バカは死んだら治るのか?   作:夏のレモン

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バカは死んでも治らなかった。

 

 

 

魔法により抉られた地面、穴の空いた壁、周囲にはそれらの瓦礫が散らばっている。数刻前までは王座の間であったとは思えないほど荒れ果てていた。

 

「オォォオオ‼︎」

 

「グゥオオオオオオォ‼︎」

 

そんな王座の間の中央にてガーラとアントによる超至近距離での競り合いが行われていた。だが所々ボロボロなアントに対して、ガーラの方は全然余裕がありそうだった。

 

「クッ、だらあ‼︎」

 

アントは迫る拳を紙一重で躱し、喉元めがけ刀を振り下ろす。

 

「オォォオオ!!!」

 

だが振り下ろす手首を掴まれ勢いよく地面に叩きつけられてしまう。

 

「ガハッ──⁉︎」

 

『アント‼︎』

 

数瞬息が出来なくなるアント。ガーラは追い討ちと言わんばかりにアントの頭を踏み潰そうと足を振り上げた。

 

「アントさん‼︎」

 

ガーラの背にティアナの魔力弾が被弾した。ガーラはバランスを崩し、アントの顔面を逸れて地面にヒビを入れた。

 

「ヌゥッ……」

 

苛立しげにティアナを見ると、軽く腕を振るい魔力弾を放った。放たれた数百発の魔力弾は目眩しにと用意していた幻影ごとティアナを薙ぎ払った。

 

「なっ⁉︎ キャアっ‼︎」

 

ティアナは咄嗟に防壁を張ったが、防壁は一瞬で砕け散った。防御がなくなったティアナを更に数発の魔力弾が襲う。ティアナは紙くずのように宙に打ち上げられた。

 

「ティアッ⁉︎」

 

咄嗟に駆け寄ろうとしたスバルだったが、ピタリと思い留まる。

 

“違う。今やるべきことはそうじゃない”

 

歯を食いしばり必至に己を律する。これまで習った事を思い出せ。相棒を助けたいなら一撃でも多く敵に叩き込め。

 

「ッ──‼︎ こぉおおおのぉぉぉッ‼︎」

 

スバルはローラーを高速回転させガーラに殴りかかった。

 

「オォォオオ!!!」

 

ガーラの拳とスバルの拳が正面から衝突する。その衝撃は凄まじく、スバルの腕から血が吹き出た。

 

「くぅっ‼︎ ──はぁあああ‼︎」

 

「っ⁉︎」

 

スバルは構うことなく拳を押し込む。合わさっていた拳はズレ、スバルの拳がガーラの顔面を捉えた。

 

「ヌウッ‼︎」

 

ガーラは攻撃を喰らいつつ、アントを武器のように振り回しスバルに叩きつけた。

 

「ぐう──⁉︎」

 

スバルとアントは纏めて吹き飛ばされた。

 

「ストラーダァアアア!!!」

 

直後、ガーラの頭上からエリオが落雷のように現れた。

攻撃後の挙動の隙間とガーラの死角を狙った渾身の一撃を繰り出す。

 

「ラケーテンハンマー‼︎」

 

「煌牙‼︎」

 

更にヴィータとシグナムがエリオに続いた。

ロケットハンマーと炎の剣がガーラの左右を挟む。

 

三つの攻撃がほぼ同時にガーラを直撃した、かに思えた。

 

エリオの槍は手の平で受け止められ、ハンマーの勢いは叩きつけられた蹴りにより完全に殺され、燃え盛る剣は手で掴み取られていた。

 

「ガアッ‼︎」

 

「「「っ⁉︎」」」

 

気合いと共に放たれた魔力が三人を押し飛ばし、数瞬ガーラの身が自由になった。

 

拳がエリオに突き刺さる。

 

「──グフッ⁉︎」

 

口元から血を吐きながら地面を跳ねるエリオ。ガーラは軽くジャンプし目にも留まらぬ速さで二人を蹴りつけた。

 

「ガッ⁉︎」

 

「グハッ⁉︎」

 

二人が吹き飛ぶ。

 

ガーラが着地した瞬間、複数のバインドがガーラを捕らえた。

 

「高位の魔導師三人のバインドや。簡単には解けへんで」

 

