バカは死んだら治るのか?   作:夏のレモン

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模索

side:なのは

 

学校から帰宅中、私達は浮かない顔で道を歩く。

 

「ねえ、なのは。まだアントは帰ってないの?」

 

「うん……アント君はユーノ君とずっと無限書庫なの……」

 

 

 

無限書庫。それは管理局の管理を受けている世界のほぼすべての書籍やデータが集められ、積み上げられた、いわば世界の記憶を納めた場所。

 

 

 

アント君は先週、突然ユーノを連れて無限書庫に行き、それ以来帰っていなかった。

 

「きっとアント君にはアント君の考えがあると思うの。だから情報収集は二人に任せて私達は私達のできることを頑張ろう?」

 

「そうだね。今度こそシグナムさんに勝ってみせる。そして魔力の蒐集を止めてもらえるように頑張るよ」

 

私達は決意を固めて頷きあった。

 

アント君達も頑張ってる。私達も頑張るの。そして今度こそ守護騎士さん達にお話を聞いてもらうの。

 

 

 

 

 

side:シグナム

 

……先週からどうにも主はやてがとても落ち込んでいるように思える。

 

「主、気分が優れませんか?」

 

「……唐突にどないしたん?」

 

「いえ、ただ……その……なにやら暗い雰囲気と言いますか……」

 

「……ああ〜。これはあれや、最近天気が悪うて気分が良くないからやな。明日は晴れるといいな〜」

 

「……そうですね。確かにそろそろ晴れて欲しいものです」

 

……主が何か隠してるのは間違いない。でも無理に聞き出そうとは思わない。

 

私と主が話していると看護師がやってくる。

 

「シグナムさん。そろそろ面会は終了です」

 

「では、明日もまた来ます」

 

「うん、気をつけてな〜」

 

 

 

 

 

 

家に帰るとヴィータ達が私を待ち構えていた。

 

「……どうだった? はやての様子は?」

 

ヴィータの質問に私は静かに首を振る。

 

「そうか……」

 

「……こればっかりは主が話してくれるまで待つしかないだろう。多分体調が悪いせいじゃないと思うが……」

 

「そうね。なら私達は少しでも早く魔力を蒐集しなくちゃ」

 

シャマルの言葉にヴィータが力強く頷く。

 

「おう‼︎ 今度はぜってー勝つ‼︎」

 

「気合十分なのはいいが、くれぐれも奴には挑むなよ?」

 

「うぐっ……分かってるよ……」

 

我々全員で挑んで負けたのだ。仮に勝つことが出来たとしても此方のダメージは大きいだろう。その上、得られる魔力がなさすぎる。一番相手にしてはならない存在だ。

 

「姿を確認したらすぐに撤退する。これでいいんだろ?」

 

「ああ。それでは行こう。主のために」

 

私達は今日も蒐集へ出かける。

 

 

 

 

 

管理局の本局:

 

「アント、そろそろ休憩したらどう? 先週からずっと徹夜じゃないか」

 

ユーノはそう言ってアントにホットココアを渡す。

 

「……まだだ。もう少し情報が欲しい。これを読み終わったらまた本を取りに行くぞ」

 

疲れ切った声でそう言うアントにギル・グレアムの使い魔、リーゼロッテは呆れた様子で声をかけた。

 

「いい加減休みなさい。何を調べてるのか知らないけど流石に無理しすぎよ」

 

もう一人の使い魔、リーゼアリアはアントを覗き込むと顔をしかめる。

 

「うわっ……すごい隈が出来てる……もともとの死んだ魚みたいな目と合わさって強烈になってるわよ?」

 

「未整理状態がほとんどの書庫の中から必要なデータを見つけ出すのは大変な作業よ? ちゃんと休まないと見つかるものも見つからないわ」

 

明らかに無理をしているアントに使い魔二人がそう忠告するもののアントは本を読む手を休めはしない。

 

「大丈夫、捜し物は得意だ……ユーノが」

 

「あ、探すのは僕なんだ……。とにかく無理はよくないよ。僕が本を見つけてくるから、その間に仮眠を取っておくべきだ」

 

「……分かった……なら少しでも情報がありそうな物は片っ端から持ってきてくれ」

 

それだけ言い残してアントは机に突っ伏して寝息を立て始める。

 

「はやっ‼︎ ……よっぽど疲れてたのね……」

 

「何がこの子をここまで動かしてるのかしら……」

 

アントのとてつもない状態を見てユーノは軽くため息を吐く。

 

「行きましょう。僕達も頑張らなくちゃ」

 

「……貴方も休んでなかった筈だけど……大丈夫なの?」

 

「僕はさっきちゃんと寝ましたから。それに……」

 

