バカは死んだら治るのか?   作:夏のレモン

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休日

 

 

 

二人の関係も元に戻り、新人達は今日も訓練に明け暮れていた。

 

ある程度訓練が終わった後、なのはが皆を休憩させると、新人たちに告げる。

 

「じゃあ今日で第二段階の訓練終了なんだけど……私はみんな合格だけど、お二人はどう思います?」

 

なのはがそばにいるフェイトとヴィータに投げかけると、

 

「合格」

 

「合格だな」

 

「「はや‼︎」」

 

二人の即答に、スバルとティアナが驚愕の声を上げるが、そこでヴィータが付け加えた。

 

「ま、こんだけ訓練続けてんのに合格しない方がおかしいんだけどな」

 

「「で、ですよねー……」」

 

ヴィータの補足に若干冷や汗を流す二人。

 

「じゃあ今日はみんなこれからはオフってことで」

 

なのはが言うと、新人達は疑問符を浮かべる。おそらく言われている意味が理解できていないのだろう。

 

「今日は丸々一日休日ってことだ」

 

その姿に見かねたヴィータが代弁すると、新人達は嬉しそうに笑顔を浮かべた。隊員といってもまだまだ遊びたい年頃だ。嬉しいのは当たり前だろう。

 

なのは達は訓練を終えると各々寮に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「休暇?」

 

「うん、1日ぐらい息抜きしないとね」

 

フェイトに本日は休日になった事を告げられ、アントは悩ましげに首を捻る。

 

「休暇かぁ……」

 

久しぶりにツーリングでも行こうかとアントが考えていると、目の前のフェイトが顔を赤らめ俯きながら、指をいじいじとし始めた。

 

「……その……この前の話なんだけど……」

 

「アントくーん‼︎」

 

後ろから声をかけられた。アントがそちらを見やると、廊下の向こうからなのはが駆け寄ってきていた。

 

「なのはか、どうし──ん?」

 

アントが振り返ろうとした瞬間、フェイトがアントの服の袖を引っ張った。するとなのはもフェイトがいることに気付いたのかなんとも微妙な表情をする。

 

三人の間に若干の沈黙が流れる。やがてその沈黙に耐え切れなくなったアントが口を開いた。

 

「フェイト、何か言いかけてなかったか?」

 

「……えっと……この前の約束覚えてる?」

 

「……当然覚えてるぞ。買い物に行くって約束だろ?」

 

間髪入れず答えるアント。

 

だが内心では大量に冷や汗を流していた。

 

危ねえ⁉︎ ギリギリで思い出した‼︎ バ、バレてないよな……?

 

そっとフェイトを盗み見るアント。嬉しそうにニコニコしてるのでバレてはいなさそうだ。

 

「よかった……アントの事だから忘れてるかと思ったよ」

 

「ハハハ」

 

図星過ぎて思わず渇いた笑い声を上げた。

 

「約束……?」

 

ポツリと呟くと、なのはは恨めしげにアントを見つめる。

 

「私との約束は滅多に守らないのに……」

 

「っ⁉︎」

 

痛いところを突かれた。ツーッとなのはから目をそらす。

なのはは頰を膨らませた。

 

「もう‼︎ 都合が悪くなるといつも聞こえてないフリするんだから‼︎」

 

すると、慌てたようにフェイトがなのはに提案した。

 

「な、なのは‼︎ なのはも一緒に来ない?」

 

「え⁉︎」

 

驚いたなのはは念話を使いフェイトに話しかける。

 

『いいの? せっかく約束までしたのに……』

 

『滅多にない休日だもん、なのはも楽しもう?』

 

『フェイトちゃん……』

 

二人は仲良さそうに微笑みあう。どうやら上手く話がまとまったようだ。

 

「そうか。ならサイドカーの掃除もしとかないとなぁ」

 

「「え?」」

 

「え?」

 

疑問符を浮かべるなのはとフェイトに、アントもつられて疑問符を浮かべた。

 

「バイクで行くの?」

 

