恋=光。

そして、光は闇に勝てないって誰かが言ってた。

つまり、こう言う事だろう?

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尚、ヤプールの設定は2018年3月時点のものです。



誰だこいつ……となる恐れがありますのでご注意下さい。


なんか違え……と思ったらどしどし感想をお寄せ下さい。


ヤプールだけど愛さえあれば関係ないよね☆

 それは、正に偶然だった。

 

 運命だったと言い換えてもいいかもしれない。

 

 

 

 精密に作られた原子時計が3000万年に1秒の誤差を出すように、彼等の次元亀裂発生装置も数億年単位で僅かな誤差動を起こすと言うだけだった。

 

 試算によると、起こる次元の亀裂は精々2メートル程度。

 

 しかも何かがそこを通る確率は、何かがそこを通らない確率の数百倍低い。

 

 しかし、万が一、いや、億が一の時の為に、まさかそんな事は無いだろうと思いつつも、何らかの物質や生物が亀裂を通過した場合に備えて、確保用装置とその作動の為の人員を配置して居た。

 

 

 

 そんな彼等は、いや、彼はヤプール。

 

 人では感じ取ることすら出来ない異次元に住まい、我々には理解の及ばぬ程の超科学で、虎視眈々と宇宙侵略を狙う者である。

 

 

 

 数億年に一度の誤差動の為、装置の近くに詰めて居たヤプールの個体の一体。

 彼は今、そのヤプール生の中で最も不可解な感覚に囚われていた。

 

 担当して居た観測装置の前には、類い稀なる偶然により、次元の亀裂を通過してきた地球人の若い雄と思しき生物。

 

 本来なら、それに対して我々は実験動物以上の感情を抱く事は無い。

 

 その筈、なのだが…………。

 

 

(どう言う事だ!?何なのだ!!このーーーー

 

 

 

 

 

  ーーーー胸の高鳴りはァッ!!!)

 

 

 ヤプールに胸に相当する器官は無い為錯覚ではあるが。

 

 そして、この瞬間、彼は理解する。

 

(これが…………これが、奴らの言う愛かッッッ!!!!!!!!)

 

 俗に言う、一目惚れであった。

 

 

 

 

 彼の受けた愛という名の感情の衝撃は、精神感応システムにより、余すところなく全てのヤプールに伝達される。

 

 それは、まるでメタリウム光線のような刺激をヤプールに与え、その感覚は、彼等の全てにまるで甘い毒のように染み渡っていった。

 

 

 ヤプールとは、超科学を持った末に、精神感応装置とクローン培養装置を用いることで、個人を棄て、全にして一、一にして全を体現した異次元生命体である。

 

 つまり、一人が恋に落ちたら彼等全て同じ対象に同じ感情で同じように恋に落ちるということで。

 

 一介の男子高校生×ヤプールと言う種族、と言うカップリングが成立した瞬間であり、同時に、愛を知らない哀しい異次元人が、怨念を棄て、愛を知った瞬間であった。

 

 

 

 その時、ヤプール達のニューロンが高速で動き始め、侵略基地総司令部に存在する思考加速装置が唸りを上げ、精神感応装置が一時的に停止し、基地に居るヤプールの全個体の思考が1億倍にまで加速される。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

(ーーーーでは、これより、『これから彼に対してどう言う対応をしようか会議』を始める。議題は『初対応』だ。地球人の印象は、初見での対応によって八割方決まるらしい。これを念頭に置いて、各々検討して欲しい)

 

(報告。現在、我々の姿は彼に確認されて居ない。外見による印象操作は可能だ)

(重ねて報告。発生した亀裂は彼が出現した瞬間に消滅した模様。装置の故障だと言い張れば長期滞在も可能と思われる)

(反論。地球人は統計として虚偽を嫌う。従って、きちんと我々の心情を素直に伝えるべきではないか)

(は、反論!それは、こっ、ここここここここ、告白ではないか!?)

(肯定。誠実に想いを伝えれば、きっと応えてくれるはず)

(反論。しかし、我々は多くの地球人を殺害してきた。地球人は同族意識が高い。よって幾ら誠実であろうとも告白は断られる可能性がある)

(懸念。そもそも種族の違う我々と彼で生殖が可能なのか?)

