バカは死んだら治るのか?   作:夏のレモン

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なぜこうなる

 

 

 

フェイト達が管理局へ向かってから数日経った。

アントは現在休暇を楽しんでいる。

 

「ふ〜、ここの温泉も悪くない……」

 

《本当に温泉好きですね。ボス》

 

「まあな。観光といえば絶景と温泉だ」

 

名所巡りは最高だ。

だがやっぱり一番インパクトがあったのは翠屋のシュークリームとコーヒーだな。

 

「……なんか久しぶりに翠屋の飯が食いたくなってきたな」

 

《最後に食べたのは先週ですからね》

 

「あー、いつの間にそんなに経ってたか。そろそろ海鳴市に戻ってみるか」

 

《了解です。ボス》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海鳴市に戻ってきたアントはまず、この世界での拠点である廃墟ビルへ向かう。

だが廃墟ビルの出入り口にはスーツを着た男二人が門番のように立っていた。

 

「……? 誰だ? あいつら?」

 

明らかに堅気じゃない。ヤクザかな?

極道とかならちょっと見てみたい

 

これまでマフィアしか見たことのない俺は好奇心で忍び込んでみることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一階の窓から入り込む。見張りには気付かれていない。

見張りにバレないように散策すると三階の部屋から話し声が聞こえてきた。おそらくそこにヤクザの頭がいるのだろう。

だが目的の部屋のドアには見張りがいる。一旦外に出て窓から覗くとしよう。

 

「どれどれ?」

 

『へへっ、さあお嬢ちゃん、お兄さんと楽しいことしようか』

 

『いや‼︎ 来ないで‼︎ 変態‼︎』

 

『やめて‼︎ アリサちゃんに乱暴しないで‼︎』

 

「……んん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間前:

 

学校帰り、アリサ達はいつものように帰宅していた。

 

「今日のテストどうだった? すずか、なのは」

 

「私は80点だよ」

 

「……36点なの」

 

「なのはちゃん、国語苦手だもんね」

 

「うう……」

 

「なのはは相変わらずね。ねぇ、今度みんなで勉強会しない?」

 

「そうだね。じゃあアント君も誘ってみない?」

 

「にゃっ⁉︎」

 

突然アントの名が出てきてビクッとするなのは。

 

「いいわね。でもアントってどこの学校かしら?」

 

「うーん。なのはちゃん知ってる?」

 

「し、知らないの……」

 

当然だ。傭兵であるアントが学校に通うわけがない。

ましてや最近では旅行と称してどこかへ行ってしまい、なのはも会えていない。

 

「なのはも知らないの? じゃあ今度会ったら聞いてみようかしら」

 

「そうだね。アリサちゃん、最近アント君に会えなくて寂しそうだったもんね」

 

「えっ⁉︎」

 

「は、はぁ⁉︎ 寂しいわけないでしょ⁉︎ ただアントが連れて行った犬がどうなってるか気になってるだけよ‼︎」

 

「そ……そう。よかったの……」

 

ホッと息をついたなのは。だが何がよかったのか自分でも理解できてはいない。

 

「あっ‼︎ 今日はお店のお手伝いしなきゃいけないからここで帰るの」

 

「あら、じゃあここでお別れね。また明日ね、なのは」

 

「じゃあね、なのはちゃん」

 

「うん‼︎ また明日ね」

 

 

 

 

 

 

 

そうしてなのはと別れたアリサ達がしばらく歩いていると、突然複数の車に囲まれた。

 

「え⁉︎」

 

「な、何⁉︎」

 

車から降りてきた男達がアリサ達を捕まえる。

 

「ちょっと‼︎ 何よあんた達‼︎ すずかを離しなさい‼︎」

 

「アリサちゃん‼︎」

 

「静かにしろ‼︎ おい‼︎ サッサと車に押し込め‼︎」

 

 

 

 

 

side:アリサ

 

私とすずかはどこかの廃墟ビルに連れ込まれ、両手両足を縛られてしまった。

 

「あんた達‼︎ こんなことしてただで済むと思っているの‼︎ 私達を解放しなさい‼︎」

 

「黙れ」

 

拳銃を突きつけてきた。

 

「ひっ⁉︎」

 

思わず声が出てしまう。

 

「大人しくしていろ。次大声を出したら殺す」

 

「ッ……‼︎」

 

「……大丈夫だよアリサちゃん、きっとすぐに助けが来るよ」

 

「すずか……そうね、きっと直ぐに助けは来るわ」

 

