バカは死んだら治るのか?   作:夏のレモン

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おかしい……夏なのに暇じゃない……。


日常編
自分のために


 

 

 

アントが地球を去ってから二年が経った。なのは達は小学五年生になり、管理局の魔導師として日々を過ごしていた。

魔導師としての活動と学校生活の両立はとても大変なことであり、そのためなのは、フェイト、はやては普通の小学生より疲れ気味だった。だが、それを踏まえた上でも、なのはの疲労は無視できないレベルだった。

 

 

 

「なのは……今日も任務?」

 

学校の帰り道、フェイトは心配そうに問いかける。

 

「うん。遠征任務なの」

 

「あんまり無理は良くないと思うよ? ほとんど休めてないみたいだし……」

 

「にゃはは、ありがとう。でも大丈夫なの」

 

フェイトの言葉を笑って受け流すなのは。

 

《マスター、そろそろお時間です》

 

なのははレイジングハートの念話を受け、分かったと返事を返す。

 

「もう時間だから行くね。バイバイなの」

 

「……うん」

 

笑顔で走り去る親友を見送りながら、フェイトの心の中を拭いきれない不安が広がっていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……なのは……大丈夫かな……。

 

美由希は翠屋の店番をしていた。この時間帯は客が滅多にいないので翠屋には美由希が一人いるだけだった。

 

お父さんもお母さんも恭ちゃんも心配してる……。このままじゃいつか取り返しのつかない事になるんじゃ……。

 

美由希は任務に出かけた妹を心配していた。なのはが無理をしていると分かっているからだ。勿論、美由希も注意はした、美由希に限らずなのはが無理をしていると気付いている人達はみんな注意したのだ。だがなのはは一言「大丈夫」と言って無理をやめなかった。

 

「こんな時、アント君がいたらなぁ……」

 

アント君だったらなんとかしてくれたんじゃ……。今頃どうしてるのかな……。

 

そう思うと美由希の表情は一段と暗くなった。なぜならアントは二年間、一度も戻ってくることはなく、また連絡もなかったからだ。

 

もしかしたら大怪我でもして連絡が出来なくなってるのかも……。

 

美由希は首を振って今の考えを搔き消す。

 

「……いやいや、ネガティブに考えちゃダメだよね……きっと面倒臭がってるだけだよ」

 

その時、不意に翠屋のドアが開いた。

 

「あ、いらっしゃ……」

 

来客だと思った美由希は気を取り直して接客しようとした瞬間、驚きで言葉を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遠征任務は順調に進んでいた。この世界の季節は冬で、かなりの雪が降っていた。

 

「ふう。雪のせいで少し視界が悪いな……なのは‼︎ そっちはどうだ?」

 

ヴィータがなのはに声をかける。だが一向に返事は返ってこない。

 

「なのは?」

 

再度声をかける。するとなのははたった今気づいたかのようにハッとしてヴィータの方を見た。

 

「ごめん、ヴィータちゃん。ちょっと、ボーッとしてたの」

 

にゃはは、とどこか力なく笑うなのは。

 

「おいおい、休んだ方が良いんじゃねえか?」

 

「にゃはは、大丈夫。まだまだ元気だよ」

 

「なら良いけどよ……」

 

ヴィータはどこか不安を覚えたが、きっと大丈夫だろうと自分に言い聞かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、特に問題なく任務は進み、このまま帰って終わりかと思われた、その時だ。

 

突然、レイジングハートがアラートを鳴らした。

 

『未確認の反応です‼︎ 急速にこちらに接近してます‼︎』

 

「っ‼︎ なのは‼︎」

 

「うん‼︎」

 

二人でデバイスを構える。この部隊の最高戦力である二人が固まっていては意味がないので互いに距離を取る。そしてもしも敵だった時の為に臨戦態勢に入った。

 

「来たぞ」

 

視認できるところまで相手が来た、と思うのとほとんど同時に、謎のロボットが砲撃を放ってきた。

 

「敵だ‼︎ 一気に片付けるぞ‼︎」

 

ヴィータは砲撃を躱し、魔法弾を撃ち出す。しかし、当たりはしたが破壊はできなかった。

 

