バカは死んだら治るのか?   作:夏のレモン

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集結

 

 

 

アントとなのはは真っ直ぐヴィヴィオの元へ向かっていた。

途中何体ものガジェットが妨害してきたが、力を解放した今の状態のなのははお構いなしに突き進む。

 

(……スゲー頼りになるな)

 

アントがあまりの突破力に苦笑いを浮かべていると、突如、真横の壁からセインが飛び出してきた。

 

「行かせない‼︎」

 

「⁉︎」

 

不意を突かれ、咄嗟に防壁を張ろうとしたなのはだったが、それより早くアントがセインの顔面を鷲掴み攻撃を防いだ。

 

「なあっ⁉︎」

 

セインを掴んだまま拳銃で数発撃ち抜く。

 

「あがっ……‼︎」

 

能力が発動出来ないように弱らせたところで、駄目押しとばかりに地面に叩きつけた。この間、わずか三秒だ。

 

「ッ……⁉︎」

 

セインは完全に気を失った。トラウマになりそうなほど容赦のない反撃だった。

 

「よし、速度を上げてくれ」

 

「う、うん」

 

淡々と告げるアントに、なのはは若干引き気味で頷いたが、何かを察知し前方に視線を向ける。

 

奥の方で待機していたディエチの砲撃が二人に迫ってきた。

 

「エクセリオン・バスター‼︎」

 

なのはとディエチの砲撃が衝突する。威力は互角に思えた。だが、

 

「ブラスターシステム、リミットワン、リリース‼︎」

 

「ッ⁉︎」

 

なのはの砲撃が一瞬で強化された。ディエチは成すすべなくなのはの砲撃に飲み込まれた。

 

光が晴れると、ディエチは戦闘不能になり地面に倒れ伏していた。

 

「行くよ‼︎ アント君‼︎」

 

「お、おお」

 

ディエチを拘束しながら告げるなのはに、アントは若干引き気味で頷く。

 

頑固なところといい、容赦ないところといい、割と似た者同士の二人だった。

 

 

 

 

王座の間に到着すると、そこには玉座に座らされているヴィヴィオとクアットロがいた。

 

「いらっしゃあい。お待ちしてましたぁ。こんなところまで無駄足ご苦労様」

 

「……大規模騒乱罪で貴方を逮捕します。すぐに武装の解除を」

 

「あらあら、娘のピンチでもお仕事第一ですかぁ。いいですねえ、その悪魔じみた正義感」

 

クアットロがヴィヴィオに触れようとした瞬間、

 

バァンッ‼︎

 

額に穴が空きクアットロは溶けるように消えた。

 

「やっぱここにはいねえか、腹黒メガネ」

 

モニターでこちらを見るクアットロに視線を向ける。

 

『……あらぁ、せっかちねえ。後悔することになるわよ?』

 

「クハハッ、お前に何が出来るんだ? 渋い顔しそうなのを必死に堪えてるくせによ」

 

口の端を吊り上げ、嘲るように笑ってみせた。クアットロは目を見開き歯を食いしばった。

 

『……そう、これでもまだ軽口を叩けるかしらぁ?』

 

その言葉と共にヴィヴィオから虹色の光がほとばしる。

 

「あ、あぁぁぁああ‼︎」

 

「ヴィヴィオ‼︎」

 

なのはが駆け寄ろうとするも、魔力の壁が阻む。

 

やがて光が晴れると、そこには大人の姿をしたヴィヴィオがいた。

 

「なっ⁉︎」

 

「ヴィヴィオ……」

 

驚愕する二人にクアットロは満足気な笑みを浮かべた。

 

『ふふふっ、さあ陛下、貴方の家族を連れ去ったのは目の前の二人です。やっちゃってください』

 

「「っ⁉︎」」

 

ヴィヴィオの瞳に憎しみが満ちる。次の瞬間にはアントの目の前に迫っていた。

 

「くっ‼︎」

 

放たれる拳を紙一重で躱し、手首を掴んで一本背負いで返した。

 

だが投げてる途中で腕をすり抜け回避されてしまう。

 

「させない‼︎」

 

宙に浮き、無防備になったところをなのはのバインドが捕らえた。

 

「っ⁉︎」

 

一瞬動きが止まったヴィヴィオだったが、すぐさま強引にバインドを引きちぎった。

 

ヴィヴィオの攻撃を躱しながら反撃の機会を伺うアント。だが隙は一向に見当たらない。それどころか徐々にアントの動きを把握されていっている。

 

