シスコンな兄は過保護なのです。   作:奈々歌

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こにゃにゃちわ~(千咲ちゃん風)

今回は短めになってしまいました……。
本来書いていた文を二話に分けてしまったせいですね、はい。その代わり次回の更新は早めに出来ると思いますので……。

まぁ届いたフ。〇神をプレイしたいからなんですけどね^^;

ちゃんとナツメちゃんと、希ちゃんのイラスト色紙届きました。飾りました。最高でした。
アクリルスタンド? 高かった。

それでは、どうぞ!


Chapter.1-6

 消灯時間もとうに過ぎた夜中。七海と話した後、入浴を済ませて現在。照明を消した部屋の中には、窓から月明かりが僅かに入り込んでくるだけ。

 青白い光はベッドに座る伊吹の体を仄かに照らす。ただ静かに伊吹は、特班製の特注タブレットに連絡が来るのを待っていた。

 

「(こんな夜には色々なことを思い出すなぁ……)」

 

 ふと。窓越しに夜空を見上げながらそんなことを想う。過去、俺がまだ特班に所属する前の思い出。楽しかったこと。辛かったこと。今の親父に出会ったあの日までのことを。

 

「……“あの日”もこんな風に綺麗な夜だったよな、兄さん……」

 

 一人、静かにそう呟く。他に誰もいないはずの部屋で、まるで誰かがいるように。問い掛けるように。語りかけるように。

 

「あれから俺も少しくらいは、兄さんみたいに強くなれたのかなぁ……。自分じゃよく分からないんだよ。アイツらのことも結局最後は守れなくてさ……」

 

 こうして一人だけ新しい家族と暮らしている。自分だけが、幸せに暮らしている。きっと兄さんはそれでいいんだと笑ってくれるだろうけど、俺は―――。

 視線を落とした顔に影が差す。タブレットの黒い画面に自分が映った。凄く情けない顔。こんなのを見られたら、怒られそうだな。そう苦笑する。

 

 そんな時、画面がついた。着信を知らせるよう画面にコードが表示される。一瞬、目を細めたが、それで我に返っていた。

 編入してからの初連絡。全然なかったせいか、妙な懐かしさを感じていた。表示されているコードは親父……室長のものだ。

 

 画面の通話ボタンに触れると、ほぼ同時に暁と七海にも回線が繋がれていた。今回はビデオ通話。それぞれの顔が小さく画面端に映っている。

 

「……こちらレヴィ0」

 

『こちらレヴィ6/レヴィ9』

 

『よし、全員揃ったな。』

 

 室長が確認すると、画面中心に前回の任務で入手したAEMSの情報が現れた。二人の男の顔写真。それと、保有しているアストラル能力についてだ。

 

『入手してもらったデータと、現段階までの調査によって、偽札事件の犯人を二人まで絞ることが出来た。認識阻害、もしくは近しい能力を持った人物。それがこの二人だ』

 

「一人は学生……橘花学院の生徒。もう一人は社会人……か」

 

 俺はあの時、外で待機していたから直接データを見ていない。実際に行動していた七海と暁は見覚えがあるみたいだった。

 管英人。小野清国。この二人。管英人は、橘花学院の一年C組。小野清国はこの都市で働いている。

 

『小野清国を調査した所、彼にはアリバイがあった。事件当日は職場で働いていたと確認が取れている。今回の件に関与している可能性はほぼ無いだろう』

 

『となると、残るもう1人が……』

 

『ああ。偽札を持っていた連中にこの顔写真を見せたところ反応があった。それに管英人の姿が現場付近の防犯カメラ数台に映っているのも確認できている』

 

 反応があった……と言っても、どこで見たのかまでは覚えておらず、どこかで見たことはあるといった曖昧なものだったらしい。

 これもアストラル能力の力、認識阻害によるものと判断された。万が一にも偽札がバレた場合、自分と偽札のことが繋がらないようにしたのだろう。

 

「学院の生徒なら明日にでも直接確認してみるさ、どんなやつか見れば大体分かるし」

 

『同じ一学年だし、わたしが見てこようか?』

 

「いや、これは俺が行く。念の為、本当にアストラル使いか確認したいし。それにレヴィ9だと、もし変に思われた時に誤魔化すの下手だろ?」

 

