バカは死んだら治るのか?   作:夏のレモン

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目を見開いてよーく見ろ。

なのは達は一足先にプレシアの計画を阻止するために出ていった。

 

「……」

 

ここは医務室。

俺とアルフの前にはフェイトが横たわっている。

ショックで倒れたフェイトはまだ目を覚まさない。

 

「フェイト……」

 

アルフはフェイトの手を握る。

 

「フェイト……私は何があろうとあんたの味方だよ。これまでもそうだし、これからもそうさ……」

 

そう言うとアルフは立ち上がった。握りしめた拳からは血が滲み出ており、アルフの怒りを表していた。

 

「アント、フェイトのこと頼んでいいかい? ちょっとあのババアを殴り飛ばしに行ってくるよ」

 

「はいよ」

 

アルフが出て少し時間が経ったのち、目を覚ますフェイト。

 

「お、起きたか」

 

「……」

 

だがフェイトは返事をすることもなく天井を見つめている。

その瞳に光はなかった。

 

本当に人形みたいになっちまってるな。本来ならしばらく放って置くんだが……

 

「人形ね……」

 

「ッ……」

 

人形という言葉に少し反応を示す。

 

「信じてた存在にそう言われちゃあそうなるだろうさ、逃げても誰も文句は言わない」

 

「……逃げる」

 

フェイトは無感情に言葉を発する。

 

「そうさ、辛いことからなら逃げたっていいんだ。このまま逃げておけば二度と母親に会うこともない」

 

会うことはない。その言葉にフェイトは先程より明らかに大きな反応を示した。

 

「……嫌だ……」

 

「嫌だ? なんで? 会っても傷つけられるだけだろ?」

 

「……」

 

フェイトは黙り込んでしまった。だがそれは先程のような虚無感による沈黙ではないように見える。

 

しばらくしてフェイトが口を開いた。

 

「……逃げればいいってわけじゃない。捨てればいいってわけじゃ、もっとない……」

 

それは戦いの前、なのはが言っていた言葉だった。

 

「……私は……まだ……始まってもいなかった」

 

フェイトの瞳に光が戻り始める。

 

「私は……今まで散々逃げてきた……。もう終わらせる……これまでの……信じるだけの自分を……」

 

「……わかってるだろうが……拒絶されるぞ?」

 

「ッ……‼︎ ……それでも……私は行かなきゃいけない。私は母さんが大好きだから」

 

そう言って起き上がるとバルディッシュを手にした。その目にはもはや迷いはなかった。

 

「なら、話は早いな。行くぞ」

 

ふぅ、どうやら立ち直ったみたいだ。まだプレシアに追いつけるはず……

 

俺は立ち上がりプレシアのもとへ行こうと扉に手をかけるとフェイトの視線を感じた。

 

「あの……名前……」

 

名前? そういえば名乗ったことなかったな……

 

「アント・バーキン、傭兵だ」

 

「……私はフェイト・テスタロッサ。その……ありがとう」

 

ほんと、最近唐突な感謝が多すぎる。

 

「……ああ。そんなことより早く行くぞ」

 

「うん‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのはは時の庭園で戦っていた。途中、アルフも合流したモノの、敵の物量作戦に、進むことができない。

 

「数が多すぎるの‼︎」

 

「くぅ‼︎」

 

ユーノは得意のチェーンバインドで敵を捕らえる。

 

何とかしないとと思うものの何ともできない3人。

その時、敵の一体がユーノの魔法から脱出し、なのはに襲いかかる。

 

「まずい‼︎ なのは‼︎ 避けて‼︎」

 

ユーノの言葉に反応するなのはだが、敵の攻撃は目前まで迫っていた。

 

「サンダーレイジ‼︎」

 

「え⁉︎」

 

なのはを襲った傀儡兵が魔法でなぎ倒された。

魔法が飛んできた方向にはフェイトの姿があった。

 

フェイトが来てくれたことに笑顔になるなのは。

 

「フェイトちゃん‼︎」

 

だが喜びも束の間、壁を打ち破って今までとは違う傀儡兵が現れた。

強力なバリアと、背中に2門のキャノンを持った強力な傀儡兵だ。

背中のキャノンが二人を狙う。

 

「くっ‼︎ 今までより強そうなの‼︎」

 

どうやって倒すか考えるなのはにフェイトから思いもよらない言葉が発せられた。

 

「だけど、二人でなら」

 

