「大人しく武器を下ろすんだ‼︎ ここでの魔法行使による戦闘は禁止されている‼︎」
管理局という言葉を聞いた瞬間、アルフはクロノに魔力弾を放ち土煙を巻き上げた。
フェイトは土煙に乗じてジュエルシードを持って逃げようと動き出す。
「させるか‼︎」
それを見たクロノはフェイトを射撃する。
「うっ……」
「フェイト‼︎」
魔力弾はフェイトを撃ち抜いた。
「今回は諦めて逃げるよ‼︎ フェイト‼︎ しっかりするんだ‼︎」
「う……だめ……。ジュエルシード……。母さんが……」
深い傷を負った様子のフェイトを連れて逃げようとするアルフをクロノは容赦なく追い討ちしようとする。
「逃すか‼︎」
クロノはフェイト達に照準を合わせ、撃ち墜とそうと魔力を練り上げる。
「だめ‼︎」
そうはさせないとなのははクロノの前に立ちはだかった。
「な⁉︎ 何を⁉︎」
「ダメなの‼︎ 撃たないで‼︎」
「どくんだ‼︎ 逃げられてしまう‼︎」
なのはとクロノが押し問答している間にフェイト達の姿は消えていった。
「よかった……」
「くっ‼︎ なんで邪魔をしたんだ‼︎ さては、君は奴らの仲間か⁉︎」
クロノはなのはにデバイスを向ける。
「あ……その……」
思わず体が動いてしまったが、この後どうするかまでは考えてなかったなのはは動揺してしまっている。
するとクロノの目の前にスクリーンが現れ、緑髪の女性が映った。
『どうやら訳ありのようね。詳しい話はこちらでしましょう。連れて来てもらえるかしら?』
「……了解」
このままでは拉致があかないと悟ったクロノはなのはを艦長のもとへ連れて行くことにした。
なのははアースラの中をキョロキョロしながら歩く。
「ユ、ユーノ君、ここは一体どこなの?」
「ここは時空管理局の次元航行船の中だよ」
「?」
ユーノの答えに理解できていない様子のなのは。
「簡単に言うと次元世界を自由に移動できる船だよ」
「……」
やっぱり理解できないの……。
なのはがユーノと話していると前を歩いていたクロノが指示を出した。
「その話は後にしてもらおう。バリアジャケットを解除するんだ。それと、君も元の姿に戻ってもいいんじゃないか?」
「?」
再度なのはの頭にクエスチョンマークが現れた。
「この姿を見せるのは久しぶりかな?」
ユーノの姿が人間になった。
「え?ええええぇぇぇええ⁉︎」
なのはが絶叫し、ユーノはそんななのはに困惑していた。
「あれ?初めて会った時にこの姿を見せてなかったっけ?」
「見てないの‼︎ えっ?ユーノ君人間だったの?」
慌てふためくなのはとユーノをクロノがあきれた様子で見ていた。
「ほら、こっちだ」
クロノが扉をノックする。
「艦長、二人を連れて来ました」
「どうぞ」
室内から声がするとクロノは扉を開けた。
クロノに案内された場所は微妙に和の雰囲気を醸し出したところだった。
その部屋の真ん中にさっき見た緑髪の女性がいた。
「初めまして。私は次元航行艦船アースラの艦長、リンディ・ハラオウンです」
「た、高町なのはです‼︎」
「……ユーノ・スクライアです」
二人は緊張していた。
「ふふっ、そんなに緊張しなくてもいいのよ。さて、話を聞く前にお茶とお菓子でもどうかしら?」
「あ、はい……」
勧められるままに差し出されたものを食べる二人。
頃合いを見てリンディは話を始める。
「何があったのか教えてもらってもいいかしら?」
そう聞かれてなのはとユーノはこれまでの出来事を説明した。
二人の話がフェイトと初めて出会った時になった。
「……その時に初めて黒い魔導師、フェイトという名の魔導師と遭遇したんです」
「そこで傭兵のアント君とも出会ったの」
「何⁉︎」
なのはがそう言った時、クロノが反応した。
「そ、それは本当か⁉︎」
クロノがなのはの肩を掴む。
「え⁉︎ えっと……その……」
突然のクロノの態度に驚くなのは。
「クロノ、落ち着きなさい」
「ですが‼︎ 艦長‼︎」
「気持ちは分かるわ。でも今は二人の話を聞きましょう」
「ッ……‼︎ すみません……」
リンディはなのは達に続きを促す。
「話を遮ってごめんなさい。続けてもらってもいいかしら?」
「は、はいなの……」
気を取り直して話を続けることにした。
アントを雇ったこと、フェイトとは常にジュエルシードを巡って戦っていたこと、ジュエルシードが暴走した時にアントが大怪我を負い病院で治療していたがいなくなってしまったこと。
そして今に至るまで全て話した。
「……なるほど。つまり相手がどんな存在なのかわかっていないというわけね」
「はいなの……」
「ちなみにジュエルシードがどんな物かは分かってる?」
「わかってないの……」
「じゃあその説明をしておくわね」
リンディとクロノはジュエルシードの説明をすることにした。
進化し過ぎた文明の危険な遺産。使用法によっては世界どころか次元空間さえ滅ぼしかねない危険な技術、それがロストロギア。
ジュエルシードはそんな品物のひとつで、次元干渉型のエネルギー結晶体である。
また複数発動させることで次元空間に影響を及ぼす次元震を引き起し、最悪の場合、いくつもの並行世界を壊滅させるほどの災害、次元断層のきっかけにもなりうる。
なのはとフェイトがジュエルシードを挟んで衝突した際に発生した閃光と衝撃、あれが次元震。
たったひとつのジュエルシードの、全威力の何万分の一の発動でもあれだけの災害が発生する。
