これからペースは遅くなりそうですが投稿し続けたいと思っています。
数日後の早朝。
俺は日課である素振りに勤しんでいた。
ビュオン‼︎ ビュオン‼︎
「なんか違う……」
200回を超えた辺りで手を止めた。
刀を使えるようになりたいが……上手くいかない。そもそも刀とロングソードでは扱い方が違うからイメージしにくい……。
「切り方もよくわからない……」
そして日本刀を普段と同じように扱うと簡単に折れてしまう。すでにルリで検証済みだ。
それが分かったところでどうしたらいいのかわからないけどな……。
「意見が聞きたいのにルリは改造するためにプレシアに預けちゃったし……手詰まりか…………ふっ‼︎」
ビュオン‼︎ ビュオン‼︎
とりあえず我武者羅に素振りをしていると恭也さんがやってきた。
「今日も精が出るな」
「あ、おはようございます」
「ああ、おはよう」
挨拶した後、恭也さんはしばらく俺の素振りを観察してくる。
なんだろう……何か言いたそうにしてるような……。
やがて俺の素振りが終わる頃を見計らって恭也さんが話しかけてきた。
「刀に興味があるのか?」
突然核心を突かれ一瞬呆然としてしまう。
……なぜわかった……。
「……まあ、切れ味が鋭いってのは魅力的ですね。それに……」
俺は道場に飾られている刀の方を見る。
「刀を使えればもっと強くなれる」
俺がそう言うと恭也さんの顔が少し険しくなった。
「……アント、お前はなんで強くなりたいんだ? すでに十分強いと思うぞ?」
なんで? ……そんなの決まってる。
「進むためですよ。何処かへ辿り着けるまで」
その為には力がいる。どこにでも行けるだけの力が。
「……そうか」
俺の言葉を聞いた恭也さんは少し考え込むような素振りをした後、決心したように口を開いた。
「なあアント、お前が良ければだが……俺から剣を学ばないか?」
「はい?」
……突然何を言いだしてるんだろう……。
「刀を使いたいんだろう? ちょうど男の弟子が欲しいと思っていたところだ」
「えーと、たしか高町家に伝わる由緒ある剣術なんじゃ……」
「もちろん適当に言ったわけじゃない。お前なら大丈夫だろうと思ったから提案したんだ」
なんだその根拠のない信頼は……
「それでどうだ? 学んでみるか?」
……正直この提案は有難い。やっぱりこういう専門的なことはその道のプロに教えてもらうのが一番早いしな。
「それじゃあ……よろしくお願いします」
「よし、なら早速始めようか」
「え?」
今?
呆然としている俺に二本の木刀を放ってくる。
「すでに基礎が出来上がってるお前なら実戦が一番だ」
「いや……素振りと筋トレ終わったばかりなんですけど……」
「いいか? 日本刀は当てるだけじゃ意味がない。当てて引くまでやって最高の切れ味を発揮するんだ」
「ああ……もう始まってる……」
この後、特訓は3時間続いた。
漸く特訓を終えた俺は高町家の食卓についた。正直へとへとである。
朝一番でここまで疲れたのは久しぶりだ……
「おはようなの、アント君……ってどうしたの? なんか疲れ切ってる感じがするの……」
「……お前のお兄ちゃんにいじめられたんだ」
「あ‼︎ アント君‼︎ 恭ちゃんから聞いたよ〜。弟子入りしたんだって? これでアント君は私の弟弟子だね〜」
「そうなるな。だがアントの土台は出来上がってる。うかうかしてると追い抜かれるぞ?」
「ふむ。ならば特訓も兼ねて、そのうち私や美由希とも手合わせしてもらおう」
「あらあら、うふふ。特訓もほどほどにね? アント君にはそのうち厨房に立ってもらう予定なんだから」
「ええ⁉︎ 私ですらまだダメなのに⁉︎」
「いや……お姉ちゃんは……その……」
「……もう少し頑張ろうな」
「どうゆうこと⁉︎ そこまで言うなら今度、手作り料理をご馳走しちゃうんだから‼︎」
