バカは死んだら治るのか?   作:夏のレモン

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深夜テンションで書き上げました。おかしなところがあったら指摘していただけると幸いです。


仲直り

 

 

スカリエッティのガジェットに対し、なのは、フェイト、ヴィータの三名が対処することになった。

 

シグナムとフォワード三人は待機、そしてティアナは心の整理が出来てないという、なのはの判断により出動待機から外された。

 

「……やっぱり、命令を聞かない部下は要らないってことですか」

 

俯き加減で呟かれたティアナの言葉からは、悔しさが滲み出ていのが分かる。それを聞いたなのはは、一瞬悲しそうな瞳になる。

 

だが、すぐにため息をついて厳しい表情になった。

 

「自分で言ってて分からない? 当たり前の事だよ、それ」

 

少し強めに言うが、ティアナは引き下がらない。

 

「現場での指示や命令は聞いてます‼︎ 教導だってちゃんとサボらずやってます‼︎ それ以外の場所の努力まで教えられた通りじゃないとダメなんですか‼︎」

 

震える声で訴えるティアナ。

 

強くなりたい、その一心で努力し、それを否定された悲しみが溢れている。

 

だが、出撃前に口論するような事ではない。

 

ヴィータがティアナを止めようと前に出ようとする。だが、なのはがヴィータを抑えた。

 

「なのは……」

 

ヴィータがなのはを見上げる。

 

まっすぐにティアナを見る瞳に一瞬躊躇したが、ヴィータは引き下がった。

 

「あたしは、なのはさん達みたいにエリートじゃないし、スバルやエリオみたいな才能も、キャロみたいなレアスキルもない‼︎ 少しくらい無茶したって、死ぬ気でやらなきゃ強くなれないじゃないですか‼︎」

 

ティアナがなのはに詰め寄る。

 

「このバカが……」

 

状況を納めるべくシグナムがティアナに掴みかかろうとした時、待ったをかけるようにアントの手が添えられた。

 

「邪魔をするな、アント。なまじ付き合うからつけ上がるんだ。それに、これはお前の出る幕ではないぞ」

 

「分かってる。それを承知の上で頼む、ここは任せてくれねえか?」

 

「なんだと……?」

 

シグナムは眉を思いっきりしかめアントを見る。そしてフッと肩の力を抜くように息を吐くと、握っていた拳を緩めた。

 

「……今回だけだ。だが何かあったら容赦せんぞ」

 

「悪いな」

 

シグナムの了承を得たアントはティアナに歩み寄った。

 

「付いて来い」

 

「え……? きゃっ⁉︎」

 

困惑するティアナの手を取ると、強引に引っ張っていく。

 

「アント……」

 

「割り込んで悪いな。こいつ借りるぞ」

 

アントはそう言い残し、ティアナを連れて去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「なんなんですか⁉︎ いきなり‼︎」

 

人気のないところまで来ると、ティアナは力が緩んだ瞬間を狙ってアントの手を振り払った。

 

「そう警戒すんな。あのままゴネてても状況は変わらねえよ。一旦、頭冷やしな」

 

タバコを取り出し一服するアント。ティアナはそんなアントに苛立ちを隠せなかった。

 

「そんな暇ありません‼︎ あたしは──」

 

「冷静になったら特別に教えてやるよ、汚名返上する方法」

 

「な……⁉︎」

 

「失敗続きだもんな、この辺りで挽回したいだろ?」

 

少しの間、無言の時間が続いた。

 

やがて、ティアナはゆっくりと口を開いた。

 

「……本当に、そんな方法があるんですか?」

 

「お前次第だ。なんでもする覚悟があるってんなら、きっと上手くいく」

 

「っ……⁉︎ 教えてください‼︎ どうすればいいんですか⁉︎」

 

ティアナは必死な様子で食いついた。

 

「覚悟はあるのか?」

 

念を押すようや問いかけるアント。

 

「あります‼︎ 認めてもらえるならなんでもやります‼︎」

 

「そうか、そこまで言うなら教えてやるよ」

 

