シスコンな兄は過保護なのです。   作:奈々歌

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体調が安定しない。
その割には世の中連休前の為、忙しい。

そして二次元に毎日元気を貰う生活、完璧だ(・∀・)

お気に入りが増えてきて嬉しいです。今週も先週のように何話か更新したかったのですが、次はちょっと千恋の方を先に更新しますね(笑

それでは、どうぞ!


Chapter.0ー8

『橘花学園前、橘花学園前。お忘れ物のありませんようお気を付けて下さい――』

 

 揺られる電車内に流れるアナウンス。

 車窓から街の景色を眺めていたらいつの間にか到着していたらしい。

 空いていた車内では、ゆったりと座って過ごすことが出来た。

 

 席を立ち、足元に置いていた鞄を持ち直す。

 徐々に速度が落ちていき、停まった反動で体が少し流れる。空気の抜ける音、開かれた扉から駅へと降りた。

 

 …。

 ……。

 ………。

 

 学園前と言っても歩くには歩く、ほんの数分だがな。

 次第に見えてくる綺麗な建物――あれが橘花学園か……。うーん、校門らしき所にそう書いてあるのだから合っているのだろう。

 

 きっと疑ってしまったのは“あれ”のせいだ、門の前に立つ数人の守衛と思われる大人たち。

 紹介映像でも映されていた研究施設がこの学院に併設されている為か、警備が敷かれているらしいな、それもかなり厳重に。

 敷地内を囲いの外から覗いただけでも、数台の監視カメラや感知センサー発生装置の類いが隠されるように設置されている。

 

 普通ならここまで厳重に守られていることはまずないと思う。それほどまでに、アストラルに関しての研究は特別だということだ。

 

「アストラル技術は便利、か……差違を認めずにな」

 

 伊吹は門の前を通る。

 その時、守衛さん方が無言でこちらを監視するように見てくるが、平然と受け流して歩いていく。

 親父の話だと昨日の内に、この素敵な“プレゼント”を渡す相手は既に潜入済み。

 先ほど密かに連絡も取った、特班で使用される特殊な通信を使用して。

 

 俺はまだここの生徒ではないから、これより先に入ることは出来ない。渡すとなるなら学外で接触するしか方法がない。それも怪しまれずにな……そこで、だ。

 

 この学院の近くにはコンビニが一軒ある――そう情報を貰った。俺は今そこに向かっているのだ。コンビニが渡す為の待ち合わせ場所。

 道を渡って反対側から回るように通れば、別に学院の前、守衛の前を通る必要はない。だが、態々こうして学院の前を通ったのには、理由が……というほど大層なものではないか。単に潜入場所を一目見ておきたかったからっていうだけのこと。

 

「(この程度の警備なら、七海の技術で無力化は余裕そうだな。暁も問題ないだろう)」

 

 校門を過ぎた後も、流し目で学院の敷地内を見ていながらそんなことを思う。

 暁は俺と同じだが、七海は違う。現場で仕事をする実働班ではない。基本的には後方で手助けを行うサポート要員。

 そして、七海が得意としているものの一つがああいった警備システムの無力化に制御の奪取。潜入時に偽の映像を流して道を確保したり、逆に映像を見ることも出来る。

 

 これは決して本人が望んで身に付けた能力ではない。それだけに、家族、そして兄としては使う必要のない平穏な生活をさせて上げたかったんだけど……。

 

 学院の側から離れてすぐのこと、コンビニが見えてきた。ちらほらと学生の姿がある。

 俺もそうだったが、生徒は下校していても可笑しくない時間帯だ、当たり前と言えばそうなのかも知れない。

 

 おそらくは寮に持ち込み可能な飲食物、お菓子や飲み物を買い込みに来ているのだろう。暁もその体で外出届けを出すって言ってたからな。

 

 まだ暁の姿は見えないが、先に店の中に入っていく。買う物は今晩の夕飯。

 学院にまだ入れない以上、寮にも入れないということ。つまりはその辺のホテルか何処かで一晩過ごせっていうことが必然となる。

 親父、覚えていろよ……。

 

