魔女はすぐに気を取り直して侵入者を撃退しようとする。
「ッ‼︎ ライトニング‼︎」
飛んで来た雷撃をギリギリで躱す。
対応が早いな。呆然としてたのは一瞬だけか。
「避けた⁉︎」
「そりゃ避けるだろ。当たったら死ぬし」
俺は魔女に近づいていく。
「くっ‼︎」
魔女は大量の魔力弾を練り出し俺にぶつけようとしてくる。
「なんで⁉︎ なんで当たらないの⁉︎」
一発も当たらないという事実に魔女が狼狽えていた。
「嘘……」
フェイトが呆然としている。俺はそれには構わず質問をする。
「あんたか? ジュエルシードを欲しがってんのは」
「……っ‼︎」
魔女は俺の質問に答えることなくさらに魔力弾の数を増やし、砲撃とバインドも織り交ぜてくる。
その雨のような攻撃を躱しながら走り寄り、魔女の首に手をねじ込んだ。
「がっ‼︎」
「母さん‼︎」
呆然としていたフェイトは母親のピンチを見てようやく動き出す。
「動くなよ」
アントはそれを制止する。フェイトはピタリと近づくのをやめた。
「別にあんたを始末しに来たわけじゃない。ちょっと知りたいことがあるだけだ」
「う……」
「だが、その前にあんた以外は外に出てもらおうか」
「‼︎ ……そんな……」
「……行きなさい」
「え……? だけど……」
「いいから行きなさい‼︎」
「……はい」
フェイトは渋々出て行った。
「さて、最初の質問に答えてもらおうか。ジュエルシードを欲しがっているのはあんただな?」
アントはフェイトがちゃんと外に出たのを確認してから質問を再開した。
「……ええ、そうよ」
つまり、こいつが黒幕か。やっと会えた。ここまで長かったな。
実は初めてフェイトにあった時に咄嗟にジュエルシードに発信機をつけていたのだ。
魔力が少ない俺はそういった道具を常に携帯している。
だがフェイトの住処に行ってはみたものの、ほとんど休むことなくジュエルシード探しに出かけてるのを見て、
(あれ? 黒幕は別にいるんじゃね?)
と思い至ったわけだ。まだ勘の領域だったが、可能性はあった。
そこでフェイトがジュエルシードを別の場所へ運び出すのを待ち続けることにした。その努力が今実った。
「名前は?」
「……プレシア・テスタロッサ」
「あんたにとってフェイトはどんな存在だ?」
「……人形よ」
「人形?」
「そう、あの子は私の娘のクローン。でもあれはただの出来損ないだった。本当の私の娘じゃない」
「あんたの娘はどこにいるんだ?」
「……」
「ああ、そうか。わかった。答えなくていい」
俺はプレシアの反応をみてなんとなく理解した。
「邪魔したな。帰るわ」
手を下ろし背を向けて去ろうとする。
「え?」
プレシアは思わず声をあげた。
「……私がジュエルシードを何に使う気なのか聞かないのかしら?」
「あんたが何しようとどうでもいい。それに……」
アントは外に向かって歩き出しながら呟く。
「この場であんたをどうにかしても、全部解決ってわけじゃなさそうだしな」
扉の側ではフェイトが立っていた。
「……‼︎」
やはり俺のことを警戒しているようだ。
「安心しろよ。傷一つ付けてない」
それだけ伝えて帰ろうとすると
「あ……あの……」
呼び止められた。
「?」
「この前のジュエルシードの暴走……助けてくれてありがとう……」
フェイトが頭を下げてくる。
「……この前、魔力を貸してくれてありがとな。危うく死ぬところだった」
お礼を言われたなら俺も礼を言っておこう。
「……うん」
顔を上げたフェイトはそう言うとすぐに母親のもとへ走って行った。
「戻るぞ、ルリ」
《了解です。ボス》
フェイトを見送ってから俺は転移を開始した。
フェイトは部屋に戻ってすぐに床に座りこんでいる母親を見つけた。
「……母さん‼︎」
「……」
プレシアは疲れて元気がなかった。
「……早くジュエルシードを集めに行きなさい……」
疲れ果てたプレシアはフェイトに命令を下す。
「でも、母さん……疲れて……」
「いいから行きなさい……」
「……わかりました」
すぐにジュエルシード集めを再開しようと扉へ向かう。
途中で足下に何か落ちてるのを見つけた。
「これは……血?」
アントはプレシアを訪ねた後、拠点の廃墟ビルに戻っていた。
だがたどり着くと同時に膝をついた。足下には血溜まりが出来ている。
「……ゔ、はあ……はあ……。傷が開いちまったか……」
軽々と躱しているわけではなかった。傷が開き始めているのをわかっていながら躱し続けるしかなかったのだ。少しでも集中を切らすとやられてしまうと思えるほど、プレシア・テスタロッサは手練れだった。
《ボス。これ以上動き回るのは危険です》
「……ああ、その通りだな。……ちょっと休ませてもらうか」
ボロボロの体のまま横になるとすぐに眠ってしまった。
「アント君……どこに行っちゃったんだろう……」
学校帰りにお見舞いに行ったなのはだったがアントの姿はどこにもなかった。
「きっとジュエルシードが発動したら来てくれるよ。元気出して、なのは」
ユーノがなのはを励ます。
「うん……」
なのはがそう返事した直後、修復されたばかりのレイジングハートが
なのはに呼びかける。
《マスター‼︎ ジュエルシードが発動しました‼︎》
「ユーノ君‼︎」
「うん‼︎ 行こうなのは‼︎」
なのは達が駆けつけてみると、ジュエルシードは樹を取り込んで周囲を無差別に破壊を始めていた。
そこにはフェイト達も到着していた。
フェイトはすぐに魔力弾を叩き込む。
だが放たれた攻撃はジュエルシードのバリアに弾かれた。
「このジュエルシード、バリア張れんのかい⁉︎」
「ッ……‼︎」
それを見たフェイトは魔力で作ったブーメラン状の刃で樹の根を次々と切り払っていく。
それに対してなのは上空へ飛び上がり砲撃魔法を放った。
そしてほぼ全ての根を切り払った後フェイトも砲撃魔法を放つ。
二人の砲撃はジュエルシードを即封印した。
だが、戦いはこれからだと言わんばかりに二人は向かい合う。
「……出来れば戦いたくないの。私はただお話がしたいだけ」
「……今回はあの人、来てないの?」
フェイトはなのはの懇願に答えることなく気になっていたことを口にする。
「アント君のこと? ……まだ来てないの」
なんでアントのことを気にしているのか疑問に思いながら答える。
「そう……もしかしたらあの血は……」
「え……?」
なのははフェイトが小声で何て呟いたか聞き取れなかった。
少し考え込んだフェイトだったがすぐに気を取り直してデバイスを構えた。
「……私はあなたと会話してる暇はない。ジュエルシードは私がもらう」
「……‼︎ させない、私はジュエルシードからみんなを守る。そしてフェイトちゃんとお話しするの」
言い終えると二人は戦いを始めた……かに思えた。
二人のデバイスは黒髪の何者かに取り押さえられた。
「僕は時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。詳しい事情を聞かせてもらおうか?」
少し短いですが、今回はキリがいいのでここまでにさせてもらいます。