シスコンな兄は過保護なのです。   作:奈々歌

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遅くなりました(^^;)
六月の半ばまでは本当に忙しくて、更新が遅くなってしまいそうです……。最近は少し前の〇ロゲーソングに元気を貰っております(笑

今回は次話で暁君視点に移るので、区切りよく短めになってしまいました。後、二話くらいでこの章は終われるかな?

それでは、どうぞ!


Chapter.0ー10

 場所は移り、橘花学園が遠目で視認可能な近場のビル、そこの屋上。空調設備や他の設備が大半の幅を占める場所。よくドラマやアニメで見る屋上とは訳が違う。人の出入りなどまずない。

 

 そこそこに気持ちがいい夜風へ当たりながら、伊吹は適当に数本持ってきた非常食を囓って、暗視双眼鏡で偵察中。耳につけた通信機に、潜入している暁たちから開始の合図があるまでここで待機しているところ。

 

 ホテルを出てから数時間が経過していた、夜の暗さも深みを増す。時間も時間、学園の敷地内には、警備員の懐中電灯が散見しているのが遠くからでも確認できた。

 

『こちらレヴィ6、今レヴィ9と寮を出た。迷彩効果で付近に潜伏中。こちらの準備は完了、レヴィ0の到着次第、作戦を開始する』

 

『ほい、レヴィ0了解。……なぁ、レヴィ9の……その、機嫌は?』

 

『……』

 

 無言。それだけで大方は把握。

 

『……うん、分かった。今から移動する。後でまた連絡するよ』

 

『……ああ』

 

 通信を切る。迷彩効果を再起動。

 任務に集中、集中、集中、うん……。表には出さず、胸中で呟き自分に言い聞かせて。

 

 屋上から下りる。体が浮き上がる。まるで風に乗るかのように、夜空へ向かって行った。

 

 

 

 †

 

 

 

 人は見慣れてしまった景色を注意深く見入ることはなくなっていくもの。こんなにも綺麗な夜空を見上げている者は、はたしてどれ程いるのだろうか。

 

 街の上に広がる暗闇の世界を歪めながら一つの点が移動していく。微かな変化だ、よくよくと見ないと分からないほどの些細なもの。

 

 特班の制服、メモリー繊維が機能させる迷彩能力。自身に当たる周囲の光を屈折させ、背後へと流すことにより、まるで体が透過しているような状態にすることが、記憶させているアストラル能力の効果。

 

 迷彩能力とはいうものの、流石に完全とまではいかないのだが、殆ど肉眼での判別は不可能な領域。夜の中、暗闇となると尚更に。

 背景と調和した姿は視覚系統のアストラル使いや特殊な器械を使用しない限り視認することは困難。

 

 一方、移動方法である飛行を可能にしているのは伊吹自身のアストラル能力、その応用。学園の囲い塀を難なくと越えていく、警報機は反応しない。鳴ることはなかった。

 遙か上空から降り立つ人影は、橘花学園の敷地が一望出来る高所へと。警報装置が機能しない高度、範囲外からの飛来。迷彩効果も相まってか容易に侵入が出来た。

 

 本当に大丈夫なのかな、ここの警備……だから巨乳ファンの男にも簡単に入られてしまうのでは? ……なんてな。アストラル使いが特殊なだけか。

 事前に予定し、二人に伝えていた地点。周囲を一度見回し、辺りに人の気配がないことを確認すると、耳に手を当てて通信を繋ぐ。

 

『こちらレヴィ0。予定ポイントに到着、行動を開始するよ』

 

『レヴィ6、了解。作戦を開始する。現在地をレヴィ9がそっちに送るから確認してくれ』

 

 通信端末、タブレットの画面を開く。送られてきたデータを読み込むと、敷地内の見取り図にレヴィ6とレヴィ9の現在地が赤い点で表示される。

 

「確認した」と答えると、二つの点は徐々に動き出す。少し動いては止まり、また少し動いては止まるを数度繰り返していく。

 敷地内に隠すように設置された警報装置を避けていく動作だ。場所によってはレヴィ9の手助けを借り、レヴィ6の能力で通過したりと。

 

 やがて二つの点は一つの建物の前で止まる。そこは橘花学園の校舎入り口。

 二人がすぐに中へと入らず待機しているのは、レヴィ9が内部の警備装置を一時的に無効化しているからだろう。“仕込み”は済ませているとは言っていたから、時間は掛からないはず。