悪意をもって発動させるものがいれば大変な事態になりかねないということを話した。
「そ、そんなに危険なものだったなんて……」
予想以上に危険な物だと知ったなのはは呆然としている。
「さて。一通り話したところで確認しておきたいんだが、そのアントと名乗る傭兵のフルネームと特徴を教えてもらってもいいか?」
クロノが質問する。
「僕たちが雇った傭兵の名前はアント・バーキン、黒髪黒目のなのはと同い年くらいの少年でした」
「なるほど、彼の可能性が高いわね」
「あの……アント君と知り合いなんですか?」
やけにアントを知っているような反応なのでなのはは質問してみた。
クロノはその質問に後悔と感謝の混じったような表情で答えた。
「……彼は……命の恩人なんだ」
「えっ?」
驚いているなのはにリンディが説明する。
「こことは別の世界でロストロギアを悪用して国を滅ぼそうとした犯罪者がいたのよ。
私達はすぐに駆けつけたけど、ロストロギアを使用した犯罪者は強すぎた。クロノはなすすべもなく殺されかけたの」
「こ、殺されかけた?」
「そ、そんな」
衝撃的すぎる事実に二人は呆然とした。
「でもクロノは間一髪で助けられた。傭兵アント・バーキンに。
彼は自分より遥かに強い敵にボロボロにされながらも勝利を収めた。その国では彼は英雄として讃えられているわ。
そして意識不明の重体で病院に搬送されて半年後、彼は病院を抜け出してどこかへ行ってしまったのよ」
「……」
二人は驚きのあまり声も出ない。
「僕はまだ彼にお礼すら言えていないんだ。だから彼に会えたら教えてほしい」
「わ、わかったの」
なのはは思わず返事をしていた。
リンディは仕切り直すように手を叩いた。
「彼の話はこれくらいにしてこれからの話をしましょう。ジュエルシードの回収作業は今後、時空管理局が全権を持つことになります」
「え、そんな……」
「これ以上は君達の身が危険だ。それぞれの世界で元通りに過ごすといい」
「……」
「まあ、突然そう言われても納得いかないでしょう。一晩ゆっくり考えてみて……」
「……ダメなの」
リンディが締めくくろうとするのをなのが遮った。
「……今までいっぱい考えてきたの。いっぱい決意したの。私はもう迷わないの」
なのははリンディの目を見て訴えかける。
「お願いします。私を……ジュエルシード集めに協力させてください」
「僕からもお願いです。なのはは強大な魔力を持っています。それはこれからもお役に立つはずです」
「……」
リンディは驚いていた。この歳でこれほど覚悟を決めている子は見たことがない。
それに一方的なお願いではなく相手の事情も考慮した申し出に感心していた。
「……わかったわ。ただし条件があります。指示を守ること、身柄を一時、時空管理局の預かりとすること。この条件が飲めない場合は協力を拒否します。いいわね?」
リンディの言葉になのはの顔が明るくなった。
「わかったの‼︎ ユーノ君、ありがとうなの‼︎」
「一緒に頑張ろう‼︎ なのは‼︎」
喜ぶ二人に対して、クロノはあまり嬉しそうではなかった。
「……よろしいのですか? 艦長?」
「彼女達は覚悟ができてるわ。大丈夫、万が一がないように私達でちゃんとサポートしてあげましょう」
それからなのは達は一度家に帰り、家族に事情を説明してしばらくアースラに住むことになった。なのは達は管理局のバックアップにより順調に回収作業を進めていった。
だがその間、アントから連絡が来ることはなかった。
そして管理局に協力を始めてから10日が経った。
「……アント君、どうしちゃったんだろう……」
「……」
二人がアントのことを心配していると突然周囲が慌ただしくなった。
「ジュエルシードの反応を確認‼︎ こ……これは‼︎」
「な⁉︎」
「なんてことを……」
モニターにはいくつかの竜巻の間を飛び回るフェイトの姿が映っていた。
フェイトは海に魔力を叩き込みジュエルシードを無理矢理起動させたようだ。
「無謀だな。起動させるだけで相当な量の魔力を使った筈だ。さらに暴走した六つのジュエルシードを封印するなど不可能に近い」
クロノは冷静に状況を把握した。
「た、助けに行かなきゃ‼︎」
なのはは急いで外へ出ようとする。
「だめだ‼︎」
そんななのはをクロノが静止した。
「このまま放置しておけば勝手に自滅するだろう。その後ジュエルシードを封印し彼女を捕らえる」
「そ、そんな……。でも‼︎ このままじゃフェイトちゃんが‼︎」
なのははリンディの方を見るがリンディは悲しそうにつげた。
「残酷に見えるでしょうけど、これが現実なのよ」
そんなリンディの言葉になのははうつむくことしかできなかった。
その時だ、モニターでフェイトがふらついているのが映った。
『フェイト‼︎』
使い魔のアルフはフェイトへ駆けつけようとするが一本の竜巻を抑え込んでいて身動きできない。
そしてそんなフェイトに竜巻が襲いかかる。
「フェイトちゃん‼︎ 避けて‼︎」
なのはは必死に呼びかけるが間に合いそうにない。
誰もが竜巻にやられてしまうだろうと思った。
しかしそうはならなかった。
フェイトに迫っていた竜巻が切り裂かれた。
「え?」
『あ……』
『お前、いつも何かしらピンチだよな』
フェイトは呆然と見つめる。
そこにいたのは
『久しぶりだな。元気?』
傭兵アント・バーキンだった。