はやて、なのは、フェイトの三人によるバインド。各々の身に砲撃を放つための魔力が収束していく。

 

「グ……オォォオオ‼︎」

 

咆哮と共にバインドはブチブチと千切られていく。

 

「ッ⁉︎ 凄い力……‼︎」

 

「どんどんパワーが上がってきてる……⁉︎」

 

「ぐうっ‼︎ 気張るでぇ‼︎」

 

三人は額に脂汗を滲ませつつ、更に幾重にもバインドを追加する。それらは数秒で破壊されたが、それでも十分な時間は稼げた。

 

「「「ブレイカーーー!!!!」」」

 

三人の砲撃は一つとなりガーラへ迫る。

 

「グォォオオ‼︎」

 

直撃するギリギリでバインドを完璧に引き剥がし、迫る砲撃に両手をかざすガーラ。

 

砲撃は数メートルほどガーラを押し込んだが、それは最初だけだった。

 

「押し返されてる……⁉︎」

 

三人の砲撃を受け止めながら、ジリジリと前進していた。

 

「「「カートリッジロード‼︎」」」

 

砲撃は更に威力を増し、再びガーラを数歩押し込んだ。

 

「グゥ──ガァアアアア!!!」

 

膨大な魔力が瞬発的に放たれた。ガーラの砲撃が三人の砲撃を押し返した。

 

「なっ⁉︎」

 

「くうっ‼︎」

 

「っ‼︎」

 

三人は砲撃をキャンセルし散り散りになる形で砲撃を躱した。直後、なのはの目の前にガーラが現れる。

 

「っ⁉︎」

 

咄嗟にガーラと自分の間に何枚もの障壁を張った。障壁に拳が叩きつけられ、次の瞬間にはなのはは殴り飛ばされていた。

 

「っ⁉︎ ソニックフォーム‼︎」

 

最速でガーラの背後に回りこみ斬りつけるフェイトだが、大剣の側面を殴られ逸らされてしまう。

ガラ空きになったフェイトの懐にガーラのもう一方の手の平が向けられ、魔力が集中しているのが見てとれた。

 

「あかん‼︎ ツヴァイ‼︎」

 

《はいです‼︎》

 

フェイトとガーラの間にはやてが割り込んだ瞬間、眩い光が炸裂した。

 

「「っ……」」

 

《はやて……ちゃん……》

 

力なく墜落していくはやてとフェイト。

 

「グウッ………ハッ……ハッ……」

 

地面に片膝をついて着地し、肩で息をするガーラ。流石に疲れが出ているようだった。

 

ガーラは顔を上げ視線を周囲に巡らせると、此方を呆然とした様子で見ていたキャロを見つけた。そしてそこにはキャロに抱えられているヴィヴィオの姿が。

 

「っ⁉︎ 逃げてフリード‼︎」

 

「グリュオ‼︎」

 

視線が合い、何が起きるか察したキャロはすぐに距離を取ろうとする。

 

「オォォオオ!!!」

 

ガーラは地面を蹴り、凄まじい速度で飛び上がった。

 

逃げるキャロ達を猛追するガーラ。キャロ達は放たれる無数の魔力弾を躱しながら必死に逃げた。

 

「フリード‼︎ 頑張って‼︎ 絶対に守るよ‼︎」

 

「グリュオッ‼︎」

 

フリードに魔力を注ぎ込み速度を上げていく。しかし距離は徐々に詰められていった。

 

とうとうガーラの指先がフリードの尾を掠めた、その時。

 

魔力弾がガーラの片目を撃ち抜いた。

 

「ガァアアアアアッッ⁉︎」

 

絶叫が響き渡る。

 

高速で空を飛ぶ相手の眼球にピンポイントで射撃。それは魔力操作に長けたなのはでも、射撃を得意とするティアナでも出来ない芸当だった。

 

アントは命中したのを見届けるとすぐさま銃を薙刀に変えた。

 

「スバル‼︎」

 

「はい‼︎」

 

スバルは腰を落とし手を組むと、アントを手のひらに乗せて力を込める。

 

「いっけぇぇえええ‼︎」

 

渾身の力で投げ飛ばされ、アントは高速回転しながらガーラに接近する。

 

「オォォォラァァアアアア‼︎」

 