「そりゃそうだろ? その方が早いし、久しぶりに走りたいしな」

 

「それってつまり……」

 

どちらかがサイドカー、どちらかがアントの背に掴まって二人乗りということになる。

 

「「っ⁉︎」」

 

「じゃあ十分後くらいに隊舎前に来てくれ」

 

「……うん」

 

「……分かったの」

 

若干ピリピリとした空気を残してアントは準備に向かった。

 

 

 

 

 

 

隊舎の前に行くと、ちょうど出かけようとしていたフォワード四人がいた。

 

アントはティアナが乗っているバイクに目を輝かせた。

 

「おっ、いいバイク乗ってるな。ティアナのか?」

 

「いえ、これはヴァイス陸曹に借りたんです」

 

「ほぉー、ヴァイスのか……しっかり整備されてるな、上手い改造だ」

 

「あの、アントさんが乗ってるのって……」

 

「ああ、俺の私物だ」

 

自慢気に答えるアント。ティアナの目がアント並みに輝いた。

 

「リッターSS⁉︎ これで思いっ切り走ったら気持ちいいでしょうねぇ……‼︎」

 

「くはははっ‼︎ まあな。無人世界でかっ飛ばしながら見る朝日はサイコーだぞ?」

 

「いいなぁ……」

 

白熱していく二人。取り残された三人は苦笑する。

 

「ティアがバイク好きなのは知ってたけど……アントさんもよっぽどなんだね」

 

「ハハハ……」

 

「二人とも楽しそうですね」

 

そこへ、なのはとフェイトがやってきた。

 

「お待たせ〜」

 

「ごめんね? 少し時間過ぎちゃった」

 

「お、来たな。それじゃあ行くか」

 

「「「え?」」」

 

ティアナとスバルとキャロが疑問の声を上げた。

 

バッとなのはとフェイトを囲むと、アントには聞こえないように小声で話す。

 

「もしかして……デートですか?」

 

「「っ……⁉︎」」

 

スバルの問いに、なのはとフェイトは顔を赤らめて頷いた。

 

「「「‼︎」」」

 

目を輝かせる三人。すぐさまガールズトークが始まった。

 

「「……」」

 

一方、エリオとアントは完全に輪から外されてしまっていた。

 

「……お前も出かけるのか?」

 

「あ、はい。キャロと町へ」

 

「なんだ早く言えよ。ほら持ってけ」

 

財布から数枚取り出し手渡した。

 

「えぇ⁉︎ 悪いですよ‼︎」

 

「いいからいいから。二人で美味いもん食ってこい。俺の奢りだ」

 

「でも、僕だって稼いでますし……」

 

「お前の手持ちじゃ飯代にならねえだろ? ただでさえ大食らいだからな。これくらいねえと足りねえよ」

 

大飯食らいという自覚はあったエリオは若干恥ずかしく思いつつ受け取ることにした。

 

「あ、ありがとうございます‼︎ 兄さん」

 

「おう、楽しんでこいよ」

 

 

数分後、ガールズトークは終了し、各々好きな場所へ向かっていった。

 

ちなみに、行きはフェイトが、帰りはなのはが二人乗りするということになった。

 

 

 

 

 

市街まで行くと三人がまず大型のショッピングモールへ向かった。

最初は自分達の服を選んでいたなのはとフェイトだったが、途中からアントの服装の話になり、現在アントは男性洋服店に連れ込まれ二人の着せ替え人形になっていた。

 

「うーん……」

 

試着したアントを見て悩ましげに首をひねるなのは。

 

「その目……どうにかならない?」

 

「やかましいわ」

 

死んだ魚のような目のせいで明るい色合いの服が似合わない。試しにスーツを着せてみたが、控えめに見ても殺し屋にしか見えなかった。

 

「目さえどうにかなれば似合うのに……」

 

「もう少し控え目な色合いにしてみようか?」

 

「でも暗いといつも通りになっちゃうしなあ……」

 

「……」

 

