バカは死んだら治るのか?   作:夏のレモン

19 / 70
そういうことかい

「……あ」

 

呆然とするフェイトの目にはアントが映っていた。

 

「すげーな。なんだよこれ。6個同時封印とか頑張りすぎじゃね?」

 

「……何で……ここに……怪我は……」

 

「怪我? 寝てたら治った」

 

《とは言っても1週間ほどずっと寝たままでした》

 

「ああ、あれな。まじ驚いた。軽く寝るだけのつもりだったのに気がついたら1週間後経ってるんだもんな」

 

だが会話している暇はなかった。すぐに次の竜巻が迫ってくる。

アントは竜巻を見ることもせずに叩き切った。

 

「なんか火山を思い出すな。まあ、これは自然災害じゃなくてロストロギアだけどな」

 

そう言うとアントは竜巻へ飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ア……アント・バーキン……」

 

突然のアントの登場にクロノもフェイトと同様に呆然としていた。

 

「……よかったの。アント君が助けてくれたの」

 

フェイトが助かったことに安堵しているとユーノが念話で話しかけて来た。

 

『なのは、今のうちに行くんだ』

 

『え? でも……みんなの迷惑になるんじゃ……』

 

迷うなのはにユーノが笑いかけた。

 

『僕はなのはが困ってるなら力になりたい。なのはが僕にそうしてくれたみたいに』

 

『……ありがとうなの。ユーノ君』

 

なのはは転送ポートへ走り出し、ユーノが魔力を送り込む。

 

「……っ‼︎ 待つんだ‼︎」

 

クロノが気付いた時はすでに手遅れ、なのははフェイトの結界内へ転送された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空からなのはがバリアジャケットを装着しながら降ってきた。

 

「アント君‼︎」

 

「お、来たか。少しサボらせてもらった。報酬から10日分くらい引いといてくれ」

 

「心配したの‼︎ どこに行ってたの?」

 

アントとなのはが話していると、ようやく竜巻の対処を済ませたアルフが襲いかかる。

 

「あんた‼︎ またフェイトの邪魔をする気だね‼︎」

 

だが後から来たユーノが防御した。

 

「待って‼︎ 僕達は戦いに来たんじゃない‼︎」

 

どうやらのんびりする暇はないみたいだ。

 

「おい、話は後だ。早く行ってやれ」

 

「わかったの‼︎」

 

なのははフェイトの下へ向かう。

 

「フェイトちゃん‼︎ 手伝って‼︎ 一緒にジュエルシードを止めよう‼︎」

 

なのははフェイトに魔力の供給を行う。

暖かななのはの魔力に包まれてフェイトの魔力は回復した。

 

「ふたりできっちり、はんぶんこ‼︎ せーので二人で封印しよう‼︎」

 

そう言うとなのはは上空へ飛んでいく。

なのはを見送るフェイトに俺は声をかけた。

 

「なのはが手伝ってくれるんだってよ。行ってこい」

 

「……うん‼︎」

 

フェイトはなのはと協力して封印することを決意して上空へ飛ぶ。

 

なのはは隣に来たフェイトに笑いかけた。

 

「いくよ‼︎ フェイトちゃん‼︎ せーの‼︎」

 

 

 

 

「ディバインバスター‼︎」

 

「サンダーレイジ‼︎」

 

暴走体は二人の砲撃により凄まじい轟音と共に消しとばされていった。

 

 

 

 

 

 

その場には6個のジュエルシードだけが残されていた。

 

封印を確認したなのははフェイトに改めて思いを伝える。

 

「フェイトちゃん‼︎ 私は‼︎ フェイトちゃんとお友達になりたい‼︎」

 

「……私は……」

 

フェイトも思いを伝えようとした瞬間、空から雷光が鳴り響いた。プレシアの次元魔法による攻撃だった。

 

「うにゃっ⁉︎」

 

「うわっ⁉︎」

 

「うっ……‼︎ えっ? ……あれ?」

 

だが雷は誰にも当たることなく逸れていった。

 

「あ、危なかった……」

 

アントはとっさにルリを上空へ放り投げたのだ。放り出されたルリは避雷針の役割を果たした。

 

《ボ、ボス……いくらなんでも酷いです……》

 

