バカは死んだら治るのか?   作:夏のレモン

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よし、行こう。

上空では凄まじい音と共に二つの光がぶつかり合っている。

 

凄えな。俺の魔力量じゃ絶対できない戦いだ。

 

「……ッ‼︎ さっきからよそみなんて余裕そうじゃないか‼︎」

 

パンチが顔面に放たれたので軽く首をひねって躱す。

 

「そういやアンタ、名前なんていうんだ?」

 

俺は使い魔の女性の拳を避けながら問いかける。

 

「はっ‼︎ 言うわけないだろ?」

 

「イウワケさんか、変わった名前だな」

 

「違う‼︎」

 

「イウワケさん、落ち着いてくれ。話し合おう」

 

「それで押し通す気かい⁉︎ ああ‼︎ もう‼︎ 私はアルフだよ‼︎」

 

「アルフ・イウワケ?」

 

「何でだい⁉︎ 人の話を聞きな‼︎」

 

「……もうイウワケでいい?」

 

「ぶち殺されたいのかい⁉︎」

 

どうやらこの女性はアルフと言うらしい。

 

さて、名前もわかった事だし……反撃するか。

 

アルフのパンチに合わせて放ったカウンターが腹を撃ち抜く。

 

「うっ…………くっ……」

 

だがダメージに耐えて蹴りを放ってきた。

飛んできた蹴りをしゃがんで躱し軸足を蹴りで払う。

足を払われ倒れてきたアルフの脇腹に膝を刺し込んだ。

 

「…………ぐっ………」

 

流石に耐えきれなかったようだ。

アルフは脇腹を抑えたまま立ち上がることができない。

 

「……強い、圧倒的に……。アント……君は一体?」

 

例のごとく肩に乗っかったままのユーノが驚いている。

 

「……いや、だからな? 楽すんなって」

 

「本当に僕の出来ることがないんだよ……」

 

その時、うずくまっていたアルフがふらふらになりながら立ち上がった。

 

「くっ……ふぅ……ふぅ……あんた……なんなんだい? こんなに強いのに……。なんで前回で……私を仕留めなかったんだい?」

 

「……特に理由はないな。強いて言うなら、あんたが本気じゃなかったからやる気がなかっただけだ」

 

「は? ……私をバカにしてるのかい?」

 

アルフの気配がイラついてきている。

 

「だって俺を痛めつけてやろう程度しか思ってなかったろ?」

 

「……」

 

心当たりがあるのかアルフは黙ってしまった。

 

そこへ、

 

「アルフ‼︎」

 

フェイトが飛んできた。使い魔のピンチに慌ててやってきたらしい。

 

「大丈夫?」

 

「ああ、大丈夫だよ」

 

「フェイトちゃん」

 

なのはも降りてきた。

 

「ッ……‼︎」

 

フェイトがデバイスを構える。

 

「言葉だけじゃ何も変わらないって言ってたけど、話さないと、言葉にしないと伝わらないこともきっとあるよ」

 

なのはは語りかける。フェイトのことを知りたいから。自分の思いを言葉にする。

 

「私は、ユーノ君を手伝いたい、家族や友達を守りたい‼︎ 大事な人が傷付くのは見たくない‼︎ だから戦うの‼︎」

 

なのはの心からの言葉にフェイトの瞳が揺れた。

 

「私は……」

 

「ダメだ‼︎ フェイト‼︎」

 

だが、フェイトの言葉をアルフが遮った。

 

「私達の目的はこいつらと仲良くすることじゃない‼︎ ジュエルシードを集めることだよ‼︎」

 

「‼︎」

 

フェイトはハッとすると、ジュエルシードのもとへ向かった。

 

「ッ……‼︎」

 

なのはもすぐに追いかける。

 

どうやら早い者勝ちの勝負のようだ。

 

「ってか速い‼︎ 俺、追いつけねえじゃん‼︎」

 

出来るだけ速く走ってるが追いつける気がしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて二人のデバイスがジュエルシードを捕らえた。

 

だが触れた瞬間、二人のデバイスは砕け散った。

 

「……⁉︎ レイジングハート……」

 

「バルディッシュ……」

 

ドクン‼︎ ドクン‼︎

 

ジュエルシードは怪しい鼓動を放つ。封印が解けかけているのだ。

 

「ごめん、バルディッシュ……」

 

砕けてしまった相棒に謝罪し、フェイトはジュエルシードに駆け寄る。

 

「フェイト‼︎ 危険だ‼︎」

 

アルフが必死に呼びかけるが止まる事なくジュエルシードのもとまで行き、素手で封印を試みる。

 

「止まれ……お願い……止まって……」

 

だが明らかに抑えられそうにない。フェイトの腕は血を吹き出し始めた。

 

「フェイト‼︎」

 

アルフが悲痛の叫びをあげる。

 

「あ……」

 

フェイトの奮闘を嘲笑うかのようにジュエルシードの力が更に強くなった。

なのはとの戦いですでに消耗していた上にデバイスなしでの封印は流石に無謀だったようだ。

 

(私は……ここで死ぬの?)

