フェイトの使い魔のアルフがアリサに保護されているかもしれないという報告が入ったので俺となのはとユーノはアリサの自宅を訪ねることになった。
「でけぇ……。何人住んでんだよ……」
馬鹿みたいにでかい豪邸の前ではアリサとすずかが待っていた。
「あ! アント君も来てくれたんだ!」
「あら? アントも見に来たの?」
「ああ、暇だからな」
「ふーん。ま、いいわ。こっちよ」
アリサに案内された檻の中ではアルフが犬の姿でうずくまっていた。
心配するなのはにアルフは見向きもせずに背を向ける。
『ここは俺とユーノに任せてくれ』
『わかったの』
「アリサちゃん、すずかちゃん。あっちでお話しない?」
「そうね、いつまでもここにいたらこの子の気が休まらないだろうし・・・」
「うん、そうしようか」
念話で指示した通りになのははアリサ達を連れて部屋を出ようとする。
「あら?アントは来ないの?」
「ユーノがここに居たがってるからな。付き添いだ」
「きゅ!?」
突然の無茶振りに動揺したユーノだがすぐにアドリブを効かせて檻の前を行ったり来たりしている。
「……そうみたいね。わかったわ、ユーノが檻に入らないように見張っといてちょうだい」
「ああ」
アリサが去ったことをしっかり確認してから俺はアルフに話しかける。
「よう、随分酷い目に遭ったみたいだな?」
俺の言葉を聞くとアルフはキッとこちらを向き歯をむき出して威嚇してきた。
「……なんでだい?」
「ん?」
「なんであの時‼︎ プレシアにとどめを刺さなかったんだい‼︎ 私は知ってるんだ‼︎ アンタはプレシアを一度追い詰めたそうじゃないか‼︎」
「え⁉︎」
ユーノがこちらを見てくる。
「ど……どういうこと? 一度追い詰めた?」
「……」
「あの時アンタがプレシアを始末していればッ‼︎ フェイトがあんなにボロボロになることはなかった‼︎ あんな奴のために頑張ることなんてなかったんだ‼︎ 黙ってないでなんとか言ったらどうだい‼︎」
……アルフの言うことも一理ある。だが……
「……なあ、家族を失うってどういうことか知ってるか?」
「え……?」
「病気、事故、裏切り、何でもいい。家族がいなくなるってことはな? この世界に自分の居場所がなくなるってことなんだ」
実際、俺に帰る場所はない。それでも今日まで生きてこれたのはかつての思い出があったからだ。
でも、フェイトは違う。
「もしも、俺があの場でプレシアを……フェイトの居場所を奪ったら、あいつは生きていくことは出来なかっただろうな」
「そ、そんなことは……」
「ないと断言できるのか? 一番近くで見てきたお前ならわかるはずだ。フェイトにとってプレシアは生きる理由そのものだ」
「う……だけど……っ‼︎ あいつは……‼︎」
「そうだな、プレシアはフェイトのことをなんとも思っていない」
「……っ‼︎ なら…… 私はどうすりゃよかったんだ‼︎ どうすりゃ……フェイトを救えたんだ……」
アルフは泣き叫んだ。無力な自分を悔やむように。
「……多分、もう大丈夫だろう」
「……え?」
「フェイトはなのはと出会った。戦いながらも自分を理解してくれる存在と巡り会えた。きっと大丈夫だ」
俺は涙を流すアルフに語る。
「お前がどうすべきだったかなんて答えるつもりはない。ただこれからすべきことなら教えてやる」
「すべき……こと?」
「……側にいてやれ。そして自分はフェイトを大切に思っていると伝えてやるんだ。ちゃんと言葉にしてな」
「……」
「わかったらとっとと出てきな。それともずっとここにいるか?」
「っ……‼︎ バカ言うんじゃないよ‼︎ ……私はずっとフェイトの側にいる‼︎ あんたに言われるまでもないんだよ‼︎」
アルフは傷の痛みでフラフラになりながら立ち上がった。
「連れて行く?」
こいつは一体何を言ってるんだと言わんばかりの顔でアリサが聞き返してきた。
「ああ、どうやら懐かれたみたいなんだ。ほら、この通り」
「⁉︎……ワンワン‼︎ 」
うん、無茶振りにちゃんと応えてくれるいい使い魔だな。
「……納得いかないけど本当に懐いてるみたいね。でも何も今すぐ連れて行くことはないんじゃないかしら? 怪我も治りきってないんだし」
アルフはアリサの言葉に焦ったようにより激しく吼えたてる。