ユーノは軽く苦笑いしながらアントを振り返った。

 

「友達がこんなに頑張ってるんです。僕が頑張らないわけにはいかない」

 

「……はあ、呆れた……。分かったわ、行きましょう」

 

 

 

 

 

 

 

ユーノ達が去ってから数時間後、アントはムクッと起き上がった。

 

「……大分頭が冴えてきた。ルリ、作業は進んでるか?」

 

《たった今ハッキング完了。これより情報を洗い出します》

 

「よし、なるべく急いでくれ」

 

《……何もここまでしなくてもよかったのでは? 管理局の情報ならリンディ・ハラオウンに頼めば済むはずです》

 

「それが全部とは限らないだろ? それに手段を選んでる場合じゃない、急がねえと手遅れになる」

 

《もしこのことが発覚したらボスは指名手配されることになりますよ?》

 

「その時はその時だ。せいぜいそうならないように頑張ってくれ、ルリ」

 

《……了解です》

 

ルリの気合の入った声を聞いたアントは目頭を押さえてため息を吐く

 

「はあ……こんなに本を読むなんて何年振りだよ……つーかいい加減それらしい情報出てこいよ……」

 

手詰まりの状態で時間は進み続ける。そしてタイムリミットは確実に迫ってきていた。

 

 

 

 

 

 

 

とある岩壁世界:

 

駐屯所のモニターで別世界で闇の書を手にしたヴィータを捕捉し、なのはは現場へと駆けつける。

 

「……ちっ……もう来たのか」

 

なのははヴィータと対峙するもレイジングハートを杖化せずに、素手のままヴィータに話しかける。

 

「お話を聞いて欲しいの。私は管理局の人間じゃなくて民間協力者。だから、もしかしたら手伝えることがあるかも知れないの」

 

「う……」

 

そう言って微笑むなのはに一瞬心が揺れるヴィータだったがすぐに否定する。

 

「っ……そんな都合のいい話あるわけねえだろ‼︎ 騙そうたってそうはいかねえ‼︎ アイゼンゲホイル‼︎」

 

「うにゃっ‼︎ み、見えないの‼︎」

 

閃光魔法を発動しなのはの隙をついて戦場を離脱するヴィータ。

 

「……よし、ここまでくれば大丈夫だろ」

 

はるか遠くまで逃走し、攻撃射程範囲に出たことを確認してから次元転送を始める。

 

「待って‼︎ レイジングハート‼︎ バスターモード‼︎」

 

杖を手に持ち魔力を練るなのは。

 

「ディバインバスター・エクステンション‼︎」

 

轟音と共に砲撃魔法が放たれる。

放たれた超長距離砲撃はヴィータが届くわけがないと見込んだ距離を一瞬で制圧した。

 

「はあ⁉︎ この距離で届くのかよ⁉︎ って……あ、あれ?」

 

だが完全に直撃しヴィータ戦闘力の大半を奪ったかに見えた砲撃は、仮面の戦士の魔法防御によって止められていた。

 

「邪魔をするな」

 

仮面の男の手には魔法のデバイスと思しきカードがあり、それを一降りする。

 

「なっ⁉︎」

 

なのはは仮面の男のバインドにかかってしまった。

 

「……お、お前は……」

 

「今の内に脱出しろ。闇の書を完成させるのだろう?」

 

戸惑うヴィータに、脱出を命じる仮面の男。

 

「っ……‼︎ ああ、そうさせてもらう」

 

「くうっ‼︎ 待って‼︎」

 

なのはは自力でバインドを解除するも、ヴィータも仮面の男もそこにはいなかった。

 

《申し訳ありません、マスター。私の警告が遅れました》

 

「ううん。レイジングハートは悪くないよ。これは私の油断だったの」

 

 

 

 

とある砂漠世界:

 

一方、フェイトとアルフは砂漠世界にてシグナムとザフィーラを捕捉し、現場に駆けつけて激戦を繰り広げていた。

 

「はぁぁああ‼︎」

 

「くっ‼︎」

 

剣と剣が交わる。両者とも少しずつ傷が増えていくも決定打には至っていなかったり

 

(やっぱりシグナムさんは強い……でもここは耐えるしかない……そして……)

 

(分かってはいたがやはり厄介だな……だがこれ以上時間をかける訳にはいかない……隙ができた一瞬を狙って……)

 

((奥の手を叩き込む‼︎))

 

互いに隙を伺いつつ戦闘を続ける。だが……

 

「ぐふっ……‼︎ な、何が……」

 

「な⁉︎ お前は……」

 

フェイトはいつのまにか現れた仮面の男に背後から胸を貫かれてしまう。

 

「い、いつの間に……」

 

