バカは死んだら治るのか?   作:夏のレモン

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困難ってのは畳み掛けるもの

 

 

 

「それで? あんた誰?」

 

とりあえず話しかけてみるもポニーテールの女は俺の質問に答えることなく切りかかってきた。

 

「……セットアップ」

 

俺は戦闘態勢に入り、迫ってくる剣を躱す。

 

「躱しただと? その立ち振る舞い只者ではないな‼︎」

 

「……なあ、魔力集めて何がしたいのか知らなけど、大人しく帰ってくれない?」

 

「そうはいかない。こちらにも事情があるんでな」

 

かなりの速度で振り下ろされた剣を少し身体を捻って躱す。

 

「くっ‼︎ ちょこまかと‼︎」

 

さてどうしよう、とりあえず鎌かけてみるか……。

 

「なあ、この結界張ってる奴は何処にいるんだ?」

 

「知りたければ私を倒すことだな」

 

なるほど個人じゃなくて集団、最低二人はいるな。そしてなんらかの事情持ちか……本当に厄介だ。

これ以上情報は集められなさそうだしそろそろ反撃しよう。

 

振り下ろされて来た斬撃を躱しつつ、かなり力を込めて腹に蹴りを叩き込む。

 

「ぐっ……‼︎」

 

多少は効いたようで軽くよろめき、すぐに俺から距離を取る。

 

「……くっ……どうやらかなり腕が立つようだ。私も本気で戦おう」

 

ポニーテールの女の雰囲気が変わった。宣言通り本気になるようだ。

 

「カートリッジロー……」

 

だが突然ピタッと動きが止まった。

 

「……なんだ? 今手が離せな……何? ヴィータが? ……やはり強大な魔力なだけあって一筋縄ではいかなかったか……分かったすぐ行く」

 

渋々と言った様子で武器を降ろす。

 

「悪いが勝負はお預けだ。お前、名前は?」

 

「……アント・バーキン」

 

「私の名はシグナム。次は確実に仕留める」

 

物騒なことを言い残してシグナムと名乗った女は去っていった。

 

「なんだったんだ?」

 

強大な魔力?

 

「この辺りで強大な魔力? あ……‼︎」

 

なのはのことだったりするのか?

 

「まさか今別の奴に襲われてる? ルリ‼︎」

 

《……サーチの結果、なのはは現在この結界内にいます》

 

「ここからどんくらいの距離だ?」

 

《ボスの最高速度で約八分かかります》

 

「八分か……」

 

少し遠いな。手遅れになるかもしれない。なら……。

 

「おい、この辺りで一番高い場所はどこだ?」

 

《北東方向にあるビルです》

 

「案内しろ」

 

《了解です。ボス》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビルに着いた俺はすぐにシグナムが向かった方向を見る。

 

「ここならよく見えるな。……あれか? 結界を張ってる奴は……」

 

金髪の女と青い筋肉ダルマの男がいる。

術者が金髪で護衛が青い男かな?

 

《間違いないかと思われます》

 

「さっきのシグナムとか名乗ってた騎士も見えるな。戦ってるのは……フェイトか?」

 

なんでここに?

 

《ボス、なのはの様子がおかしいです》

 

「ん? なのはが? ……なっ⁉︎」

 

少し視線をずらすと、なのはの胸から腕が生えリンカーコアが飛び出してるのが見えた。かなりやばそうな状況だ。

 

「ッ……‼︎ チェンジ‼︎」

 

おそらくあの腕は金髪の女が魔法で飛ばしているんだろう。

俺はすぐに武器を銃に変え射撃体勢に入る。

一刻も早く術師の金髪女をどうにかしなくてはいけない。

 

「あの金髪女の首を狙う。微調整頼んだ。ルリ」

 

《了解です、ボス》

 

意識を集中させろ、二発目はない一発で決める。

俺は狙いを定めて引き金を引いた。

 

『きゃあっ⁉︎』

 

