11月28日更新
牡丹とは本名ではなく審神者名である。
彼女が審神者という存在となってから、どれ程の歳月が流れたか。半世紀以上、審神者として刀剣男士達と歴史修正主義者と戦ってきたが、いまだ終わる気配はない。
毎日の日課をこなし、刀剣男士達と戯れる日々が、ある日の出会いによって少し色を変えることになるとは。
そのときの牡丹にとっては、想像もしていなかった。
刀剣男士、は、男である
……というのは、審神者にとっては当たり前な常識であった。
説は様々ある。
刀は男性が多く使用していたからとか、元の主に影響されているなど。あとは、刀事態の由来から女の姿となっている刀剣男士もいるが、それは姿だけであることもあり、女として現れた刀剣は報告されていないのだ。
そんなときに、なんの前触れもなく現れたのが、彼女、村雨だった。
牡丹と向い合わせでローテーブルをはさんで座する彼女は、畳の上に置かれた刀がなければ、日本人形のように愛らしい姿をしている。
あどけないぱっちり二重の大きな瞳は、少し伏せられており、長い睫毛によって影ができている。肌は象牙の透明感のある白に、化粧ではない自然な頬の朱さと唇。ハイカラな和装は紅と深い緑から紺のグラデーションの袴を着ており、彼岸花が描かれた打掛を羽織っていた。
ぼんやりとしているように見える彼女へ、静かに微笑みを浮かべて牡丹は自己紹介を始める。
お互い名乗り終わり、丁度、薬研藤四郎がお茶を持ってきてくれたので、どうぞと勧めたあと、お互い状況を確認させてほしいと彼女に願った。
「急に喚び出されて申し訳ないけれど、まずはお互い状況把握をさせてもらえないかしら…まずは、私ね。こんなおばあちゃんだけど審神者としてあなたたち刀剣の方々と歴史修正主義者と呼ばれる敵と戦っています。審神者や刀剣男士という存在は知っている?」
「一応、知識として認識はしている。けれど、村雨が刀剣男士?」
牡丹の言葉に、村雨は首をかしげた。その際、漆黒の艶やかな長い髪が肩からさらりと滑り落ちる様は、やはり人間とは異なり神がかる美しさだと、牡丹は心の中で呟く。
「なら、話が早いわね。私は新たな仲間として刀剣男士を喚び出そうとしたのだけど、そこにイレギュラーが発生したの。何故か見たことのない時間での鍛刀時間で、顕現したら貴女がきてくれたわ。」
何故だかわからないと牡丹は困ったように眉を下げる。
「あと……失礼だけど、貴女は男性なのかしら…?」
その言葉に、村雨は自分の胸に手をやり、ふむ、と首をかしげる。
「…身体としては女、の姿だね。まぁ、姿かたちが女であろうと、刀剣にはかわりない」
「ということは、刀剣女士ってとこか?」
不意に牡丹の後ろに控えてた薬研藤四郎がそう問いかけた。
「足手まといに感じるの?」
「いや、刀剣でも男女の差が発生するか今はわからないからな…場合によってはそう感じるかもしれないが」
村雨の問いに答えた薬研藤四郎の意見に村雨は、そう、と一言返すにとどまった。