その日は突然やって来た。
その日もエレクは相変わらずの外道思考で、優秀な使い魔姉妹で遊び、シグナムと模擬戦していた。
そんな時にクロノがエレクを含む多くの魔導師を呼び出した。
「よく来てくれた」
エレク達が呼び出された部屋の中でクロノが重々しく口を開く。
「ディアーチェとシュテルがやられた」
「「「えっ?」」」
何人かが思わず疑問の声を溢す。
彼女達は強かったのだから。
それこそなのは達と互角の実力を誇る彼女らがやられるような相手との戦闘。
そんな事態が始まってしまったのを否応なしに実感する。
「そんなっ!二人は大丈夫なのっ!?」
「今は医務室で診察中だ。シャマルに診てもらっているが、魔力ダメージこそ酷いが命の心配はないそうだ」
なのはの心配を余所に極めて冷静に言葉を返す。
「それでクレイヴィルの言っていたシステムU-Dの対抗策とやらはできているのか?」
昨日の模擬戦ですっかりエレクと仲良くなったシグナムが聞く。
「じゅーぶん!天才舐めんなよ!システムU-Dなんざサクッと直してやるからさぁ」
エレクが好戦的に嗤う。
「いや、相手はこいつだ」
クロノがモニターに写し出したのは8m程の人型兵器。
銀色の装甲が魔力光を反射して煌めく、どこか見覚えのあるようなフォルムの巨大兵器。
銀の装甲板に赤いい塗料でデカデカと描かれた『E』の文字。
「うわあぁあああぁあああぁあぁぁあああああ」
エレクが絶叫した。
それはもういきなり。
想像を絶する声量で。
それはエレクがむせる十何秒間続いた。
誰も何を言えなかった。
「いるのかよっ!俺のマテリアルぅううぅぅうう!黒歴史ぃいいぃぃいいい!」
「はい、かいさーんーありがとーございましたー」
「あ、私も戻ります」
皆が『やっぱりこいつかよ』と呆れた表情を晒す中でヴィヴィオとアインハルトは帰ろうとする。
「待て、待て、待ってくれ。気持ちはわかるが待ってくれ」
「そうは言いますけど相手はエレク先輩のマテリアルなんですよ?」
「私はエレク先輩程厄介で戦いたくない魔導師を知りません」
ヴィヴィオの言葉にアインハルトが続く。
「そうは言うがあれを放置するのも管理局としては避けたいところなんだ」
「でもクロノくん、シュテルちゃん達は例外にしても普通マテリアルはオリジナルより弱くなるんじゃないの?」
「それは――
「………なのはさん……俺の解析調査によると劣化するのはリンカーコアや経験、記憶という、人間の構成要素です。ヴィヴィオの聖王の鎧なんかはゆりかごがないので再現できなかったようですが、デバイスなんかは極めて高いレベルで複製されています…」
「うわ」
「つまり知識、材料、技術という俺の強みは丸々残っています」
会議室が静まり返る。
模擬戦闘だろうとエレクの戦いぶりを見た人間は誰もが思った。
「た、戦いたくない」
「あ~、正直僕もヴィヴィオと同意見なんだが、そうも言ってられなくてね。その、何だ?エレクなら勝てるのか?」
暗にエレク同士で決着を着けて欲しいと言っていた。
「勝てますね。あれの開発をしたのが二年前。二年もあれば知識の差は歴然です。改良型だろうが、量産型だろうが作れます」
「「「おぉ~」」」
部屋が喜びに湧いた。
「――ただ、お金も材料も時間もないので今現在は使えない手ですね。大規模魔力炉とまではいかなくてもビットがあればまだいけたんだが……」
空気が死んだ。
「俺をメンバーに入れないで、最低でも三人。欲を言えばバックアップで六人は欲しいところです」
「え~と。誰がそのメンバーか聞いても?」
「そうだな。まずトーマ、ザフィーラさん、シャマルさんは欲しい」
「うげぇ、俺っ!?」
「頼りにしてもらえるのは嬉しいがどういう選定基準だ?」
「えぇっと、ザフィーラさん、こいつ、Silver Craniumって言うんだが、こいつはAMW、Anti-Magilink Weaponだ」
「えっと……」
「魔導師との戦闘を想定して作った兵器だ。それだけわかれば良い」
「じゃあ勿論」
「AMFが標準装備されてる。AMFは、魔力結合を弱めて魔力行使を阻害するフィールド魔法だな。こいつの強みは俺と戦ったなのはさん、フェイトさん、シグナムさん辺りだったらわかると思います」
「ふむ。確かにあれは少し厄介だったな」
「うん。弾幕の中を突っ切って攻撃してくるのは反則だと思ったよ」
「攻撃や防御、移動ですら魔法を使う空戦魔導師には相性最悪と言って良いでしょう。だから、拘束に特化して、素手でも戦えるザフィーラさん。補助要員として回復、拘束、転移を高レベルで行使できるシャマルさん。最後に魔導師ですらないからAMFなんか効かないトーマが必要なんだ」
「後の二人は?」
「キリエさんとアミタさん。理由はトーマと同じ。役割は撹乱とフィニッシュ」
「「うえっ」」
「ごしゅーしょーさまです!」
「ヴィヴィオはメイン盾だ」
「それはおかしい!!」
「――はいはーいっ、作戦会議やるよー決戦機動兵器SilverCraniumの性能教えるよー」
「そのクレイヴィル?この空気は……」
「あはは、ちょっとこれは私も遠慮したいなー」
「無理よ。エレクが言った時点で私とお姉ちゃんはメンバー決定よ」
空気が死んでた。
処刑場の囚人みたいにテンションが低かった。
「………はいっ、コンセプトは超耐久、高火力。四機あれば戦艦、三百あれば地上本部の一時的制圧を可能とするスペックです。隠密、輸送に優れていますがそこは関係ないので省きます」
まぁエレクが空気を読むとか、フォローをすることなんてあり得ないので当然のことながら無視される。
「ふむ、高火力と言うがどの程度の威力なのだ?」
「ディバインバスター・エクステンションをショートバスターくらいのチャージで撃てます!」
「先輩っ!私じゃ盾にはならないと思います!」
「ヴィヴィオには自動回復、マルチディフェンサー展開用のデバイスを渡すので問題ないです」
「問題あるよっ!」
「他に質問はありますか?」
「はいっ!」
「アミタさん」
「動力は何ですか?」
「内部の収束機構と小型魔力炉です。内部に乗り込む形なのに機能停止と同時に自爆します」
「欠陥品じゃないですか」
「うん。確かに、色々と改善点が多かった。乗り込み式だから操作性も瞬間火力も悪くなかったんだけどね。俺も耐久試験中に爆発して危うく死にそうになったし」
「私達の時代にはないんですか?」
「うん。MK-4ならあるけど」
「四世代も続いてるし………」
「じゃあさぁ、武装はどんなのを搭載してるの?」
「良い質問ですね、キリエさん。腕部の火炎放射機に背面に搭載したブラスター。肩部にはミサイル発射筒もあったな」
「質量兵器だ!どうしてエレク先輩は捕まらないのかっ!管理局の怠慢だっ!」
「合法だ。ブラスターは砲撃魔法しか撃たないし、ミサイルの中身は圧縮魔力だ。火炎放射機も魔力変換資質の再現だからな」
「う~ん、性格に難はあってもエルトリアの復興に欲しい人材ね」
「あれ?でもアミタさんやキリエさんザフィーラならいざ知らず、普通の人間って焼かれたら死ぬよね?」
「うーし、いっちょ討伐に行きますか!」
「聞けよっ!」