「ちぃっ‼︎」

 

繰り出された拳に蹴りをぶつけ、吹き飛び距離を取るアント。

 

だが着地した瞬間、受け流しきれなかったダメージにより足が痺れて膝をつく。

 

「……思った以上にヘビーだな」

 

『ふふっ、成すすべないでしょう? さあ陛下どんどん痛ぶっちゃってください』

 

「う、うぅ……」

 

アントとなのはを相手に、ヴィヴィオはいまいちキレがない。

 

『あらぁ? 陛下ぁ、なぁに動揺しちゃってるんですかぁ? そいつは貴女の本当のお父様なんかじゃないんですよ? 貴女は目の前の二人を倒すことだけ考えてください。その後のことは私がいろいろ考えてあげますからぁ』

 

勝ち誇った笑みでそう告げるクアットロ。だが、その笑みはアントの次の言葉により砕かれた。

 

「いやぁ、そりゃ無理だろ」

 

『はい?』

 

先程までの追い詰められたような様子が演技であるかのように、アントはニイッと笑みを浮かべた。

 

「だってお前、今から消し飛ばされるし」

 

『なにを言って──』

 

嫌な予感がしたクアットロが目線を真上に向けると、桃色のサーチャーがそこにいた。

 

『え……?』

 

モニターに映るなのはがポツリと呟く。

 

「見つけた」

 

『なっ⁉︎』

 

クアットロは信じられないというように目を見開き、数歩後ずさった。

 

『バカな⁉︎ 戦いながら私を探し続けていたと言うの⁉︎ いえ、それ以前に──‼︎』

 

「早すぎる、か?」

 

『っ‼︎』

 

アントは意地悪い笑みを浮かべる。

 

「普通はここでネタバレするんだろうけどな、今回ばかりは頭にきてるんだ。ちょっとした意趣返しだ。訳分からねえまま消し飛びな」

 

『っ〜‼︎』

 

クアットロは怒りと焦りが入り混じった表情を浮かべた。

 

『だけどここは最深部よ? 玉座の間からここまでたどり着くことがそう易々とできるわけ……』

 

「心配ご無用。ちゃんと()()()()、な?」

 

「うん‼︎」

 

『え……?』

 

ヴィヴィオの相手をアントに任せ、なのはは壁の一角まで足を運ぶとレイジングハートを構えブラスターシステムを起動させる。

 

「ブラスター3‼︎」

 

なのはが言うと同時にレイジングハートから六枚の桃色の翼が広がる。

 

砲門にはなのはの魔力が収束し、魔力の塊が形成されていく。

 

『あ、あぁ……』

 

なのははカートリッジを二つ使いすべてをリロードすると、先程まで小さかった魔力の塊が何倍にも膨れ上がった。

 

「ディバイン……バスターーーーーッ!!!!」

 

なのはが叫ぶと共に、収束していた魔力が超極大の魔力砲となり玉座の間を貫き、最深部までの壁を破壊し、貫通していく。

 

『いや……いや、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』

 

恐怖に満ちた表情で逃走しようとするが、足がもつれてしまい思うように動けないクアットロを容赦のない桃色の魔力が呑み込み、その圧倒的な質量に押しつぶされ文字通り消し飛ばされた。

 

 

 

 

「まあ、ご愁傷様ってやつだ」

 

モニターの映像がプツリと消えた。

 

流石に予想外だろう。なのはのサーチャーはゆりかごに入った瞬間から真っ直ぐにそっちに向かってたなんて。本人が知ったら発狂ものだ。

 

「……う」

 

クアットロが敗れた直後、ヴィヴィオは苦しげに頭を抱えた。

 

「ヴィヴィオ‼︎」

 

「おいヴィヴィオ‼︎ どうした⁉︎」

 

なのはとアントがヴィヴィオの下へ駆け寄ると、彼女の瞳に光が戻った。

 

「パパ……? ママ……?」

 

「よかった……戻ったみたいだね」

 

「……ヒヤヒヤさせるな、まったく」

 

二人が安堵のため息を吐いた瞬間、ヴィヴィオが叫んだ。

 

「ダメッ‼︎ 逃げて‼︎」

 

「は? ──ガアッ⁉︎」

 

アントは凄まじい勢いで殴り飛ばされた。

 

「アント君‼︎ ヴィヴィオ‼︎」

 

「ダメなの‼︎ 止まらないの‼︎」

 