遠心力が加わった一撃がガーラの脳天に直撃した。

 

「ッッ……⁉︎」

 

宙に浮いたままグラつくガーラの肩口に、アントは容赦なく短刀を突き立てた。

 

「ヌゥッ⁉︎ グォオオオオオ‼︎」

 

「ゴッ──ボッ……⁉︎」

 

強烈な肘打ちがアントの腹を打ち抜いた。だがアントは血を吐きつつ歯を食いしばり、吹き飛ばされないようガーラの腕をガッシリ掴む。

 

「ッ⁉︎ ガァァア‼︎」

 

しがみ付くアントを振り払おうとするガーラ。アントはタイミングを見計らって勢いを利用しガーラの頭上に飛び上がった。

 

潰れていない方のガーラの瞳が宙に浮かぶ二本の刀を捉えた。

 

次の瞬間、アントの姿は消え、ガーラは切り裂かれていた。

 

「っ──⁉︎」

 

「神速……‼︎」

 

アントは再び刀を振り上げた。

 

「痛ッ⁉︎ ぐっ……う」

 

アントの表情が苦悶に歪む。ボロボロの肉体で奥義を使った反動か、身体が悲鳴を上げ硬直してしまった。

 

「クッソォオオ!!! 動けぇえええ!!!」

 

「グァオオオオオオ!!!」

 

アントへ巨大な手が伸びる。だがその手は桃色のバインドによって捕らえられた。

 

「グヌゥッ‼︎」

 

すぐさま反対側の手を動かそうとしたガーラだったが、ウイングロードで迫っていたスバルが抑え込んだ。

 

「グゥゥゥウウッ!!!」

 

振り解こうと身をよじるガーラ。だがスバルは万力の力でしがみ付き、離れない。なのはのバインドもかなり頑丈ですぐには破壊出来そうにない。

 

ならば蹴り飛ばしてしまおうと両足を動かした瞬間、炎を纏った剣と雷を纏った槍が左右の腿を貫いた。

 

「グァァアアアア!!!!」

 

四肢をガッチリと抑えた。

 

だがやはり一筋縄では行かない。ガーラは全力で飛行魔法を使用し宙を進み始めた。

 

驚異的な魔力だった。本来なら足掻くことすら出来ない状況からガーラは抜け出しかけていた。

 

しかし、この場の全員はここまでの戦いを通してすでにガーラという存在の規格外さを理解していた。

 

故に──幾重にも追い討ちをかける。

 

「行かせねえぇぇええ‼︎」

 

地上のヴィータから放たれた複数の鉄球がガーラヘ直撃した。

 

「ッ……‼︎ グァァアアア‼︎」

 

ダメージを負っても尚進もうとするガーラを、フェイトの大剣が胴体を叩き切った。更に地上から狙いを定めていたティアナとはやてのありったけの魔力弾がガーラを撃ち抜く。

 

「ガァァアアアア!?!?!?」

 

絶叫が響く。ガーラの瞳に鈍い光が姿が映った。

 

「神……速‼︎」

 

一筋の光が通過する。更に二つ、三つ、と光が貫通していった。

 

「っ──!?!?!?」

 

「まだ、まだぁぁあああっ‼︎」

 

神速神速神速神速神速神速神速神速神速神速神速神速神速神速神速神速神速‼︎

 

斬撃の光が豪雨のように降り注ぐ。刀身どころかアントの姿すら霞んでいた。

 

経験したことのないレベルの激痛がアントを襲う。全身が引き裂かれ血が吹き出る。骨は軋みすでに数本逝っていた。

 

だがそれでもアントは止まらない。この機を逃してはいけないと、本能で理解していた。

 

 

 

反撃する暇を与えるな、呼吸も、瞬きも、血を流す暇すらも与えるな。

 

命を削れ。明日を迎えるために。

 

 

 

死ぬ気で────生きろ。

 

 

 

「オォォォオオオオ!!!!!」

 

トドメの一撃を放つ。地面に直撃し、凄まじい衝撃が周囲に散らばった。

 

砂煙の中からアントが飛び出し地面を転がり、エリオがそれをキャッチした。

 

「兄さん‼︎ 大丈夫ですか⁉︎」

 

ユニゾンが解け、アントの隣にリインが現れた。

 