くっ‼︎ 魔力弾じゃ壊せないくらい頑丈なのか……それなら‼︎

 

「アイゼン‼︎」

 

強力な一撃を与えようと相手に近付きアイゼンを思いっきり振り降ろす。すると力が抜けるような奇妙な感覚がヴィータを襲った。それと同時にヴィータの使用していた魔法が突如消え去った。

 

「⁉︎」

 

飛行魔法が消え去り体勢が崩れるヴィータ。後ろから別の一機が刃物を突き出してきた。

 

「ちっ‼︎」

 

身を捻って刃を躱し、アイゼンを叩きつける。何故か上手く力が入っていなかったがなんとか破壊すると飛行魔法が復活した。そんな奇妙な現象に不気味なものを感じたヴィータは一旦ロボット達から距離を取った。

 

「なんだ……? どうなって……」

 

「ぎゃあ⁉︎」

 

局員の一人が攻撃を喰らってしまったようだ。他の局員達も魔法弾を無効化されてしまい防戦一方だった。

今回は演習のつもりで来ていたので実戦経験のない局員がほとんどだった。その上敵は謎の魔法を使ってくる。ヴィータは不利な状況だと判断してなのはに指示を出した。

 

『なのは‼︎ 今の戦力でこいつらを倒すのはきつい‼︎ 増援を呼んで、あいつらをカバー出来るように固まるぞ‼︎』

 

『……』

 

だが、なのはから返事がこない。

 

『おい‼︎ どうした‼︎ なのは‼︎』

 

不安に駆られたヴィータはなのはがいるであろう方向に視線を移した。すると、ヴィータの瞳に血にまみれたなのはが倒れている姿が映った。

 

「なのは⁉︎」

 

 

 

 

 

溜まりに溜まった疲れにより注意力が散漫になっていたなのはは周囲の背景に同化していたロボットに脇腹を貫かれてしまった。

 

「う……うう……」

 

なんとか立ち上がろうとするが、積み重ねられた疲れ、そしてガジェットによるダメージにより上手く動けない。そんななのはに追い打ちをかけようと迫るガジェット。

 

「なのは‼︎ くっ‼︎」

 

ヴィータはなのはを助けに行こうとするが数多のガジェットに行く手を阻まれてしまった。

 

なのはに迫っていたガジェットは鈍く光る刃を振りかぶった。

 

……失敗……しちゃったなぁ……みんなに迷惑かけちゃった……。ごめんね……ヴィータちゃん……。

 

倒れて動けないなのはに鈍く光る刃が凄まじい勢いで振り下ろされる。

なのはは薄れゆく意識の中、二年前に出会った傭兵の少年を思い浮かべていた。

 

また会いたかったなぁ……

 

 

 

……アント君。

 

 

 

その時だ。なのはに斬りかかっていたロボットは真っ二つに割れ、地面に崩れ落ちた。

 

「なるほどな。念のため来てみたが、やな予感は的中したってわけだ」

 

なのはが声が聞こえた方へ視線を動かすと、破壊されたロボットの背後から黒髪の死んだ魚のような目をした青年が現れた。

なのははその青年の姿に懐かしい少年の面影を感じた。

 

……アント……君……?

 

心の中でそう呟くと、なのはの意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

なのはを救ったのは身長が伸び青年と言える姿に成長したアントだった。

アントはなのはに歩み寄るとなのはの状態を確認する。

 

「脈が大分弱いな……このままじゃ手遅れになる」

 

「なのは‼︎」

 

激しい戦闘を潜り抜け、なのはを助けに駆けつけたヴィータだったがアントの姿を見ると驚いた表情で固まった。

 

「……お、お前……アントか……?」

 

「よお、久しぶりだな」

 

《ボス、敵機が迫っています。迅速な対応をお勧めします》

 

ルリの警告と共にアントの周囲にロボット達が群がり始めた。

 

「ヴィータ、話は後だ。とっととなのは連れて逃げるぞ」

 

アントは地面に倒れているなのはを指しながらヴィータに指示を出した。

 

「っ……ダメだ……まだ局員達が大勢いる……今あたし達が抜けたら見殺しにしちまう……‼︎」

 