驚愕するシグナムを横目に、仮面の男はフェイトからリンカーコアを引きずり出しシグナムに差し出す。

 

「奪え」

 

「……っ⁉︎」

 

シグナムはすぐに動くことはできなかった。こんな卑怯な決着に納得がいなかったからだ。だが今は主の命がかかっている。シグナムは歯を食いしばりつつも闇の書を取り出した。

 

「……すまない」

 

魔力を蒐集し終えるとフェイトを優しく地面に寝かせるシグナム。

 

「せめて仲間が迎えに来るまでお前を見守らせてもらう。これが今の私にできる精一杯だ」

 

 

 

 

 

 

side:アント

 

フェイトがやられたと報告を受けた俺はアースラへと向かっていた。

 

「また仮面の男か……考えることが多過ぎてパンクしそうだ……」

 

分かったことは沢山あるのに未だに解決策は分からない。

 

「ルリ、そっちで何か分かったことは?」

 

《闇の書に関する情報はあまり見つかりませんでした。ですが仮面の男達の正体は判明しそうです》

 

「おっ、まじか。なら仮面の男について徹底的に洗い出しといてくれ。闇の書の方はユーノ頼りだな」

 

《了解です、ボス》

 

ようやく調査が一歩進んだと安堵する。

 

「さて、確かここだったな」

 

フェイトが運び込まれた医務室に辿り着きドアを開ける。そこには心配そうにフェイトを見つめるアルフがいた。

 

「うおっ‼︎ ……って誰かと思ったらアントかい。隈が強烈すぎて一瞬誰か分からなかったよ。というか大丈夫かい?」

 

「俺のことよりフェイトの様子はどうなんだ?」

 

「ああ……見ての通りさ。外傷はほぼ無いけど魔力を全部抜かれちまった」

 

アルフはフェイトを助けることが出来なかったと悔しがっていた。

 

「なるほどな……」

 

俺はアルフの話を聞きながらベッドの側の椅子に座る。俺が座るとアルフは今回起こったことを話してくれた。

 

「そうそう。今回はおかしな事が起きたんだ」

 

「おかしな事?」

 

「うん。なんでもなのはが出撃してすぐ、駐屯所のシステムがハッキングされて指示や管制ができなくなったらしいんだよ」

 

ん? ハッキング?

 

俺は冷や汗を流しつつルリを念話で呼びかける。

 

『ルリ……ハッキングって……』

 

《ご安心ください。今回の件と私は無関係です》

 

『そうか……』

 

「ん? 今顔色が青くなってなかったかい?」

 

「いや、気のせいだ。話を続けてくれ」

 

「……まあいいや。それでフェイトを襲ったのは仮面の男だったんだけどね。こいつがまたえらい凄腕だったのさ。なのはの新型バスターの直撃を防御した上に長距離バインドを決めて、それからわずかな時間で砂漠世界に転移、フェイトに気づかれず、局のサーチャーにもかからずにフェイトの背後から完全な不意打ちをしたんだ」

 

確かにその常軌を逸した移動速度や、技量のすさまじさがよくわかる。

 

まあそれは初めて対峙した時から分かってたけどな。

 

それから少しの間アルフの話を聞いていたが、アルフは突然話すのをやめて何か聞いているかのように黙り込む。

 

「はあ……プレシアに今やってる作業を終わらせて早くフェイトの様子を見に行きたいから手伝いに来いって呼び出されちまったよ。悪いけどフェイトを見ててくれないかい? すぐに戻るからさ」

 

「ああ、分かった。早く行ってやれ」

 

プレシアも気が気でないんだろう。本当なら直ぐにでも駆けつけたいけど勝手な行動は出来ないから歯痒い思いをしてそうだ。

 

「じゃあ任せたよ」

 

そう言い残してアルフが去ると途端に強烈な眠気が俺を襲って来た。

 

「……話し相手がいないと眠くなるな……しょうがない、ルリ、何かあったら起こしてくれ」

 

《了解です、ボス》

 

俺はルリにこの場を任せて椅子に座ったまま眠りについた。

 

 

 

side:フェイト

 

「う……うう……ここは……?」

 

目を覚ますと見覚えのある天井が見えた。

 

「……そうだ。私は誰かに攻撃されて……」

 

徐々に記憶が覚醒してくる。

 

「じゃあここは医務室……………っ‼︎ ア、アント?」

 

横を見るとアントがいた。

 

「えっ……まさか……」

 

私…………寝顔見られた?

