死ぬ気で楽して勝ってやる   作:聪明猴子

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ちょいと遅くなりましたがいつもより長めです。


無限書庫の救世主(後編)

エレクのデバイスが明らかに普通より効果範囲が広い検索魔法をかけていく姿を横目に見ながらヴィヴィオ達は歩きながら話す。

 

「あぁ、何か結構暇ですねぇ」

 

「そうだなぁ、割りとマジで何で俺ここにいるんだろ。俺にとってエレミアの手記とか心底どうでもいいし」

 

「まぁエレク先輩は歴史とか興味ないですよねぇ」

 

「人物の歴史には興味ねぇな。学校の成績も煽る為にしか使わねぇし」

 

「凄い頭悪いですね」

 

なんていうどうでもいい雑談を広げながらエレクが魔改造した検索魔法を本棚に片っ端から掛けていく。

 

無限書庫の未整理区画は他の利用者や職員もいない。

 

エレクの検索魔法のお陰で順調に進んではいるのだが暇を持て余している。

 

時折見掛けるのは二足歩行でガションガションと歩き回る奇怪なロボットだけだ。

 

人間よりいくらか大きいというサイズのロボットである。

 

銀色のボディと細い腕はスマートな印象を受ける。

 

そんなロボとすれ違うこと三回目くらい。

 

道中ミウラが話に入れず独りぼっちであったことも加えて、ミウラの熱い視線に背中を押されてヴィヴィオがエレクに質問する。

 

「あれがエレク先輩の作った奴ですか?」

 

「……………ん、ああそう」

 

魔法を行使しながらもさして関心もなさそうに答える。

 

本当に興味がないのか操作しているデバイスから眼を離すこともしない。

 

「一応聞けなかったので聞きますけどあのロボットって何なんですか?」

 

「ん、あれは検索魔法を搭載してるお手伝いロボみたいな奴だ。あいつらは検索し、収集、整理した情報をリアルタイムで同型機と共有する。そして読み込んだ情報をメインサーバーで一括管理する事で無限書庫の『情報がどこにあるか分からない』とか『あったらしいけど失われた』とか『司書同士が情報を共用してない』なんて問題を解決したわけだ。まぁ、後はちょろっと無限書庫の警備をするくらいだな」

 

「なるほど、それは確かに凄いですね」

 

「まぁ基本は事務用品なんだがそれなりのスペックはあるからな。まあ管理局の一個大隊くらいなら防衛じゃなくて確保くらいできるんじゃねぇかな」

 

「何で事務用のお手伝いロボにそんな戦闘力付けたんですか?」

 

ミウラがオズオズと話に入る。

 

「ん~、ロボット司書の開発段階で警備システムも頼まれたからどうせなら一緒にしようと思ってな」

 

「エレク先輩。私それで今の話聞いてて思ったんですけど……………」

 

「何だ?」

 

「エレク先輩なら翻訳AI以外にも検索魔法を使えるデバイス持ってるんじゃないですか?」

 

「……………」

 

「えっ?どういうことですか?そんな嘘吐く理由ないじゃないですか」

 

「………何故そう思う?」

 

「その質問だけで半分以上答えてるとは思いますが答えましょう。エレク先輩は検索魔法搭載の司書ロボットを何機も作成しています。ですからエレク先輩にとって検索魔法の搭載なんて既に何度も行ったことでしかない………。そしたら何で態々翻訳AI入れたデバイスを人数分持って来てるのに検索魔法を搭載してないのか不思議に思いませんか?」

 

「……エレミアの手記は見つかった?」

 

か細い声が彼等に掛けられるが、ヒートアップしたエレク達は気付かない。

 

そのまま茶番は続く。

 

「ふう、なるほどな」

 

「ここから叩き出される答えはひとつ。先輩は初めからジークさんとアインハルトさんの記憶転写魔法を解析するつもりだったんですよ!!」

 

「な、なんだってぇ! 」

 

「…あの……聞いてる?……エレミアの手記は見つかったの?」

 

再度声を掛けられるが推理ごっこを楽しんでいる彼等には聞こえない。

 

「歴史にもアインハルトさんの過去にも興味のない先輩です。初めからエレミアの手記を探しになんて来ていなかったのですね?」

 

「そうだな。確かに俺はエレミアの手記とやらを探しに来たのではない。正解だよ。だが、それでどうする?それが分かったところで何をするんだ?高町ヴィヴィオ」

 

「渡してもらいます。エレク先輩の持ってる検索用デバイスを。例え拳を向ける事になろうとも………」

 

「お前が俺を?冗談だろ?」

 

「あの!!エレミアの手記は見つかった?」

 

魔女っ娘が頭上から声を掛ける。

 

