あの後、私はユーノ君と話し合ったの。ユーノ君はもうやめていいって言ってくれたけど、これは私がしたくてしていることなの。だから逃げたくないの。
その決意を胸に私はユーノ君と一緒にアント君を呼びに行く。
「アント君‼︎」
「アント‼︎」
「ああ」
わかってるとアントは頷く。
「さて……行くか」
手拭いを持ち立ち上がる。
「二度目の風呂に」
「違うの‼︎」
《ボス。現実逃避は女々しいですよ》
「……」
渋々駆けつけてみると金髪の魔導師と大人の女性がいた。封印は済んでいるようだ。
「なんだい? 腰抜け娘が性懲りも無くまた邪魔する気かい?」
「う……そ、それでも私はお話ししなくちゃいけないの‼︎」
「ふん、なら噛みちぎってやるよ」
大人の女性が犬狼姿に変わる。なのはは呆然とその姿を見ていた。
「驚いたかい? 私は使い魔、この娘を守るのが私の存在意義さ」
そう言うと同時に殴りかかってきた。
「させない‼︎」
ユーノはバリアで攻撃を防ぎ、強制転移魔法で別の場所へ連れて行く。
「え? 俺も?」
そう、俺も巻き込んで。
残された二人は言葉を交わす。
「いい使い魔だね」
「ユーノ君は使い魔じゃないよ、友達なの。それとアント君もだよ」
「ッ……‼︎」
なのはの言葉に若干の苛立ちを見せながら金髪の魔導師は問いかける。
「……それで? どうするの?」
「お話で解決できない?」
「言葉だけじゃきっと何も変わらない。伝わらない」
言い終えると金髪の魔導師は攻撃を仕掛けてくる。
ジュエルシードを賭けた戦いが始まった。
一方、転移先の森の中ではユーノが説得を試みていた。
「ジュエルシードは世界を破壊してしまう危険なものなんだ‼︎」
「はっ‼︎ だからなんだってんだい? 私には関係ないね」
「クッ‼︎ そんな……」
それでも説得を続けようとする。
「……いや、お前もなんかしろよ」
ユーノはさっきから俺の肩に乗ったまま会話している。戦いには一切参加せずに……
「でも……僕が動くとアントの邪魔になりそうだから……」
「お前、フェイトが言っていた途中から乱入してきた奴だね? 一番の要注意人物はあの娘じゃなくてあんただったみたいだ‼︎ さっきからこっちの攻撃がかすりもしないじゃないか‼︎」
そう、すべて避けている。ユーノへの攻撃も含めてだ。
「……知らなかった……アントがこんなに強かったなんて……。魔力は少ししか感じられないのに……」
そろそろ反撃しようかと思った時だ。空で桃色の光と金色の光がぶつかった。
俺達は戦いながら上空を見上げた。
次第に桃色の光が金色の光を圧倒しだした。
「なのはだ‼︎ なのはが押してる‼︎」
「いや、フェイトはあれでやられるほど弱くないよ」
「え?」
ユーノが驚きの声を上げるが、俺も同意見だ。
金髪の魔導師はすでにあの桃色のビームの先にはいない。さらに上空へ飛び上がり魔力で作られた鎌でなのはに切りつけた。だがなのはを殺す気は無かったようだ、寸止めされている。その状態が少しだけ続いた後、ジュエルシードを持って空へ消えた。
「そんな‼︎」
「どうやらあっちは決着がついたみたいだ。ここらで終わりにしたいんだが、どうする?」
「ふん、今日のところはここらで勘弁してやるよ」
そう言い残して去って行った。
温泉の日から数日経ったある日。
俺は偶然、学校帰りのアリサとすずかに出会った。
「お? 温泉以来だな」
「あっ!!」
なぜかアリサが詰め寄ってくる。
「あんた、なのはの事で何か知らないの?」
「なのは?」
なんかあっただろうか?
「そう……知らないのね……」
「あのね、温泉に行ってからなのはちゃんの元気が無いの。なにか心当たりないかな?」
「いや、俺も知らん。まあ、そうゆうときはそっとしてやってだな……」
「そうだわ‼︎ ならあんたが聞けばいいのよ‼︎」
いや、聞くなってことを言いたかったんだけど……
「うん、そうだね。私達にはなのはちゃん何も言ってくれなかったけど、アント君ならもしかしたら……」
すずかまでもが賛成してきた。
「え? なんで俺?」
「だってなのは、アント君のこと頼りにしてるように見えたから……。お願い‼︎ 聞いてみてくれないかな?」
えー、そうか? 気のせいじゃね?
「……ああ、わかった。無駄だと思うが、聞くだけ聞いてみるさ」
聞きに行くついでに翠屋へ寄ろう。
「ちゃんと聞き出して来て‼︎ 頼んだわよ‼︎」
……プレッシャーがすごいな。
「と、いうわけだ。何が気になってんのか吐け」
「どうしたの? いきなり」
くっ、やはり一筋縄ではいかないか……。
「やっぱりカツ丼がなきゃ駄目か……」
「え⁉︎ なんの話?」
「最近お前の行動が周囲に不信感を与えている。なにかやましいことがあるんだろ?言ってみろ、怒らないから」
「完全になのはが悪いことした感じになってるの‼︎ やましいことなんてないの‼︎」
「え? そうなの? じゃあアリサやすずかが心配してたのは杞憂か。そうかそうか、ならいいんだ」
「うっ……」
「特に悩みがないなら俺は必要なさそうだ。よし、翠屋へ行こう」
翠屋へ行こうとする俺の服の裾をなのはが掴んだ。
「待って‼︎ その……ちょっと聞いてほしいことがあるの……」
「え?いや、今から翠屋に……」
「実はね……」
「ああ、無視か……」
私は前回の敗北の事とジュエルシードのこと、そしてフェイトと名乗った金髪の魔導師のことで悩んでいたことをアント君に話した。
「……それでね……どうすればいいのかわかんなくなっちゃって……」
「なんだ、そんなことか」
アント君は私の悩みを聞いて拍子抜けしたような顔をしている。
「え?」
「要はいろんなことが上手くいかなくて不安になってるってわけだろ?」
「そ、そうなのかな?」
「そうだ。そうに決まってる」
「だ、断言されたの」
「お前の悩みに俺が言えるのは一つだけ。とりあえずねじ伏せろ。話はそれからだ」
「ね、ねじ伏せるの?」
「自分より弱い奴の言葉なんて聞くわけないだろ? どうしてもお前のわがまま通したいなら相手を屈服させるしかない」
「……」
メチャクチャな事を言われてるの。でもそう言われてさっきまで肩に感じていた重荷がなくなった気がする。やっぱり相談してよかったの。
「じゃ、俺は翠屋に用があるから」
「……アント君」
「?」
「……ありがとうなの」
私は心からの感謝をアント君に伝える。
「お礼をしたいなら報酬はシュークリームで頼む」
「台無しなの‼︎」
その夜ジュエルシードが強制発動した。
俺は現場に駆けつけてみるとジュエルシードはすでに封印されていた。
今、俺の前で二人の魔導師が向かい合っている。
「まだ、自己紹介してなかったの。私の名前は高町なのは。今日こそお話を聞いてもらうの」
「……」
フェイトはなのはの言葉に鎌の一振りで応える。
二人の戦いが始まった。