「そうね〜、なら折角だからアント君にも作ってもらおうかしら」
「……」
こういう時は思考放棄しておく。流れ流されるのが俺のポリシー。
「あ、そうそう。アント君。お買い物お願いしていいかしら?」
「了解。昼過ぎてから行ってきます」
「ありがとう。頼んだわ」
俺は昼過ぎあたりで買い物へ出かけた。
「割と重いな……ん?」
……その帰り道の途中、見覚えのある奴が公園で倒れているのを発見
「ど、どないしよ……車椅子が邪魔で立てん……うう〜、あ…………た、助けてくれへん?」
それは公園のベンチ付近でひっくり返ってるはやてだった。
「何があった?」
「少し居眠りしてたらバランス崩してもうたんや」
「……」
倒れたままジタバタ動くはやて。
俺はジーッと観察してみる。
「……な、なんや……なんでそんな見てくんねん……」
「……」
「や、やめえ……なんか恥ずいわ……」
はやての頬が少し赤く染まった。
「……今気付いたけど、なんかもがく姿が罠にかかったタヌキみたいだな」
「やかましいわ‼︎ 私のドキドキ返せ‼︎」
「よし、帰るか」
「待てい‼︎ せめて助けえや‼︎」
「…………冗談に決まってるだろ?」
「嘘や‼︎ 完全に帰るつもりやったやろ‼︎」
……こいつ凄えな。なんでわかったんだ?
はやてを起こした後、俺はベンチで一息つくことにした。
「うう〜、一応お礼は言わせてもらうわ。ありがとうな、アント君」
「お礼はまた今度してくれ。今日は用事があるんだ」
「……それ自分で言うことやないやろ……まあ、ええで。今度ご馳走したるわ」
「ちなみに唐揚げがいいな」
「注文までするんかい⁉︎ ええい、やったるわ‼︎ とびきり美味いの作ったる‼︎」
「おお、楽しみにしとくわ。ところで……」
ふとはやての持ってる包帯でグルグル巻きのウサギ(?)のキーホルダーが気になった。
「そのゾンビウサギははやての趣味か?」
「ん? あ〜これな。これは呪いウサギや。知らんの? 巷で大人気のキャラなんやで? この前、家に親戚が来てるって言ったやろ? その子がこれが大好きでな〜。プレゼントしよう思ってんねん」
「これが人気なのか……。初めて知った……」
「なんや欲しいんか? やらんで?」
「いらん」
「え〜こんなにかわええのにな〜」
それから楽しそうに話していたはやてだったが、唐突に黙り込んでしまった。
ん? なんか雰囲気が暗いような……
やがて重々しく口を開くはやて。
「なあ……アント君……」
俺に話しかけながら此方を見るはやての表情はどこか哀しげだった。
「もしもの話なんやけどな? 幸せな時に避けられない不幸が来るってわかったらどないする?」
避けられない不幸? そんなもの……
「あ‼︎ 今の無し‼︎ 変なこと聞いてごめ……」
「ぶち壊す」
「え?」
「そんな不幸要らないからぶち壊す」
「ぶち壊すって……壊せなかったらどうすんねん……」
「それでもやるだけやる。何もしないよりマシだ」
「そうかあ……強いんやなあ。アント君は……」
はやては車椅子に座りながら俯く。
「私には無理や。そんな風には考えられんよ……」
その言葉はどこか諦めたようだった。
「じゃあ出来る奴に頼めばいいんじゃね?」
俺の言葉にハッと顔を上げるはやて。
「でも……それやと迷惑になるんじゃ……」
「頼むだけなら問題ないだろ。嫌なら断るだろうし」
「……………ぷっ、ふふ、あはははっ」
先程までの沈んだ雰囲気から打って変わったように笑い出した。
「せやね。ならいざって時はアント君に頼もか」
「ん? 俺? 俺は高いぞ?」
「助けてくれたら、お礼にご馳走したるわ」
「……依頼内容がよっぽど嫌じゃなかったらやってやるよ」
「割とちょろいんやなあ」
自覚はある。ご馳走って単語に滅法弱いのだ。
