11月28日更新
わたしは人間だった。
でも、あるときから村雨という刀がわたしという個になった。
それから里見八犬伝みたいな人間関係を眺め楽しんだりもした。
だけど、さすがにこれは想定していなかったな…
あれ、目の前のお婆ちゃん誰だ。
っていうか、隣にいる人…見たことあるぞ?
なんならわたしの近侍だったぞ?
………なんで、目の前に薬研藤四郎がいらっしゃるんでしょうか。
ってか村雨が烏姿じゃなく、人型になってるんですが、ダレカ、セツメイ、モトム……
──────
つい先ほど顕現した新たな刀剣村雨をつれ、居間にて改めてお互い自己紹介を行った。
「改めて、私は審神者をしております、牡丹と申します」
目尻のシワを深くして、穏やかに話す牡丹は、落ち着いた色合いの着物を着ており、その髪は生きた年月を現すかのように美しい白で染まっている。
対するは、漆黒の長い髪に大きな琥珀のような瞳、すこし華やかな着物と漆黒の太刀を脇に置き、彼女──村雨も言葉を発した。
「村雨は村雨…好きに呼んで、ください」
───(以下は村雨の内心をあえて載せます。)───
え、え、審神者って言った?このお婆ちゃん…
牡丹さん?、まじで、なんで今さら刀剣乱舞??
これまで数百年、数千年と刀で過ごさせたあとに、もうゴールでいいよね…的になったから自殺みたいに刀を折って眠りにつく予定だったのに。
いや、確かに刀剣乱舞ってゲームに登場する刀剣の中には、伝承とかで伝わった実在していない刀とか、戦時とかで消失しちゃった刀も確かいたはずだから、折れた村雨でも伝承とかからオッケーされちゃったかもしれんけど…それでも困るぞ、わたし自身は実践経験ほとんど無いんだから!
時間遡行軍(刀剣乱舞の中の敵ね)と戦うのって、擬人化した刀自身だったよね。
え、まじ無理なんですけど…鍛練でどうにかなるもんなのかな…っていうか、刀剣男士なのにわたし女なんだけども、そこんとこ大丈夫なんだろうか。
───(省略)───
挨拶を済ませたタイミングで、薬研がお茶とお茶菓子をお盆にのせて部屋へと入ってきた。
手馴れた様子でお茶が入った湯飲みを、静かに机の上に置き、牡丹からの感謝にどうってことないと笑って返している。
───(再度、村雨の内心を以下略)───
………っ、動いている
うわぁぁあ、推しが動いてる話してるわらってるぅぅう!!!
え、これまじで現実??
どうなってんの?
人間から刀になって、かなり時間がたったが、刀って折れても夢見たりすんの?
あ、でもお茶美味しい。
あれ、お茶の温かさも味も匂いもわかる。
やっぱり現実なのかな…
というか、当たり前のように人の形になってるみたいだけど、どんな見た目してるんだろう。以前のわたしだとぱっとしない平凡顔だったが、もし今もそれのままだと、あの顔面偏差値トップレベル集団の中に入っていけない気がする…
───────
村雨は内心穏やかではないのを外には出さず、静かにお茶を啜っていた。