タイトルは思いつきですので、後で変更すると思います。原作名の所って、RIDDLEJOKERの間空けた方が正しいのかな?
それではどうぞ!
Chapter.0ー1
薄く、明確としない世界――ああ、これは夢だ。
そう分かってしまうのだから不思議なものだ。何度も同じ経験をしているからか?
過去の夢。思い出したくないこと。混ざり合い、混濁した取り留めのない記憶の欠片たちが俺を苦しめる。
何故、助けられなかった?
何故戸惑ってしまった?
救えたはずなのに、力はあったはずなのに……。
どれだけ後悔しても取り戻せるはずはないのに。
何度も何度も振り払おうとしても頭に染みついてしまって離れてくれない。それらが時折こうして夢となり、姿を現わしてくる。
“忘れるな”と言わんばかりに。
今回はどの部分だ?
何を見せたいんだ?
もう俺は新しい道を進んでいるんだ、邪魔をしないでくれ。
確かに「お前ら」から学んだことは多い。だけど必要無いんだ。俺は強くなったんだ。あの頃より、ずっと、ずっと――。
†
「――大丈夫かい、少年」
過去。名も知らぬ男がそう問い掛けて来る。
少年は壁に背を預けて座り込んだまま。
男の質問に対して、どう答えたかなんて覚えてはいない。ただ、笑ってはいなかっただろう。それは確かだ。
周囲は硝煙の匂いと“鉄のような”匂いが漂う。
鼻につく匂いのはずが、慣れてしまえば何も感じない。
それ程までに「ここ」での生活が濃く残るから。
一歩、また一歩。見知らぬ男は歩み寄って来る。構えてはいないが、その手には黒く光る金属質の物体。見たくもない物、拳銃。
彼の他にも数人、黒い服を着た奴らがいるが、後方に待機しているだけだった。多分だが、この男が頭なのだろう。
「(なら、都合がいい)」
少年の手が素早く動く。立ち上がると同時に何かがその手から放たれた。
暗い場所で微かな光を反射し、飛来する“それ”は男の手に握られていた拳銃を勢いよく弾き飛ばす。
「おおっと!? ――それが君の“能力”か、びっくりしたぞ」
弾かれた拳銃は石床の道を転がっていく。男は手を押さえながら数歩下がった。
その反応に対して、後方の男たちは銃を構える。
「待て待てっ! 絶対に撃つなよ。威嚇だとしても、撃てば交渉は出来なくなってしまう」
男は、痛まない方の手を後方に見えるよう翳し、臨戦体制に入った男たちに制止をかけた。
今……交渉と言ったか?
攻撃してくる気配がない。……だが、武装している者の前で、油断や隙は厳禁。
ジリジリと後方に下がる。最悪の場合、逃走も視野に入れた行動。その意図を読んでか男が動く。両手を挙げながら。
「ああ悪いな、こんな物騒なもん持ってちゃ、警戒されても仕方がないよな。この辺りはあまり治安が良くないから護身用に持っていただけなんだ、信じてくれ」
敵ではない。そう言いたい、示したい。あの行動はそれを意味するものだということは知っている。
―――それは罠でされなければ、の話だがな。
「君に話があってここまで探しに来たんだ。どうかな、僕の話を聞いて貰えないだろうか? もし信用出来ないなら“これ”を使うといい」
そう言って男は腰から予備で携帯していたと思われる拳銃を少年に向かい投げる。カラカラと音を立てて、少年の足下まで届いた。
「……。俺は人を信じることができない。できなくなってしまった……」
それを少年が手に取ることはなかった。
少年は知っているからだ。この武器は軽いのにとても重いということを。
簡単に命を奪えてしまう。容易に手にしてはいけない物だということを。
「大丈夫だ。だから俺たちが迎えに来たんだからな」
その姿を見て、安堵の笑みを浮かべる男。荒み、傷ついた少年の心に優しく触れるように言葉を掛けていた。
だが……少年は理解出来なかった。疑いの目で男を睨む。
「……お前の言っている意味が分からない……」
虚無感が嫌というほど伝わってくる瞳が男へと向けられる。常人ならこの時点で彼から目を背けてしまうことだろう。
関わりたくない、関わってはいけないと。
一体何がこの子をここまで追い詰めてしまったのか?