「ワンワン‼︎ ワン‼︎ ワオーン‼︎」
「いや、どうやらすぐに付いてきたいらしいな」
「うーん、アリサちゃん。これなら行かせてあげた方がいいかも。置いて行かれたらストレスになっちゃうだろうし……」
「そうね……。何でこんなに懐いてんのか分からないけど……」
アルフがこちらを恨みがこもった目で見つめながら、念話で話しかけて来た。
『私にこんなことさせるなんて……。覚えておきな……』
何でだ。俺はこんなにも協力的だというのに……。
せっかくだからモフモフしておく。
『あ……ちょ……やめ……』
『大人しくしてな。ここで嫌がったらお前は当分この家で暮らすことになるぞ』
『く……くぅ……‼︎』
「本当によく懐いてるね。アント君が触ってもピクリとも動かないよ」
「まあな」
『こいつっ……‼︎いつか殺す……!!」
俺たちはアルフを連れて帰ることになった。
「もう少しゆっくりしていけばいいじゃない」
「にゃはは、今日はちょっと忙しいの。また今度ね」
さて、用事も済んだし。行くか。
「バイバイなの‼︎」
なのはが先を歩いて行く。
「いくぞ、付いて来い」
「……ワン」
「あ、ちょっと……」
アルフにしっかりリードをつけて去ろうとするとアリサに引き止められた。
「ん?」
「……その……ありがとう……」
……最近身に覚えのない感謝が多いな。
「ふふっ、アリサちゃん、ちゃんと言わないと分からないよ。
あのね、アント君になのはちゃんのこと頼んだことあったでしょ? そしたら次の日からなのはちゃんがいつも通りになってたんだ。アント君が相談に乗ってくれたんだよね? アリサちゃんはそのお礼を言いたかったんだよ」
「か……勘違いしないでよね‼︎ 頼んだのは私なんだから言うべきことを言っただけよ‼︎」
……ツンデレ?
「私からもお礼を言わせてもらうね? ありがとう、アント君」
「……ああ」
まあ、感謝されるのも悪くない。
「じゃーな」
「うん、またね‼︎」
「今度はちゃんとゆっくりしていきなさいよ‼︎」
その後俺達はアースラにてアルフから何があったかを聞き出した。
その結果管理局は任務をジュエルシードの回収から、事件の元凶であるプレシアの逮捕へと変更になった。
「なのは、君はどうするんだ?」
クロノの問いになのはは迷うことなく答える。
「私はフェイトちゃんを助けたい。それにまだ友達になってくれるか返事を聞いてないの」
なのはの言葉を聞いたアルフは涙を流した。
「……ああ。やっとわかったよ……。あんたが大丈夫だって言ったわけが……」
「まだ何も終わってないけどな。大変なのはこれからだ」
「もちろんわかってるよ。……なあ、何でここまでしてくれたんだい?」
「……何かやったか?」
「何言ってんだい。あんたはフェイトのために行動してくれたじゃないか」
「……別に、ただの気まぐれだ」
そう、気まぐれだ。理由なんてそれで十分だろう。
「そうなのかい? でも……」
まだ何か言いたそうにしているが、強引に話を切り替えることにする。
「さーて、少しの間、暇ができたな。翠屋で飯にするか」
「あ、待って‼︎ 私も行くの‼︎ 」
それから少しの間、なのはは日常に戻った。
そして早朝、なのははユーノを連れて再び旅立った。途中、アルフと合流したなのは達がたどりついたのは臨海公園。
朝焼けの空の下、初めて出会った時と同じように、ふたたびめぐり合う二人の魔法少女。
「フェイト‼︎ お願いだ‼︎ プレシアから離れておくれ‼︎ このままだとフェイトが傷つくばかりじゃないか‼︎」
アルフは必死に説得しようとするが、フェイトは寂しそうに首を振る。
「それでも……私はあの人の娘だから……。裏切ることはできない」
「フェイトちゃん‼︎」
そんなフェイトになのはが声を上げた。
「逃げればいいってわけじゃない。捨てればいいってわけじゃもっとない」
なのはは静かにバリアジャケットを装着し、ジュエルシードを見せる。
「私が勝ったらフェイトちゃんのジュエルシードを渡して欲しいの、そのかわりフェイトちゃんが勝ったら私のジュエルシードをあげる」
「……」
フェイトは無言で同意を示し、戦闘態勢に入った。
「わたしたちの全ては、まだはじまってもいない……。
だから、本当の自分をはじめるために……始めよう、最初で最後の本気の勝負!!」