「いやー、つい反射的に動いてたわ。あとで整備してやるから勘弁してくれ」

 

アントはルリに詫びを入れてからフェイトの方を向いた。

 

「どうにもせっかちな母親だな。今は帰りな、どうせこのままじゃ話もできない」

 

「……」

 

フェイトが少しだけ迷ったようなそぶりをしていると、再び空から雷光が鳴り響いた。

 

しかし雷は誰にも当たらず逸れていく。ルリはまた避雷針にされた。

 

《ボス……》

 

「よし分かった。しっかり時間をかけた整備で手を打とうじゃないか」

 

 

アントとルリがコントをしている一方で、プレシアが自分を急かしていると思ったフェイトはすぐにジュエルシード回収に動き出した。

 

しかし、フェイトがジュエルシードに伸ばした手を転送されて来たクロノが掴む。

 

「させるか‼︎」

 

「ッ……‼︎」

 

「邪魔するんじゃないよ‼︎」

 

そこへアルフが突っ込んで行き、クロノを蹴り飛ばした。

 

「うぐっ‼︎」

 

吹っ飛ばされたクロノはとっさに三個のジュエルシードを手にしていた。

 

「くぅ‼︎ 持って行かれた‼︎」

 

アルフは怒りの声を上げるがもう逃げることしかできない。

 

二人が去った海はとても静かだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、アースラに回収されたなのはとユーノはリンディに説教されていた。

 

「貴方達、自分が何をしたのか分かってる? とても危険なことをしたのよ。しかもこちらの指示に従うという条件を無視して」

 

「はい……」

 

「ごめんなさいなの……」

 

「もぐもぐ……まあ、そんなに怒らないでやってあげて欲しい。もぐもぐ……あ、お茶もらえる?」

 

「……あなたは何をやっているのかしら?」

 

「血が足りなくて。ちょうどいいからレバニラ作った」

 

「……まあいいわ。とにかく、こんなことは二度としないように。いいわね?」

 

「……わかりました」

 

「もうしないの……」

 

二人の説教がひと段落したのを見計らって、クロノがアントに話しかけた。

 

「……アント、僕は君に言わなきゃいけないことがあるんだ」

 

「ん?」

 

そう言うとクロノは頭を下げる。

 

「すまなかった‼︎ あの時、本来なら僕が戦うべきだったんだ‼︎」

 

「……?」

 

「クロノ、いきなりそんなこと言われても理解できないわよ」

 

リンディは改まってアントの方を向いた。

 

「アント、この前クロノを助けてくれたこと、今更だけど感謝させてちょうだい。本当にありがとう」

 

リンディは感謝を示して頭を下げた。

 

「……なんかやったっけ?」

 

《ボス、あの筋肉ダルマの件かと》

 

「あー、あったな。そんなことも」

 

ようやく思い出したが別に感謝されることでもないと思い直す。

 

「ま、気にすんな。どうせ終わったことだし」

 

「そ、そんな訳には……」

 

クロノが食い下がろうとするのをアントは受け流した。

 

「そんなことよりこれからどうするんの?」

 

「そんなことって……」

 

クロノは結構ショックを受けていたがすぐに仕事モードになった。

 

「……艦長。調査の結果、おそらく黒幕はプレシア・テスタロッサだと判明しました」

 

それを聞いたリンディも仕事モードに切り替えた。

 

「詳しい内容を話してもらえるかしら?」

 

「はい。とは言ってもまだそんなに多くは情報は集まっていません。分かっているのは、彼女が違法実験の事故により放逐されたということくらいです。何を目的としているのかは現在も調査中です」

 

「なるほど、では引き続き調査を続けてちょうだい」

 

「了解」

 

「よし、しばらく暇になりそうだな。食後のデザートを食べに翠屋へ行こう」

 

そう言って立ち上がったアントにリンディが声をかけた。

 

「待ってちょうだい。貴方にはまだ聞きたいことがあるの」

 

「……いやー……今はちょっと……」

 

「できれば今すぐ知っておきたいの、なるべく早く済ませるわ」

 

「……」

 

この後アントは根掘り葉掘り聞かれ、結局翠屋へは行けなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side:時の庭園

 