(払拭。いざとなれば遺伝子を掛け合わせれば良い)

(懸念。それは地球人には受け入れがたいのではないか)

(静止。話がずれている)

(謝罪)

(謝罪)

(謝罪)

 

 ーーーーーーー地球時間換算で数日後(尚思考加速中の為現実では1秒も経っていない)ーーーーーーー

 

(提案。彼等と同じ姿をしてはどうか。少なくとも受け入れられはするだろうし、それからの関係も進めやすい)

(賛同。良い考えだと思う)

(補足。僅かに地球人との差異を残してはどうか。そうすれば、異種族である事を受け入れやすいだろう)

(賛同。それはとても良い考え)

(賛同。素晴らしい。それならば本来の姿の説明もしやすい)

(賛同。改造の際に手を加えれば、種族間の生殖における問題も解消される)

(補足。より自然な形での対応する為の精神形成を行うため精神感応装置のレベルを2まで引き下げることを提案する)

(賛同)

(賛同)

(賛同)

 

 ーーーーーーーーーー

 

(では、彼の出現した基地の個体全てを、僅かな人間との外見の差異を作りながら、人間を模したヤプールへと作り変えると言う事でいいか)

((((異議なし))))

(作戦決定。これより作戦を開始する)

 

 

 

 思考加速装置が停止し、精神感応装置が感応レベル2(何となく影響下の対象の感情が判るレベル)で再始動する。

 

 

 それと同時に、亀裂発生装置近くに詰めて居たヤプールの個体全てが当たり前のように自害し、彼らの死体は、機密保持の為に埋め込まれていた小型装置によって原子分解され、空気に溶けて消えた。

 

 

 そして、それ以外の基地に居るヤプールの個体全ては、これまで自分達が道具として扱ってきた超獣を造る為の製造機や改造機へと躊躇い無く向かい、改造手術を受けた。ものの数秒で改造を終えたヤプール達の姿は、地球人との差異は所々あるものの、地球であれば絶世の美女と褒め称えられるであろう容姿へと変わっていた。

 

「これならば彼の恋人となることも可能だろう」

「うむ。彼がどのような性癖でも対応可能だ」

「ふむ、声や言葉遣いも変えるべきだな。……こうかな。はは、これは中々難しいや」

「そうd…そうね。でも、そうでもしないと彼には振り向いてもらえないわ」

「うん、その通りだ。……じゃあ、所定の位置に着いて。作戦開始だ」

 

 

 大きな環をあしらった軍服を着た少女が、肘掛け椅子に座って足を組み、口を開く。

 

皆、聞いてくれ(総員傾聴)

 僕達(我々)はこれまで、数々の作戦を遂行してきた。

 しかし、作戦は、失敗することもあった。

 

 何故か。

 

 それは、僕達(我々)に慢心があったからだ。

 絶対に失敗しない、予想通りにいくという根拠のない確信があったからだ。

 

 捨てろ。

 

 今回の作戦は、僕達(我々)の運命が懸かっている。

 そんな慢心は作戦失敗のもとだ、捨ててしまえ。

 

 僕達(我々)は強い!それは変えようのない事実だ。

 しかし、僕達(我々)は恋愛について全くの無知だ。

 僕達(我々)は恋愛弱者なのだ。

 

 その事を念頭において作戦を遂行しろ!

 余計なことをするな!

 思いつきを実行するな!

 僕達(我々)の指示に従え!

 そうすれば、全ては僕達(我々)の計算通り。

 必ずや彼の心を射抜いて見せよう。

 

 さあ気合いを入れろ!

 ヤプール一世一代の大勝負だ!

 

 総員!配置に着け!

『恋愛大作戦』!行動開始!」

 

 

 今、彼ら、いや、彼女らの全てを賭けた、超絶大作戦が始まる…………!

 

 

 

 

 

 

 

「ところで君、それはなんだい?」

「は、地球で入手しました、『School Days』という電子媒体ですが」

「それ、共有ネットワークに上げといてくれるかい?性格決定用の情報は一つでも惜しいんだ」

「了解であります」

 ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 通学中に突然真っ暗になったと思ったら秘密基地だった。

 

 解せぬ。

 

 しかも子供が造る段ボールのやつみたいなチャチなのじゃなくて、もっとガチなやつ。

 誰かに見つかった瞬間殺されても納得できるレベルなんですけど。コレ。

 

 唯一の救いは、ここが何らかの(恐らく俺がここまでやってきた要因と思しき)装置の近くであり、その前で何か実験中だったと思われることか。

 実験後ならば、注意はここじゃなくて別の場所に向いてる筈。多分。

 実は、実験動物、俺!とかだと目も当てられないが。

 

 誰か責任者みたいな人とかと話をしたいんだが……いや、まず通じるか怪しいよな。

 

