「未来から来たぁ!?」
二日間医務室でぐっすり昏睡したエレク達は現在リンディの私室で話を聞いていた。
「えぇ。ここから十四年後のミッドから転移して来ました。そしてそこの金髪オッドアイの奴がなのはさんとフェイトさんの子です。一応なのはさんの動画データくらいならありますよ。信じられねーでしょうけど」
「フェイトとなのはの子供っ!?」
「養子ですっ‼紛らわしい言葉を言わないでください!!クロノ伯父さん混乱してるでしょ!」
「…伯父………」
「信じましょう。こちらもそう言った旨の発言をしている少年を保護しているわ」
「なーるほどなー」
「でも出会い頭にディバインバスターは過激過ぎるわね」
「それは本当にすみません。でも言い訳させてもらうならタイムパラドックスで存在消滅の危険があったんで形振り構ってられなかったんです。あれもやむを得ずってことで勘弁してください」
「私達はエレク先輩に脅されたんです。許してください。ねっ、アインハルトさん?」
「えっ、えぇと…」
「ヴィヴィオ潰すぞ」
「はーはっはっは。どうやってぇ?機動鎧も傀儡兵もガジェットもない先輩などぜーんぜん怖くないですね!!」
エレクは安全策の一環で機動鎧と浮遊盾、自動防衛砲台、残ったガジェットの残骸なんかをアースラに接収されていたのだ。
だから今は常に持っているデバイス整備、改造用の専用デバイスしか持っていない。
勿論戦闘能力は殆どない。
「お前覚えてろよ」
「おっ?やりますか?私と戦っちゃいますか?」
「ヴィヴィオさんもうそれくらいに」
「それも聞きたいんだが君は本当に競技選手なのか?魔力炉や魔法を阻害する魔法など聞いたこともないのだが」
「一応エレク先輩は競技選手ですよ。デバイス技師も兼任していますが」
「既存のデバイスじゃ逆立ちしたって勝てないからな」
「それもだ。未来ではデバイスを持つだけで簡単にあのレベルに到達できるのか?魔導師ランクCの人間がデバイスを持つだけでSオーバーになれるなんてことになれば管理局の制度もかなり変わると思うんだが………」
「いえ未来でも今と然程変わりませんよ。危険性は高いですが今の時代にも魔力炉があるでしょう。でもだからって皆が皆プレシア・テスタロッサみたいになれる訳じゃねーのと一緒だと考えてもらえれば分かりやすいと思います。デバイス管理の腕もそうですけど魔力コントロールだって必要ですし。あと馬鹿高い維持費が掛かりますしね」
「はい。未来でもエレク先輩は相当特殊です」
「頭だって相当異常ですっ」
「お前生きて過去から帰れると思うなよ。ぶち殺すぞ聖王!!」
「丸腰でか?やってみろよぉ!!」
「ちょっ、抑えて。エレク先輩抑えて!ヴィヴィオさんも煽らないでください」
「でも考えても見てくださいよ。アインハルトさん。こんな状況じゃなきゃエレク先輩を煽るなんてできませんよ?今までの恨みを今こそ解き放つべきではないですか‼」
「それは……」
「おい!未来に帰った時のことを考えて発言した方が良いぞ」
「…そうか………」
エレク達の騒動を見て疲れたように頷くクロノ。
「それで聞きたいんですけど、これの原因わかりますか?」
「えぇ。ちょっと待ってね」
ディスプレイを宙に浮かべて三人に説明を始める。
「貴方達は時間移動の際に発生したタイムホール的なものに巻き込まれたのだと思います」
「タイムホールまでは此方も把握しています。俺達が聞きたいのは帰れるか否かと犯人。帰れるならばその方法を聞きたい」
「帰れると思います。でも少し待って――
その言葉が終わらない内にビーッビーッと警告音が部屋を満たす。
「なっ」
「どうしたの!?管制室に繋いで!」
「そ、それが艦長。繋がりません!」
「な、何で!?まだ『システムU-D』は起動していない筈じゃ」
「とにかく管制室に急ぐわよ」
話を中断して駆け足で向かうリンディにエレク達は続いた。
「あっ」
エレクの溢した言葉にヴィヴィオとアインハルトが目を向けると管制室の全てのディスプレイにポップな字体で『ELEC』の文字が浮かんでいる。
そのロゴにヴィヴィオとアインハルトは見覚えがあった。
最近生活必需品となり、よく使うセグウェイにプリントされてるマーク。
「うわっ」
「これって………」
「説明を!!」
「艦内のシステム全てが停止しております。アルカンシェルは勿論転移ポートも動かせません。今襲われたら戦闘行為はおろか逃げることもままなりません」
「そんな……何でそんなことに…」
船員達に聞こえないようにエレクが小さめの声でリンディに告げる。
「すみません。それ十中八九俺のウイルスです」
「ふぁっ!?ど、どういうこと!?」
「俺の機動鎧とか傀儡兵。まぁどれでもいいですけど解析しようとしましたよね?アクセスしましたよね?」
「えっ、それは……」
「責めてる訳じゃないです。だって俺らが怪しいのは客観的に見てわかりますから。当然の措置です。でもこういう職業柄企業スパイや襲撃者には馴染みがありまして、俺の手を加えたものはウイルスとかセキュリティソフトとか満載なんです。多分アースラの整備室や工房からウイルスが入って今やっと全権を掌握したって感じでしょうね」
「なななな、何でそんなことを」
「俺一応天才なんで」
「と、とにかく直せるんですね?」
「えぇ。ウイルスが全権を掌握して三十六時間経つと自動的に内部データを全次元世界に発信したり破損させたりしますけど、俺が管理者権限使えば一時間かからずに事態を収められます」
「お願いできるかしら」
全次元世界に発信、破損の部分で顔を青くしたリンディがエレクに迫る。
「えぇ。俺のデバイスさえ返してもらえれば今すぐにでも」
エレクはニッコリ笑った。
ヴィヴィオは脱兎の如く逃げ出した。