アントはヴィータの言葉に面倒くさそうに顔をしかめる。そして周囲のロボットを見渡すと諦めたようにため息を吐く。

 

「……ルリ、このガジェットの種類は?」

 

《例の新型ガジェットです》

 

「AMFを使ってくる奴か……戦ったことはあるけど苦手なんだよなぁ、こいつら」

 

そう言うとアントは二本の小太刀を構える。

 

「ヴィータ、退路は俺が守る。お前はなのはを連れて逃げろ。局員は俺がどうにかしておく」

 

アントの言葉にヴィータは目を見開く。

 

「はあ⁉︎ そんなこと任せられるわけねえだろ‼︎ お前まで死んじまうじゃねえか‼︎」

 

「俺なら大丈夫だ。こいつらとは既に実践済みだしな。それに……このままだとなのはが死ぬ」

 

「っ……‼︎」

 

切羽詰まった様子でなのはと周囲を見比べるヴィータ。

 

「時間がない。行くぞルリ」

 

《了解です、ボス》

 

アントはそんなヴィータに構うことなくガジェットの群れに突っ込んだ。

 

「あ‼︎ ちょ‼︎ 待てよ‼︎」

 

声をかけるもすでにアントの姿は見えなくなっていた。

 

「クソ‼︎ すぐに戻って来るからな‼︎」

 

ヴィータはなのはを担ぎアントの作った退路を駆け抜けて行った。

 

 

 

 

 

アントはヴィータが行ったのを確認しながら局員に迫っていたガジェットを切りつける。

 

「た、助かった……」

 

「早く逃げろ。退路はあっちだ。動けない奴も連れてってやれ」

 

「あ、ああ、ありがとう……君は……いったい?」

 

「悪いが話をしてる暇はないんでね」

 

アントはそう言い残して次のガジェットに襲いかかる。刀はガジェットに深く突き刺さり内部の回路をズタズタにしていく。

 

「いちいち接近して切らなきゃいけないってのが面倒なんだよな。……銃使いたい」

 

《仕方がありません。ボスの魔力ではカートリッジを使わない限りAMFによって無効化されてしまいますからね》

 

「分かってる。さーて……」

 

周囲から次から次へと繰り出される刃を躱しながらアントは冷静に状況を分析する。

 

「……ギリいけるな。カートリッジを全部使えば」

 

ある程度分析を終えるとアントは前傾姿勢になり、ガジェットの群れに飛び込んでいった。

二本の刀を巧みに扱いガジェット達の隙間を駆け抜けながら流れるように切り捨てていく。その途中、アントからかなり離れた場所でガジェットに殺されかけている局員を発見した。

 

「チェンジ‼︎ カートリッジロード‼︎」

 

即座に武器を銃に変え引き金を引く。

放たれた弾丸は局員を襲っていたガジェットを貫くと、射線上のガジェットも全て貫いていった。

 

「だいぶ減ってきたな……なら……カートリッジロード、そして雷装」

 

残りのガジェットの数を確認し、アントはラストスパートに入った。

雷装を使用することで死角が消えたアントはより疾く、より鋭く刀を振るう。ガジェット達はなすすべもなく切り刻まれていった。

 

 

 

やがて、ほぼ全てのガジェットがアントによって破壊された。

 

「ふう。ざっとこんなもんだろ」

 

《お疲れ様です、ボス》

 

そうして一息ついたところに、ヴィータが増援を引き連れて現れた。

 

「無事か‼︎ アント‼︎」

 

「ああ、全部終わったぞ」

 

周囲にガジェットの山が築かれているのを見たヴィータは表情を引きつらせた。

 

「お、おお、なんて言うか……相変わらずだな……」

 

「そんなことより、なのはの様子は?」

 

アントがそう問いかけるとヴィータは暗い表情になった。

 

「……あたしにも……分からねえんだ……」

 

「そうか……」

 

アント達はその場でやることを済ませて撤退するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怪我はかなりの時間はかかるが完治可能だった。そのため、なのははしばらく入院することになった。

なのはが大怪我したと聞いたフェイトとはやてはすぐさまなのはのいるミッドチルダの病院に駆けつけた。

 

「なのは‼︎ なのははどこ⁉︎」

 