 

 ……………………とりあえず動くか。

 

 

 

 俺が今いるのは、SF映画なんかでよくあるような、ビーム装置(メーサー砲で通じる人は僕と握手)みたいなものの台座の部分。

 その装置の砲口の先、恐らく実験場の周囲は何らかのドーム状の物体で覆われており、怪しい雰囲気を醸し出している。

 悪の秘密結社の実験場とか言われたらすごく納得いくんだが。

 

 とりあえずの方針を安全な場所を確保、に決定した俺は、台座部分を降り、出来るだけ姿を隠しながら、近くの通路を通って内部の廊下に侵入していた。

 

(ここまで監視カメラの類いは無し……人の気配は無く、設備には少なくとも工学に対しての高い技術とそれを開発する知能……でもこんだけ出来るならカメラに代わる監視技術があると見て間違いない。バレてるのは覚悟しよう。しっかし、これはいよいよ宇宙人説が信憑性を帯びてきたな……)

 

 少なくとも表のじゃあないな、と言うかいあ!いあ!みたいな宇宙人だったらどうしよう、などと推論を重ねている彼の名は瀬戸至(せといたる)

 

 地球ではあまり目立たない、()般人である。

 

 

 

 コツ、コツ、コツ。

 

 

 

 足音が聞こえ、動きを止める。

 

(…………歩みに僅かに迷いがある。気付かれたか)

 

 靴音が少し不自然にスレて聞こえる。しかも結構近い。不味いな、何で気づかなかったんだ。

 いや、んな事言ってる場合じゃない!

 捕まったらどうなるかなんて考えたくもない。少なくとも良い扱いはされねぇだろう。

 

 

 

 

 

 ーーーーーー覚悟を、決めるか。

 

 

 

 

 スウッ、と静かに息を吸う。

 

 

 足音の源はあとおよそ十秒程でここに着く。それまでにどうにか考えなければ。まず、これからの事を考えて、目は守らなければ。メガネ程度ではどうにもならんだろう。

 

 ーーーー9

 

 攻撃して拘束……は難しいかもしれない。いや、物理法則があるのなら打撃は通じる筈だ。何とか攻撃して、相手の武器を奪うか。それがどんな物であっても相手の物なら脅せる筈。

 

 ーーーー8

 

 パンチやキックは体から手が離れ、面積が大きくなるし、しかも通じるかわからない、という面でメリットが小さい。やはり腕で体を覆って突撃が一番か。

 

 ーーーー7

 

 人と同じような足音なら、体格も相応だろう。腰あたりに突っ込んで倒すべきだな。突撃は体重が全部乗るから、体幹をズラす、できなくても動揺くらいはさせられるだろう。

 

 ーーーー6

 

 これに失敗したら、俺は死ぬかそれ以外でも拷問とか色々されるんだろうなぁ……。父よ、母よ、妹よ、俺は今から、一世一代の賭けに出ます。

 

 ーーーー5

 

 息を潜め、集中する。

 

 ーーーー4

 

 あともう少し。

 

 ーーーー3

 

 あと一歩。

 

 ーーーー2

 

 目を開く。さあ。

 

 ーーーー1

 

 行くぞ。

 

 

 

 ーーーーーーーーーー前が、赤く、光った。

 

 

 

 

 ◆◆◆ | 数時間後 |◆◆◆

 

 

 

 

 ふと、意識が戻る。

 

(こ、こは……、どこ、だ。くっ、頭が)

 

 頭を小突くが、少し痛むだけで何も思い出せない。

 

(確か、近づいて来た奴に突撃して……?何故だ、何故忘れてい…………ッ!いや、思い出した)

 

 俺の突撃は、何らかの超能力のようなもの、恐らく念力の類いで受け止められ、光線を受けて気絶させられたのだ。

 

(…………………………捕まった、か)

 

 殺されなかっただけマシ、と思うべきか、もっと酷いことになる、と悲観すべきか。

 

 幸い、ここは病室の様だ。ならば逆説的に手荒な真似はされないだろう。

 いや、そうかもしれないというだけで本当にそうと決まった訳じゃないが。

 

(しかし、まっさか本当に宇宙人とは……瓢箪から駒が出たな)

 

 普通に触角とかあったし。

 作り物じゃねーの?と言われればそれまでなのだが、何というか……アレは本物な気がする。本物感凄かった。

 

(この頭痛はあの異星人の怪光線の所為か…………これからどうなるんだろうか……)

 

自分の部屋くらいある大きなベッドに身を預けながら、これからのことを考える。

 何故生かしているのか、何故こんな高待遇なのか、全く想像がつかない。

 

 もしや、俺に利用価値を見いだしたか?