一瞬驚いたなのはだったが、すぐに笑顔で頷く。

 

「いくよ‼︎ フェイトちゃん‼︎」

 

「うん‼︎」

 

二人は息を合わせて砲撃を放った。

 

「ディバインバスター‼︎」

「サンダーレイジ‼︎」

 

砲撃は傀儡兵を捕らえた。

 

「せーの‼︎」

 

掛け声に合わせて二人は力を解放する。その力は、時の庭園を打ち破った。

 

「フェイト‼︎ よかった……よかったよぉぉ‼︎」

 

フェイトの復活を喜ぶアルフ。

 

「心配かけてごめんね。ちゃんと自分で終わらせて、始めるよ。本当の私を」

 

その姿を見つめるなのはの瞳にも涙が流れた。

 

 

フェイトが合流したところでプレシアの所へ向かおうとするなのは達だったが、ユーノはふと気付いた。

 

「……あれ? アントは?」

 

「え……? あれ? さっきまで後ろに……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アントは走っていた。魔力量が少ないため移動手段が走るしかないアントはとてつもない速度で飛んでいくフェイトに置いて行かれてしまったのだ。

 

「ぜぇ……ぜぇ……はぁ……はぁ……」

 

《格好つきませんね? ボス》

 

「うるせえ……こんなことならバイク持ってくりゃよかった……」

 

幸い傀儡兵はほぼ全て倒されているため戦闘することはない。

 

《……ボス、プレシア・テスタロッサをどうするのですか?》

 

「なんだ? いきなり」

 

《お言葉ですが、彼女はこのまま行かせた方がいいのでは?》

 

「……そいつを決めんのは俺じゃねえ、あいつだよ」

 

《フェイト・テスタロッサですか?》

 

「いいや、違う。プレシアだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず今すぐにすべきことをしようとなのは達は先へ進み、途中クロノと合流した。

 

そしてフェイトはプレシアのもとへ辿りついた。

 

「何しに来たの?」

 

プレシアはフェイトに向き直る。その瞳は冷たく、フェイトは怯んでしまう。

 

それでもフェイトは引き下がらない。

 

「母さんに……話があって来ました」

 

「消えなさい。もう貴女には用は無いと言ったはずよ」

 

「私は母さんに言いたいことがあります」

 

フェイトは一歩、前に進み出た。

 

「私は、アリシア・テスタロッサではありません。あなたの作った、ただの人形なのかも知れません」

 

フェイトの言葉に目を見張るプレシア。

 

「だけど、私は、フェイト・テスタロッサは、あなたに生み出してもらって、育ててもらったあなたの娘です」

 

だがプレシアは嘲笑で返した。

 

「だから何? 今更あなたを娘と思えというの?」

 

「あなたがそれを望むなら、私は世界中の誰からも、どんな出来事からもあなたを守る。私が、あなたの娘だからじゃない。あなたが、私の母さんだから」

 

答えを求めるかのように、手を差し伸べるフェイト。

 

「……くだらないわ」

 

「⁉︎」

 

フェイトの差し伸べた手を拒絶し、プレシアはジュエルシードを発動させようとデバイスを振り上げた。

 

バキュン‼︎

 

だがそのまま振り下ろされるデバイスを何者かの魔力弾が弾いた。

 

「な⁉︎」

 

「ま……間に合った……」

 

扉の前には銃を構えるアントが立っていた。間一髪間に合ったのだ。

 

「あ……貴方は……あの時の……っ‼︎」

 

プレシアの表情が驚きから怒りへと変わっていく。しかしアントには特に怯んだ様子はない。

 

「ああ、そういやあんたにも名乗ってなかったな。俺はアント・バーキン。よろしく」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side:プレシア

 

よりによってこのタイミングで出くわすなんて‼︎ でも止まるわけにはいかない‼︎

 

「く‼︎」

 

アントの自己紹介に返答することなくすぐさまデバイスを拾い魔力弾を放つ。

 

「さて、自己紹介も終わったし本題に入ろう」

 

アントはかわしながらプレシアに話しかけた。

 

「あんた今、逃げようとしたな?」

 

「何を馬鹿な……」

 

「誤魔化すなよ。フェイトの思いを知って逃げようとしただろ」

 

逃げる? 私が?