すると誘拐犯の一人が気持ち悪いものを見るかのような目でこちらを見てくる。

 

「化け物風情が友達ごっこか。ふん、滑稽だな」

 

「ッ⁉︎」

 

「え? 化け物?」

 

「なんだ、知らないのか。まあ、そりゃそうだよな。知ってたら近づくわけがないしな」

 

「さっきから何を言ってるの……? 化け物って誰の……」

 

「やめて‼︎」

 

すずかが真っ青な顔で叫んだ。

 

「……ごめんね、アリサちゃん。でもこれ以上は聞かないで……お願い……」

 

「……わかったわ」

 

何かを恐れているかのような様子で言ってきたので私は了承した。

多分すずかは何かを隠している。それを聞かれるのが怖いんだろう。

 

「……でもこれだけは言わせて。私達は何があっても友達よ」

 

「アリサちゃん……」

 

笑顔で私達が見つめ合っていると、ずっと黙っていた誘拐犯が近寄って来た。

 

「な、なあ、こっちの金髪の方には用はないんだよな? 犯っちまってもいいだろ?」

 

「はあ? お前ロリコンかよ。まあ、ほどほどにしとけ」

 

許可をもらった男はニタリと笑ってこっちを見てくる。

私は全身に鳥肌が立つのを感じた。

 

「へへっ、さあお嬢ちゃん、お兄さんと楽しいことしようか」

 

「いや‼︎ 来ないで‼︎ 変態‼︎」

 

「やめて‼︎ アリサちゃんに乱暴しないで‼︎」

 

私は必死に暴れた。だが抵抗も虚しく誘拐犯の手が私の服の裾を掴んだ。

 

「いや……いやぁぁああああ」

 

「さーて、どんな下着を着てるんだ……ぐはぁっ⁉︎」

 

もう駄目だと思った時だ。突然窓から突っ込んできた何かに誘拐犯が吹っ飛ばされた。

 

「え……?」

 

「な、なんだ⁉︎」

 

誰も状況を理解できていない。

だけど私の視界には見たことのある人物が映っていた。

 

「……アント?」

 

なんで……ここに……?

 

混乱して思考がまとまらない。

 

「……極道じゃなくて変態集団か、紛らわしい」

 

 

 

 

 

 

 

 

side:アント

 

まさかこんな展開になるとは……

 

「テメェ‼︎ よくも‼︎」

 

先程蹴り飛ばした奴が飛びかかって来た。

とりあえず股間を蹴り飛ばしておく。

 

「おごぉっ‼︎ お……おぉぉぉ……」

 

「……俺も男だ。痛みはよくわかるよ」

 

反省はしないけどな。

 

ようやく状況を把握した誘拐犯達は俺に銃を向けてくる。

 

「動くな‼︎」

 

「動くよ。止まったら撃つだろ?」

 

「な⁉︎」

 

まっすぐに向かってくる俺に躊躇なく発砲してくるが今更この程度当たるわけない。

 

俺は相手の銃を掴み取る。

 

「借りるぞ」

 

「うぎゃあっ‼︎」

 

足を撃って倒れてきたところで、顔面に蹴りを入れる。

 

うん、気絶したな。残り二人。

 

「このクソガキ‼︎」

 

「銃を向けるの遅すぎるだろ」

 

引き金を引かれる前に奪った銃で四肢を撃ち抜いた。

 

「があっ⁉︎」

 

「うむ、意外に悪くない銃だな」

 

さて最後の一人を始末しようか。

 

「ひっひい‼︎ 待ってくれ‼︎ お前は何か勘違いしてるんだ‼︎」

 

「勘違い?」

 

「そうだ‼︎ そこの紫髪の女はな……」

 

「ッ……‼︎ やめて‼︎ 言わないで‼︎」

 

「夜の一族っていう吸血鬼なんだよ‼︎」

 

「吸血鬼?」

 

あのドラキュラ? すずかが?

 

「すずか、嘘よね? あいつの言っていることなんて……」

 

アリサの問いに黙ったまま俯くすずか。

 

え? まじなの?