 

 いやいや、まさかな……。

 

 

 などと考えていると、ドア(と思しき四角い壁)がスライドし、人間から見ても医師と思われる女性が入って来た。

 

 思われる、と言ったのは、その格好が医師にしては珍妙なものだったからである。

 

 紫一色のスク水に白衣を着て、よくわからないパーティーグッズのようなトンガリ帽子を被っている。

 

 なまじ触角などを除けば美人なだけにもったいない。

 

 その美人女医(仮)さんは、俺に色んなことを聞いてきた。

 

 言葉は翻訳装置で翻訳してるらしい。スゲえ。

 

「貴方、名前は?」

「瀬戸至です」

「職業は?」

「が、学生です、中三です」

「ふうん、学生……。好きな食べ物は?」

「特にないです」

「じゃあ、嫌いな食べ物は?」

「特にないです」

「好きなことは?」

「あまり…ないです」

「嫌いなことは?」

「……ないです」

「じゃあ、好きな人は?」

「いません」

「嫌いな人は?」

「あまりいません」

 等々。

 

 ぶっちゃけ無駄にしか思えない質問ばかりしてきた。

 当たり障りのない返答をしたが……隠し事したのバレてる……?

 どうだろう。

 俺がヒトって種族のテストケースな可能性もあるしな……。

というかオ◯ニーの回数とか普通誤魔化すって……。

 

 なんてことを取り留めもなく考えていると、女医さん(暫定)が、ポツリと呟いた。

 

 

「ふむ……君でここに来たのは……大体二十人目くらいか」

 

 

 違ったーー!むしろバリバリ来てたー!恥っず!結構自信あったから恥ずいわ〜。

 

 …………まぁ口に出さなかったからいいか。

 

 じゃあ何故俺を生かしているんだ……?

 謎が深まったな。

 

 

 

 

(何故こうも恥ずかしがっている……?まさかとは思うがこれがタイプなのか!?そうなのか!?)

 

 こう思われている事を彼は知らない。

 

 というかヤプールでも非常識って思うんですね、その格好。

 

 

 

 

 

 

「ところで、ここはどこなんですか?」

 

「ここは……いや、この後来る者に聞きたまえ。ではな」

 

 そう言うと、彼女はドア(仮)から出て行った。

 

 何だったんだ一体……と思っていると、ドアから、女医さんと同じトンガリ帽子をして、環をモチーフにした改造軍服を着た少女が入れ替わりで入室してきた。

 

「失礼するよ。調子はどうだい?」

 

 お?なんか友好的だな。

 

「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」

 

 彼女は、あからさまにホッとした顔をすると、そうか、良かった、と言って言葉を続けた。

 

「僕は、ここの基地を任されている、隊長の……ドリズル、シグ=ドリズルという。ドリズルで構わないよ」

 

 先程の女医さんとは違い、幾分かフラットな様子で、俺は少しだけ警戒を解く。

 

「はあ。で、そのドリズルさんが私に何かご用件でしょうか」

 

「実は、君に頼みがあって来たんだ」

 

 頼み?と俺が聞き返すと、そう、頼みさ、と頷き、

 

「今回、我々は貴殿に多大な迷惑をかけてしまった」

 

「え、ええ、まぁ、そうなります……かね?」

 

 なんか独白始めやがったぞ?

 

「君にも大切な用事などがあった筈だ、という懸念を上層部は相当重く受け止めたらしい」

 

 はあ。

 

「それで、だね。いや、嫌なら断ってもいいんだよ?ただ、形式として通達しておくね。僕達第二侵略特殊作戦部隊は、他文明の民間人を巻き込んだ責を負って、君の下へと降るように申しつけられたんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーーーーはぁ?」

 

 ナニヲイッテルンダ?