『な⁉︎ シャマル⁉︎』

 

放たれた弾丸は金髪女の首を撃ち抜いたようだ。

金髪の女が倒れると共になのはから飛び出ていた腕とリンカーコアが戻っていく。

 

『ッ……‼︎ 撤退だ‼︎ シャマルがやられた‼︎』

 

青い男が金髪の女を抱えて飛び去った。

 

『なんだと⁉︎ 一体何があった⁉︎』

 

『狙撃された‼︎ 管理局の応援が来たのかもしれない‼︎』

 

『クッ‼︎ もう来たのか……行くぞ‼︎ ヴィータ‼︎』

 

『あと少しだったのにッ‼︎ クソッ‼︎』

 

青い男の後をシグナムと赤い少女が続く。

だが去り際、飛びながらふと横を見たシグナムは俺の姿に気づいたようだ。

 

『あいつは……⁉︎』

 

『何してんだ‼︎ 早く撤退するぞシグナム‼︎』

 

『ッ……‼︎ ああ……』

 

シグナム達の姿が消えると周囲を覆っていた結界も消えた。

 

「……とりあえずなんとかなったな」

 

《そうですね、間違いなく目をつけられましたが……》

 

「……そうだな、めっちゃ睨んでたな」

 

……まあ過ぎてしまったことは仕方ないから切り替えよう。

 

「なのはの様子を見てから高町家に戻って色々言い訳しとくか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後なのははアースラの医務室にて治療することになった。

俺は現在リンディさんに呼び出されエイミィ、そしてプレシアと会話している。

 

「ごめんなさいね。急に呼び立てて」

 

「いやいや、俺も知りたいことあったしちょうどよかった」

 

「久しぶりね、アント」

 

「久しぶり。裁判はどうなった?」

 

「そうね、リンディ達が頑張ってくれたお陰でかなり軽くなったわ。私は一生管理局に奉仕活動を、フェイトは保護観察処分よ」

 

「へー、まあ一生牢屋暮らしよりよっぽどまし?」

 

「そうね、この程度で済んで本当に良かったわ。これからもフェイトに会えるもの」

 

すげえ嬉しそうだ。娘として愛してる証拠か、よかったよかった。

 

「それでなのははどうなったんだ? 命に別状はないんだろ?」

 

「うん、アント君が阻止してくれたおかげで魔力もそれほど取られることはなかったよ」

 

俺の質問にエイミィが応える。

 

「お前らはあの四人を追って来たのか?」

 

「まあそうだね。詳しく言うと私達は一級捜索指定ロストロギアの捜索のためにここに来たんだよ」

 

「一級捜索指定ロストロギア?」

 

俺の言葉にリンディの表情が少し暗くなったような気がする。

 

「ええ、闇の書と呼ばれるものよ」

 

「……⁉︎」

 

……おいおい、闇の書って……まさか……。

 

「厄介だとは思ってたけど、思った以上だ……」

 

「闇の書を知ってるのかしら?」

 

「まあ、ある程度なら……」

 

「そう……なら話は早いわ。管理局のリンディ・ハラオウンとして依頼します。今回の事件の解決に協力してもらえないかしら?」

 

「……大丈夫なのか? 管理局が傭兵なんて雇って」

 

「貴方なら信用できるもの。それに貴方の実力はよく知ってるわ。貴方ほどの戦力なら是非とも協力してもらいたいの。どうかしら?」

 

「……報酬は半分は前払い、残りの半分は解決したらで頼むわ」

 

「交渉成立ね」

 

俺とリンディはしっかりと握手した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回管理局の依頼を受けることになった俺はなのはの見舞いに向かう。

医務室の扉を開くと既に目を覚ましたなのはと見舞いに来たのであろうフェイトがいた。

 

「あ、アント君」

 

「おう、なんか大丈夫そうだな」

 

「うん、三日ほどで魔力は回復するみたい。助けてくれてありがとうなの」

 

「気にすんな」

 