迷う事なく即答したティアナに対し、アントは煙を吐くと口角を吊り上げつつ答えた。

 

「仲間を踏み台にすれば良い」

 

「え……?」

 

予想外過ぎる提案にティアナは呆然としてしまう。

 

「鈍い奴だな。お前以外がダメダメになりゃあ、必然的にお前が一番評価されることになるって言ってんだ」

 

「何を言って……」

 

「そんなにおかしな事は言ってねえよ? むしろ常套手段だ。周囲の奴等に負けたくねえんだろ? なら大人しく言う事聞いとけ。間違いなく一番になれるからよ」

 

唖然とするティアナに対し、アントはニタリと笑ったまま、死んだ魚のような目を細めた。

 

「なんだ? 俺がこんな事言ってんのがそんなに意外か? 俺を聖人君子か何かだと思ってたなら悪いが、これが俺の本性だ。”金と手柄のためならなんでもする“ってのがモットーの薄汚い傭兵だぜ?」

 

「そんな……」

 

後退りするティアナ。だがアントは素早く壁に手をつきティアナの逃げ場をなくす。怯えたようなティアナの瞳とアントの死んだ瞳が重なった。

 

「いいか? これは親切心で教えてやってるんだ。辛いよなあ? 周りが天才だらけで。このままじゃ埋もれて終わっちまう。本心から助けてやりたいと思ってんだよ、俺は」

 

「でも……いくらなんでもそれは……」

 

「はあ? 今更何言ってんだ? 今までだって、散々自分勝手にやってきたじゃねえか」

 

「え……?」

 

「見たぜ? ホテルでのお前の行動をよ。手柄が欲しくて突っ走ってたよなあ? ミスショットした時、何考えてたんだ? どうせ、失敗したとか、失点を取り戻さないと、とか考えたんじゃねえか? ええ? 相棒を殺しかけておいてよ」

 

「……そ……そんなこと……‼︎」

 

「あるんだよ。よく思い出せ、あの場面を。習った事だけをしっかりやってりゃあ、スバルに危険が及ぶことはなかった。違うか?」

 

「……あ……あ……」

 

ティアナの目が見開かれる。呼吸が浅くなっているのか、息が荒い。

 

「そして極め付けは、なのはとの模擬戦だ。一撃必殺を狙ってたんだよな? 付け焼き刃の近接戦で、なのはの防御をぶち抜くつもりだったんだろ? 呆れた話だ、無理に決まってんだろ。ああいう戦い方はそれなりの技術が伴って初めて成立するんだ」

 

「……」

 

ティアナは動けなかった。耳を塞ごうにも塞げない、目を背けようにも背けない。ただひたすら事実を突きつけられる。

 

「背伸びして、身の丈に合ってないことをする。お前みたいな奴を俺達の世界でなんていうか知ってるか?」

 

楽しそうに口角を吊り上げていくアント。その死んだ瞳には、顔面蒼白でこちらを見るティアナの姿が映っていた。

 

「『jerk(マヌケ野郎)』って言うんだよ」

 

「アァァアアア!!!!」

 

突如、廊下に叫び声が響き渡った。

 

声の方向から、怒りに満ちた様子のスバルが凄まじい勢いでアントに殴りかかった。

 

だがアントはスバルの方を見る事なく拳を躱すと、手首を掴み上げ、その勢いのまま壁へ叩きつけた。

 

ドゴォン‼︎

 

「かはっ……‼︎」

 

「スバル⁉︎」

 

ティアナは慌てて崩れ落ちるスバルへ駆け寄った。

 

「めり込みかけてんじゃねえか……どんだけ勢いよく突っ込んできたんだよ……」

 

「あんた……なんでここに……」

 

だがスバルは答える事なくアントを睨みつけ続ける。

 

「……許せない……ティアは……必死に頑張ってた……そんな事言われる筋合いない……」

 

息も絶え絶えになってなお、ティアナを庇うスバル。そんなスバルを前に、アントは声を上げて笑った。

 

「クハハハハッ‼︎ まるで忠犬だな‼︎ ティアナ‼︎ お前は恵まれてるよ。こんな便利な手足がいるんだもんなあ?」

 