「貴方は一体何をしていたのかしら?これだけじゃ足りないって言ったでしょう‼︎ 何で言われたこともできないの‼︎」

 

怒るプレシアにフェイトは縮こまるしかなかった。

 

「……次はないわ。失せなさい」

 

本来なら鞭を打ちたいところだが、すでに2発もの次元魔法を使ったプレシアにそんな気力はなかった。

 

「……はい」

 

意気消沈といった様子で部屋を出るとアルフが心配そうに待っていた。

 

「大丈夫かい? 管理局にやられた傷だって癒えてないんだ。無理しちゃダメだよ」

 

「うん……ありがとう……アルフ……」

 

フェイトはアルフに感謝を述べるが限界がきたのか倒れてしまった。

 

「な⁉︎ フェイト‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

フェイトをベットに運んだアルフは次第にプレシアへの怒りを募らせていった。

 

「フェイトがこんなになるまで頑張っているっていうのに、あの鬼ババアはまだ頑張らせるきかい? ふざけるんじゃないよ‼︎」

 

アルフはもう我慢の限界だと言わんばかりにプレシアの下へ駆けて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

プレシアは地下でジュエルシードを見つめながら呟いた。

 

「もう時間がないわ……わたしにも、アリシアにも」

 

そこへアルフが訪れた。

 

「プレシア‼︎」

 

プレシアはチラッとアルフを見たが興味なさげに視線を外した。

 

「……貴方に用は無いわ。とっととジュエルシードの回収に行きなさい」

 

「そうはいくものかい‼︎ アンタに文句を言いに来たんだ‼︎

アンタはフェイトに一言の労いすらないのかい?それにあの次元魔法はなんだい? あのアントとかいう奴が逸らしてくれなかったらフェイトに当たっていたじゃないか‼︎」

 

「そりゃそうよ。私は狙って撃ったんだもの」

 

「な⁉︎ ……狙った? 狙っただって⁉︎」

 

「いつまで経ってもジュエルシードの回収に動かないからお仕置きしようとしたまでよ。邪魔されてしまったけどね」

 

「そ、そんな……あの子はあんなに頑張ってるじゃないか‼︎アンタはあの子をなんだと思ってるんだい‼︎」

 

問い詰めるアルフにプレシアは素っ気なく答えた。

 

「あの人形がどうなろうと知ったことじゃないわ」

 

「に……人形? ……フェイトが?」

 

プレシアの人形という言葉にアルフの中で何かが切れた音がした。

 

「そういうことかい、やっとわかったよ……アンタはフェイトのことなんてまるで興味がなかったんだね? ……ッ‼︎こんな奴のためにフェイトはあんなにボロボロになるまで……ッ‼︎」

 

アルフはプレシアに襲いかかった。

 

「許せない‼︎ フェイトに恨まれたっていい‼︎ この場でアンタを始末してやる‼︎」

 

だがプレシアはアルフが飛びかかってくるのを予測していたため、あらかじめ練っておいた魔力弾をぶつけた。

 

「うっ‼︎」

 

その魔力弾は正確に急所を撃ち抜いていた。

 

「私に楯突くような駒なら要らないわ。きっちり消滅させる」

 

倒れるアルフを抹殺しようとプレシアは近づいていった。

 

「……くぅ‼︎」

 

アルフは抹殺される前に転移で逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を覚ましたフェイトは周囲にアルフがいないことにすぐに気がついた。

 

すると、そこへプレシアが現れる。

 

「何を休んでいるのかしら?失態続きの貴方に休みなんていらないでしょう? 早く行きなさい。そして最低でも5個は確保してくるまで戻ってくるんじゃないわよ」

 

「か、母さん。アルフは……」

 

「あの子なら逃げたわ。そんなことはどうでもいい、行きなさい」

 

「……はい」

 

フェイトは嘘だと気付いていたが母親の命令には背けなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プレシアからなんとか逃げ出したアルフだったがもはや瀕死の状態だった。

 

「フェイト……ダメだ……。逃げるんだ……」

 

アルフは力尽きて意識がなくなった。

 

「あら? この子、大怪我してる‼︎ 鮫島‼︎ 急いで治療して‼︎」

 

そんなアルフを偶然通りかかったアリサが保護した。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。