「うおぉおおおお⁉︎」
突然のことに思わず仰け反った。
「おいっ‼︎ そこにいるのはわかってんだ‼︎ とっとと出て来やがれ‼︎」
壁に開いた穴から声がする。どうやらどこぞのモブが分不相応にもこちらに攻撃してきたらしい。
「はっ‼︎ 誰だか知らねーがこの俺にこんなマネしてタダで済むと思うなよ‼︎」
ちょうどいい早速チートで叩き潰してやる。
外へ出るとどっかで見たことあるような盗賊風の男達がいた。
「へへっ、かすかな魔力反応があると思ったらただのガキじゃねーか、おいっ10秒だけ待ってやるから必死に逃げてみな」
「逃げんのはお前の方だぜモブっ‼︎」
先手必勝、先程の電気を手に帯びて盗賊に殴りかかる。
「なっ⁉︎」
「派手に散れぇぇ‼︎」
パチっ
「いてっ」
「……」
「…………」
「………………」
「どうした?」
仲間の盗賊が殴られた盗賊に声をかける。
「いや、なんか静電気が……地味に痛かった」
「あれ?」
おかしい本来なら電撃で痺れて弾け飛ぶはずなのに……
「はっははは‼︎ 派手に散れ〜なんていいながら静電気かよ‼︎ こいつ魔力量Eくらいじゃねーか?」
「う〜わ〜それ最悪じゃねーか。よく生きてこれたなこの世界で」
「何であれ女以外は殺せってボスの命令だ。ちゃっちゃとやっちまおーぜ」
魔力量E? なんだよそれ
「まっまてなんだよ、魔力量って」
「は? どんな世間知らずだ、魔力知らねーとかありえねーぞ」
「この様子じゃ本当に知らないみたいだな、なら冥土のみやげに優しい俺が教えてやるよ、魔力ってのはなこの世界じゃほとんど全員が持っている力のことだ。そして魔力量ってのはそれぞれが持っている魔力の量だ。お前はEランクだから下から2番目ってところだな」
2番目? しかも上からじゃなく下から?
「はぁっ⁉︎ このオリ主たる俺が下から2番目? なにかの間違いだ‼︎」
だが、男はどこか哀れんだ様子で彼に事実を突きつける。
「残念ながら現実だ。運が悪かったのさお前は」
「おい、無駄話はこれくらいにしておけ」
「あぁそうだな、さて魔力を理解したところでとっておきなことを教えてやる」
男は突然気持ち悪い笑顔になった。
「は?」
「俺たちのボスは魔力量Sの化け物だつまりお前の何十倍もの力をもっている。どうあがいてもお前程度じゃかすり傷一つつけられやしねーよ‼︎」
「んなっ⁉︎ 馬鹿な……」
たかだか盗賊の頭領風情がオリ主たる俺の何倍も強い?そんなバカなことあるわけないだろっ‼︎
「ヒャハハハハハハハっ‼︎ その絶望したツラが見たかったのさ‼︎ だが安心しろお前のあいては俺がしてやる。せめて楽に殺してやるよ」
「やっやめ……」
盗賊はその手に持っていた剣で彼の首を切り飛ばした。
そしてまた彼は先ほどと同じ場所に戻った
「……はっ‼︎」
その額からは汗がにじみ出ている。
「はぁっはぁっ、夢? なんだ夢か……そりゃそうだよな、俺が下から2番目なんてあるわけないもんな。まったくひどい悪夢だった」
そしてふと周りを見回す。見覚えのあるような空間、そして覚えのある馬糞のひどい匂いがする。
「……とりあえずここをでてみるか」
「おい‼︎ 馬小屋からガキが出て来たぞ‼︎」
「へっ‼︎ ずっと隠れてればいいものをわざわざ出て来たのか‼︎」
「……」
彼は三度目になってようやく理解した。
なんてこった、やっとわかった。俺のチートは電気を操ることじゃない。
死に戻り
かつて死に戻りの能力がある主人公のアニメを見たとき何度も無様に死ぬ姿を見てこの能力だけは欲しくないと本気で思った。
なのに
それが今の俺の能力になってる? ふざけるな‼︎ 痛い思いなんてしたくない‼︎ せっかくオリ主になったと思ったのに‼︎ 最強の力を手に入れてハーレムだの楽な生活ができると思ってたのに‼︎
「ふざけるなぁぁあああ‼︎」
勝てるわけがないだろ‼︎ 死に戻りなんてただひたすら死ぬだけじゃねーか‼︎ ましてや7歳くらいの身体能力でこんな大勢の盗賊にっ‼︎
彼は逃げることしかできなかった。背を向けて逃げ出す彼に盗賊たちが襲いかかる。
「ひゃっはー‼︎」
「いいね‼︎ 楽しいハンティングの時間だ‼︎」
「逃すなよ‼︎ お前ら回り込め‼︎」
俺の左足に魔力弾が打ち込まれる。
「ぎゃぁぁああ‼︎」
「命中‼︎」
「やるじゃねーか、よーし右足は俺がもらうぜ‼︎」
「俺が先だ‼︎」
(こいつら俺を殺しに来てやがる。しかも遊び気分で……っ‼︎)
「ちくしょうっ‼︎ なんでだ‼︎ チートをくれって言ったんだぞっ‼︎ 俺は‼︎」
足を引きづりながら彼は怒りの言葉を吐き出す。
「あのクソ神、絶対許さねぇ‼︎ 俺をこんな目に遭わせやがっ……ぐはぁっ‼︎」
「おしい‼︎ もうちょい左で心臓だったのに」
背中に魔力弾を食らったはずみで地面に倒れてしまう。
「う……うぅ……」
血を流しすぎた、立つことができない、だがそれでもなんとか逃げようと少しずつ這って前に進む。
「あーあ、回り込むまでもなかったじゃねーか」
「まったくこの程度でくたばるんなら最初から逃げんじゃねーよ」
もはや逃げ場はない、勝手なことを言われているが反論する力も残っていない。
(ちくしょうっ‼︎ 痛えっ‼︎ ちくしょうっ‼︎ あのクソ神はこの手で殺してやる‼︎ こいつらもだ‼︎ 絶対にゆるさねぇ‼︎)
「おらっまだ生きてんだろ立てよ、これで終わりなんてつまんねーだろーが」
うつ伏せに倒れる彼の首根っこを盗賊どもが掴み上げる。朦朧とした意識の中、彼は初めて血溜まりにうつる自分の姿を見た。
(なんだよこれ……)
そこにうつっていたのは神に願った金髪オッドアイのイケメンではなく、黒髪黒目のせいぜい中の上程度といった普通の顔だった。
(そういうことかよ、あのクソ神は最初から俺の願い事なんてこれっぽっちも叶える気がなかったってことかよ……)
「だめだこりゃ、ピクリとも動かねえ」
そこに盗賊の一人に通信が入る。
「おい、全員集合だとボスが言っている。今夜は宴だってよ」
「おっまじか、こんなガキでいつまでも遊んでる暇ねーな。行くか」
そう言ってもう用はないと言わんばかりに彼の体を放り出した。だが盗賊が去ってなお彼の体が動き出すことはもうなかった。
彼の前に現れた存在は一言も願いを叶えてやるとは言ってません。
つまり作中の彼の怒りは少し見当違いです。
まぁ、勝手に転生させられた挙句ハードモードなら怒るのも無理はないですけどね