パチリ
「はっ……」
馬小屋の藁の中で彼は目覚めた。
「俺はあの後死んだのか……」
一言そう呟いたあと自分が受けた屈辱を思い出す。
「……そうだ、あんなモブどもにいいようにやられた。神は最初から俺のいうことなんざ聞いちゃいなかった。どいつもこいつも俺を舐めやがって‼︎」
怒りが溢れてくる。
「オリ主は俺だ‼︎ テメェらみてーなモブは俺の踏み台になってればいいんだよ‼︎」
そして、おもむろに立ち上がり
「叩き潰してやる‼︎」
外へ飛び出した。
見つけた‼︎ 前回俺のことを追いかけ回していた奴らだ‼︎
「ウオォォオオオ‼︎」
歩いていた盗賊たちに飛びかかる。
「うわっ‼︎ なんだこいつ‼︎」
「落ち着け‼︎ ガキ一人だ‼︎」
飛びかかったはいいが所詮は多勢に無勢、子供の肉体の元ニートに戦いができるはずもなく、あっけなく取り押さえられた。
「うぅ……」
「何がしたかったんだコイツ?」
「さあーな弱っちいガキの考えることなんか分かるかよ」
弱い
ただの踏み台だと思っていたモブのその言葉に彼は我慢ならなかった。
「おいっ‼︎ モブが俺に触んじゃねえ‼︎ オリ主である俺におとなしくやられろ‼︎」
「は? オリ主 なんだそりゃ?」
「おい、いい加減その鬱陶しい口黙らせろ。たくっハンティングにもなりゃしねえ使えねーガキだ」
「はいよ」
グサっ
盗賊の剣が心臓に突き刺さる。
「ガァアアアアアアアアア‼︎」
(こうなったらとことんやってる、てめーらに勝つまで何度でも繰り返してやる‼︎)
再び馬小屋
悔しいが全員まとめて相手にすんのは無理だろう、ここは一人ずつ戦った方がまだ勝算がある。それに昔見たタイムリープ物によると相手は同じ動きをするはず。何回か繰り返して動きを覚えておけば
「よし‼︎ 勝てる‼︎」
まずは一人と対面しなくちゃな。
拾った釘を片手に、 そーと扉から出る、バレないように周囲を見回し一人で行動しているやつを探す。
いた。
馬小屋の裏に突っ立ってやがる。焦らずゆっくりと奴の背後に近づき……
「おい‼︎ 後ろ‼︎」
「‼︎」
チッばれた。まぁいい、十分近づけた。
「オラァァああ‼︎」
持っていた釘を奴の喉元へ‼︎
「くっ‼︎」
相手はとっさにしゃがむ、躱された。休む間も無く次の攻撃‼︎
グサっ
だがその前に反撃されてしまった。奴の剣が腹に刺さる。メチャクチャ痛い
「ぐふっ‼︎」
力なく地面に倒れる。
今回はここまでか、でも動きは覚えた。
さぁ、二度目の挑戦だ。釘を持って馬小屋の裏へ
(しめしめ、突っ立ってやがる)
初撃はしゃがんで躱され、腹に一刺しだったな。ならばフェイントかましてやる。
「おい‼︎ 後ろ‼︎」
「‼︎」
初撃を躱す為に奴はしゃがむ、だがそれはフェイントで釘をそのまま振り下ろす。
ふははははは‼︎ もう遅い‼︎ 脱出不可能だ‼︎
迫り来る釘を見て盗賊は驚いた顔で、俺の手を掴んだ。
ん? なんだ掴まれた?