三度目なので心持ち大きな声だ。

 

大きなとんがり帽子を被り、箒を持った魔女のコスプレをした少女。

 

周りにはプカプカと二匹の変わった使い魔が浮いている。

 

そんな魔女っ娘はあまり大きな声を出す習慣がないのか顔を真っ赤にしている。

 

「うるせぇな、今取り込み中なの見て分かるだろ?サインなら後にしてくれ」

 

「そうです。クライマックスです」

 

そんな様子をいっそ冷酷とも言える態度で切り捨てる二人。

 

涙目で肩を震わせる少女を見て、慌ててミラウが取りなすす。

 

「ちょっ、ちょっとは聞いてあげましょうよ」

 

「まあ良いだろう。チビッ子の発言を許す。何の要件だ?」

 

「…………魔女の誇りを傷つけたものは、未来永劫呪われよ」

 

「怒ったか正統派魔女?」

 

「知ってるんですか?」

 

「ファビア・クロゼルグ。博物館の展示品レベルの魔法を使う真正古代ベルカの正統派魔女(トゥルーウィッチ)だ」

 

「何でそんなに詳しいんですか?正直女子の情報を掴んでるのって相当キモチワルイですよ」

 

「ん、インターミドル関係だ」

 

「ああ、なるほど。でもファビア・クロゼルグ選手。私達は構いませんが、エレク先輩には手を出さない方が良いと思いますよ」

 

「それはできない。私は魔女だから。欲しいものがあるから魔法を使って手に入れる。エレク・クレイヴェル、タカマチ・ヴィヴィオ、ミウラ・リナルディ」

 

「一応忠告はしましたからね」

 

「真名認識・水晶体認証終了ー吸収(イタダキマス)

 

そうファビアが呟くと、浮いていた使い魔が巨大化しエレク達を飲み込む。

 

「絶招織炎虎咆」

 

そしてファビアの手に瓶詰めされたミウラが出現すると同時に、真横から掌底を叩き込まれる。

 

両手の手甲に炎を纏った魔力付与打撃。

 

そんな魔力が豊潤に込められた掌底が吸い込まれる様にファビアの腹部を打ち、本棚に叩き付ける。

 

そしてファビアの手から溢れ落ちた小瓶を掴み取り、そのまま下のヴィヴィオに投げ渡す。

 

「がはっ」

 

「正当防衛成立だ魔女っ娘」

 

そこには軽薄な笑みを浮かべるエレク。

 

悠々とバリアジャケットを展開し、手甲をハルバートに変形させる。

 

「なっ、何で!?」

 

「お前の使い魔が飲み込んだのは幻術だよ。フェイクシルエットって言ってな。現役執務官も使う幻覚魔法だ。来なよ雑魚、魔女の誇りを傷つけたものは未来永劫呪われるんだろ?」

 

「……許さない。貴方は本気で潰す。黒炎」

 

大量の魔力弾がエレクに殺到するが、それを全てピンク色の魔力弾が打ち落とす。

 

爆発が広いとは言え室内である無限書庫内部を満たし、視界を煙が覆う。

 

「なのはさんに比べりゃこんなの楽勝だな」

 

そんな中、堂々と空中に静止して軽口を叩く。

 

這え 穢れの地に(グラビティブレス)

 

強力な重力がエレクを襲い、そこに畳み掛ける様にファビアの使い魔が襲い掛かる。

 

「魔女の呪いから逃れる術はない」

 

「甘ぇよ」

 

瞬間、エレクがファビアの斜め上に転移する。

 

「覇王断空拳」

 

不意打ちで放たれた打ち下ろしの一撃が、ファビアを庇った使い魔ごと纏めて地面に叩き付ける。

 

「ぐっ」

 

それを見下し挑発する。

 

馬鹿にするように。

 

心底楽しそうに。

 

「来いよ、魔女っ娘。出し惜しみは無しだ。全力で来い」

 

「ッ、悪魔合身(デビルユナイト)

 

使い魔である三匹の悪魔とファビアが合体し、幼女が女性になる。

 

「古代ベルカの大人モードってところか」

 

「黒炎」

 

先程よりも多くの魔力弾が出現し、一斉に発射される。

 

「ゲヴェイア・クーゲル!!加速!!」

 

《Flash Move》

 

それを高密度弾の弾幕陣を前方に展開し、その弾幕を追うように飛行することで距離を詰める。

 

「箒星」

 

その進行を食い止める様にファビアの持つ箒型デバイスが加速して突撃する。

 

「ッ‼」

 

《Protection》

 

それをデバイスの自動防御で受け止めるがファビアがそれを阻止するべく更に追撃する。

 

失せよ光明(ブラックカーテン)