『うぅ、そ、それを言われると……』

 

『……なら、レヴィ0で決まりだな』

 

 現場の三人で話がまとまると、室長が口を開く。

 

『では、明日のこの時間。その情報を踏まえた上で、もう一度連絡をとることとする。以上、通信は終了だ。何か問題が発生したらすぐに連絡するように』

 

「りょー」

 

『了解/了解』

 

 

 

 †

 

 

 

 早朝。日の昇り始め。程よい暑さの時間帯。

 朝食前に伊吹はジャージに身を包んで、学院の敷地内の整備された道を走っていた。これは日課の体づくり。体が資本の仕事だから欠かせない大事なこと。

 

 家の周辺で走っていた頃とは違い、学院の敷地内では、同じ道を往復して距離を稼ぐ方法をするしかない。けれど、これはこれで好都合だったりもする。

 編入する前、事前に七海から送られてきた情報で、ある程度の警備システム配置は把握していた。だが、実際に全てを見て確認した訳ではない。

 

 今後の為にも、詳細に調べておきたいところ。でも、歩きながらきょろきょろとしていれば、変に怪しまれる可能性も考えられる……。

 そこでだ。ジャージ姿でランニングしながらとなれば、カメラに映ろうが怪しまれることはない。まさに一石二鳥というべきか……。

 

 ということを踏まえて、一定のテンポで走りながら記憶しているカメラの位置やセンサーの配置を順々に確認していく。

 あからさまに設置された監視カメラもあれば、巧妙に隠された暗視カメラや赤外線センサーもあった。改めて見ると中々に考えられた警備システムだなと感心する。

 

 途中、茂みの向こうに広がる芝生のスペースから、聞き覚えのある少女の声が聞こえた気がしたが、今はこちらに集中したいので聞き流しておいた。

 

 ………。

 ……。

 …。

 

 そんなこんなで、敷地内をほぼ一周した後、寮の前まで戻って来る。

 重点的に調べたかった部分の確認は出来たし、残りは建物内か。その辺りは休み時間にでも調査をしようかな……。

 

 携帯で時間をチェックすると、朝の点呼まで一時間を切っていた。汗を流して、学院に行く支度もしなければ。入念に調べすぎたか……意外と時間が掛かってしまったな。

 タオルで汗を拭きながら、玄関からロビーへと向かう。自室に戻る為、階段に差し掛かった曲がり角で、見知った少女とばったり出会った。

 

「あ、ごめんなさ……って、なんだ、伊吹君か」

 

「おおっと、三司さんじゃん。こんな時間にどうかしたんか?」

 

 人の顔を見て、即効でキャラを切り替える三司さん。まさに早業。けれど、伊吹も負けてはいない。目の前に現れた固い偽乳に衝突するという定番の展開を回避していた。

 

「少し用事があってね、もう学院に行かなきゃいけないの。朝は弱いんだからほんと勘弁してほしいんだけど……。ああ、マジで最悪……」

 

「まぁ、なんというか……お疲れ様です?」

 

「チッ、他人事だと思って……」

 

 機嫌が悪いのか、単に素なのか。軽い舌打ちに加えて睨まれる。本当に学院や他の皆の前でキャラ作ってる時とは正反対だよなぁ……。

 伊吹がそんなことを密かに考えていると、よほど時間がないのか三司さんは腕時計に視線を移した後、少し焦った様子で横を通って行く。

 

 人気者になると大変だな、とすれ違うときに声を掛けた時、そのまま学院に向かうと思われた足を止めていた。そして思い出したかのように三司さんがこちらへ振り返る。

 

「……ああ、そうだ。教室で言おうと思ってたんだけど、丁度良かった。今日の放課後に学生会室に来てくれる? この前の件で話があるから」

 

「放課後か……分かった」

 

「伊吹君の方も私に聞きたいことがあるんでしょ? ちゃんと来るようにね」

 

「そん時はお土産でも持って行くよ。ほら、時間やばいんだろ? 行ってらっしゃい」

 

 言われなくても、と嫌でも伝わってくるような顔を見せながら、玄関のドアを開けて三司さんは皆よりも先に学院へと登校して行った。

 

「さてさて、俺も支度しないとな……」

 

 

 

 †

 

 

 