《聖王陛下、戦意喪失。これより自己防衛モードに切り替わります》

 

そんなアナウンスが流れ、ギリギリで防御し瓦礫から這い出ていたアントは唖然とした。

 

「はぁ⁉︎ どんだけオプション付いてんだ⁉︎ クソッ‼︎ 古代ベルカなんて大嫌いだ‼︎」

 

自己防衛モードとやらになったヴィヴィオは先程以上に容赦のない攻撃を繰り出していた。

 

「お願い逃げて‼︎ このままじゃ二人とも死んじゃう‼︎」

 

「くうっ‼︎」

 

ヴィヴィオの連打がなのはの防壁を破壊した。なのははバインドで抑えようとするが、いとも簡単に引き千切られてしまう。

 

ヴィヴィオは悲しげな表情を浮かべた。

 

「分かったの私……もうずっと昔の人のコピーで、なのはさんも、フェイトさんも、アリサさんも、すずかさんも、はやてさんも、本当のママじゃない。アントさんも本当のパパじゃないんだよね」

 

涙を流して二人を見つめる。

 

「私が懐いたのは『傍にいて力を学習させてくれる人』だったからなんだよ……。魔法のデータ収集に利用してただけ……」

 

「違うよ‼︎」

 

「違わないよ‼︎」

 

なのはが否定するが、ヴィヴィオはそれを拒絶した。

 

「悲しいのも、痛いのも、全部作り物……だから私は……存在しちゃいけない子なんだよ‼︎」

 

「……これまで散々人の生活に割り込んでおきながら『もう放っておいて』なんて随分身勝手な話だな」

 

「え……?」

 

瓦礫から這い出たアントはなのはとヴィヴィオの間に割り込む。

 

「世間知らずの馬鹿娘にお仕置きついでに教えてやるよ。なかったことになんか出来ねえんだよ。お前が俺を父親にしたんだ。出自がどうとか、目的があったとか、そんな理屈は通らない」

 

アントはヴィヴィオに銃を向けた。

 

「っ⁉︎」

 

自己防衛モードにより反応しようとしたヴィヴィオだったが、なのはの幾重にも重ねられたバインドが抑えつけた。

 

《魔力ダメージによるノックダウン、レリックのみを破壊するにはそれしかありません》

 

「そういうことだ。今からお前の中に巣食う元凶をぶっ壊す。かなり痛いだろうが我慢しろ。代わりに帰ったらなんでも言うことを聞いてやるよ」

 

何発ものカートリッジがロードされる。呆然としていたヴィヴィオだったが、アントの言葉を聞き涙を流したまま微笑んだ。

 

「パパ……約束だよ? また嘘だったら許さないから」

 

「ああ、任せとけ」

 

照準をヴィヴィオの胸の中心に合わせ、引き金を引いた。

 

「デトロイト・バスター」

 

限界まで収束された超高密度砲撃がヴィヴィオを貫いた。ヴィヴィオの胸元からレリックが浮き出る。

 

ヴィヴィオの体内から吐き出されたレリックに亀裂が入り、一瞬にして砕け散った。

 

砕けた余波で爆発が生まれ玉座の間を光の奔流が襲った。

 

数秒の後、光の奔流が止むと玉座の間は大きく陥没していた。なのははふらつく足で陥没したフロアの中心に目を向ける。

 

そこには少女の姿に戻ったヴィヴィオの姿があった。

 

「ヴィヴィオ‼︎」

 

なのはが倒れているヴィヴィオに駆け寄ろうとするが、

 

「来ないで……大丈夫……一人で立てるよ……」

 

フラフラとおぼつかない足取りだが、ヴィヴィオは一人で立ち上がった。

 

「ママ……パパ……頑張ったよ……」

 

「っ……‼︎ ヴィヴィオ……‼︎」

 

なのはは涙を流しながら駆け寄り抱きしめた。ヴィヴィオは抱きしめられながら、弱々しい笑みをアントに向ける。

 

「パパ……約束……忘れちゃダメだからね……」

 

「ああ、よく頑張ったな。次は──俺が頑張る番だ」

 

ドッゴォォン‼︎

 

轟音と共に壁が破壊された。

 

「セイオォォオオ‼︎」

 

「「っ⁉︎」」

 

ビリビリと空間が軋む。そのあまりに強大な存在になのはとヴィヴィオは身を凍らせた。クアットロの枷がなくなり、更に凶悪な存在へと成り果てていた。

 

アントはなのはとヴィヴィオの前に立つと、ガーラと向かい合った。

 

