バカは死んだら治るのか?   作:夏のレモン

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嫌な予感ほどよく当たる

 

 

 

公開意見陳述会の一週間ほど前。

 

六課のフォワードメンバーはブリーフィングルームに集まり、はやてから作戦の指示を受けていた。アントは局員ではないので少し離れた場所で話だけ聞いている。

 

「今回は会場の警備任務が主になってくる。なのは隊長、フェイト隊長の二人は会場内の警備。スバル達は会場の外の警備をよろしく頼むな」

 

立体型のモニターに映し出される会場の見取り図を用いてはやては指示を出していく。

 

「あと、会場内にデバイスは持ち込めへんことになっとるから、デバイスはスバル達に預けといてな?」

 

はやてがなのはとフェイトに目を向けると、二人は了解したと頷いた。はやてもそれを確認すると、説明を続ける。

 

「スターズは全員前日の夜から警備任務に当たってもらう。エリオやキャロもこれに随伴していくことになってるから頼んだで。その後私とシグナム副隊長、あとフェイト隊長が行くことになっとるからな」

 

立体モニターが切り替わり、今度は前日から警護する班と当日に入る班が分けられた図が映し出される。

 

「大体の説明はこんな感じや。なにか質問のある子はおるか?」

 

はやてがみんなに聞くが、誰も質問はないようだった。

 

《ボス、質問しなくてよろしいのですか?》

 

『別にいいだろ。管理局側の都合なんて俺には関係ないしな。要はバレなきゃいいんだろ』

 

アントが欠伸をしつつ、のんびり構えていると、はやてがジーッと此方を凝視しているのが目に入った。

 

「……な、なんだよ」

 

たじろぐアントにはやては念を押すように言い放った。

 

「ええか? 武器の持ち込みは禁止やからな?」

 

「……」

 

その場にいる全員の視線がアントに刺さる。アントは目を逸らしつつ返事をした。

 

「………………分かってる」

 

アントの反応を見たはやては呆れたように溜息を吐いた。

 

「やっぱり。持ち込む気満々やったやろ? あかんで?」

 

完全に見透かされてしまった。アントは慌てて弁明した。

 

「いや、でも俺、管理局員じゃないし」

 

「そうやな。でも武器の持ち込みは逮捕や」

 

「大丈夫だ。ルリなら絶対にバレない。今までだってバレたことないんだぞ?」

 

「凄いなぁ。でもバレない方が大問題やから却下や」

 

「……」

 

あっさり論破されてしまった。

 

アントの肩にシグナムの手が添えられる。

 

「気持ちは分かる。だがこれは上が決定してしまっていることなんだ。もし六課の関係者であるアントが破ってしまえば、六課自体がなくなってしまう恐れもある」

 

「……そうなるのか……」

 

思いっきり顔をしかめるアント。はやては苦笑しつつアントを宥める。

 

「まぁシグナムの言う通りや。こればっかりはどうにも覆らへん。そこは納得してくれな?」

 

「……ああ」

 

アントは不承不承といった感じで頷いた。

 

「ほんならこれでブリーフィングは終了や。各自、当日まで体調を整えておくように」

 

はやての号令に皆が一斉に背筋を伸ばし、敬礼をした。

 

 

 

 

 

そして意見陳述会前日の夜。

 

六課のヘリポートにはなのは達が出撃のため集まっていた。

 

そこにはアントの姿もあった。足にヴィヴィオを貼り付けた状態で。

 

「……なあ、ヴィヴィオ」

 

「やだ!」

 

力強く拒絶された。

 

まだ何も言っていないんだが……

 

アントは諭すようにヴィヴィオに語りかけた。

 

「すぐ帰ってくるから。な?」

 

「やだ! パパ、またヴィヴィオ置いていくつもりだもん!」

 

側にいたアリサとすずかがジト目をアントに向ける。

 

「あんた、普段の行いのせいで信用がなくなってるじゃない」

 

「もう! アント君は普段が雑過ぎるんだよ!」

 

「……」

 

無言になるアント。

 

「アントが夜に出かけるのは初めてだから怖いんだよ。きっと」

 

「いつもベッタリやしなぁ」

 

フェイトとはやてに言われ、アントは困ったように頭を掻いた。

 

「そうは言ってもなぁ……」

 

アントが悩んでいる間にも、ヴィヴィオの力はどんどん増していき、足から離れる気配がない。

 

