番取り! ~これはときめきエクスペリエンスですか? いいえゴールドエクスペリエンスです~   作:ふたやじまこなみ

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第4話「交流」

せっせと下駄箱までたどり着くと、そこは普通の光景だった。

騒然とした校門前の出来事もどこ吹く風といった感じで、当たり前に挨拶しあう生徒が行き交っている。

さすがにさっきの俺の声も、ここまでは響いてなかったようだな。

 

「待ってー! そこの可愛い女の子ーっ!! はぁっはぁっ!」

「あの……」

 

外履きをしまい、学校指定のスニーカーに履き替えていると、話しかけられた。

二人の女の子が立っている。もちろん香澄とたえだ。

香澄は肩で息をしているが、無事抜け出して追いかけてきてくれたみたいだな。

 

「さっきはありがとう! あの……円谷こがねちゃん、だよね?」

「!! なぜ私の名前を知っているのですかっ?」

「ええええええっ! だってあんなにおっきな声で自己紹介してたよね!!」

 

オーバーリアクションで驚く香澄。

想像通りの反応だなぁ。

ちょっと感動。

 

「そういえばそうだったね」

「それに確かこがねちゃんって、新入生代表で入学式のとき、挨拶してたよね!」

「してた。私も覚えてる」

 

ご存知でしたか。っていうかよく起きてたもんだ。

あんな眠くなるだけの入学式で、よく聞いてたなぁ。

俺は自分の挨拶が来るまで寝てた。

 

「すっごいキラキラした子だったねって、お母さんたちと話したんだぁ」

 

香澄が輝いた目でこっちを見てくる。

 

いやいや香澄の方が、よっぽどキラキラしているよ。鏡で見ても俺の目に⭐︎はない。

それしても、さすが原作キャラだ。キラキラしているのは、何も瞳だけではない。

こうして相対すると明らかになる、その他と違う輝くオーラ。星のカリスマ。気持ち背景まで照らし出していて、まるでSSRのようだ。

 

「でもさっきの大丈夫?」

 

たえが心配そうな表情を浮かべて、俺に問いかける。

 

「さっきの……って、校門前のやつかな?」

「うん。自己紹介したのーーひょっとして、私たちのため?」

「え、おたえ何のこと?」

 

香澄は頭に?マークを浮かべている。

 

うーん、やっぱ、たえにはわかるか。

 

俺だって何も好きで自分の名前をウグイス嬢したわけじゃない。

でも奴らのヘイトをこっちに向けたかったからね。

 

あれだけの自己紹介をキメれば、俺の自己紹介前にあった些細な問題ーー香澄とたえの名前はすっとんでいることだろう。

 

「気にしないで。私は、ああいうクz……あー、ああいう人達が嫌いなんだ。

 それに、自分のためでもあったから」

「自分のため……?」

「そう。ほらこれ」

 

そう言って俺は、自分の頭を指差した。

そこに飾られているのは、ヘアバンド。

 

「わぁっ! すっごい花! 可愛いーーっ!!」

「大きい」

 

香澄とたえが感嘆した。

そう、これはただのヘアバンドではなく花が満遍なく散りばめられたヘアバンドなのだ。

正直めちゃくちゃでかい。

念のため校門前で外しておいたものなのだが、騒動のあと、ちゃっかりと付け直したのだ。

 

「ひょっとしてそれが本体?」

「違うよ本体じゃないよ」

 

初春じゃないよ。

 

でも確かにこれ、正気を疑うデカさだからね……

 

「私もね、このアクセを学校でも付けたかったんだ。だからあれは、私のため」

 

やっぱりこれ付けてないと、落ち着かないからなぁ。

俺にとってこれはただのアクセサリではないから。どちらかというと()()()なんだ。

 

「それに、あれだけ騒ぎになれば、さすがに露骨に私を狙ったりはしないでしょ。

 だからダイジョーブダイジョーブ」

「そう、かな」

 

たえは不承不承ながら、納得した感じだ。

 

まぁ、絶対奴らはこれで収まらないけどね!

 

切れる以前に堪忍袋の緒があるか謎な人種だからなぁ。

ああいう短絡的で直情的クズの思考回路は、だいたい分かる。今まで散々見てきたから。

それでも、俺が狙われる分にはなんとでもなるからね。重要なのはタゲを俺に集中させることだ。

スワッシュ&プロボケーション! 気分はネトゲのタンク。俺のロールだ。

 

この後もまだまだ一悶着あるだろうけど、たえと香澄にとっては、一件落着ということにしてもらいたい。余計な心配をかけたくないからな。

 

「そうだ! そんなことより、せっかくこうして出会えたんだし、2人の名前を教えて欲しいな。

 あんなのじゃなくーーそう、友達として」

 

俺はまだ、この子たちの名前を聞いていない。

知ってるけど、まだ知らない。

 

だから俺は二人に、改めて向き直る。

 

「私は、円谷こがね」

「! うん! 私、戸山香澄!! 香澄って呼んでねーーこがねんっ!」

「私は花園たえ。よろしく」

 

香澄は感激を抑えきれずといったようで、あろうことか突然飛びかかって、頬を摺り寄せてきた!

 

あわわわわ。

 

「こがねん! こがねんって、いい匂いするね!!!」

 

なんというスキンシップ!!

男だったらこうはいかないよ!! TSしてよかった!! 

 

こうしてお互いのまともな自己紹介ができた。

それにしても俺のあだ名は、こがねん、か。

 

相変わらずやな! 香澄ぃ!!

 

 

お互いの好き嫌いとか適当なことを話しながら、クラス発表掲示板を経て、俺たち3人は1-Cにたどり着いた。

なんと3人ともが、同じクラスだった。

香澄とたえはもともと仲良しの関係だったから、一緒のクラスで喜びもひとしおのようだった。

 

そんな喜ぶ二人を間近で見られて、俺も嬉しい。

 

しかしーー香澄とたえ。()()()()仲良しか。

この調子で気になっていたことを聞いてみよう。

 

「そういえば、香澄ちゃんとたえちゃんはーー同じ小学校だったの?」

「うん! おたえとは同じとこだったんだ!

 私はずっとここが地元なんだけど5年生のとき、おたえが転校してきてね、席も隣同士になったから、すっごく仲良くなったの!

 ね、おたえ?」

「うん。香澄とは、それからずっと友達」

 

たえが手を挙げると、2人は「いぇ〜い」と手を合わせた。

仲よさそうで何よりです。

 

それにしても香澄が地元ってことは、ここはやっぱ聖地ーーというか現地なわけだよな。

ってことは、たえが転校してきたから、この二人はこの中学時点で友達になってるわけか。

つまり原作との乖離原因というかイレギュラーは、たえサイドに起きている可能性がある。

 

「へー、たえちゃんがここに引っ越してきたんだー。お父さんの仕事の関係とかかな?」

「うん……私のーーちょっと家の事情で」

 

なんか影のある表情をする、たえ。

 

……

 

家庭の事情とか、どう考えても芸能界の闇さんの影響やんけ!

何があったのか、私、気になります!

 

「あ、私もここに引っ越してきたんだ! お父さんが転勤することになってね!

 私の場合はちょうど、ここへの入学と同時だったんだけど」

「へー。こがねん引っ越してきたばっかなんだね。よぉっし! じゃあ、今度いろいろ案内してあげるね! 私に任せといてよっ!」

「それは楽しみですー」

 

しかし俺たちはまだまだ知り合ったばかり。

安易に踏み込むわけにもいかないので、胸を張る香澄にここは軽く流しておいた。

理由を詳しく聞くのは、もっと仲良くなってからだな。

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