「っ‼︎」

 

ティアナはキッとアントへ顔を向けた。そして立ち上がり手を振り上げた。

 

パンッ‼︎

 

頬が叩かれる音が廊下に響く。

 

「撤回してください‼︎ スバルは便利な手足でも、忠犬でもありません‼︎ あたしの大事な相棒です‼︎」

 

「ティア……」

 

アントは口元を拭うと、意地悪く笑った。

 

「相棒? 付き添うだけで、暴走したお前を諌めもしない奴がか?」

 

「っ……⁉︎」

 

「あのままの生活をしていたら、いつかティアナは死んでいた。まさかとは思うが『ティアナは間違ってない。いざって時は私が守る』なんてヌルいこと考えてたんじゃないだろうな?」

 

「う……」

 

俯くスバル。アントは鼻で笑った。

 

「はっ、図星ってか? 笑わせやがる。そんな都合よく事が上手くいくわけねえだろ。実際、ティアナがボコられた時、お前はただ見てることしか出来なかっただろうが」

 

「っ……」

 

反論しようにも何も言えない。アントが言ってることは全て事実だからだ。

 

「はぁ、もう付き合ってらんねえや」

 

アントは呆れた様子で二人に背を向けた。

 

「一生お友達ごっこやってろ、じゃあな」

 

コツコツと歩き出すアント。二人は何も言えなかった、何も出来なかった。アントに言われたことが、二人の心に深く突き刺さっていた。

 

 

 

 

 

 

二人の前から去った後、アントは歩きながら念話を使ってエリオと会話していた。

 

《タイミングはバッチリだったぞ。スバルを抑えるのは大変だったろ? よくやった》

 

《……はい兄さん、でも……あれじゃ兄さんが……》

 

《俺の事は気にすんな。後のことはシャーリー達に任せてある。じゃあ切るぞ》

 

《あ、兄さ……》

 

プツッ……

 

念話を終わらせ、アントは大きな溜息を吐いた。

 

「……はぁぁ〜、疲れた……つーか、一瞬素が出た……」

 

スバルの突進力に思わず驚いてしまった。あの短い助走であの威力、末恐ろしいものがある。

 

《……あれがボスが伝えたかったことですか?》

 

「……まあな。ティアナだけに問題があるわけじゃねえ。相棒のスバルにも問題があった。あいつは優しすぎるんだ。スバルの優しさは強みだが、場合によっては味方を傷付ける」

 

《それを気付いて欲しかった、というわけですか》

 

「くはは……まあな。多分だが、あのままだったら誰も指摘せずに終わりそうだったしなぁ」

 

アントは疲れたように笑うと壁にもたれかかった。

 

「もっと上手いやり方があったんだろうが、俺にはこんな酷い方法しか思いつかねえ。教職は向いてねえな」

 

《ボスは本当にヨネお婆さんに似ましたね。ひどく不器用です》

 

「くはははっ……‼︎ なるほどな、どうりでまともに教えれねえわけだ」

 

その時、廊下の向こう側から二人の影がアントに近寄ってきた。アリサとすずかだった。

 

「ここにいたのね。言われた通り準備しておいたわよ」

 

「今頃、シャーリーさんがフォワードの四人に話始めてると思う」

 

「ああ、悪いな、助かる」

 

壁から離れ、アントは感謝の意を口にした。

 

ティアナとの会話の最中にスバルが飛び込んで来たのも、シャーリーがなのはの過去を4人に語っているのも、全て念話で手回し済みだった。

 

「じゃ、後は頼んだ」

 

二人の間をすり抜けてゆっくりと歩きだしたアント。

 

「ちょ、ちょっと、どこ行くのよ?」

 

「寝る。少し疲れたんだ」

 

すずかとアリサは互いに顔を見合わせると無言で頷いた。

 

「……おい、何やってんだ?」

 

立ち止まるアント。二人の手がアントの頭を撫でていた。

 

「え、えっと、その、なんとなく……?」

 

「何があったか知らないけど、無理は良くないわよ?」

 

アントは眉をひそめた。

 

俺が無理してる? この程度で?