「大怪我したって本当なんか⁉︎」

 

「あ、主……お気持ちは分かりますがまずは落ち着きましょう……」

 

「フェイトも落ち着け。慌てたってどうにもならんぞ」

 

真っ青な顔で慌てふためく二人を、共に駆けつけていたリインフォースとシグナムが鎮める。

その後、ヴィータが命に別状はないと伝えると二人は安堵の溜息をつく。

 

「よかったぁ……」

 

「ほんまによかったなぁ……」

 

その時、二人はようやくヴィータのそばにいた青年の存在に気付いた。

 

「………………え?」

 

「ま……まさかと思うけど……アント君……?」

 

「ああ、久しぶりだな」

 

一瞬フリーズした二人だったが、すぐに凄まじい勢いでアントに詰め寄る。

 

「アント⁉︎ 本当にアントなの⁉︎」

 

「二年もなにやっとったんや‼︎ 私達がどれだけ心配したと思っとるん⁉︎」

 

「え、あ、えーと……」

 

予想外の圧力に思わず後ずさるアント。だが二人はどんどん距離を詰めるため、とうとうアントは壁に追い詰められた。

追い詰められたアントは助けを求めて周囲に視線を送るが、リインフォースとシグナムとヴィータは目を逸らし、看護師達もその場から居なくなっていた。

 

「アント‼︎」

 

「こっち見いや‼︎」

 

「……」

 

それからしばらくの間、アントはフェイトとはやてにこってり叱られた。

その後、フェイトとはやては一旦地球へ帰り、アントはなのはが目覚めるまでミッドチルダに留まることにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

なのはが怪我をした翌日、なのはは目を覚ました。それを聞いたアントはお見舞いに訪れた。

 

「よう」

 

窓の外をボーッと眺めていたなのはは来客に気付きドアの方を振り向いた。

 

「あ、アント君……にゃはは……ごめんね……こんな形で再会になっちゃって……」

 

どこか消沈した様子でアントを出迎えるなのは。

 

「まったくだ」

 

アントはそばにあった椅子に座ると持って来たお見舞いのリンゴを剥き始める。

 

「いるか?」

 

「……ううん。今は食欲ないの」

 

「そうか」

 

アントは剥き終えたリンゴにかじりついた。二人の間に会話はなく、ただアントのリンゴをかじる音が響くだけとなった。

 

「……何も……聞かないの?」

 

沈黙に耐えきれなくなったのか、恐る恐ると言った様子で問いかけるなのは。

 

「聞いてほしいことでもあるのか?」

 

なのははアントの問いにうっと言い淀んだ。

 

「……あるんだな。なら話してみろよ」

 

なのはは少し躊躇っていたが、やがてポツリポツリと語り出した。

 

「……私ね、魔法と出会うまでは自信の持てることが無かったの。将来のこととかよくわからないまま過ごしてた。だから、ユーノ君と出会って、魔法と出会って……運命だと思ったの。やっと、自分の誇れるものが見つかったって。これが私なんだって。……でも、失敗しちゃった」

 

俯くなのは。アントはなのはの話を聞きながら二個目のリンゴに手を伸ばす。

 

「勝手に無茶をして、ここまで皆に迷惑かけて……申し訳なくて……こんなことならもう、管理局を辞めて魔法から離れるべきなんじゃないかって……」

 

「つまり魔導師をやめるってことか?」

 

「……うん」

 

「ふーん。ならやめちまえ。そんなもん」

 

アントの言葉になのはは驚いたように顔を上げる。

 

「え……?」

 

「うん。思い立ったが吉日だな。早速辞める準備を整えておくか」

 

「え、ま、待って……」

 

「そうと決まれば色んな人に話を通しておかなきゃな。忙しくなるな」

 

「待って‼︎」

 

強引に話を纏めようとするアントをなのはは強い口調で止めた。するとアントは呆れた様子でなのはを見る。

 

「……ったく。やっと本心が出てきたな」

 

「え……?」

 

アントは椅子から立ち上がりなのはの前に立つ。

 

「何を話すのかと思えば、迷惑になるから辞めたい? 調子乗んな。お前一人がかける迷惑なんてタカが知れてるんだよ」

 

