11月28日更新
「すっかりこんのすけを気に入ったみたいだな」
「うん、可愛い」
どこか満足気な村雨。
そんな会話をしていると、こちらに向かってくる足音が微かに届いた。
薬研はひょっこりと障子の向こうを覗くと、よっと片手を挙げた。
村雨は誰が来たのだろうと首を傾げるが、気配や繋がりをもつ牡丹達は見当がついている様子だ。
足音の正体は複数あり、開けたままだった障子の向こうから顔をだしたのは小さな少年達だった。
「あるじさまっもどりましたよー!」
「あ、あの、ただいま…です」
「あれ、お客さん?」
そこに現れたのは
「へぇ、こりゃ驚いた。女の客人なんていつ以来だ?……いや、人間じゃない、か?」
今剣の頭に腕を置いてこちらを覗きこんだのは、今剣と同じような白い髪をした青年、
その後ろにゆっくりと歩いてきたのは、なにやら頭からすっぽりと少し薄汚れた白い布をまとった青年、
この6振りは、今朝遠征に向かい帰ってきた第二部隊だ。
「主、報告はあとの方が良いかい?」
「そうねぇ、あとは村雨にどうしたいかを聞くだけなのだけど…」
「村雨?」
ちらりとこんのすけを撫でていた女性を見やる。
そして、ぱちりと、鶴丸と同じ、だがどこか少し金色というよりは蜂蜜を溶かしたような甘そうな瞳と目があった。
「
「男にゃ見えないな」
「女だからね」
村雨の返答に6振りはそれぞれの反応をする。
「へぇ、刀剣にも女がいるのか!そいつは知らなかった!」
「ぼくみたいに、女の子の格好じゃなくて、本当に女の子なんだ!」
と、驚きとともに興味を抱くもの。
「はじめてですね、こんなこと。むらさめはどうやってほんまるにきたんですか?」
「えと、よ、よろしくお願いします…?」
その存在に好意的に、または疑問を投げ掛けるもの。
そして。
「女が戦場にでるのか?」
「というか、そんななりで戦えんのか?」
という感想のもの。
それぞれの性格が現れる反応である。
そんな様子を眺めていた牡丹は、ぽん、とさも良いことを思い付いたといった風に手を叩いた。傍らにいた薬研や一番後ろにいた山姥切国広はひくりと頬がひきつる。
この主は時々突拍子のないことを言い出すのだ。
「ねぇ、同田貫、村雨と勝負してみない?」
「………はぁ?」
「…………おい、主…」
やっぱりなと、心の準備が整っていた刀剣は良いとして、村雨の内心は穏やかではない。ぴたりと体が固まっただけなので、回りは気づいてないが、背中に置かれた手のひらから、こんのすけだけはその様子を察するのだった。
「……村雨はまだ自分を扱ったことがない、勝負になるかわからない」
村雨のこの言葉が誤解を生んだ。
(戦ったことないし、刀振ったこともないし、ぜっったい負ける!負けるよ?!ぼろ敗けだよ!)
というのが村雨の本心だったのだが、ここにいる全員が同じように受け取った。
曰く、「まだ自分を振るったことがないから手加減できるかわからない。勝負にもならず相手を切ってしまうかもしれない」と。
これで、同田貫正国は喧嘩を売られたと認識した。
「……いい度胸じゃねぇか、いいぜ、相手になってやる」
真逆の意味で受け止められたことを知らない村雨は首をかしげた。
それが、さらなる誤解を生む。
「相手になれるの?」といった意味がこもっていると勝手に判断されるなんて想定外以外の何者でもないのだが、ここで誤解が生まれていることを知るものはいないため、だれも咎めることはなかった。
村雨本人だけが、あれ、なんで勝負することになってるんだ?!と内心悲鳴をあげていた。
こうして、第一回村雨との勝負祭りが開かれることになったのだった。
ちなみに、同じようなやり取りで今後も第二、第三と開催されることになろうとは、この時はだれも知るよしもない。