 

「そう見えるか?」

 

「うん」

 

「ええ」

 

即答された。そうか、俺は無理してたのか。ダメだな、慣れない事はするもんじゃない。

 

「悪いな、気を遣わせた。もう大丈夫だ」

 

肩の力が抜け、ようやく普段の自分に戻れたような気がする。

 

「気を付けなさいよ? あんた、周囲は見えてても自分が見えてないことが結構あるんだから」

 

「無理はもうダメだよ?」

 

「ああ、二人の言う通りだな。気をつけるさ」

 

本当にその通りだ。とりあえず、この場を早く去らなければならない。これ以上、ここにいるのは良くない。

 

何故かは分からないが、アントは間違いはないと直感していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

波止場にて、なのはとティアナが話し合っていた。近くの茂みではスバル、エリオ、キャロ、シャーリーが事の成り行きを見守っている。

 

やがて、涙ぐむティアナをなのはが慰めるように抱き寄せた。どうやら仲直りは済んだようだ。

 

「なんとかなった、みたいだな」

 

スバル達と同じく、成り行きを建物の中から見守っていたアント。

 

「アント‼︎」

 

ヴィータが怒り心頭といった具合で現れた。ヴィータの背後からはシグナムがブレーキ役として付き添っている。

 

「オメー知ってただろ? ティアナとスバルが自主トレしてたの」

 

「ああ、まあな。朝によく会った」

 

なんでもないかのように即答するアントにヴィータの抑えていた怒りが一瞬で爆発した。

 

「なら何で黙ってた‼︎ お前ならなのはの教導の意味もわかってたはずだ‼︎」

 

「落ち着けヴィータ」

 

今にも食ってかかりそうなヴィータをシグナムが制した。

 

「アント。よければ聞かせてくれないか? 何故知っていながら放置したんだ?」

 

シグナムの問いに対し、アントは表情を変える事なく淡々と答える。

 

「後悔して欲しくなかったからな」

 

「何言ってんだ‼︎ 言ってる事とやってる事が違うじゃねえか‼︎」

 

ヴィータの言う通りだった。今回の事で後悔しなかった者などいない。アントの言ってる事は矛盾しているように聞こえた。

 

「違えよ、お前らの保護下から離れた後の事を言ってんだ」

 

「何?」

 

アントは窓からフォワード達を見下ろしながら話し始める。

 

「今のあいつらは恵まれてる。例え失敗しても完璧にフォローしてくれる上官達に囲まれてるからな」

 

恵まれている、それは管理局でも切り札とされるレベルの戦力に教導してもらえるということも含まれていた。いい環境が出来上がっているのだ。

 

「でも一生ここにいるわけじゃない。ティアナも、スバルも、キャロも、エリオも、いつか、誰の助けも見込めない状況で選択を迫られる時が必ず来る。その時のために、今回みたいな経験が必要なんだ」

 

いつものどこか飄々としたアントではない。その眼差しからは、どこか凄味が感じられる。

 

「自分で選んじまったら言い訳は出来ねえ。神のせいでも、他人のせいでもない.、自分からは言い逃れできない。そして、自分の選択が正しいかどうかも分からないうちに、またすぐ次の選択を迫られる。理不尽だが、そういうもんだ」

 

「「……」」

 

「大事なもん見失って、訳も分からないまま選択して突き進めば必ず後悔することになる。俺はな、あいつらに取り返しのつかないような後悔だけはして欲しくないんだ」

 

アントの話には重みがあった。ヴィータ達は黙って聞くことしか出来なかった。

 

やがてシグナムはゆっくりと口を開いた。

 

「……アント……お前は……一体どんな人生を送ってきたんだ……?」

 

アントはシグナムの問いに笑い声を上げた。

 

「くはははっ、さぁな。俺にも説明出来ねえや。まあ、強いて言うなら、後悔しっぱなしの人生だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのはとティアナが仲直りした日の夜、アントは隊長室にてはやてと向かい合っていた。

 