 コンビニ弁当とお茶にアイス、雑誌も一つ購入。ビニール袋を持って店から出る。

 袋からアイスだけを取り出し、人を待ちながら黙々と食べていた。

 

「…………。ん? お、来た来た」

 

 通って来た道、学院からの道を歩いてくる人物が一人。

 目つきが悪くて、前髪も長い。いかにも無愛想な雰囲気の男の子。あれが我が弟、在原暁。ちゃんと学院に馴染めているのか不安になってくるんだが――まず置いておこう。

 

 一瞥すると、あちらもこちらに気が付いたらしい。

 人気がなければ、声を掛けて直接渡したいところなのだが、お生憎に時間帯が時間帯だ。他生徒の目や帰宅途中の大人の目もある。

 目の前を通る際、軽く目配せをすると、暁はコンビニへ入り適当に何か買い始めていた。

 

 その様子を確認しながら伊吹は今の内に準備する。暁はパンやスナック菓子と数本の飲料水を買うと数分で出てきた。

 お互いに他人の振り、顔を合わせる素振りさえ見せない。傍からみても違和感はないだろう。

 

 暁は寮に戻る為、来た道を帰る。

 伊吹は街中に向かう為、反対の道に歩く。

 

 再びすれ違う時、伊吹の手が暁の手に下がるビニール袋へ動いた。

 それはもう文字通り、目にも止まらぬ速度で。手の内に隠すように準備していた“例の物”、それに追加で雑誌を一冊を丸めてな。

 

 その後、暁の姿は見えなくなり、俺も街の中に。

 その頃、腰の辺りで端末が震え出した。携帯の方ではない、秘匿回線。

 適当な路地に姿を隠すと通話を開く。

 

『――問題はないか、暁』

 

『……大丈夫だ、あれなら怪しまれることはないと思う。寧ろ、あそこまで気をつけなくても普通に渡してくれて良かったのに』

 

『念のためだ、念のため』

 

 微笑を漏らす伊吹。笑った声が暁にも聞こえたのか向こうからも聞こえてくる。

 

『それで、これが例の物?』

 

『そうだな、使い方は……ちょっと待ってろ……』

 

 通信をそのままに違う画面に切り替える。

 親父から送られてきた資料を開く。確かこの辺に説明が書いてあったはず、ああ、あったあった。

 

『えーっと、対象者に直接貼り付けて……数時間後に回収すること、だって。ああ、直接ってあれだぞ? 衣服の上じゃなくて素肌に貼らないと意味ないって』

 

『難易度高くないか、それ……』

 

『俺は知らん。その辺はお前に任せるつもりだからな』

 

『えぇ……』

 

 もし言われたとしたら俺も同じ反応をすると思う。が、しかし、渡した時点で暁の役目なのだ。言葉通り俺は任せるだけ。

 

『七海に押しつけたりするなよ?』

 

『いや、それは流石にしないけど……』

 

『そんじゃ、任せたぞー』

 

 語尾を伸ばしつつ通話を切ろうとする伊吹。

 耳から受話口を離そうとしていたが、暁の声がまだ雑音のように小さく漏れていたので、切らずに耳元に戻してみる。

 

『――のそういう所にはもう慣れたけどさ……。後、聞いておきたいんだけど、一緒に入れた雑誌って何?』

 

『ああ、寮生活では必需品なんだろ? 親父が言ってた物だ。優しい兄の奢りだぞ、素直に受け取っておけ、な?』

 

『必需品って……月刊バタ足ミル――って! これエ〇本じゃ――』

 

 暁の声が途中で途切れる。

 伊吹が通信を一方的に切ったせい。

 

 さて、当初の目的はこれで果たした。後はいつ作戦が開始されるか待つだけ。

 今日の内に俺が出来ることはまずないと思う……まぁ、リスクを気にしなければあるにはあるのだが、やめておこう、無理はよくない。

 特に今回の潜入任務には妹も参加していることだしな。

 

 端末を仕舞い、路地を後にする。

 伊吹は今晩の宿を探しに向かうことにしていた。

 




評価、感想貰えるとモチベ上がります。

暁の話方ってこんな感じだったっけ?
違和感がありましたら教えて貰えると幸いです(^^;)
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