真剣に悩む二人。その間にも、若干傷付いたアントは死んだ魚のような目を更に悪化させていた。

 

そんなに酷いか? なんかはやてにも似たような事言われたな……。

 

溜息を吐きそうなのをぐっと堪える。

 

そもそも、服なんてなんでもいいだろうに……。

 

正直、アントには服選びの面白さは理解出来ない。

お洒落を意識して買うとしたら店のマネキンを見てそのまんま買うタイプだ。普段はファッションを大して気にしてないので適当に無地を揃えて終わってる。

 

それから数時間連れ回されるも、結局服はそんなに買わず基本的にはウィンドウショッピングだった。

 

ショッピングなど慣れていないアントは疲れてきたため一息つこうとベンチに向かおうとした。

 

だがふと顔を横に向けると、クレープ屋が目に入った。

 

「おおっ、ちょうどいい」

 

ふらふら〜と吸い寄せられるように歩いて行くアント。

 

「アント? どこ行くの?」

 

「糖分補給だ。なのは達はベンチで休んでてくれ」

 

アントはフェイトとなのはをベンチに残してクレープ屋に向かっていった。

 

「相変わらず自由だね、アントは」

 

「にゃははは、そうだね、安心する」

 

「……うん……安心するね……」

 

しばらく二人でベンチに座っていると、フェイトの表情が哀しげなものに変わっていく。

 

「……また、どっか行っちゃうのかな」

 

「っ……⁉︎」

 

なのはは息を呑んだ。フェイトは俯き加減で言葉を綴る。

 

「好きな人に側にいて欲しいって我儘なのかな」

 

ずっと我慢して言えなかったことが溢れてくる。

 

「……我儘じゃないよ。当たり前のことだよ」

 

なのはは力強い視線をフェイトに向けた。

 

「大丈夫。もう一人でどっか行っちゃうような自分勝手は許さないから。いざって時はブレイカーしちゃおう?」

 

するとフェイトは小さく笑った。

 

「ダメだよ、アントが死んじゃう」

 

「えー、じゃあ──」

 

「じゃあじゃねえよ。殺す気か」

 

「「ひゃぁああ‼︎」」

 

いつの間にか二人の背後にアントが立っていた。

 

「い、いつからそこに……⁉︎」

 

「ブレイカーしちゃおう辺りからだ」

 

アントの返答にホッとする二人。

 

聞かれたくない部分は聞かれてなかったようだ。

 

「え? なんで抹殺計画を本人に聞かれて安心してるんだ?」

 

顔を引きつらせて若干後ずさるアント。

 

「あ、いや、これは違くて……」

 

「その、ブレイカーっていうのは例え話で……」

 

わたわたとするなのはとフェイト。アントはそんな二人の様子にからかうような笑みを浮かべた。

 

「クハハッ、せめて俺の聞こえないところで話してくれよ。ほれ」

 

二人にそれぞれクレープを手渡す。

 

「「え?」」

 

「適当に選んできた」

 

そう言うと自分の分のクレープにかぶりつくアント。

 

「わ、悪いよ。せめてお金を……」

 

「いいよ別に、数百円ぐらい。気にせず食えって」

 

「じゃ、じゃあ……ありがと、アント君」

 

二人は貰ったクレープを口に入れた。

 

「ほんとだ、イチゴが入ってて美味しい」

 

「あれ? チョコじゃないの?」

 

「「え?」」

 

適当に選んだと言っていたからてっきり同じ味なのだと思っていた二人。だが実際は別々の味だった。

 

「ん? お前らの好きな味だろ?」

 

「「……」」

 

無言で俯く二人。

 

「あれ? 違ったか? なんなら買い直して……」

 

「だ、大丈夫‼︎ あってるよ‼︎ ね? フェイトちゃん?」

 

「う、うん……よ、よく覚えてたね?」

 

「そりゃそうだろ」

 

「「っ‼︎」」

 

(そりゃそうだろって……私がチョコが好きなんて言ったの、何年も前なのに……)

 

(何気ない会話だったのに……覚えててくれたの……?)