 

「わかっただろう? こいつは人類の敵なんだよ‼︎」

 

「アリサちゃん。ごめんね……今まで騙してて。今日だって私のせいでアリサちゃんを巻き込んだ……。私はもう……友達じゃ……」

 

「ッ……‼︎ 何言ってるのよ‼︎」

 

すずかの言葉をアリサが遮った。

 

「確かに聞いた時は驚いたわ、だけど吸血鬼でも関係ない‼︎ すずかは私の友達よ‼︎ これからもずっと‼︎」

 

「っ……‼︎ ありがとうアリサちゃん……うぅ……ひくっ……私達はずっと友達だよ‼︎」

 

笑顔で見つめ合う二人を見た誘拐犯は焦ったような様子で話しかけてくる。

 

「ちっ‼︎ あいつは手遅れか‼︎ おい‼︎ 見ただろ? ああやって操るんだよ‼︎ お前も手遅れになる前に手を貸してくれ‼︎」

 

「いや、無理だろ」

 

「はあ⁉︎ 何言ってんだ‼︎ あのガキは吸血鬼で……」

 

「うん、それはもう聞いた」

 

「だったら何で……」

 

「だって、なあ? 顔見知りの美少女吸血鬼と、よだれダラダラのロリコン集団、どっちの味方になるって聞かれたら一択だろ?」

 

そもそも、とアントは言葉を紡ぐ。

 

「俺はコイツがいい奴だって知ってる。何も知らないお前らとは違ってな」

 

「アント君……」

 

「くっ……ん? ……はっ……ははははは‼︎」

 

俺の言葉を聞いて絶望したような表情をしていた誘拐犯だったが、突然勝ち誇ったかのような笑い声を上げる。

 

「……ああ、そうかよ。大人しく言うこと聞いておけば命くらいは見逃してやったのにな。残念だ」

 

その言葉を言い放つと同時にドアから銃を持った奴らが大勢流れ込んで来て俺を取り囲む。

 

「くくっ、ガキ一人でどうにか出来る人数じゃねえだろ? じっくり嬲り殺してやるぜ」

 

「あ、ああ……」

 

「そんな……」

 

やっと集まったか。一纏めにやった方が手っ取り早いもんな。これで全員かな?

 

「おい、三十秒くらい目を瞑っておけ」

 

「え……?」

 

「そ、そんなこと言ってる場合じゃ……」

 

「いいから」

 

「う……うん」

 

「わ、分かったわ……」

 

二人が目を瞑ったのを確認してから俺は取り囲んでいる誘拐犯達に向き直った。

 

「さーて、始めるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三十秒後、俺は変態達を文字通り血祭りにあげた。ざっと四十人ってところか。死屍累々とはこのことだな。多分殺してはいない。

 

「う、うそ……」

 

「これ全部……アント君……がやったの……?」

 

三十秒が過ぎ、目を開いた二人は驚愕していた。

 

「ああ、縄のこと忘れてたな」

 

すぐに縄をほどく。

 

「さて、怪我は?」

 

「な、ないわ……」

 

「うん……大丈夫」

 

俺が怪我の確認をしていると廊下から人の気配を感じた。

 

新手か?

 

「すずかちゃん‼︎ アリサちゃん‼︎ 無事かい⁉︎」

「怪我はないか⁉︎ 二人とも‼︎」

「すずか‼︎ 大丈夫⁉︎」

「お嬢様‼︎」

 

メイドと見たことある人達がなだれ込んで来た。

 

「な、なんだこれは⁉︎」

 

「アント⁉︎ なぜお前がここに‼︎」

 

説明はすずか達に任せようか。その間俺はこいつらから財布を抜き取っておくとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどね……まずいことになったわ……」

 

やっと説明が終わったみたいだな。だが駆けつけて来た面々の表情はよろしくない。

 

「アント、まずはお礼を言わせてちょうだい。二人を救ってくれてありがとう。それでちょっと話があるのだけど……付いて来てもらっていいかしら?」

 

「えー、ちょっとこれから用事が……」

 

「ご馳走するわよ?」

 

「行きます」

 

……こういうのに弱いってバレてる。

 

 

 

 

 

 

 

side:すずか

 

二人に私が吸血鬼だとバレてしまった。

今お姉ちゃんが二人に説明している。私達、夜の一族について。

 

「私達一族には決まりがあるの。秘密を知ってしまった人には私達と契約を交わし盟友として共に歩むか……私達の事を全て忘れるかを選択してもらわなくてはならない……」

 

もぐもぐ、コクコク。

 

「……ごめんなさい、ご馳走するとは言ったけど大事な話だから食べるのやめてもらっていいかしら?」

 

「……」

 

アント君は名残惜しそうに皿を置いた。

 

「私は……忘れたくありません。すずかのことも夜の一族のことも……」

 

「いいの? 私達は普通の人間とは違うのよ?」

 

「構いません。私はこれからもずっとすずかの親友です」

 