「本気なん? 教導を辞めるって」

 

「ああ、一度請け負っておいて無責任だけどよ、俺には向いてなかったみたいだ。それに、俺がここにいるのは悪影響になる」

 

アントは六課から去るつもりだった。流石にあの一件の後にティアナとスバルに教導するほど図太くはない。

 

はやては考えるように腕を組むと、何気なく提案した。

 

「うーん、それじゃ本人達に聞いてみよか?」

 

「は?」

 

「入ってええよ」

 

「「失礼します‼︎」」

 

元気のいい声と共に、ティアナとスバルが隊長室に入ってきた。

 

二人は呆然とするアントの前に立ち並んだ。

 

「なんで……お前らがここに……」

 

驚くアントに向けて、二人は深々と頭を下げた。

 

「「すいませんでした‼︎」」

 

「な……⁉︎」

 

訳が分からない。アントは混乱の極みに達していた。

 

「あの時は……その……怖くて分からなかったんですけど……でもあとから二人で話し合ってみたら、アントさんは私達のことを思って言ってくれてたのかなって……」

 

「それで、エリオを問い詰めたら全部話してくれました。あれは本心じゃないって、私達のために演じてたんだって」

 

「あいつ……」

 

アントは思わず苦笑いを浮かべた。

 

エリオは元来、隠し事が苦手だ。少々無理をさせてしまったようだ。

 

ティアナとスバルは頭を上げ、アントと目を合わせた。

 

「あたしは焦り過ぎて、周りの事が見えてなかった。だから、もう焦りません。自分のペースで力をつけて、目標を目指して頑張ります‼︎」

 

「アントさんに言われて気付けたんです、支えるだけじゃダメなんだって、間違えてたら止めなきゃいけないって。当たり前のことなのに、あたしはそれが出来てなかった」

 

二人は再度、頭を下げた。

 

「「お願いします‼︎ もう一度、私達にチャンスを下さい‼︎」」

 

二人の言葉に、アントは眉をひそめた。

 

「……チャンス?」

 

「もう一度、教導して欲しいんです‼︎」

 

「辞めないで下さい‼︎ お願いします‼︎」

 

「っ……‼︎」

 

アントは咄嗟に顔を背け手で覆い隠した。

 

「はやて……テメエ……‼︎」

 

クソッ、謀られた。全部分かった上でやりやがった。

 

「うん? なんのことや? 私はただ二人の意見を聞きたかっただけやで? それより、なんで顔隠してるんかなあ?」

 

ニマニマとアントの顔を覗き込もうとするはやて。

 

「待て‼︎ 見るな‼︎ 今はヤバイから‼︎」

 

「アントさん‼︎」

 

「お願いします‼︎」

 

未だ返事をもらってない二人も加わり、三人に囲まれてしまったアント。

 

「分かった‼︎ 分かったから‼︎ だからこっち見んな‼︎」

 

「あれれ〜? 耳まで真っ赤やなぁ。初めて見る表情や、照れてるんか?」

 

「るせえ‼︎ 一人にさせてくれ‼︎」

 

アントは強引に包囲網を突破し、自室へ戻ることに成功した。

 

「……はぁ……はぁ……」

 

《よかったですね、ボス。常に一緒にいる私でも、その反応は二度しか見れてませんよ。一度目は確かエリオが……》

 

「やめろ‼︎ その話はもうなしだ‼︎」

 

アントは深呼吸をして息を整える。

 

「はぁ……ちくしょう、不意打ちは卑怯だろうが……」

 

ブツブツと呟く主人の様子に、ルリは微笑ましく思っていた。

 

(ボスがそうなる時は、歓喜の感情が抑えきれない時です。教え子二人の成長と、教官を続けて欲しいという要求が嬉しかったのですね)

 

まだ主人は収まりそうにない。もうしばらくは、この珍しい状況を楽しもうと思うルリなのだった。

 

 

 

 

 

 

 




悪党キャラは主に裏社会で大活躍します。本人は疲れるのであまりやりたがりませんが。

ちなみに、たまにそっち側の笑顔が出てるのは気付いてません。





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