それはこの子にしかもう分からないこと。
俺たち――男の連中が知っているのは彼が今に至った経緯だけだ。
でも、助けなくては。
この子はもう「ここ」にいてはならない。
「なら、単刀直入に言うよ。君に俺たちの仲間になって貰いたいんだ」
手を差し伸べられた。
ゆっくりと、静かに。
………。
……。
…。
男の手を見ながら、少年は逡巡する。
結局その手を取ったのか? まぁ、結果は言わなくても分かるか。今、こうして夢を見ているんだからな。
夢の世界はこの場面を最後にして次第に霞んでいく。
伸ばした自分の腕を視界に捉えたのが最後だった。
†
蒸し暑い熱帯夜。ただ今、夏真っ盛り。
宵の帳が下り、闇の色が深くなる。人々が眠りについた静かな刻。
夢の途切れ。朧気な意識の中で目が覚めた。
いや、こんな夜だ。寝苦しくて起きてしまったのかも知れないな。
「ああ……。まだこんな時間、か……」
寝癖のついた髪をガシガシ掻きながら、枕元に投げていた携帯を手に取り、電源を付ける。
ロック画面に映し出された時刻を眩しさで目を細めながらも確認。
日付が変わってまだ少し。
二度寝しても平気な時間だ。
大きく欠伸をした後、枕に顔を埋めて、再び眠りの世界へ誘われようか――。
携帯を再び枕元に置く。隣に並んでいた別の通信端末に当たり、カチャリと音がなった。
「(あんな夢を見た後は、暫く思い出さないから少しは安心かな……)」
そんなことを思いながらに、意識が沈むあと少し。
枕元に置いていた別の方が微震と着信を知らせる音を鳴らした。
面倒くさそうに手探りで腕を伸ばし、顔をそのままに通信を開く。
受話口を耳に当て、寝ぼけた調子の声で答える。
『……ふぁい。こちら……すぅすぅ……』
『あ、こんな時間にごめんね! ――って、ちゃんと起きてよレヴィ0!』
寝起きで回らない頭に少女の声は良く響いた。ああ、この声は――。
『はいはい、起きました、はい。可愛い可愛いレヴィ9』
凄く聞き覚えのある声。可愛い妹の声だ。暮らしは別々だけど。
そして「レヴィ」とコードネームの方で俺を呼ぶということは……。
『そういう冗談今はいいから! 悪いけど、すぐ動ける!?』
……やはり“仕事”か。
昨日出たから今日は無いと思っていたけど、緊急で舞い込んだのか? でも、そこまで大仕事でなければ、レヴィ9とレヴィ6で難なくこなせるはずだが――。
『……何があった?』
『今回の任務“外”からの情報だったから、少し錯誤があったみたいで……』
焦りの色を見せる声にかなり不味い状況なのだろう。
珍しいな、あの二人が。
まぁ、管轄外からの情報なら不備も多々あることは仕方ない。不確定要素なんて当たり前。
だから、本当はそういった任務を妹に渡したくない。
“上”は何をやっている、それにレヴィ6は。
『分かった、状況は移動しながら確認する。俺の端末にアイツの現在地と任務情報を送ってくれ。手短でいいからな? 時間が惜しい』
『う、うん。すぐ送るね』
レヴィ9に繋がる受話口から何かを操作しているような擦れる音が微かに聞こえる。
そして数秒後、手に持つ端末が震えた。
一度耳元から離し、画面を確認する。
赤い点が示した場所、ここから数十キロの地点。
『確認した。三分で現場に“直接”乗り込む。レヴィ6に俺の到着と同時に退避を指示しておいてくれ。短時間で対処する』
『レヴィ9、了解。警察ももう動いてるから顔を見られないようにね?』
『分かってる。ああ、それとだな……特別報酬として“あれ”お願いな。あれが俺の原動力だからさ』
『それは……うん、分かった。ホント、特別だから、ね?』
照れくさそうに返事をするレヴィ9につい笑みを零してしまった。携帯越しだから表情が向こうに見えることはないのだけれどね。
笑ったら眠気も飛んだ。
「可愛いやつだな」と言い残して通話を切る。
最後にレヴィ9から何か言われたような気もするが……まぁいいか。その辺は任務の救援を済ませてから。
クローゼットを開き、隠し板を捲ると、黒い服が掛けられていた。
寝間着からこの“仕事着”に着替え――いや、これ暑いからいいや。
「夜だし、こっちでいいか」
隣にあった簡単な軽装を選択。
レヴィ9に怒られそうだけど。
顔を隠すのはサングラスでいいか。
専用の武器を腰に装備し、端末を仕舞う。
窓を開け、枠に足を掛けると、そのまま蹴り出し夜の世界へと飛び出して行った。
ドラクリとサノバで悩みましたが、新作が出ましたし、せっかくなので筆をとらせて頂きました。
評価、感想貰えると嬉しいです、はい。