 

 

 

 

「わかりやすく言うなら、僕達は君の指揮下に置かれることとなった、という事だね。強制ではないけれど」

 

 いや、理解出来なかった訳じゃ無くて。

 

 

「は?え、ちょっと待って」

 

「ああ、滞在場所の心配は大丈夫だよ。君の元に付くにあたって、この基地も与えられる事になったからね」

 

 見当違いの回答をするドリズル。

 

 

「いや、そう言う事では無くて、だな、その、君達は、軍か何かだろう?」

 

「まぁ、そうだね」

 

「じゃあ、その、俺の下に付くのに、不満とかはないのか?」

 

 反乱とか無理だぞ?死ぬぞ?と思いつつも俺も見当違いな事を聞いてしまう。

 俺は、過去最高に混乱していた。

 

「無いよ」

 

 即答するドリズル。

 

「逆らえば死ぬしね」

 

 彼女はそうやって、まるでそれが当たり前かのように俺に言った。

 

 

 

「し、死ぬ?」

 

「ああ、そうだ。僕達は、特殊部隊と言えば聞こえはいいけれど、ただの厄介者の寄せ集めのようなものでね。型落ちの基地設備と共に体のいい厄介払いをされたようなものなのさ。そこに君という盛大な失敗が出来たもんだから、これ幸いと上層部がハッスルしてね。これでも上層部の友人が力を尽くしてなんとかこういう形で収めてくれんだけれども……。だから、その、ここで君に断られると、僕達は基地ごと処分という形になるだろう。確実に。基地も型落ちだし」

 

「それは……」

 

「いや、強制している訳では無いんだ。先程言ったように、嫌なら断ってくれても構わない。君からすれば、赤の他人がたくさん死ぬだけだしね」

 

 だが。

 ここで断れば、彼女らは死ぬのだ。

 ……………赤の他人だからって、死ぬのを黙って見過ごすのは、気分が悪いし。

 

「その話を受けたとして、俺は何をすればいいんだ?」

 

「別に何も。厄介払いだからね。むしろ何かしない方がいいと思う。女性しか居ないし、イチャイチャ出来るとでも考えていればいいと思うよ?」

 

「そ、そうか……」

 

 どんだけ嫌われてるの……?と思いつつ、一番大事な事を聞く。

 

 

「俺がその話を受ければ、君たちは助かるんだな?」

 

 

「あ、ああ、そうだね。君がこの事を受け入れてくれるなら、私達は死ななくて済むだろうね」

 

 

「じゃあ、その話受けるよ」

 

 

「え!?本当かい!?」

 

 隠しきれない喜色を纏いながら、ドリズルが言う。

 

「でも、再三言うけれど、別に断っていいんだよ?何も強制力はないのだし」

 

「人が死ぬのを黙って見過ごすのは、男が廃るからな」

 

 少し格好付けたか……?

 

 そう思って彼女を見ると、彼女は、少し頬を染めながら目をそらした。

 

 あー!恥ずかしー!と内心悶えていると、彼女が震える声で言葉を紡ぐ。

 

 

「あ…ありがとう。君の、勇気で、私達は救われる」

 

「そんな事ないって!」

 

「そんな事あるのさ」

 

 彼女はそう言うと、居住まいを正して、言う。

 

「我々第二侵略特殊作戦部隊は、特務司令官瀬戸至殿の指揮下に入り、総司令官シグ=ドリズルは、指揮権限を瀬戸至に譲渡します」

 

 《承認されました》

 

 何処からか声が響くと、俺の目の前に徽章の様なものが実体化した。

 

「これは?」

 

「それは、僕達の司令官である証。それを失くすと、大変な事になるから、失くさないように肌身離さず付けておいてくれ」

 

「わかった」

 

 彼女は微笑むと、俺にこう告げる。

 

 

「改めて、副司令のシグ=ドリズルだ。これから、よろしくね」

 

 

 俺は、応!と答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで帰れるの?」

「出来るよ?今から帰るかい?」

「お、おう……すごいな宇宙」

「あ、僕達は宇宙人じゃないよ」

「えっ!?どう言う事!?」




・その頃のウルトラの星

パリ、パリパリ、パリーン。

ウルトラの星にある、プラズマスパークタワー。
その近くの空が、突如として割れた。
赤く、それでいて混沌とした異次元が顔を覗かせる。

「ヤプールッ!!!」

丁度居合わせた、ウルトラマンAが叫ぶ。
その怒号に応えるように、ウルトラマン達がよく知る巨大ヤプールの姿が映し出された。

「久しいな、ウルトラマンA」

その声にいつものドロドロとした怨念はなく、まるで千年の友のようにAに気軽に声をかけるヤプール。
その態度が、ウルトラマンAの怒りを助長する。

「久しいな、だとぉ?貴様!どの口でそんな事をぉ!!」

怒りに燃えるエース。
しかし、ヤプールはそんなエースに構わず、誰かを探すように顔を巡らした。

「ウルトラマンAよ。ウルトラの父を知らないか?」

まるで、ちょっと用があるんだけどなー、と言わんばかりの余裕ある態度に、ウルトラマンAの堪忍袋の緒が切れた。

「貴様などウルトラの父の手を煩わせるまでも無いッ!俺が倒してやる!」

そう言って、怒りのままに宙へ飛び出そうとするエースを、大きな手が掴んだ。

「待て、エース。不用意な行動はやめるのだ」

彼を止めたのは急いで駆けつけたウルトラの父。
マントを羽織り、力強い二つの角(ウルトラホーン)と威厳ある髭を生やした出で立ちは、全盛期を過ぎて尚ウルトラマン達の憧れとなる勇壮な姿であった。

