「ふふふ、ヴィヴィオ驚くかな」
高町なのはは仕事が早めに終わったので、サプライズで娘を迎えにジムに来ていた。
四年前から家族になった愛すべき可愛い娘だ。
「おい頼むよ、ヴィヴィオ」
「無理です、できません」
「いや、本当に頼むよ。一時間掛かんないからさぁ」
「そういう問題じゃ……」
「大丈夫、大丈夫。すぐ済むし、痛くないから。服着替えてちょっと体動かすだけだから」
「でも写真とか動画撮るんでしょ?」
「大丈夫だって。俺が使うだけだから。絶対にネットに流したりしないから」
「えぇ~」
「なっ?あっ、それじゃあバイト代三万で」
「…………」
「わかった、じゃあ時給五万でどう?」
「ディバインバスタァアアアアァァア」
だからこれも仕方のないことだった。
「なんてひどぃことぉ、あんまぁりだぁ」
「もう、なのはママ‼何でいきなりエレク先輩に魔法なんて撃ったの‼」
「ごめんなさい。勘違いでした」
ジムには自分のデバイスを抱えて泣きじゃくる少年と、幼女に怒られる大人の女性という謎の光景が繰り広げられていた。
哀れエレクは、自分の開発した不意討ち防止用の防御デバイスを貫通されて砲撃を食らったのだ。
AA+の魔法も楽々防ぐAMF搭載の自律防御兵装は哀れにもど真ん中をぶち抜かれて機能停止している。
断面からは煙が上がり、ひと目でスクラップになっていると分かる。
「あんまぁりだぁ、おれがなにをしたっていうんだぁあ」
その余りにも衝撃的過ぎる光景にリオもコロナも何て声をかけていいのかわからず、途方に暮れている。
「まさか、装備のテスターをしてくれってお願いがこんなことになるなんて……」
「ひでぇよぉ、これのかいはつにいくらかかったとおもってるんだよぉ」
そのあまりに酷い姿にコロナが見かねて声をかける。
「え、エレク先輩元気出して下さい」
「コロナはブランゼルが壊れても元気出せんのかよぉ」
面倒臭い先輩だった。
「テスターなら私がやってあげますから」
「リオはヴィヴィオより弱いじゃんかよぉ」
失礼な先輩だった。
「あの、ごめんね。ちょっと勘違いしちゃって」
「なんですかぁそれぇ、俺が犯罪者にでも見えるって言うんですかぁああぁあ」
嫌な子供だった。
「いいんですよ、どうせ『防御デバイスなのに壊れてるwwwww草生えるwwww』とか思ってるんでしょぉおおおぉお」
「そ、そんなことないよ。一瞬とはいえ私の砲撃を防いだんだから十分凄いよ」
「一瞬?一瞬?なんだよそれぇええぇ、おれがあれのかいはつにどれだけかけたとおもってんだよぉおおおぉおお」
声を荒げて慟哭する様は余りにも哀れで、否応なしに注目を集める。
これには流石のなのはも周りにはいないタイプの相手にオロオロとする。
加えて、相手は子供で完全にこちらに非があったこともややこしくさせる。
「ご、ごめんね。弁償した方が良いよね」
「あれは俺の自作だから弁償はできねぇんですよぉおおおぉぉお」
「ご、ごめんなさい。でも償えることがあったら言ってね。何でもするから」
「ん?今何でもするって言ったよね?」
「えっ?」
今まで泣いていたのが嘘だったかのように見事な変わり身だった。
彼は魔導師よりも忍者に向いているだろう。
「そうだなー何してもらおっかなぁー」
「えっ?えっ?」
「なのはさん強く生きろよ」
「えっ?何でノーヴェは手を合わせてんの!?えっちょっ」
「頑張って下さい。応援してます」
「コロナちゃん!?」
「さすがエースオブエース、自ら死地に飛び込むなんて」
「リオちゃん!?」
「そうだよなぁ~、あのエースオブエースに何でもしてもらえるんだもんなぁ~夢が広がるなぁ~」
「えっちょっと待ってぇええぇぇええ」
「頑張ってね、なのはママ」
「ちょっと待って、皆待って何で私これから死んじゃう感じなの!?」
「「「「だってエレク(先輩)だし」」」」
「大丈夫ですよ、そんなに変なことはしませんから」
「そ、そうだよね。ねっ?」
なのはは隣で四人が首をふって、「それはない」と断定しているのを努めて見ないようにする。
「はい。………だってなのはさんは管理局の誇る不屈のエースオブエースですから」
なのはには見ているこっちが楽しくなりそうなエレクのその笑顔が無性に恐しく見えた。
魔法少女テスト中………………………………………………
「ふぅ~、超有意義な時間だった。ディバインバスターも見れたし、あの伝説のACSドライブやスターライトブレイカーまで見られるなんて。今日は何て素晴らしい日なんだ」
瞳を輝かせ、先程とは打って変わって喜色満面のエレク。
まるでこの世界で自分が一番幸せであるかのように楽しげだ。
「ぜぇ……ぜぇ …キツい、キツ過ぎるのぉ」
あれから三時間。
なのはひたすら魔法を使っていた。
エレクの持つ機器を体に着けて魔法を撃つのだ。
魔力弾の限界生成数の計測から始まり、デバイスをひっきりなしに変えてディバインバスター等の砲撃を撃ちまくったのだ。
「うぅぅ汗だくだよ。まさか一日に三回もスターライトブレイカーを撃つはめになるなんて」
なのははここに来たことを悔いていた。
何故半休だからと言ってジムになんて来てしまったのか。
土曜日なのだから家に帰れば良かったのにと後悔が浮かぶ。
「さあなのはさん、これに着替えて」
「す、少し休ませて欲しいの」
「大丈夫です。だってなのはさんは不屈のエースオブエースですから」
「もう無理です」
「えっ? 何でもするって言いましたよね?」
「それは……」
「フォトンランサァアアアアァァア」
エレク君は雷に呑み込まれていった。
「大丈夫!?なのは、私が助けるから安心して」
そこに立つは友の為に立ち上がった執務官。
黒いバリアジャケットに黄金の光剣を構える凛々しい女性。
「ふぇ、フェイトちゃん……」
「うん。なのはは私が守るから」
「………夕飯までには帰って来てね。今は四時だから多分八時位になると思うけど」
「な、なのは!?」
「フェイトちゃんなら大丈夫。だって執務官だから」
「なのは!?」
「頑張ってね」
エレク君のデータベースにプラズマザンバーが追加された。
フェイトちゃんの体力は尽きた。
連載する気はありませんでしたが、尊敬する作者様に高評価いただき、書いた。
もしかしたら続くかも知れないけど余り期待はしないでね。