 午前の授業が終わった昼休み。昨夜の報告通り、例の生徒を探りに行くか。休み時間の内にやっておきたいこともあるし。放課後に備えてね。

 

「ねぇ伊吹、暁と食堂に行くけど一緒にどうかな?」

 

 授業で使用した教科書を仕舞っていると、恭平がやってきた。隣には暁の姿が。俺のこれからの行動を知っている暁には、こっそりとアイコンタクトする。

 

「わりぃな、今日は用事があるから購買で済ませるよ。本当は食堂に行ってみたかったんだが……ついでになんか買ってこようか? もちろん代金は貰うけどな」

 

「そっか、なら仕方ないか。じゃあさ、夜食用のパン買うの頼んでもいいかな?」

 

 そう言うと、恭平は財布から五千円札を一枚取り出して渡してくる。てっきり小銭だと思っていたが、一体何個買うつもりなのか……。

 

「それで買えるだけ宜しくね。種類は伊吹のチョイスに任せるよ」

 

「……マジで言ってる?」

 

「恭平はめちゃくちゃ食べるんだよ、伊吹兄さん。食堂でも特盛りでとんかつ定食とカツ丼食べてるし……俺の何倍食べてるんだか」

 

「あれか、大食い選手権みたいな?」

 

「別に成長期の男ならあれくらい食べれて普通でしょ? 暁が小食なだけだよ」

 

 いや、暁とは家族だし、数え切れないほど一緒にご飯食べてるが、一般的な量だったと思うぞ? というか、それだと俺も七海も小食ってことになるんですが……。

 

「女の子みたいな華奢な体型しといて……恐るべし」

 

「伊吹、いま何か言った?」

 

「おおっと、もう俺行かないと。誘ってくれてありがとなっ!」

 

 問い詰められる前に、そそくさと退散する伊吹。恭平と暁に軽く手を振りながら、教室を後にしていた。後ろから恭平の声が聞こえた気がしたが、気にしない。気にしてはいけない。

 

 

 

 †

 

 

 

 一年生の教室が並ぶ廊下。件の人物がいるクラスはC組だったはず……。表札を確認しながら歩いていくと、目的の教室に難なく辿り着いた。

 早速と、廊下からなるべく怪しまれないように教室内を覗き込む伊吹。すると、教室の端の方にAEMSで確認した顔写真と一致する生徒が見えた。

 

「(アイツか……)」

 

 大人しいというか……物静かという印象を受ける男子生徒だった。昼休みに盛り上がっている他の生徒とは違い、窓際の席で本を静かに読んでいる。

 似たような顔の生徒もいないし、アストラル能力特有の“匂い”も見えていた。あの生徒で間違いないだろう。それにしても……。

 

 見る限りでは、自身の能力を悪用するタイプには見えない。言っちゃ悪いが、気弱そうだしな。自分から進んで能力を使おうとするタイプでもない。

 寧ろ問題を起こしてしまえば、暫く一人で後悔していそうな感じだ。

 

 そうなると、偽札を持っていたあいつらに絡まれて、その場しのぎだけで能力を使用しただけだろうな。そうすれば、何もされることもなく解放されるから。

 だけど、今回はそれがいけなかった。別に能力を使って、自分の身を守ることを悪いとは言わない。俺だって昔から散々してきたことだから。

 

 でも、使い方が悪かった。ただそれだけのこと。相応の対処はさせてもらう。

 

「……さてと、あとは報告して判断を待つか」

 

 ここに来た目的も終わったし、上級生が一人で長居していても不自然に思われるだろうから帰るか。そう思って踵を返したところ、見慣れた少女が目の前にいた。

 

「こんにちは、お兄さんっ。こんな所で何してるんですか?」

 

 一学年の知り合いは限られている。これほど気さくな調子に声を掛けてくるのは壬生さんしかいない。背丈の関係上、下から覗かれる形になってはいるけれど。

 

「こんにちは、壬生さん。いやぁ、ちょっと七海の様子をね。人見知りの七海が上手く馴染めているかなってさ。兄としては心配なんだよ」

 

「相変わらずの過保護っぷりですねぇ。でもでも、七海ちゃんに会いに来たなら教室が違いますよ? 七海ちゃんの教室はここの隣です。私も同じクラスですから」

 