「アリサちゃん……」

 

私は自分の顔が笑顔になっていくのを実感した。

嬉しい。私はアリサちゃんと親友になれて本当に良かった……。

 

「そう……わかったわ。いい友達を持ったわね、すずか」

 

「うん‼︎」

 

「それでアント君なんだけど……ちょっと聞いていいかしら?」

 

「どうぞどうぞ」

 

「あなたは一体何者?」

 

「アント・バーキン」

 

「名前は知ってるわ。私が知りたいのはそれ以外のこと。なぜあの場所にいたのか。そしてどれだけ調べても分からないあなたの素性」

 

「あそこにいた理由はあのビルが俺の寝床だから、素性は諸事情により言えない」

 

「寝床? あなたの家族は?」

 

「2年くらい前に死んだ」

 

「「「「「ッ……‼︎」」」」」

 

それを聞いた私達は言葉を失った。

 

「……悪いこと聞いたわね」

 

「いや別に。昔のことだし」

 

「……これまでどうやって生活してきたか聞いてもいいかしら?」

 

「言えない」

 

「……そう」

 

お姉ちゃんは難しそうな顔をしている。

 

「アント君にも事情があるようだし、これ以上は聞かないことにするわ。でもどうするべきかしら……本来なら素性の知れない相手の記憶は消すようにしてるけど……すずかはどう思う?」

 

「私は……」

 

アント君から吸血鬼の記憶を消す……私の秘密を忘れる……。

それは……嫌だな……。

 

「覚えていて欲しい……かな?」

 

「……分かったわ。アント君もそれでいいかしら?」

 

「ああ、それでいいよ」

 

うん、よかった……。

 

私が安心しているとお姉ちゃんがにやけながら私に耳打ちして来た。

 

「ふふっ、知ってた? これまで異性の盟友は大抵結ばれているのよ?」

 

え……? 私とアント君が……?

 

ボフンッ‼︎

 

私の思考回路がショートした。

 

「すずか⁉︎ どうしたの⁉︎」

 

「……なんでもないよ、なんでも……」

 

「なあ、もう食っていいか?」

 

「ええ、いいわよ。お礼も兼ねて目一杯ご馳走するわ」

 

 

 

 

 

 

 

side:アント

 

ふう、食った食った。そろそろ帰るか。

 

「じゃあそろそろ帰るわ。ご馳走様」

 

「待ってくれアント君」

 

帰ろうと立ち上がると士郎さんに呼び止められた。

 

「君はこの後どうするつもりなんだい?」

 

「疲れたから廃墟ビルに戻って寝る」

 

「そうか……もしよかったらうちに住まないかい?」

 

「はい?」

 

「ああそれはいい。アント、お前とは一度手合わせしてみたかったんだ。暇な時に一戦してもらおうか」

 

ワクワクしたような目で見ないで欲しい。

 

「わ、私の家でもいいわよ? へ、部屋ならいっぱい余ってるもの……」

 

アリサがモジモジしながら提案してきた。

いや、部屋が余ってるとかじゃなくてな?

 

「私達の家も部屋なら余ってるわよ? ね? すずか?」

 

「へ⁉︎ あ……う、うん‼︎」

 

「いや……なんでそうなるんだ」

 

なんで俺が誰かの家に住み着くみたいになってるんだよ……。

 

「だって住む家がないんだろう? 君なら大歓迎さ」

 

その高評価はどこから来てるんだ?

 

「俺は居候になるつもりは……」

 

「どんな事情があるのか分からないけど、廃墟ビルに戻るなんて言われて放っておけるわけがない。それにうちならシュークリームも付くよ?」

 

「……少しの間、よろしくお願いします」

 

しょうがない、善意に甘えよう。

決して物につられたわけじゃない。決して。

 

 

 

 

 

 

 

「あ‼︎ お父さん達帰って来たの‼︎」

 

少しの間だけ世話になることにした俺がなのはの実家に向かうとなのはが玄関先に現れた。

 

「にゃあ⁉︎ なんでアント君がいるの⁉︎」

 

「ああ、しばらくここに住んでもらうことになったんだ」

 

「え? ええぇぇぇ⁉︎ な、何⁉︎ どういうこと⁉︎」

 

「よろしく」

 

「待って‼︎ まだ整理できてないの‼︎」

 

 

 

 

 




時系列が違うと思われる方もいるでしょうが、この方が都合が良いと思ったのでこうしました。
出来るだけ原作に合わせたいので、これっきりにしたいです。

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