 

一向に抑えられそうにないジュエルシードを前にフェイトは諦めかけていた。

 

(ごめんなさい……母さん……)

 

完全に諦め、力を抜こうとする。

 

「何諦めてんだ? デバイスならここにある」

 

しかし、諦めたフェイトの手に別の手が添えられた。

 

「え……?」

 

「まだ終わってない。力を貸せ。俺の魔力じゃこいつは抑えられない」

 

「だ……だめ……あなたを……巻き込んじゃう……」

 

「その忠告は手遅れだ。早く魔力貸してくれないと死ぬぞ? 俺が」

 

「うっ……わかった……」

 

「ルリ、頼んだ」

 

《了解です。ボス》

 

アントを加えた封印は少しずつジュエルシードを抑え込む。

 

「ッ……‼︎」

 

「……‼︎ 血が……‼︎」

 

《ボス‼︎》

 

だが、もともと魔力が少ないアントに暴走しかけているロストロギアは荷が重すぎた。

アントの全身が裂け始め、血が流れ出す。

 

「……ルリ、封印を続けろ」

 

《……はい》

 

「アント君‼︎」

 

「ダメだなのは‼︎ 今行ったら邪魔になってしまう‼︎」

 

駆け寄ろうとしたなのはをユーノが止める。

 

 

 

 

やがてジュエルシードは完全に動きを止めた。

 

「やった……」

 

フェイトが安堵のため息をつく。

 

血を流しすぎたアントは無言で倒れた。

 

「な……‼︎」

 

フェイトは呆然として動けなかった。

 

「アント君‼︎」

 

「アント‼︎」

 

倒れたアントになのはとユーノが駆けよる。

 

「フェイト‼︎ 今がチャンスだよ‼︎ ジュエルシードをもってずらかろう‼︎」

 

「う……」

 

一瞬ためらうがジュエルシードを持って飛ぶ。

 

「ごめんなさい……」

 

フェイトは一言の謝罪を残して空に消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アントが大怪我した翌日。

 

「具合はどうだい? アント」

 

「治った」

 

「そんなわけないの‼︎ どう見ても重傷患者なの‼︎」

 

なのはとユーノは病院で治療中のアントの見舞いに来ていた。

 

「いや、この包帯はただの飾りだから。実際は飛んだら跳ねたりできるから」

 

「ダメなの‼︎ いいから安静にしてるの‼︎」

 

「今のところジュエルシードの動きはないから、ちゃんと治しておくべきだよ」

 

「……しょうがない。寝るか」

 

そう言って横になる。

 

「うん、しっかり治すの」

 

それを見たなのは達は満足気に病室を去る。

 

二人が去った病室でアントはフェイトのことを思い出していた。

 

「あいつは……誰のために必死になってんだ?」

 

少しだけ考えてみる。

 

「……ダメだ。昔から考えるのは苦手なんだよな」

 

《ボスはそれでいいと思いますよ?》

 

「だよな。俺もそれでいいと思う」

 

考えるのをやめた。

 

「よし、行くか」

 

《了解です。ボス》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side:ユーノ

 

お見舞いの帰り道、なのはは落ち込んでいた。

 

「なのは、大丈夫だよ。アントは元気そうだったじゃないか」

 

どんよりと暗くなってるなのはをユーノが励まそうとする。

 

「……また、私は何も出来なかったの。アント君があんな目にあってるのに、ただ見てることしかできなかったの。守れなかったの」

 

「なのは……」

 

「……もうこれ以上、誰かが傷つくのは見たくない。だから今まで以上に頑張るの。そしてなんでフェイトちゃんがジュエルシードを集めるのか、知りたいの。ユーノ君、協力して欲しいの」

 

それを聞いたユーノは驚いていた。下手したらこのまま立ち直れないと思ったが、完全に杞憂だった。なのはは戦い続ける覚悟を決めていた。

 

(それなら僕も覚悟を決める)

 

「もちろんだよ、僕が全力でサポートする」

 

二人は新たな決意を持った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side:フェイト

 

フェイトは4つのジュエルシードとお菓子を持って母が待つ時の庭園を訪れていた。

そして見るからに魔女といった風貌の女性の前に立った。

 

「ただ今戻りました。母さん」

 

「挨拶はいらないわ。ジュエルシードは何個集まったのかしら?」

 

フェイトは期待していた。母が褒めてくれることを。

 

「はい、4つ集まりました」

 

「……たったの4つ?」

 

「え……?」

 

だが期待した反応は無かった。

 

「たった4つだけで帰って来たの?全然足りないわ‼︎ 本当に役ただずね‼︎ あなたは‼︎ この程度で笑顔で迎える訳がないじゃない‼︎」

 

そう言って両手両足にバインドをかける。

 

「あっ……⁉︎」

 

「これは教育よ。今度はちゃんと言いつけを守れるように」

 

鞭を高々と掲げ、勢いよく振り下ろした。

 

目の前に鞭が迫ってくる。

 

「ッ……‼︎」

 

フェイトはとっさに目を瞑った。

 

その時、一発の銃声が響きわたり、当たる寸前の鞭が弾かれた。

 

「な⁉︎」

 

フェイトは恐る恐る目を開けると見覚えのある少年の姿が見えた。

 

「え……? どうして……?」

 

なんで、あなたがここに……。

 

突然すぎて上手く言葉が出ない。

 

「……なあ、これ教育じゃなくて調教じゃね?」

 

そこにいたのは包帯でミイラのようになっている、アントだった。

 

 

 

 

 

 

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