そして俺はフェイトの方を向く。

 

「ひ、久しぶり、アント」

 

「久しぶりだな。裁判、上手く行ったんだってな?」

 

「う、うん。私は管理局に勤めることにしたよ。その方が母さんともたくさん会えるし。それと母さんの代わりにリンディさんが私の保護者として地球で一緒に暮らしてくれることになったんだよ」

 

「おお、地球で暮らすのか。学校には通うのか?」

 

「うん、なのはと同じ学校だよ」

 

嬉しそうに頷くフェイト。

親子だからか? 喜ぶ顔がそっくりだな。

だが……ちょっと気になることがある……。

 

「……話は変わるけど、なんで目をそらす?」

 

そう、さっきからフェイトの視線が俺から逸れてるのだ。

 

「え⁉︎ えっと……その……」

 

俺が覗き込もうとするとフェイトは顔をそらしてしまう。

なんかじれったくなってきた俺はフェイトの顔を両手で挟み無理矢理こちらを向かせる。

 

「おい」

 

「ふぇ⁉︎」

 

「うにゃ⁉︎」

 

これで目線を外せまい。

俺は痛くない程度の力を込めてフェイトの顔を固定する。

 

「なにやってんだよ。新手のいじめか?」

 

「あ……あう……アント……その……ち、近……」

 

フェイトの顔がどんどん赤くなってる。

あ、やばい。怒ってるわ、これ。

 

流石にやり過ぎたと俺はすぐにフェイトを離した。

 

「あー……悪い。まさかそこまで嫌がられてるとは思わなかったんだ。これからはなるべく目を合わせないようにするから許してくれ」

 

「え……ち、違うよ‼︎ これはその……目を合わせるのが……恥ずかしくて……」

 

「恥ずかしい?」

 

あれか? 久しぶりに会う同性なら昔みたいに振る舞えるけど、異性だと若干気不味い雰囲気になるってやつか?

 

「だっ……だから……その……嫌とかじゃなくて……むしろもっとちゃんと話したいっていうか……」

 

「分かった。分かったから落ち着け。ほらお茶あるぞ」

 

「あ、うん……」

 

近くにあったお茶を差し出す。一口飲んでからようやく落ち着いたように息を吐くフェイト。

 

「……むぅ」

 

そして俺を睨むなのは。

なんかこの前もこんなことあったな……。

 

「……別にフェイトを苛めてたわけじゃないからな?」

 

「分かってるの……」

 

いや分かってないだろ。俺を睨み続けてるじゃん。

確かに全面的に俺が悪かったからしょうがないんだけど……。

 

「君達は何をやってるんだ……」

 

よくわからない雰囲気に包まれていた時、クロちゃん達がやってきた。

 

「おお、久しぶりだ。クロちゃん、ユーノ、アルフ」

 

「久しぶりだねえ」

 

「久しぶり、アント」

 

「……いい加減クロちゃんはやめてくれ。あの時を思い出してしまうんだ……」

 

「あの時? 俺を牢屋にぶち込んだことか?」

 

「うぐっ‼︎」

 

「え……クロノ君……」

 

「あれは……その……すまなかった……」

 

クロちゃんが頭を下げてくる。ガチ謝罪されてしまった。

 

「ちょっとからかっただけだって、そんな頭下げるなよ。ちゃんとクロノって呼ぶから。な?」

 

「いや……考えてみれば僕はまだちゃんと謝れてなかった気がする……」

 

まずい、変な地雷踏んだ。

どうしようかと悩んでいるとアルフから救いの手が差し伸べられる。

 

「それより闇の書について話に来たんじゃなかったのかい?」

 

「ああ、そうだった」

 

ナイスだアルフ。あとでドックフード奢ってやろう。

 

「……なんか今侮辱された気がするねえ」

 

「気のせいだろ」

 

気を取り直してクロノは闇の書の説明を始めた。

 