 

二人に歓喜の感情が込み上がってくる。

 

「ふぅ、ごちそうさん」

 

「アント」

 

「アント君」

 

「ん?」

 

なのはとフェイトはアントへ満面の笑顔を向けた。

 

「「ありがとう‼︎」」

 

「っ⁉︎ あ、ああ……」

 

アントは本気で動揺した。そして──

 

 

少し、見惚れてしまった。

 

 

「っ⁉︎」

 

瞬発的にギリギリと自身の二の腕を抓り消し飛ばす。

 

「アント?」

 

「どうしたの?」

 

「……いや、なんでもねえ」

 

「「?」」

 

アホか俺は。落ち着け、こいつらは妹みたいなもんだろ?

 

アントはなんとか落ち着き、その後も二人のショッピングに付き合うことになった。

 

だが、ショッピングの最中、突如キャロからの全体通信が入った。

 

どうやらマンホールからレリックらしき物を持った女の子が出てきたらしい。すでにスバルとティアナが合流しガジェットと交戦中のようだ。

 

それを聞いたなのは達はすぐさまショッピングモールを飛び出すと空を飛んで現場へ向かっていった。アントはバイクに乗って二人の後を追う。

 

 

 

 

現場では上空と下水道に大量のガジェットが湧いていた。

 

「凄え数だな……今回は本気か?……ん?」

 

違和感を感じるアント。

 

倒されてるのにガジェットの数が減らない? この現象……なんか見覚えが……。

 

するとそこへはやてから通信が入った。

 

『全員そこから離れてええで‼︎ 今から私がリミッター外した状態でガジェットを一掃する‼︎』

 

通信を聞いたアントは苦笑いを浮かべた。

 

「いいねぇ、魔力が大量にあって」

 

上空を見上げているアント。

 

「なにのんびりとしている? お前の相手は俺だ」

 

突如、背後から聞き覚えのある声をかけられた。

 

「……お前がいるって事は……やっぱり来てるか、ナンバーズ」

 

振り向くと、そこにはガーラがいた。

 

「ふっ、確か妹達には何度か会ったことがあるんだったな? ひどく怯えていたのを覚えている。俺の妹達に一体何をやった?」

 

「邪魔しにきたから潰しただけだ。お前に似て、逃げ足だけは速かったけどな?」

 

挑発しつつ、アントはなのはに念話を飛ばす。

 

『なのは‼︎ 聞こえてるか?』

 

『アントくん? どうしたの?』

 

『敵の狙いが分かった‼︎ 今すぐヘリの護衛に向かえ‼︎ 狙いはそっちのレリックだ‼︎』

 

『っ⁉︎ 分かった‼︎ すぐに向かうよ‼︎』

 

念話を終わらせると、ガーラは口の端を吊り上げて笑っていた。

 

「ほう、こちらの狙いに気付いたか」

 

「クアットロがいるのに気付けたからな。あの幻術をやるのはナンバーズの中で奴しかいねえ」

 

「だがそれだけでは此方の狙いには気付けまい?」

 

「あの腹黒メガネが、分かりやすくゴリ押しで動くわけねえだろ。絶対捻くれた作戦で動いてるに決まってる。ガジェットの群れは囮だな?」

 

アントの問いかけに、ガーラは静かに笑った。

 

「ククッ、腹黒メガネか。言い得て妙だな」

 

「笑ってる暇あるのか? お前の妹達じゃあいつらには勝てねえぞ?」

 

「ふむ、確かに機動六課には強者揃いだ。かなり厳しいだろうな。だが──」

 

ガーラは笑うのを辞め、全身から魔力を発し始めた。

 

「貴様を野放しにしているほうが遥かに危険だ」

 

ガーラの変化を察知し、すぐさまセットアップと共に刀を両手に装備するアント。

 

「奇遇だなあ、俺も全く同じことを考えてた」

 

言い終わるや否や、両者はほぼ同時に攻撃を仕掛けた。

 

 

 

 

 

 

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