「ああ、そうだったのか。七海から教室どこか教えてもらってなくてさ……」

 

「私も教室に戻るところでしたし、折角なので一緒に様子を見に行きましょうか!」

 

「ありがと、助かるよ」

 

 笑顔で前を歩き出す壬生さんの後ろをついていく。隣の教室は廊下からでも声が聞こえるくらいで、賑やかそうだった。

 まぁ、壬生さんのような子がいるクラスだしな、と思いつつ、教室のドアまで来ると、壬生さんと教室を覗き込む。そしてこっそりと七海の様子を見てみることに。

 

「壬生さんから見て、七海はクラスに馴染めてると思う?」

 

「そうですねぇ……。大丈夫だと思いますよ。七海ちゃん、まだ皆と話す時は緊張しているみたいですけど、クラスの皆には人気者ですからね」

 

「まぁ、可愛いしな」

 

「そうですねぇ~、特に男子からは人気ですよ? 皆はっきりと口にはしませんけど、行動見てれば分かっちゃいますし……あ、あれとかですね」

 

 見てて下さいと促され、向けた視線の先。授業で先生が使用したホワイトボードの字を消そうとして、手を伸ばしている七海の姿が見えた。

 日直が何かだろうか?だが、身長が低くて上の部分に届かない様子。

 

 そんな時、1人の男子生徒が近づいてくる。その男子は七海に声を掛けると、七海から白板消しを受け取っていた。申し訳なさそうにしている七海がとても可愛い。

 その後、自分の席に戻った七海を今度は女子の集団が囲む。何の話題で盛り上がってるのかは分からないが、楽しそうだ。

 

 七海はあたふたしてるけども、嫌がってはいないみたい。壬生さんの言う通り、大丈夫そう。そういえば、七海の学校生活を見るのも久しぶりだなぁ。

 

「あれは?」

 

「昨日、お兄さんの教室まで行ったじゃないですか。あの後、調理実習の授業だったんですよ。それで七海ちゃんが手慣れた感じでめちゃくちゃ美味しいご飯作るから女子からの人気もでまして……」

 

「ほうほう。なんやかんや、七海も上手くやってるんだな~」

 

 うんうん、と納得していると、壬生さんが不思議そうな顔をしていた。また何か変なこと言っていたか? 結局、前の時も何が不味かったのか分かってないし……。

 

「ど、どうかした?」

 

「いや、お兄さんのことですから、俺の可愛い妹がぁ~とか嫉妬するものかと……」

 

「妹の成長を邪魔することはしないさ。いずれ七海だって彼氏とかできて、結婚して、別々に暮らすように……なるんだろうし、いつまでも過保護ではいられないよ」

 

「ほぇ~、ちょっと意外でした」

 

「な、七海に彼氏、彼氏かぁ……。そして結婚……うぅ……泣きそう……」

 

「あはは、やっぱりお兄さんはお兄さんですね……」

 

 口元を押さえ、目を俯ける伊吹。感心していたのもあるのか、結局は分かりきっていた反応が返ってきたせいで、苦笑いを浮かべる壬生さん。

 その後、もう少しだけクラスメイトと雑談している七海を見届けていたが、特に問題はないみたい。あんまり長く壬生さんを付き合わせるのも悪いし、頃合いかな。

 

「……よし、じゃあそろそろ戻ろうかな」

 

「えっ、七海ちゃんに会っていかないんですか?」

 

「様子をこっそり見に来ただけだからな。上手く馴染めているならそれでいいさ。色々と教えてくれてありがとね、壬生さん」

 

「どういたしましてです。また遊びに来て下さいね」

 

 笑顔を向けてくれる壬生さんに微笑み返すと、今度こそ戻ることに。帰り際、携帯で時間を確認すると、昼休みの時間は半分を切っていた。

 

 まだ購買にも寄ってないし、そもそも昼飯を食べてない。恭平に頼まれてたけど、そんなにパン余ってるかなぁ。俺の分までなくなりそう。

 放課後用のものも残ってると助かるけど、人気高そうだからなぁ。そんときはその時で考えるか。とにかく寄ってみよう……。

 




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多機能フォームを上手く扱えない自分が悲しくなってくる……。

フ。〇神の短編、coming soon……。
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