「今回君達を襲った魔道士はヴォルケンリッターと呼ばれる闇の書によって生み出された存在なんだ。闇の書とは一連の事件、それの中心にあるロストロギアの名称だ。転生機能と無限再生機能を持った破壊不可能な融合型デバイス。他者のリンカーコアを喰らい、頁を埋める事によってその力を解き放っていく、まさに最悪の遺産だよ」

 

「リンカーコアを喰らう……?」

 

青ざめた表情でなのはが呟いた。

 

「ああ、言い方が悪かったかな。正確には蒐集するだ。闇の書は魔力の源、リンカーコアから魔力を蒐集する能力を持っているんだ。なのはがされたのもそれだ。そして、蒐集した魔力量が多ければ多いほど復元される頁数は多くなる。そうだな……今回で少なくとも数ページは埋まったんじゃないだろうか」

 

「……もしもページが全部埋まったらどうなるの?」

 

「過去の記録では一つの例外もなく暴走している。何が原因で暴走するのかは分かっていない。だが……分かっていることもある」

 

クロノの表情が怒りと悲しみで染まった。

 

「完成だけは絶対に阻止しないとダメだ。あれが完成してしまえば多くの人の命が失われる事になる」

 

ユーノはあらかじめクロノから説明を受けていたのだろう。判り易く補足を入れる。

 

「そして僕達がとれる手段は闇の書の持ち主の確保及び闇の書の封印だ。でもそれをすると必ずヴォルケンリッター達の妨害が入る」

 

なるほど。つまりヴォルケンリッターをどうにかしてから持ち主を捕まえればいいのか。

 

「そのヴォルケンリッターなんだけどさ。奴等が使ってた魔法はなんなんだい?」

 

アルフの質問に答えるユーノ。

 

「あの魔法はベルカ式と言って、なのはやクロノ達の扱うミッドチルダ式と勢力を二分した魔法体系なんだ。

遠距離や広域攻撃をある程度度外視して、対人戦闘に特化した戦闘魔法。圧縮魔力を込めたカートリッジを武器内で炸裂させることで瞬間的に圧倒的な魔力と破壊力を生み出す危険な技術なんだ」

 

それを聞いたなのはとフェイトは壊れてしまった自分の相棒に労いの言葉をかけた。

 

「……ごめんね、私の力不足で」

 

「いっぱい頑張ってくれてありがとうね」

 

一通り話し終えたクロノは次の用事に動き出す。

 

「さて、突然で悪いんだが君達に会わせたい人がいるんだ」

 

「会わせたい人?」

 

「ああ、フェイトの保護観察官にして時空管理局歴戦の勇士、ギル・グレアム、僕の恩師だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「初めまして、高町なのはです」

 

「初めまして、私はギル・グレアムだ。君がなのはちゃんか、話は聞いてるよ。実は私も地球出身なんだ」

 

「え⁉︎ そうなんですか?」

 

「ごく稀にだが私達みたいなケースがあるのだよ」

 

ギル・グレアムの言葉に感心したように頷くなのは。

俺も挨拶しておくか……。

 

「初めまして、アント・バーキンです」

 

「……バーキン……だとすると君は……」

 

俺の名前を聞いた瞬間、考える様子を見せるグレアム。

 

「何か?」

 

「い、いや……何でもない……」

 

俺となのはが自己紹介を終えるとクロノとフェイトが入れ替わるように前に出た。

 

「グレアム提督、闇の書が復活し、僕達がそれの担当することになりました」

 

「そうか……闇の書が……自分が言えた義理ではないが、無茶はするなよ」

 

「はい‼︎」

 

「グレアムさん。私も今回の件に加わりたいと思います」

 

フェイトの言葉を聞いたグレアムは軽く頷いた。

 

「構わないとも。自分を信じてくれる人のことは決して裏切ってはいけないという事を守るのであれば行動に制限をしないと約束しよう」

 

「ありがとうございます‼︎」

 

 

 

 

 

 