 

 今回の作戦での役割。レヴィ6とレヴィ9は校舎内に忍び込み、目的の部屋に例のシートを使用して入る。そこで、特班が求めている情報を入手すること。

 

 レヴィ0はそのサポート。周囲の警戒、もしもの場合、二人への脅威を退ける役目。

 それぞれが持つ能力を生かした配置、適材適所っていうやつだな。

 

 レヴィ9が“仕込み”を起こしている間、レヴィ0も動く。

 小型カメラを数台取り出すと、その全てを宙に放る。意識を集中させると、球体型をしたカメラは落下することなく、ゆらゆらとその場で漂う。

 

 タブレットで設定画面を開くと、反応したカメラが起動していく。それぞれのカメラが捉えている映像が画面に次々と表示された。

 まぁ、レンズが全部こっち向いているから俺の姿ばっかり映っているんだけど。赤外線モード、暗視モードの切り替えも良好、問題なし。――ではでは、いきますか。

 

 動作確認を終えた伊吹はカメラに向けていた意識を強める。すると、静かに動き出し、高速で散り散りに飛んでいく。

 この場所から死角となっている場所、二人の撤収ルート。校舎の周り、奔放なのが一台。所定の位置に着き、映像が送られてくる。人影は見えない。今の所は大丈夫かな。

 こちらの準備は完了した。さて、二人はどうだろうか? 

 

 画面を戻す、レヴィ6とレヴィ9に動きがあったよう。建物内に移動していた。

 

『レヴィ6、レヴィ9、共に侵入成功。校舎内に人の気配はなし。これより目標へ向かう』

 

『了解。こっちも特に異常はないよ、接近する人影も今の所はない。とはいえ、あまり時間は掛けられないからな、レヴィ6の迅速な任務遂行を推奨しまーす』

 

『……レヴィ9は?』

 

『レヴィ9は心配ないし、優秀だし、可愛いし、可愛いし、可愛いし?』

 

『……。通信終了』

 

 通信が切れる最後、小さく溜息が聞こえたような気もしたが、そのまま受け流す。

 それに、時間が少ないのも事実。警報装置を無力化しておけるのも有限だ。特にここの施設のような厳重なものとなると尚更。

 

 二人の位置を見ながら、カメラの映像にも目を配らせる。順調にレヴィ6たちは建物内を移動している。昼間の内に最短経路は調べていたのだろう。

 警報装置、内部の監視カメラ等は無効化されている、足止めをくらうこともないしな。

 

「(この調子なら一分も掛からないか――うん?)」

 

 こちらのカメラに人影が映り込んだ。二つの影。

 

「(警備員の服装じゃない……学園の関係者がこんな時間に?)」

 

 私服を着た大人の女性に、アイドルが着ていそうな衣装を身に纏う少女。

 女性の方は知らないが、少女の方はどこかで見たことがある顔だった。

 

「(うーん……。ああ、確か――)」

 

 電車の中で見た映像。あの時と服装も同じ。映像に映っていた子でまず間違いないだろう。そうなるとだ、この子が話に出ていた狙われた子なのか。

 

 レヴィ6、暁が任務開始前に言っていたことを思い出す。暁と七海が編入して間もない頃、ファンを名乗る男が学園の敷地内に侵入した事件。

 

 念のため、カメラの一台をこの少女が映るように意識する。残りの台数でも自身の役割に支障は出ない。今はこの少女が妙に気に掛かった、ただの勘なんだけども。

 

 だが、特にこれといった事もなく、静かに時間は過ぎていく。少女もあのまま寮に帰るところみたいだった。

 先生は付き添いってところかな。あんな出来事があった後だ、一人で帰すことに不安があるのは当たり前。時間も時間だしな。

 

 念のためにと注意はしていたが、杞憂だったか。他にも特に変化はない。この二人以降は、相変わらず人影もないし、校舎に近づく気配もない。

 

 やはり、無意識に外へ警戒が向いているのかな?

 まぁ、このまま何事も事が運べば、こちらとしては有り難い。

 

『目的の部屋に侵入成功、これから情報の入手に移る』

 

 レヴィ6から通信が入る。あちらも問題はなかったようだった。

 




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