 

「警備システム発動」

 

クロが手をかざし唱えるのと被せる様にエレクが叫ぶ。

 

それだけの行動でファビアの魔法が発動しなくなる。

 

「くそッ」

 

勢いを衰えさせたファビアのデバイスを掴み取りながらエレクは悪態を吐く。

 

「黒炎‼黒炎‼何故!?何故使えないの!?」

 

「教えてやる覗き見趣味の魔女。ここ無限書庫の警備システムは俺が発案、構築した物だ」

 

「っそれが――」

 

「最後まで聞けよ魔女っ娘。この無限書庫は俺が侵入者を逃がさねぇように、職員が安全に無力化することに長けてるんだよ。簡単に教えてやる。今この無限書庫内部は高濃度AMFに覆われてる。魔法が上手く使えねぇだろ?さあ魔女サマ!ここでどの程度魔法を使えるか俺に教えてくれよ!!」

 

そう高らかに謳う。

 

「だから忠告したのに」

 

「敵ながらあれは可哀想ですね………」

 

「ん、そうでもないと思いますよ。エレク先輩出し惜しんで遊んでましたし。初めからAMFを使いませんでしたし、魔力炉は使ってたみたいですけど砲台も盾も使ってませんでしたから」

 

「えっ!?」

 

そんな絶望的状況でもファビアは何とか体勢を立て直そうとするがもう飛ぶのも辛そうだ。

 

「バインド」

 

そんなファビアをエレクはバインドで固定する。

 

「何で!?何で貴方は魔法が使えるの!?」

 

「そう言えば僕も知らないんですけど何で使えるんですか?」

 

「ええっと………」

 

「俺のは第五世代デバイスって言ってな『魔力無効状況でも魔力を魔法として使用でき、魔力有効状況下ではさらなる強化を得る』というコンセプトで設計されているだわ。だからここでは俺しか魔法は使えねぇ。まあ時代遅れの魔女っ娘は知らないと思うけどな」

 

「――らしいです」

 

「凄いですね‼」

 

「ええ、まあそれはそうかもしれません。管理局でもまだ実験段階で、実用化のレベルまで辿り着いたのは神の悪戯かエレク先輩だけだとか」

 

「んじゃ、ちょっと解析させてもらうぜファビア」

 

「えっ?」

 

「お前俺のテリトリーで暴れて管理局に引き渡すくらいで済む筈ねぇだろ」

 

「…………………嘘…」

 

「嘘なもんか先ずは手始めにお前のデバイスでも分解してみるか」

 

「や、止め…て………止めて…」

 

「嫌だ。元々俺はお前の言う所の魔女って奴の使う魔法を解析したくてたまらなかったし。あっ、そういやお前の使い魔も中々面白い。あれを解剖するのもありかもなぁ」

 

「止めて!!プチデビルズは私の友達なの!!それだけは………それだけは止めて…」

 

「吐け。お前のデバイスの製作者から来歴、メンテに何をしているのか、魔女の使う魔法、使い魔とどこで契約し何ができるのか、一切合財全て話せ」

 

「は、話せば…解剖しない………?」

 

「有意義ならな」

 

「話す、話すよ」

 

「早くはやてさんとか来ないかな………」

 

「諦めたら駄目ですミウラさん!!ナカジマジムではあの程度しょっちゅうです」

 

 

 

 

 

数時間後。

 

「やっと着いたぁ」

 

扉を些か乱暴に押し開けてルーテシアが飛び込んで来る。

 

一切傷らしきものは無いが相当疲弊しているのが見てとれる。

 

「遅いぞルールー。もう襲撃犯も確保したしエレミアの日記も読み終わったぞ」

 

「ごめん、ごめん。何か無限書庫内部に妙に強い結界が複数張られててさぁ。何とか潜り抜けたけど大変だったんだよ」

 

「ふぅん、じゃあこれ」

 

そう言ってバインドで何重にも縛られたファビアと使い魔の三匹を指し示す。

 

「エレくん…ここ無限書庫の警備システムを構築したのは誰かな?」

 

「うん?俺だな」

 

「エレくんがDSAAの選手で一番気になってたのは誰かな?」

 

「………ファビア・クロゼルグだな」

 

「もうひとつ、質問していいかな。その計測機材は何に使ったのかな?」

 

「……お前のような勘のいいガキは嫌いだよ」

 

「やりやがったな!魔女の魔法を解析する時間を稼ぐ為に自作の警備システムを使いやがったな!!」




初めのプロットでは無限書庫の司書ロボット40機程の物量作戦でした。哀れファビア。

ベルカの話はエレクが興味ないのでスキップです。

エレク君のデータベースに魔女の魔法が追加されたよー
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