「よお、ガーラ」

 

「ガァァアア!!!!」

 

繰り出された拳がアントに直撃しかけた、その時。

 

「ツェアシュテールングスハンマー‼︎」

 

巨大なハンマーがガーラを押し潰した。アントの頭上からヴィータが声をかける。

 

「たくっ‼︎ ここまでの化け物だなんて聞いてねえぞ‼︎ アント‼︎」

 

「俺だってここまでぶっ飛んだガーラは初めてだ。それで? 駆動炉は潰せたか?」

 

「おうよ‼︎ 粉々にしてやったぜ‼︎」

 

ニカッと笑うヴィータ。だがすぐに険しい表情へと変わった。

 

潰したはずのガーラがハンマーを片手で持ち上げていた。

 

「なっ⁉︎ スーパーマンかよ‼︎ シグナム‼︎ エリオ‼︎ スバル‼︎」

 

「任された‼︎」

 

「「はい‼︎」」

 

炎を纏った剣が、雷を放つ槍が、豪腕から放たれる拳が、ほぼ同時にガーラを襲う。

 

「ガァァアアア‼︎」

 

ガーラは反撃し腕を振るうが、四人はすでにその場から離脱していた。

 

「キャロ‼︎ 全力で行くわよ‼︎」

 

「はい‼︎」

 

フリードとティアナの遠距離攻撃がガーラに休む間を与えることなく直撃する。

 

「グォォオオ‼︎」

 

だが二人の攻撃を受けても尚、ガーラはダメージを受けた様子はない。

 

「くうっ‼︎」

 

「つ、強過ぎます‼︎」

 

距離を取ろうとするティアナとキャロに向けて魔力弾を放とうとするガーラ。

 

「ここは私の出番やな」

 

『全力全開でいくです‼︎』

 

ガーラの頭上にツヴァイとユニゾンしたはやてが現れた。

 

「『響け終焉の笛、ラグナロク‼︎』」

 

「ガァァアアア‼︎」

 

極大の砲撃へ向けて自身の砲撃を叩き込むガーラ。はやての砲撃は完全に相殺されてしまった。

 

「なっ⁉︎ なんちゅうバカ魔力や‼︎」

 

ガーラが腕を振るうと、幾千もの魔力弾が周囲に放たれた。

 

機動六課の面々は辛うじてそれを防いだが、ヴィヴィオとの戦いの疲労が回復しきっていなかったなのははその場から動けなかった。

 

「ママっ‼︎」

 

「っ‼︎」

 

背を向け、ヴィヴィオを庇うなのはだったが、魔力弾は二人に当たることはなかった。

 

浮遊感を感じたなのはが顔を上げる。

 

「フェイトちゃん‼︎」

 

「フェイトママ‼︎」

 

「もう大丈夫。みんな揃ったよ」

 

アントはなのはとヴィヴィオを抱え宙に浮かぶフェイトに声をかけた。

 

「スカリエッティは?」

 

「大丈夫、ちゃんと捕まえたよ」

 

「流石だな」

 

アントは雰囲気の変わったスバルとシグナムにも声をかけた。

 

「お前ら、随分変わったな」

 

「えへへ、これで更に強くなりました‼︎」

 

「ゼスト殿に託されてな」

 

『旦那が言ってたぜ‼︎ ありがとうってよ‼︎』

 

笑みを浮かべるアントの真横にリインが舞い降りた。

 

「アント、無事だったか」

 

「ああ。力貸してくれ、リイン」

 

「当然だ」

 

リインがアントの手を取ると、変化はすぐに起きた。

 

リインの姿が消えると同時に、アントの髪は鈍く光る銀色に変化し、瞳は血のような紅に染まった。二本の刀身は黒く変化し、より鋭いものになる。

 

「くはははっ、すげえなユニゾンってのは。どんどん力が湧いてくる。プレシアにも礼を言わなきゃな」

 

リインは前々からアントに合うように自身に調整を施していたのだった。

いつか、アントに恩を返せる日が来るかもしれないと思って、必要とする時が来るかもしれないと準備してきたのだ。

 

『だが、あまり時間はないぞ?』

 

「分かってる。さて──ガーラ」

 

此方を見るガーラに刀を向ける。

 

 

 

「今度の俺はちーっとばかし強えぞ」

 

 

 

 

 

 






いよいよ終わりが迫ってきました。執筆を始めて一年と半年、ここまでお付き合い頂きありがとうございます!

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