「……ぐうっ……アント……流石に無茶が過ぎるぞ……」

 

アント同様、リインもかなり限界が近いようだった。

 

「アント‼︎」

 

「アント君‼︎」

 

「アントさん‼︎」

 

倒れたままのアントの周囲に機動六課の全員が集合した。

 

「ッ……はっ……はっ……はぁ……ぐ、うぅ……」

 

アントは倒れたまま、立ち篭る砂煙を見つめた。

 

全員が固唾を飲んで見守っていると、砂煙の中にムクリと起き上がる影が映った。

 

まだ立ち上がれるのか。

 

なのは達が驚愕しつつ武器を構える中、ガーラの姿が露わになった。

 

閉じられた片目からは血を流し、全身は隈なく切り刻まれ、立っているだけでも奇跡と言えるほどボロボロの状態だ。だが、その痛々しい姿に反して、纏うオーラは強者のものだった。残された瞳からは凄味が感じられる。

 

「「「「「っ……⁉︎」」」」」

 

凄まじい威圧感になのは達は息を呑んだ。そしてガーラは手を振り上げ──

 

 

自身の胸に突き刺し、レリックを握り潰した。

 

 

「「「「「「⁉︎」」」」」」

 

突然の行動になのは達は混乱し固まった。

 

「クハッ……クハハハハハッ‼︎」

 

訳が分からなくなっているなのは達に対して、アントはフラリと立ち上がり親しげに話しかける。

 

「いいのか?」

 

するとガーラの方も肩をすくめ親しげに答えた。

 

「構わん。この状況を見れば結果は一目瞭然だろう。話にならん」

 

血塗れで片目が潰れた自分の今の状況を見て、ガーラは呆れたように首を振った。

 

「「「「「……」」」」」

 

あまりに異常な状況になのは達は置いていかれていた。

 

その時だ。ゆりかご内部にアラームが鳴り響いた。

 

「……始まったか」

 

「始まった? 何がだ?」

 

「魔力封鎖だ。本来は聖王の反応が消えたらゆりかご自体が自分を保護するためのプログラムだが、ドクターが修正して覇王のレリックの消滅と共に起動するようになっている。あまりのんびりしていると区画が封鎖されて閉じ込められるぞ」

 

ガーラの話を肯定するように、全員の身体が徐々に重くなっていく。

 

「あかん‼︎ みんな逃げるで‼︎」

 

「「「「はいっ‼︎」」」」

 

周囲からガジェットが迫ってくる音を聞きながら、はやて達はナンバーズ達を抱えて全速力で逃げた。

 

だが王座の間から出ようとした直後、アントは立ち止まりなのは達に背を向けた。

 

「え……?」

 

扉が閉じる寸前、アントは唖然とした様子でこちらを見るなのは達に笑みを向けた。

 

「先行っとけ。すぐ追いつくからよ」

 

扉は完全に閉じられてしまった。

 

 

 

………

 

 

 

「……逃げないのか?」

 

流石に予想外だったのか、呆然とした様子でアントに問いかけた。

 

「そういうお前こそどうなんだ?」

 

「……これはケジメだ。俺はここで果てるとする」

 

「そうかよ。じゃあ」

 

アントは両手を構えた。

 

「決着つけようぜ」

 

「……貴様、俺のこの惨状を見てまだ決着がついていないと言うのか?」

 

「逆に聞くけどよ。お前、あれで納得出来るのか?」

 

アントの問いかけに対し、ガーラは一瞬虚を突かれるが、すぐに小さく笑った。

 

「……いや、無理だな」

 

「だろ?」

 

互いにすでにボロボロで満身創痍。早く治療するべきというレベルだ。

 

「ククッ」

 

「ハハハッ」

 

二人は笑った。心の底から笑った。

 

「ハハハハハハッ」

 

「クハハハハハハッ」

 

二人は同時に駆け出し、

 

「「ハハハハハハハハハハッッ!!!!」」

 

相手の顔面に拳を叩き込んだ。

 

 

 

………

 

 

 

なのは達は無事脱出し、上空を不安げに見上げていた。

 

「何してんのよっ‼︎ あのバカはっ!!!」

 

焦りと怒りから声を荒げるアリサ。六課の全員が無事帰還し、戦いは終わったと歓喜した直後、アントが残っていることを知らされたのだ。

 