そして俺は掴まれたまま地面に組み伏せられ呆気なく殺された。
馬小屋
「はぁぁあああ⁉︎」
なんだあれは⁉︎ 動きが違うじゃねーか‼︎ なんでだ‼︎ 未来が変わっちゃってるじゃん‼︎
「なんでだよ……」
ダメだアニメ知識は使えない、正直何が原因かなんて俺が推理できるわけない。未来を知っていること自体が未来に影響を与えるとか、フェイントしたのが原因だったりしたらもうどうしようもない。
「一人でガチンコバトルするしかねーのか?」
どんだけ大変な思いしなきゃいけないんだよ……
「あーっ‼︎ ちくしょう‼︎ なんでオリ主たる俺がこんな色々考えなきゃいけなんだよ‼︎」
オリ主らしく真正面から叩き潰してやる‼︎
死に戻り6回目
呆気なく一人目に負ける
7回目
惜しいところで一人目に負ける
8回目
一人目に勝った、のちに囲まれ死亡
・
・
・
50回目
囲っていた奴らは蹴散らした。だが増援に囲まれ死亡。
・
・
・
100回目
増援も蹴散らした。囲まれるのにはいい加減慣れて来た。
だがとうとうラスボスのようだ。そいつは身長2mくらいの大柄で柔道着の袖だけ破けたような服装をしている。武器はあの大剣だろう。しかも、さらに部下を引き連れてやがる。一体何人いるんだよ。
「貴様か、俺の可愛い部下を次から次へと殺したのは」
「……」
もはや返事を返すのも面倒になった。
「ふむ、末恐ろしい奴だ釘一本で100人もの部下に勝つとは、見た目の年齢と違い随分経験豊かなようだな。どうだ?俺の部下にならないか?」
「……」
馬鹿なこと言ってやがる、この俺がモブの部下になんかなるわけねえだろーが。
俺は返事することなく釘を構える。
「そうか、ならば部下の仇を取らせてもらうとしよう」
さあ、ラスボス戦だ
・
・
・
200回目
勝てない
・
・
・
300回目
……勝てない。
「だめだあの魔力量に勝つには魔力操作の技術で勝たねえと……」
馬小屋の藁の上でボソリと呟く
「だいたいなんで俺こんな辛い思いしてんだよ、オリ主って違うだろ……もっと華やかで苦労なんて女の子関係だけって感じで……」
……少しだけ休んでいよう。
「あー、なんか全部どうでもよくなって来たな」
そう言って馬糞の匂いを気にすることなく横たわって眠る。
「んあ? 寝すぎたか盗賊どもはどうなって……ん?」
なんでだろう……縛られている。
「目が覚めたか、間抜け」
間抜け? 誰が? 俺が?
「盗賊が来てんのに呑気に居眠りしているような奴を間抜けと言わずしてなんというんだ?」
……やらかした、気を抜きすぎた……よほど疲れてたみたいだ、精神的に。
「おーい、メインが起きたぞー」
メイン? なんだそれは?
「おー、起きたか最後の休息は楽しめたか?」
……なんか嫌な予感がする。いや、ほぼ確信して言える、ろくなことにならない。どんだけこいつらの相手してきたと思ってるんだ。こいつら全員揃っていかれてるのはとっくに分かってる。
「準備開始……」
その言葉と共に奴の手下が動き出す。俺はまるでキリスト教のあの偉い人と同じように貼り付けにされる。どうやらこれで準備完了らしい。
「よーし離れろー‼︎」
奴らは50メートルくらい離れて武器を構える。
「奴にとどめを刺した奴はこの金をくれてやろう‼︎」
「ひゅ〜、今回は大盤振る舞いですね‼︎」
「ルールはいつも通り一人一発までだ‼︎」
「それじゃ一発目いきまーす」
どうやら奴ら的当てをするつもりらしい。俺が起きるまで待ってたのは俺が苦しむ様を見たかったからか。
だが一発目は俺から大分外れて飛んで行った。
「はっははははっ‼︎ 下手だなーお前は‼︎」
一発目が外れて少しホッとする。
正直外すか、即死させるかのどちらかにしてほしい。即死ならほとんど痛みなく終わる、痛みのレベルとしては爪切りで爪の半分くらいごっそり切った時くらいで済む。
「次は俺だな」
飛んで来た盗賊の魔力弾は今度は俺を撃ち抜いた。
「ウガァッ‼︎」
当てやがった‼︎ しかも左足首に‼︎ どう考えても致命傷にはならない場所じゃねえか‼︎
というかなんで俺はこの状況を受け入れているんだ? モブどもに的にされて、できれば即死がいい? 違うだろーが‼︎ 奴らに痛い目見せてやるんだよ‼︎
決して致命傷にはならない痛みが、彼の中で消えかけていた奴らへの怒りを再燃させる。
そこからは地獄だった。
「グッ……うぅ……ヒュー……ヒュー……」
片腕はもげ、余すところなく傷だらけだった。
そこに、光線が肩を貫く。
「うぐォォォおおおおおおおお‼︎」
奴らわざとやってんじゃねーかって言うくらいギリギリ即死にならない傷を与えてくる。だが、やられっぱなしじゃない、奴らの魔力操作の仕方を見て盗み続けている。
次からは絶対に気を抜かない‼︎ 奴らを始末するまで戦い続けてやる‼︎
そして、とうとうラスボスが出て来た。
「俺でラストだな、まったく下手くそな奴ばかりだ。よく見ておけ、的当ては、こうやるんだよ‼︎」
そう言って放たれた光線はまっすぐに俺の頭に向かってくる。
(ん?なんだ?なんか違和感があるような?)
そして 光線は俺の頭をぶち抜き……
俺は馬小屋に戻ってきた。
盗賊編はそろそろ終わらせたい。
ちなみにこの盗賊団のボスは魔力量こそ多いですが他は大したことありません。よって魔導師ランクはAクラスくらいです。