ウルティメイトブレードを携え完全装備でやってきたウルトラの父は、ヤプールに問う。

「ヤプールよ、お前は何故今ウルトラの星に現れた。何が目的だ!」

厳しく問いただすウルトラの父に、ヤプールはやっと話がわかる奴が来た、とでも言うように、その目的を話し出す。

「ウルトラの父よ、ひいてはウルトラ兄弟よ。今日は、恥を偲んで頼みがあって来たのだ」

厚顔無恥にも程がある事を宣うヤプールに、エースの頭が沸騰する。
最早言葉もなく、異次元空間へと飛び込もうとするエースを抑えながら、ウルトラの父が言う。

「頼みとはなんだ。それで侵略行為を辞めるなら、話だけは聞いてやらんでもないぞ」

ヤプールなら、必ず反応するであろう高圧的な態度で答えるウルトラの父。
ここからの反応で、今回のヤプールの事件が宇宙の存亡に関わるかそうでないかがわかる。
怒れば、そう余裕が無いしるし。ウルトラマンA一人でもなんとかなるだろう。
逆に余裕ある態度なら、それは余裕を持つ程の恐るべき計画が進行している事を意味する。
事の次第によっては、私も出ねばならんな、と考えていたウルトラの父に、衝撃的な言葉が告げられる。



「実は……だな、その、地球人に………恋を、したのだ」



コイヲ、シタノダ?

こいを、したのだ。

恋を、したのだぁ!?

「な、何を言っているのだ貴様ァ!」

エースが困惑したように怒鳴る。
また何かの作戦では無いのか、とも考えたが、ヤプールの態度がそれを否定した。
奴の、ヤプールの様子は、まるで恋する女の子のようだったのだ。

困惑冷めやらぬ二人に、ヤプールは頼みの具体的な内容を話す。

「頼みというのは他でも無い。その地球人と交際、そして結婚するために協力してほしい。その為ならば、侵略行為など辞めてやる」

マジトーンである。
宇宙の悪魔が、真面目な顔して、宿敵のところに恋愛相談に来たというのである。
当然、信じられるわけもなく。

「そんな戯言に付き合ってられるか!観念しろ!ヤプー「待て!」何故です!?」

先走ろうとしたエースを、無理矢理引き留めるウルトラの父。
まさかの展開ではあったが、彼にはヤプールの言葉に嘘はないことがわかっていた。

「エースよ、今、宇宙の様々なところで活動していたヤプールが、全て消え去った」
「なッ、なんですって!?」

ウルトラの父の、千里眼とも言える超能力で、それらは確認された。
それを踏まえて、ウルトラの父はヤプールと向かい合う。

「それで、お前は我々に何を求めているのだ」
「大隊長!?」

エースが驚愕している中、ヤプールは異次元空間から左手を突き出した。

その手から、二つの赤い光が放たれる。
ウルトラの父が手の平を出すと、光はそこに優しく乗った。
その姿は、地球人によく似た、ヤプールであった。

「それは、我々ヤプールの分身の様なものだ。ウルトラマン達には、それの心を育んで欲しい」

「…………んん!?」

「やはり地球人の心は難解でな。操るならまだしも恋愛となるとどうすれば良いのかわからんのだ。だから、どうすれば嬉しくなるのか研究しようと思ってな。悪感情なら容易いのだが……」

「あ、ああ……」

「地球人に一番近いであろうウルトラマンならば、我々に地球人の心を教えることなど造作もなかろう、と考えついた訳だ」

「そ、そうか……」

「数年後に回収に来る。それまで頼んだぞ」

「お、おう……」

割れた空が、元に戻っていく。

「夢……だったのか?」

「では、ご指導ご鞭撻のほど、宜しくお願いします」

ウルトラの父の手の上の、小柄な少女の姿をしたヤプールが言う。


「夢じゃなかった……ええ…………」

ウルトラマンAは、顔を覆った。

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