インターミドル地区予選。
地区選考会を好成績で突破し、スーパーノービスからのスタートを切ったヴィヴィオ達ナカジマジム一同会場に来ていた。
「ついに来ました。スーパーノービスの会場‼」
「みんなでスーパーノービスに上がれるなんて夢みたいです」
「本当に久々にコロナが戻ってる‼健気だ‼エレク先輩が来てからは絶滅天然記念物扱いになっていた健気なコロナだ!!」
「それよりも気になっていたのですが………あれは何をやっているのでしょうか?」
そう言って指し示す先には明らかにお金で雇われたデータ収集班とそれに指示を出すエレクがいた。
「あぁ、あれには触れないようにしていたのに」
大会の運営に支障が出る訳ではないだろうのだろう。
ただエレクの存在する一角が皆個人で使用するようなものではない計測機材を持ってるだけで。
大体二十人くらいの人間がガチ目のカメラなんかを持っているだけで。
何となく十代の少女としては関わりたくない姿だった。
「完全にエレクだ」
ノーヴェは断言し、
「私もそう思う」
ヴィヴィオは同意し、
「それ以外にないよ」
リオは賛同し、
「エレク先輩常識ないから」
コロナが罵った。
天然記念物の健気コロナが絶滅した瞬間であった。
「うわっ、エレクじゃん何してんだよ」
「よお、ハリー学校外で会うのは初めてだな」
「オレは会いたくなかったけどな」
「健闘を期待してるぞ。お前の今までの努力と技術、技の限りを尽くしてくれたまえ」
「うわぁ、ここまでイラついて、魂胆が見え見えの応援初めてだ」
「ぶっちゃけ全力尽くしてくれたら勝敗なんて関係ないよね。悔いを残さないのが一番大切‼」
「良い台詞っぽいけど全然全然そんなことねぇな」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人を見つけたのかヴィクターが歩み寄る。
「ちょっと不良娘‼そんなとこで……えっ、エレク・クレイヴェル!?」
「やあやあ、シードなのにこんなところにいて良いのかなダールグリュン選手」
「貴方‼ジークに何をしたんですの!?」
「は?」
「前回会ったときも貴方の話ばかり!!エレくんにごはん奢ってもらった、エレくんにデバイスをもらったって。私だってそれぐらいやってあげるのに。何故貴方なんですか!?」
「なるなる。俺がダールグリュン選手より強いからじゃね?それかダールグリュン選手がエレミアより糞雑魚だからかねぇ?」
「デバイスを構えなさい。ぶちのめして差し上げます」
「ほう。高々都市本戦レベルのダールグリュン選手が次元世界最強の俺と戦えると?」
「辞めろ!!こんな所で喧嘩すんな!」
ハリーはヴィクターが喧嘩を売った瞬間に、本番を遥かに超えるスピードで後ろからヴィクターを羽交い締めにする。
「は?貴方には関係ないでしょう。怖いのなら会場の隅っこにでも蹲ってなさい」
流石にこの反応は想定外だったのかヴィクターも困惑している。
「馬鹿か!!お前らが外に出ろ!!いや後でお嬢様の家でやれ!!そうしろ!!それが良い!!それであわよくば地区予選前にリタイアしちまいな!!」
取り乱して大声で喚く。
「あ、貴方どうしたのよ。キャラ壊れてるわよ」
「黙れ。オレはあんな悪夢に捲き込まれないんだったらキャラなんて捨ててやる覚悟なんだよ!!空を覆い尽くす弾幕なんて無理ゲーなんだぞ!!」
そんな二人をチェーンバインドが縛り上げる。
「こーらー‼そこで何をしてるんですか‼都市本戦常連の上位選手がリング外で乱闘なん………て。……エレク・クレイヴェル選手?えっ?次元世界最強の?最低王者の?」
「やあ、エルス・タスミン選手。如何にも俺が次元世界最強の十代男子にしてデバイス工学の奇才エレク・クレイヴェルだ」
「えぇぇえええぇええぇえ!!」
その声を聞き付けたのか観客がざわざわと騒ぎ出す。
「ヤベェ‼騒ぎになる‼オレはこのキチガイと一緒にいるのを見られるのだけは死んでも嫌だ」
とハリーはチェーンバインドを引きちぎり一目散に
その場を去る。
「私もここは帰らせていただきます」
そしてその並々ならぬ情熱に危機感を覚えたのかヴィクターもそれに続く。
そしてデータ収集を中断して帰る訳もないエレクと、注目を集めたが仕事があるので帰るに帰れないエルス。
そしてそれを遠巻きに眺める観客が多数。
「じゃ、じゃあ私はこれで……」
「待てよ。エルス選手」
「えっ」
「俺に注目だけ集めて帰るなんて許されねぇぞ」
「うぇっ」
そして衆人環視の中気まずそうに試合を観るエルスと機材片手にノリノリでルールーを応援するエレク。
そしてそれを眺めて声を掛けるのを躊躇する次元世界最強の十代女子が残った。
「次はエリートクラスでの試合だな‼アインハルトとコロナは同門同士大いに潰し合えよ」
「やっぱり最低ですよねエレク先輩って」
「お前の次の対戦相手であるハリーのデータ欲しくないの?」
「うっ」
「弱点から戦闘スタイル。今までの癖や技。ハリーモデルの傀儡兵もいるんだけど」
「ううぅぅううぅうう」
エレクにプライドを棄てて助力を乞うべきか本気で悩むリオの横を抜けてアインハルトが前に出る。
「エレク先輩。私を鍛えてくれませんか?」
「ほう」
「なっ、本気ですか!?」
ヴィヴィオは本気で驚いたのか目を見開く。
「アインハルトさん生きるのに希望を持って‼」
「リオは後でガンフレイムでボコるわ」
リオは口を滑らせて誤爆する。
「これは本気です。エレク先輩のデバイスを使わないとは言いましたが、私は強くなることを諦めた訳ではありません」
「良いぜ。しっかりと完璧に、徒手空拳でマイストアーツを潰す方法を教えてやる」
「「なっ」」
驚き恐る恐る表情を確認するヴィヴィオとリオを尻目にコロナは更に爆弾を投げ込む。
「じゃあ私も覇王流の使い手をマイストアーツで完封する方法教えて下さい」
「「コロナ!?」」
「ふーん。面白い。が、俺はもうアインハルトを助けてやると言った後なんだが」
「言わなくても分かっているのに態々言わせるんですか?」
「はははっ、良いな。面白い」
「えっ?えっ?どういうこと?」
リオが混乱してキョロキョロと皆の顔を見回す。
「エレク先輩説明してください」
「ヴィヴィオさん。今までのことからも分かる通りエレク先輩はぶっちゃけデータ収集が出来ればそれで良いんですよ」
ヴィヴィオの問いに些か苦い顔のアインハルトが答える。
「そう。だからこそ俺はどちらにも肩入れしないで手伝える」
「それこそ先輩は純粋に私達を強くしてくれる。強ければ強くなる程エレク先輩にとっても得だから」
コロナも補足説明を入れる。
「Exactly‼その通りだ‼」
「なるほど。正直私達が勝っても負けてもどうでも良いと思っているエレク先輩だからこそできる手なんだね」
納得したのかヴィヴィオも頷いている。
「それにエレク先輩なら人手も問題ないしね」
「最低の人間性を持つ選手だからこそ最適なんだね」
「先輩私やリオも鍛えて下さい」
「良いだろう。早速今日から始めるぞ」
「いえ、ノーヴェに今日は休めって言われているし、一緒に帰って友達に噂とかされると恥ずかしいので私は自分のセグウェイで帰ります」