すると、それを見ていたなのはがヴィヴィオの頭に優しく手を置いた。

 

「大丈夫だよ。なのはママがちゃんと連れて帰ってくるから」

 

「……ホント?」

 

ヴィヴィオが潤んだ瞳をなのはに向ける。

 

「ホントだよ。だからすずかママとアリサママと一緒にお留守番してて? それに今夜はフェイトママとはやてママもいるから寂しくないよ?」

 

「……絶対に帰ってくる?」

 

「絶対に絶対。いい子で待ってたら、ヴィヴィオの大好きなキャラメルミルク作ってあげるから」

 

優しい笑顔を向けつつ、小指を立てるなのは。

 

「……うん」

 

ヴィヴィオも小指を立て、二人は指切りをした。

 

「……」

 

 

 

 

 

ヘリの中にて、アントはポツリと呟いた。

 

「……なんであんなに信用ないんだ?」

 

その呟きを聞いた周囲は苦笑いを浮かべた。

 

『必然かと思われます』

 

「まじか。でもエリオにもこんな感じで接してたぞ?」

 

「僕は色んなところに連れ回されましたからね。置いていかれることはあんまりありませんでしたよ?」

 

「そうだっけか?」

 

「はい。たまに仕事の手伝いもしてたじゃないですか。かなり大変でしたけど……」

 

当時を思い出してか、エリオは疲れたような笑みを浮かべた。

 

「そういやそうだったなぁ」

 

ティアナは呆れたようにアントを見る。

 

「すずかさんも言ってましたが、アントさんはちょっと雑なんですよ」

 

「そうか?」

 

「そうですよ! 直さなきゃヴィヴィオに嫌われちゃいますよ?」

 

ティアナとスバルに言われ頭を捻るアント。

 

……ダメだ。どこが雑だったのか分からん。

 

アントが考えていると、キャロがなのはに質問した。

 

「でも、ヴィヴィオは今預かってる段階なんですよね?」

 

「そうだね。優しい里親になってくれる人を見つけられたらヴィヴィオに説明して分かってもらおうかと思ってるんだけど」

 

なのはの返答にキャロは少し難しそうな表情を浮かべた。

 

「理解してくれなさそうな気がしますが……」

 

キャロだけでなく、全員がそんな表情だ。

 

「え、えー……?」

 

なのはは困ったような声を上げてアントを見た。

 

「ま、その時はその時だ。どうにかなんだろ」

 

アントはヒラヒラと手を振った。

 

「…………アント……そういうところだぞ?」

 

「え?」

 

ため息を吐くヴィータ。その一言は全員の心中を表していた。

 

「す、少しくらい適当な方がいいかもですよ‼︎ 落ち込まないでください‼︎」

 

「……」

 

アントは無言になる。ツヴァイの励ましがむしろダメージになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

会場に着くと、先程までの緩い空気から一変し、ピリッとした空気になった。

 

「じゃあ、これから明日の陳述会が終わるまで警備任務に当たります。各自、交代時間をしっかりと把握して置くように。外の警備はヴィータ副隊長にお願いします」

 

「「「「はい‼︎」」」」

 

「了解」

 

なのはが告げると皆それぞれの持ち場へ向かっていく。

アントは地上本部から少し離れた場所へ向かうことにする。

 

「じゃ、俺はあっちの方にいるわ。乗せてくれてありがとな、助かった」

 

「うん。何かあったらすぐに連絡してね?」

 

「ああ」

 

アントは目的の場所に辿り着くと、ルリに声をかけた。

 

「今のところおかしなことはないよな?」

 

《はい。異常なしです》

 

「なら良しだ。このまま何も起きなきゃいいけど」

 

アントは周囲に視線を送り怪しい物はないか確認する。

 

《ボス、ここが襲撃される可能性はかなり低いと思われますが?》

 

「まぁ、万が一があるからな」

 

《何故ボスはそこまで警戒を?》

 

ルリの問いかけに、アントはタバコを吸いつつ答えた。

 

「“管理局地上本部の壊滅”って予言だったろ? 俺はな、管理局を崩壊させるのはスカリエッティなんじゃねえかと思ってんだ」

 

《……確かにクーデターの可能性が低い以上、有力候補の一人ではありますが……》

 

「スカリエッティが襲撃してくるとしたら、一番警備が厳重な時だろ? つまりこの公開意見陳述会が狙われてもおかしくない」

 

《……なるほど。ですがリスクが高過ぎるのでは? わざわざ管理局を襲う動機が分かりません》

 

