村雨のこころ   作:玖渚真白

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初投稿です。
八犬伝→刀剣乱舞の設定混合を含む予定です。
よろしくお願いします。<(_ _*)>


プロローグ

 

静かな雨が降る。

 

山の木々が風で微かに揺れ、雫が降りそそいでいた。

それは鎮めの雨。

つい先ほどまで、山肌を舐めるようにあった火を沈下させるために降らせた雨だった。

 

木々が焼けたことで、あちこちから焦げ臭いが立ち上っている。まだ熱をもった風が吹き抜ける状況の中、漆黒の鴉が大きな羽を拡げて唯一残っている草原の地面に降り立った。

 

鴉の傍らには、草と土の広がる地に横たわる小さな人影がひとつ。

仰向けに寝転ぶ少年は、おもむろに口を開けた。

 

「………村雨(むらさめ)

 

雨の音に紛れるほどの、本当に小さな震える声音。それを聞き逃さないように鴉は少年の顔に頭を近づけた。

 

「………なぁに」

「…………」

 

村雨が問いかけると、少年はくしゃりと泣き出しそうに顔を崩す。その瞳からは涙は溢れていないが、降り注ぐ雨が丸みを帯びた頬を伝い、まるで泣いているかのようだ。

 

村雨は知っていた。

少年が、何を望んでいるのか。

かつて、村雨と契約を交わす際、少年は「生きる」ことを望んだが、今は───

 

「シノ…今の望み、おしえて」

「………っ…、村雨っ」

「……もう、知ってるけど、……お願いして良いよ」

 

これが最後の契約。

対価と引き換えに叶える願い。

村雨はソレを促すために、雨に濡れて少し冷えている少年の頬に頭をすりよせた。

 

少年、犬塚信乃(いぬづかしの)───見た目は14歳だが、あれから何十年過ぎたのだろう。彼の側にいた仲間は、次々と終わりを告げ、それを村雨と一緒に見届けてきた。

そう、心を寄せたものの死が、どれほど痛いものなのか、人間ではない村雨にもわかるほどの歳月を共に歩んできたのだ。

だから、そう、これは村雨からの贈り物だ。

 

「……ねぇシノ、これは村雨からの願いであり、贈り物だよ…」

「………村雨?」

「だから、この願いは、対価は…」

「だけどっ」

 

いつもは大きなその真っ直ぐとした意思の強い瞳は、驚きと焦燥とでひどく陰っている。瞳を揺らしながら、信乃は村雨を横目に見る。それを覗き込むように村雨は頭をあげた。

 

「村雨も一緒に終わるから…だから──」

 

信乃の口から音は出ない。

でも、微かに動かすそれに、村雨は小さくうなずいた。

 

「………おやすみ」

 

 

山火事があった。

空は赤く染まり、木々を焼き払う炎は勢いよく山を焼いた。だが突如大きな雲が山のてっぺんに立ち込めて、大粒の雨を降らせた。

不思議なことに、瞬く間に炎は勢いを弱めていく。

 

その夜、雨があがった山の山中にて、白骨となった小さな亡骸がひとつ。

その傍らには、折れた刀がひとつ転がっていた。

 

 

 

 

 

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