 

「そんなわけないでしょう? 何で私があの人形から逃げなきゃならないのかしら?」

 

「怖かったからだろ」

 

「なんですって?」

 

「デバイスを振り上げた時、あんたは必死な表情をしていた。まるでこれ以上この場にいることを恐れるかのように」

 

「黙れ……」

 

「これは俺の推理だけどな、あんたフェイトのことを人形に見えなくなったんだろ?」

 

「黙れ‼︎」

 

そんなわけない‼︎ フェイトはただの人形よ‼︎

 

「怖いか? フェイトを娘だと認めるのが。まあ、そりゃそうか。フェイトを娘だと認めちまったらアリシアを裏切ることになるもんな」

 

「いい加減に……」

 

デバイスに大量の魔力を練り上げる。

 

「黙りなさい‼︎」

 

私は砲撃を放った。だが砲撃は捻じ曲げられ、あらぬ方向へと飛んで行く。

 

「黙らねぇよ」

 

目の前にアントが迫っていた。

 

「ッ‼︎」

 

魔力弾を撃とうとするがデバイスを弾き飛ばされる。

 

「くぅっ‼︎」

 

プレシアはアントを睨みつけるが、アントはスッと横にずれた。

 

「目を見開いてよーく見ろ。まだあいつが人形に見えんのか?」

 

「あ……」

 

プレシアは見てしまった。こちらを心配そうに見つめるフェイトを。

 

「違う……違うわ……そんなわけ……」

 

「違わない。あいつは正真正銘、あんたの娘だ」

 

……娘……フェイト……。

 

「あ……ああ……あああああああああああっ‼︎」

 

プレシアは顔を手で覆い崩れおちた。

 

その時だ、ジュエルシードが暴走を始めた。

先程から放たれていたプレシアの魔力に反応してしまったのだ。

 

「母さん‼︎」

 

「ダメだフェイト‼︎ 危ない‼︎」

 

足場が崩れ、フェイト達は離れていく。

 

 

 

「……逃げなさい……手遅れになるわ」

 

床に座りこみ、うつむいているプレシアはアントに逃げるように促す。

 

「嫌だね。まだあんたがどうするか聞いてない」

 

「……」

 

「言っとくが、あんたが答えを出すまで動くつもりはない。だから決めろよ、あんたは……どうしたいんだ?」

 

「私は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side:なのは

 

私達は無事に脱出できた。だけど……

 

「アント‼︎ 母さん‼︎」

 

アント君とプレシアさんがどうなったのかわからない……。

 

「アント……」

 

「艦長‼︎ あと少しだけ待ってください‼︎ 奴は絶対に生きて戻ってくる‼︎」

 

クロノ君がアースラを引き止めてくれているけど、もうそんなに時間は残っていない。

そうこうしているうちに時の庭園は崩れていく。膨大な魔力によって空間が歪み始めた。

 

『……もうこれ以上は危険よ。退却します。貴方達、アースラに戻りなさい』

 

「でもっ‼︎」

 

『クロノ。これは命令です。帰還しなさい』

 

「……はい」

 

『貴方達もです』

 

「っ……‼︎」

 

「……行こう……これ以上は僕達も危ない」

 

「わかったの……」

 

クロノ達はアースラへ転送された。

全員が揃ったと確認したリンディは命令を下す。

 

「よし、移動を開始しなさい‼︎」

 

「艦長‼︎ 何者かがこちらへむかっています‼︎」

 

移動命令を出した瞬間、モニターを見ていた局員の一人が声を上げた。

 

「え⁉︎」

 

「まさか‼︎」

 

なのは達はモニターを凝視すると確かに何かが迫ってくるのが映っていた。

 

「アント君‼︎ アント君だ‼︎」

 

「何してるんだ‼︎ 早く回収しろ‼︎」

 

そして転送ポートにアントの姿が現れた。

 

「アント‼︎」

 

「よかった‼︎ 間に合ったんだね‼︎」

 

アントに駆け寄るなのは達だったが、近づくにつれ転送されてきたのはアントだけではないと気づいた。

 

「な⁉︎ プレシア⁉︎」

 

「アリシアのポットもだ‼︎」

 

局員達が騒然とする中、アントは平然と歩き出す。

 

「ああ、疲れた。少し寝てくる」

 

そう言い残すとプレシア達を置いてどこかへ行ってしまった。

 

 

 

 

 

 




ご意見をもらったので追記させてもらいます。
最後の場面ではアントは何回か死に戻りをしてました。プレシアとアリシアを運びながら脱出をするのは流石に死に戻らないと無理ですからね。
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