アントは少し考える。

 

「……そうだなぁ、科学者として自分の兵器の威力証明、それと…………一人の人間としての復讐……とかか?」

 

《復讐……ですか?》

 

アントは考え直すように頭を振った。

 

「いや、まさかな。忘れてくれ。要はいつも通り最悪の状況を想定して動こうってだけだ」

 

《ボスの予想する最悪はかなりの高確率で当たるのですが》

 

「…………外れることを祈るよ。マジで」

 

アントは夜空を見上げて願うのだった。

 

 

 

 

 

 

スカリエッティのアジトにて、ウーノがスカリエッティに告げた。

 

「ナンバーズ、全員ポジションに着きました」

 

『ルーテシアお嬢様とゼスト殿も準備は整っています。命令が下り次第いつでも作戦開始可能です』

 

複数開かれているモニタの中の一つの中に映し出されている藍色に近い髪色にウーノと同じように黄色い瞳をした女性、トーレが報告する。

 

『ディエチちゃんのバレルも特に問題ないようですしぃ、すぐにでも撃てますよドクター』

 

甘ったるい声でクアットロが報告すると、それを聞いていたスカリエッティは肩を震わせながら狂ったように笑い出した。

 

「楽しそうですねドクター」

 

「ああ。楽しいとも、何せこの手で世界の歴史を変える瞬間を作り出すことが出来るのだからね。研究者として心が沸き立つじゃあないか。そうだろう、ウーノ。我等のスポンサー諸君にも研究成果を特とごらんいただけることだろう。そしてなにより……」

 

スカリエッティはモニターに映っているアントを見てニンマリと笑った。

 

「判断を誤ったねぇ、アント・バーキン? 片方が過剰戦力になってしまったが、これはこれで好都合だとも。ククッ」

 

スカリエッティはウーノたちに向き直り、命じた。

 

「さぁ……はじめよう‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻は早朝。太陽が徐々に昇り始めてきた。

 

仮眠を取りつつ警戒していたアントだったが、何度かフォワード陣が訪ねてきた以外は特に何もなかった。

 

《このまま終わりそうですね》

 

ルリの言葉にアントはホッと息を吐いた。

 

「祈ってよかったな。悪い予感ってのは偶に当たるくらいが──」

 

アントは言葉を切った。微かにだが、この場にそぐわない音が聞こえた。

 

キィィン──……

 

この音………………砲撃っ⁉︎

 

「ルリッ‼︎」

 

アントが叫ぶと同時に、とてつもない衝撃が周囲を襲った。

 

「ぐっ‼︎」

 

アントはすぐさまバリアジャケットを装備した。

 

「ルリ‼︎ 中の様子は?」

 

《把握出来ません‼︎ 通信妨害されています‼︎ それと上空にて複数のガジェットを確認‼︎》

 

「なっ⁉︎」

 

上空を見上げると、複数のガジェットが本部へ迫っていた。

 

砲撃と同時に通信妨害と襲撃。そしてあのガジェットの群れ。タイミングが合った連携だ。ほぼ間違いなくスカリエッティの仕業だろう。

 

「嫌な予感ってのはよく当たるなぁ‼︎ チクショウッ‼︎」

 

アントが歯噛みしつつ上空を見上げていると、ガジェットの中に人が紛れているのを見つけた。

 

「あれは……この前の……」

 

ゼスト・グランガイツとアギトが一直線に本部へ向かっていた。

 

「カートリッジ、ロード‼︎」

 

アントは魔力ブーストをして上空へ飛び上がると、作り出した障壁を足場にしてゼストの前へ立ちふさがった。

 

「っ⁉︎ 手前は‼︎」

 

「アント・バーキン……‼︎」

 

アントはゼストに槍を向けた。

 

「そんなに急いでどこに行くつもりなんだ? よかったら色々と教えてくれよ」

 

「くぅっ……旦那ぁ‼︎」

 

「うむ」

 

アギトがゼストにユニゾンした。髪色が金色に変化し、瞳の色が赤色に変化した。

 

「時間がないんだ。無理矢理にでも通らせてもらう」

 

『旦那の邪魔をする奴は全部焼き尽くしてやる‼︎』

 

アントは槍を握る手に力を込める。

 

「やるぞ、ルリ」

 

《了解です、ボス》

 

 

 

 

 

 





キリがいいのでここまでにさせて頂きます。
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