その後面会を済ませた俺となのはは帰ることにした。

 

「グレアムさん、威厳があっていい人そうだったの」

 

先程会った人物について話してくるなのは。

 

「いい人……いい人か……まあそうだな」

 

……闇の書という言葉を聞いた時のグレアムの表情……なのは達は気付かなかったみたいだが……

 

「憎悪で塗りつぶされていた気がしたけどな……」

 

「どうしたの? アント君?」

 

なのはに俺の呟きは聞こえてなかったようだ。

 

「いや、なんでもない」

 

確証はないから人に言えることじゃない。だが注意はしておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃ヴォルケンリッター達ははやてが寝たのを見計らって話し合いをしていた。

 

「怪我の具合はどうだ? シグナム、シャマル」

 

フェイトとの戦闘でダメージを負ったシグナムを心配する青い男、ザフィーラ。

 

「ええ、大丈夫。気絶させられただけよ」

 

「私は動く分には支障はないな」

 

「……アント・バーキンとやらにやられたダメージがまだ響くのか?」

 

ザフィーラの問いに応えるように、シグナムが無言で着ているセーターの裾をまくる。

露になった部位を見て、ザフィーラ達は思い切り眉を顰めた。

シグナムの右脇腹には青い痣が広がっていたのだ。

 

「奴は的確に肝臓に蹴りを入れてきた。私の攻撃は一撃も掠ることなくだ。こんな芸当よっぽどの手練れでなければ出来ないだろう」

 

「電気変換資質も持ってるみたい。最小限の電気で最も効果的な部位を正確に撃ち抜いてきた。近距離と遠距離に対応できる万能型魔道士ってところかしら?」

 

シャマルの言葉を聞き、黙っていたヴィータが重々しく口を開いた。

 

「……なあ、シグナム。アイツからは蒐集しないんだろ?」

 

「ああ。奴から感じた魔力は微々たるものだからな」

 

実りが少ないのに強敵。ヴォルケンリッター達にとってはかなり厄介な相手だった。

 

「じゃあ、ぶっ潰しちまっても構わねぇって事だよな?」

 

「「ッ……‼︎」」

 

「……そうなるな」

 

ヴィータの真意に気付いたシグナムは重い声音で呟いた。

これまで相手を殺したことはない。対象を殺してしまったら蒐集を行うのに必要なリンカーコアも消滅してしまうからだ。

勿論、はやての未来を血で汚したくないというのもある。

だが今回はそうも言ってられない。

蒐集対象ではなく、管理局に属する強敵。殺す気で挑まなければ血を流すのはこっちかもしれないのだ。

 

覚悟は出来てる

 

恐らくヴィータはそう言いたかったのだ。

 

「さて、話はこれくらいにしてそろそろ寝よう。明日も忙しくなるからな」

 

話は終わりとザフィーラが締めくくるとそれぞれの寝床へ向かう。

だがその途中、シャマルはシグナムの傷に気づいた。

 

「シグナム、ちょっと腕を見せてくれる?」

 

「どうした、藪から棒に」

 

「ほら、ここ。うっすらと血が滲んでる」

 

確かにシグナムの腕には赤い線が浮かんでいた。

 

「これは太刀筋……そうか、あの魔導師か」

 

そう呟いたシグナムは少し微笑んだ。

 

「すぐに治療するわ。腕を出して」

 

「いや、それには及ばない。ダメージを受けた上に我々の治療もしたんだ。明日のために自分の回復に専念してくれ」

 

「……分かったわ。でも痛むようならすぐに言ってね?」

 

「ああ、そうする」

 

そしてシャマルが去り、一人になったシグナムは金髪の少女との戦いを思い返す。

 

「澄んだ太刀筋だった。良い師に学んだのだろうな。武器の差がなければ危なかったかもしれない」

 

少し微笑んだ後、軽く息を吐き気持ちを切り替える。

 

「強敵ばかりだな。だが主のためだ。負けるわけにはいかない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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