一旦そこで言葉を切るとアントはなのはに視線を合わせる。

 

「他人なんかどうでもいい。お前自身は何をしたいんだ?」

 

「……私は……」

 

言い淀むなのはにアントは更に言葉を重ねる。

 

「なりたい自分は何をやってるのか、目を閉じて想像してみろ」

 

なのははアントに言われた通り目を瞑った。しばらくしてゆっくりと目を開くと一言呟いた。

 

「………………飛びたい」

 

それを皮切りに、次から次へと言葉が溢れ出る。

 

「……我儘かも知れないけど……これは私の本当の気持ち……これだけは絶対に譲りたくない……‼︎」

 

アントはなのはの意思を聞くと軽く微笑む。

 

「そうか。なら好きなだけ飛べばいい。誰の為でもなく、自分の為にな」

 

「……うん‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらく雑談すると、アントは席を立った。

 

「じゃあ、そろそろ帰るわ」

 

「……うん。今日はありがとうなの」

 

部屋を去ろうとアントがドアに手をかけた時だ。

 

「ア、アント君‼︎」

 

なのはがアントを呼び止めた。

 

「その……地球にはずっといるの?」

 

「ああ、ずっとは無理だけどしばらく地球に居座るつもりだ」

 

「う、うちに泊まるんだよね?」

 

「ん? まあ、そうなるな」

 

「じゃ、じゃあ……私が治るまで待ってて欲しいの‼︎」

 

なのはの勢いに押されるようにコクリと頷くアント。

 

「わ、分かった約束する」

 

するとなのははジト目でアントを見つめる。

 

「……約束……」

 

「どうした?」

 

「アント君……今まで約束を守ってくれたことはあんまりないの」

 

「そ、そんなことないぞ?」

 

「でも早く帰ってくるって約束したのに全然帰ってこなかったの」

 

「そ、それは……色々と事情が……」

 

事情があったと言っても納得はしなかった。何がどうあれ、約束を守っていないのは事実だったからだ。

 

「じゃあ依頼するの」

 

「い、依頼?」

 

「クロノ君が言ってた、アント君は受けた依頼は絶対果たすって」

 

「……だからってわざわざ依頼しなくても……信用ねえなぁ」

 

《当然かと思われますが? 実際ボスは約束にはかなりルーズになる傾向にあります》

 

「……」

 

いくつか心当たりがあるアントは黙り込んでしまった。

 

「とにかく。勝手にどっか行っちゃったりしないで。分かった?」

 

なのはにそう言われアントは諦めたように頷いた。

 

「ああ、分かった。依頼は受ける。ただし報酬はもらうからな」

 

「分かったの。シュークリームでいい?」

 

「……お前、絶対俺をチョロいって思ってるだろ」

 

まあいいけどさ、とため息をつきながらドアを開ける。

 

「ちゃんと安静にしとけよ。じゃあな」

 

「うん、バイバイなの」

 

ドアが閉まり、アントが去ったのを確認するとなのはは顔を赤くして布団に潜り込んでいた。

 

う……うう……つい言っちゃった……でも気付いちゃったんだもん……もう一つの私の本心……。

 

先程、アントに目を瞑って想像したときのことを思い出し、アントの姿を思い浮かべて心の中で呟く。

 

私はアント君のことが好きなんだって。

 

「っ……‼︎」

 

なのはは布団の中で真っ赤になっていく顔を両手で覆う。改めて自分の本心を知ると先程の自分が恥ずかしく思えてしまったのだ。

 

まだ言えない。言えるわけがない。それでもいつかは告げたい。

 

……まずは怪我を治すことに専念しなきゃ……それから……お料理……作ってみようかな……アント君、食べるの大好きだし。

 

 

 

こうして、自分の本心を知った少女の戦いが幕を開けるのだった。

 

 

 

 

 

 




武器が変わったので紹介しておきます。

剣:ロングソード→刀(小太刀二刀流)
槍:素槍→薙刀
銃:トカレフTT-33→デザートイーグル
短剣:ダガー→短刀


それとしばらくは日常編を書くつもりです。なのでよくないところなどはご指摘頂けるとありがたいです。




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