「もうっ……‼︎ もうっ……‼︎ なんで逃げなかったのよ‼︎」

 

その言葉はその場のほぼ全員の意思を代弁していた。

 

「俺はちょっと分かっちまうなぁ。旦那の気持ち」

 

「ヴァイスさん?」

 

苦笑いを浮かべるヴァイスにティアナは首を傾げた。

 

「聞けば例の戦闘機人と旦那は十年以上の付き合い。理屈じゃねえんだろうなぁ」

 

「ははは……兄さんらしいです」

 

エリオもつられて苦笑いを浮かべた。

 

「…………それは、たまったものやないなぁ」

 

氷のように冷たいはやての声に、ヴァイスとエリオはピシャリと口を閉じた。

 

「理屈じゃないですって⁉︎ こっちはこんなに心配してるのに自分勝手にもほどがあるわよ‼︎」

 

「……一度、()()()()お話しするべきみたい」

 

「……待たされるこっちの身にもなって欲しいね?」

 

「今回ばかりは許せないよ。絶対に」

 

五人の美女が怒っていた。それはもう身震いするほどに。

 

「「……」」

 

エリオとヴァイスは心の中で祈った。せめて骨ぐらいは残りますように、と。

 

その時だ。ゆりかごの一部分が爆発し、煙と共に何かが飛び出た。

 

「アントさんだ‼︎」

 

スバルが指をさす先で、アントとガーラは戦っていた。

 

周囲に散らばるガジェットや瓦礫を足場にして飛び回るアントとガーラ。ボロボロの身体のどこにあれだけの力が残っていたのか。驚きを通り越して呆れてしまう。

 

二人は徐々に地上に近づいていき、やがて森の中へ突っ込んでいった。

 

「あそこや‼︎ 追うで‼︎」

 

「「「「「了解‼︎」」」」」

 

 

 

………

 

 

 

「……ワンダウン……俺の方が優勢だな」

 

「貴様も倒れているだろうが……同点だ」

 

二人は地べたに這いつくばっていた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「はぁ……はぁ……」

 

二人ともすでに限界は超えていた。ガーラは仰向けになり口を開いた。

 

「……お前と、戦うのは……何度目だろうな?」

 

「……さあ……な。数える気すら……なくなった」

 

「そう……か。貴様にとっては……なおのことそうなのだろうな……」

 

「……」

 

「俺は……強かったか?」

 

「……ああ、最悪の相手だったよ」

 

「そうか……」

 

二人はしばらく無言だった。アントは空を見上げながら、ふと気付いた。

 

「くはっ」

 

「……どうした?」

 

「いや……なに。バカは死んでも……治らないんだな、てよ」

 

バカはバカのまま。いくつになっても、どんな経験をしても、何度死んでも、根本の部分は変わらないらしい。

 

「……ああ、そのようだな」

 

「……バカにしてんのかテメエ」

 

「貴様が……言い出したのだろう」

 

「テメエに言われるのは……なんかムカつく」

 

「……理不尽な話だ」

 

馬鹿話をしていた二人だったが、やがてアントはフラフラと起き上がり、刀を構えた。

 

「正真正銘、最後だ」

 

それに応じてガーラも起き上がり構えを取る。

 

「ああ、最後だ」

 

二人の動きが止まった。静かな空気が流れる。

 

次で決まる。次の一撃で終わる。どんな結果であれ、ここで決着がつく。

 

二人はカッと目を見開いた。

 

「オォォオオオ!!!」

 

「ハァァアアア!!!」

 

次の瞬間、二人は互いに背を向けていた。

 

「ゴボッ……」

 

血を吐き膝をつくアント。

 

「ガ……フ……」

 

袈裟懸けに切り傷を作り、同じく膝をつくガーラ。

 

そして二人はゆっくりと前に倒れていき、

 

 

── 一瞬、一瞬だけ早くガーラの額が地に着いた。

 

 

「俺の……勝ちだ……」

 

アントはポツリと呟き、意識を失った。

 

「アント‼︎」

 

「アントくん‼︎」

 

「兄さん‼︎」

 

「アントさん‼︎」

 

なのは達が駆けつけた時、すでに勝敗は決しており、アントもガーラも満足げに笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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