「ありがとうな」
はやては明るい笑顔で俺にお礼を言ってくる。
「……唐揚げに豚汁も追加して欲しい」
「ははっ、任せとき‼︎」
それからしばらくの間、はやてと会話した。
「んじゃ、そろそろ帰るわ」
「そうか〜また会おうな」
「おう、また今度な」
side:はやて
ここ最近、私はどんどん辛くなっていく治療に不安を感じていた。
もしかしたら、私はもう長くないんじゃ……って。でも……それでもいいって思ってた。一生一人ぼっちで終わると思っていたのに家族が出来た。友達も出来た。今が最高に幸せだった。
「このまま死ぬんだとしても後悔はない、って思ってたのにな……」
先程のアント君との会話を思い出す。
「やれるだけやってみる……か。せやな、もう少し諦めんで頑張ってみようか」
きっと大丈夫や。このまま治療を続ければ絶対に良くなる。
「それにしても不思議やな〜。頼っていい奴がいるって思うだけでこんなに体が軽くなるんやもん」
ふふっと笑っている時、シャマルが戻って来た。
「はやてちゃ〜ん‼︎」
「シャマル‼︎」
「はあ、はあ、ごめんなさい……。自動販売機が壊れてて少し遠くに行かないと飲み物買えなくて……すぐに戻るつもりだったんだけど……何か異変はなかった?」
「大丈夫や。さっきまで友達と話してたんよ」
「友達……ですか?」
「せや、今度シャマル達にも紹介したる。いい奴やからきっと仲ようなれると思うで?」
「へ〜、それは楽しみです‼︎」
その時はちゃんとご馳走してやらんとな。
それから数日後。
俺はリンディさんに頼まれてとある世界へパトロールに行くことになった。
その為、ルリを取りにプレシアのもとへ向かう。
「ルリの改造終わってる?」
「ええ、とっくに終わってるわ。貴方の注文通りにしたわよ。それにしてもどこで手に入れたのよ、このデバイス。変態レベルで高性能だったわ……。お陰でカートリッジシステムも搭載しやすかったけど……」
「ノーコメントだ。サンキュー、プレシア。久しぶりだな、ルリ」
《お久しぶりです、ボス》
「おう、んじゃ行くか」
ブロロロォォン‼︎
「今んとこは異常無し……っと」
パトロールと言ってもひたすらバイクを乗り回すだけだ。
「まあ、ひたすらバイクで走り回るのも悪くないか」
《ボス、魔力反応です》
「……いくつだ?」
《魔法生物と思われるものが一つ。他は人型と思われるものが四つです》
「……行くぞ。案内しろ」
《了解です、ボス》
俺が現場に駆けつけると、そこにはすでに魔力を抜かれた魔法生物がいた。
「……大当たりだな」
そして守護騎士達も発見した。
「ん? この世界の住人か?」
あちらさんも俺に気がついたようだ。
「っ⁉︎ 気をつけろ‼︎ 奴がアント・バーキンだ‼︎」
「何⁉︎」
「へえー、あいつがアント・バーキンかよ。シャマル、逃さないようにしっかり結界張っといてくれよ」
「分かったわ」
俺は結界に閉じ込められてしまった。
……何やら不穏な雰囲気だな。
そして守護騎士達は全員が戦闘態勢に入った。
「悪いが貴様にはここで死んでもらう」
「ごめんなさい。でもこうするしかないの」
「……すまない」
「そういうわけだ。大人しくぶっ潰されろ」
あー、つまりあれか。魔力も大してない奴は邪魔ってことか。
「なあ、それは主の命令か?」
「……違う。これは我々が勝手に判断したことだ」
勝手に? どうゆうことだ?
「まあ、いいや。詳しいことは後で聞くか」
「はっ‼︎ 一人で私達を相手にする気か?」
「しょうがないだろ? 運が悪かったんだ」
俺は剣を構え守護騎士達へ向ける。
「ぶっ潰してやる‼︎」
「油断するな、ヴィータ。前も言ったが奴は手練れだ」
「そのようだな。立ち振る舞いに隙がない」
「サポートは任せて」
ふぅ、と軽く息を吐き出す。
さーて、やるか。