 

それを理解した瞬間、私は顔が熱くなった。

 

ボッ‼︎

 

「ちょっと待って‼︎ 今髪もボサボサだからあまり見ないで……ってあれ? 寝てる?」

 

よく見るとアントは椅子に座ったまま寝ているようだった。

 

「……」

 

私は体を起こしてアントに近づき髪を搔き分ける

 

「アント……すごい隈ができてる……頑張ってたんだね……」

 

少しの間アントを見ていた私だったけど、もっとしっかりアントを見たくなってしまう。

 

「……もうちょっと近くで……」

 

私はベッドから乗り出すも疲れが抜けていなかったのか体の力が抜けてしまった。

 

「きゃあっ‼︎」

 

「ん? ───グハッ‼︎」

 

倒れる瞬間アントは目を覚ましたけど床に頭を打ったようで気を失ってしまった。一方私はアントの胸元に顔を埋める形でのしかかってしまう。

 

……これがアントの匂い……

 

「って違うよ‼︎ 早くどかなきゃ‼︎ ごめんねアント‼︎」

 

すぐに立ち上がろうとするけど体が上手く動かない。

 

「フェイト‼︎ 大丈夫だった⁉︎ 怪我はない⁉︎……あら?」

 

「はあ……はあ……プレシア……あんたこんなに足速かったんだねえ……あれ?」

 

そこにタイミング悪く来た母さんとアルフに見られてしまった。

 

「…………どうやらお邪魔だったみたいね」

 

「…………うん……悪かったねフェイト……」

 

気まずそうに医務室から出ようとする二人を私は必死に引き止める。

 

「待って‼︎ これは違うの‼︎ とりあえず起こして‼︎」

 

「私ももうお婆ちゃんね……」

 

「……フェイトの子の面倒はちゃんとあたしも見るよ」

 

「だから違うよ‼︎」

 

 

 

 

 

なんとか二人を説得した私はベッドに戻り、アントは隣のベッドに寝かせる。

 

「別に一緒のベッドでもよかったんじゃないかい?」

 

「だからあれは違うの‼︎」

 

アルフが私をからかってくる。私は一緒に寝ると言われてアントに倒れこんだ時のことを思い出してしまった。

 

……うう……アントの匂いが服に付いてる気がする……コーヒーと何やら甘い香りの混じったアントの匂いが……。

 

「っ‼︎」

 

私はまた顔が赤くならないように首を振って今考えていた事を振り払う。

 

「とにかく大丈夫そうでよかったわ。ちゃんと休んでおきなさい」

 

「あっ……」

 

そう言って母さんは私の頭を撫でてくれる。私は少し照れ臭かったけど暖かくて安心する母さんの温もりを感じて嬉しくなった。

 

「う……うう……いってえ……」

 

その時、隣のベッドで寝ていたアントが目を覚ました。

 

「おや、やっとお目覚めかい?」

 

「あら、すごい隈ね。貴方もちゃんと休みなさい」

 

「……ん? ああ、アルフとプレシアか……戻ってたんだな……フェイトも目を覚ましたみたいだな……っ‼︎」

 

「だ、大丈夫?」

 

「ああ、ってあれ? タンコブが出来てる……なんでだ?」

 

「え? ……それは……その……」

 

私が返事に口ごもっていると母さんから助け舟が入った。

 

「きっと椅子からずり落ちたのよ。私達が来た時は床で寝てたわよ? 貴方」

 

「まじか」

 

そんなに疲れてたのか? と首を捻るアントを見て私はぎこちない笑顔になる。

 

うっかり押し倒しちゃったなんて言えない……そもそもあんな事をしちゃったからアントの顔をまともに見れない……。

 

「それでそっちはどうなの? 何か分かったかしら?」

 

「ダメだった。もうこの際この世に存在してるかも分からないようなスーパー技術でも探した方が……」

 

そこまで言った瞬間、アントはハッと顔を上げて母さんを見た。

 

「どうしたの? 私の顔に何か付いてる?」

 

「……ちょっと聞きたいことがあるんだ。少し時間とってくれないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side:⁇

 

深夜の応接室では男が一人、事件書類を眺めていた。そこに現れる仮面の男二人。

 

「ただ今戻りました、お父様」

 

「うむ、ご苦労だった。それで計画の方はどうだ?」

 

「はい、計画は順調。クロノ達は善戦しつつも苦労しているようです」

 

「例のアント・バーキンも情報収集に勤しんでいますがあまり成果は出てないです」

 

「そうか……」

 

男はそう言うと立ち上がり写真立てに手を伸ばす。

 

「封印の切り札、デュランダルはすでに完成している。なんとしても計画を成功させなくてはならない。死んでしまった彼等のためにも」

 

男は静かに、闇の書への怒りを燃やすのだった。

 

 




また原作と少し違う時系列になってしまいました。
多分これからも時系列のズレや原作にない設定が出てきてしまうと思われますがご了承下さい。





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