドのライブを見る」の2つのフラグが必要なのだといえよう。

 

ランスタの入手だけなら道端の貯金箱を壊し続ければヤクオクで買えるが、それでは有咲のポピパ加入が未知数になってしまうため、この方法はとれない。

キラキラ輝くガールズバンドライブについては、現状グリグリの結成から手掛けてるけど、CHiSPAのレベルが高くなればそっちでいけるかもしれんな。

 

「私はやってもいいよ。バンド」

「えっ、たえちゃん、マジっ!?」

 

と思ってたら、まさかのたえからの爆弾発言が出てしまった。

 

「今、何でもしてくれるって言った!? 言ったよね!?」

「言ってないよ。でも、ギター楽しそうだし、さっきのバンド見て、やってもいいかなって」

 

まじか。

告白イベである。

 

ふゆぅぅぅぅぅううううううっ!!

 

まさかここでたえを誘えるとは、思えなかったよぉ!!

それにたえの方からとか、信じられない!

 

やはり青きスナッパーは偉大だった。

たえのいうとおり、あれは武器だったに違いない! 

たえという難敵を攻略するための武器!! 隠しフラグだ!!

 

未だに信じられんぞ……これは現実だろうか。

 

しかし告白イベントが発生した以上、あとはゴールに一直線だ。

夢であってたまるか!!

 

何でもしてくれるらしいし、この後はきっとご褒美CGだよ! 略してGCGだ!!

 

「GCG! GCG!!」

 

あれ?

 

でもその場合、たえはグリグリに入ることになるのか?

グリグリがときめきエクスペリエンス歌っても、それはカバー扱いだよね?

 

あ、そもそも鵜沢リィと西本ゆりとのスリーピース、結成後のバンド名決まってないや。

脳内呼称で勝手にグリグリグリグリ呼んでたけど、名前とか全然決めてない。

 

そうだよ。

まだGlitter*Greenって名前にしてないなら、それをPoppin'Partyに変えてしまうのはどうだろうか。

そして頃合いをみて、鵜沢リィと西本ゆりをクビにして……

 

「おたえ、またこがねんがブツブツ言ってるよ」

「こがねにはそういうとこあるから、そっとしておこう」

 

「そうだね。あ、おたえ見て! こんなところに掲示板があるよ。

 あー、やっぱ花女って部活多いんだねー。あ、さっきのCHiSPAのチラシもあるよ!

 その隣には、あれ……これって……お知らせ?」

 

たったらーったったらーっ♪

 

大事な考え事をしていたら、突然スマホが自己主張しだした。

せっかく考えがまとまりかけてたっていうのに!

 

発信元は……鵜沢リィか。

まさか自らの危険を察知したのか?

 

「はい、こちらウルトラこがね隊」

「ふぇぇぇ……うっ、こがねちゃん……う、うぅ……」

 

おいおい。

 

なんかいきなり泣いてるんですけど。

まだグリグリのクビを告げたわけじゃないのに。

 

「うう……うっ……」

 

「まぁ、落ち着いてください。どうしたんですか? そんなに泣いちゃって。

 安心してください。レベル上げのエサにしたりなんてしません。

 よかったですね、ガルパの練習はチケット制で」

 

「うう、こがねちゃんの言っていることが何一つ分からないんじゃ……

 でもそう、練習……リィちゃんたちの練習場所、なくなっちゃうみたい」

 

おりょ? 練習場所? なんのこっちゃ。

 

事情を聞いてみると、全然大したことじゃなかった。

練習場所とは、すなわち鵜沢のバイト先、あの楽器店のことだ。

あの鵜沢リィのバイト先のEDOGAWAGAKKIが、立ち退きにあって潰れるというそれだけの話だった。

 

先週のライブハウスでの出来事を省みて、俺たちの練習はしばらく安全なところーーすなわち楽器店の裏部屋を貸してもらおうと目論んでいたのだが、それができなくなってしまうようだった。

 

一瞬にして俺の黄土色の脳細胞がEDOGAWAGAKKIが潰れることによる、ポピパ結成ときエク演奏についてのデメリットを計算したがーー答えは問題無しだった。

 

あそこって、せいぜい壊れたランダムスターの修理したくらいだよな。

あとグリグリのメンバーと面会するとかそれくらい? ……なくてもいいな。

 

だいたい、SPACEが無くなっても立ち直った俺だ。

何が無くなろうが、もう何も怖くない!

 

「ええ……はいはい。それについては、また一緒にお話ししましょう。……はい……はい。では」

 

はぁ。

 

女子の泣き言を聞くのは疲れるよ。

めんどくさくなったので、適当にあやして切ってしまった。

 

「あ、こがねん。電話長かったね。何かあったの?」

「いや、大したことじゃないよ。前に私たちが行ったあの楽器店が潰れるといった、それだけの話」

 

「えーっ! あそこなくなっちゃうの? そっかぁ……鵜沢さん可哀想だね」

「そうだね。でも楽器店なんてこの街いくらでもあるんだから、別のバイト先探せばいいだけだよ」

 

練習室にしろ、別のレンタルスタジオ借りればいいだけだしね。唯一無二の存在なんてそうそうあるわけもない。

EDOGAWAGAKKIがなくなっても代わりはいるもの。

 

思い入れ? しらんしらん。

 

鵜沢にとっては長年のバイト先で思い入れがあるのかもしれないが、俺にとっては近所のTSU⚪︎AYAが潰れるくらいのどうでもいいことだ。

 

「だいたい鵜沢さんは、普段からちょっと騒ぎすぎなんだよね。バイト先がなくなるくらいで「ギャー」なんて泣いちゃって。

 私、長いこと生きてるけどね、生まれてこのかた、あんな声張り上げたことないよ。

 そういうのは実家がなくなるとか学校がなくなるとか、それくらいのショッキングな出来事が起こった時くらいにしてほしいよね、全く」

 

「? あ、こがねん、知ってたんだ。花女なくなること」

 

「そうそう。例えば、花女がなくなるとかね。

 ……うん? え、香澄ちゃん。今なんて言ったの?」

 

「え、花女がなくなるってことだけど……」

 

そう言って香澄が指差した先には、掲示板。

そこには重要なご連絡として、1枚のプリントが貼り付けられていた。

 

【花咲川女子学園高校 廃校のお知らせ】

 

「ギャー!!!!!!!!!!!!!」

 


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