村雨のこころ   作:玖渚真白

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side:自分の話を、牡丹編に組み込む為、話数を変更しました。
11月28日更新


牡丹編:7

少し薬研と話をした村雨は、また静かに目を伏せお茶を啜る。そんな様子を見ながら牡丹はこの後のことを考えながら口を開いた。

 

「ひとまず、政府へ報告しないといけないから、こんのすけを呼びましょうか。もしかしたら、他でも似た事が起こっているかもしれないもの」

「…そうだな、大将の部屋から端末持ってこようか?」

「ええ、おねがいできる?」

 

のほほんとした口調の牡丹に、任せろと告げ、薬研は部屋を後にした。

薬研が去ったあと、牡丹は「さて、」と村雨へ視線を戻す。

 

「あなたのことは、村雨と呼んでも良いかしら」

 

その質問に、村雨はこくりと首を縦にふった。

 

「薬研が戻ってくる前に、1つ確認なのだけど…」

「…なに?」

「これからあなたには2つの選択肢が与えられると思うの。1つは私のもとで一緒に戦うこと。もう1つは政府のもとへ行き、状況の把握をした後に顕現を解く…かしら。他にもありそうだけどあなたの意見を聞きたいわ」

 

村雨は自分の意見を尊重するつもりの牡丹を、不思議そうに眺めた。

確か、ここに喚び出されるときの声は、戦いを共にしてほしいといった内容だった。それに答えたつもりだったのだが、違ったのだろうか。

 

(いや、戦えるかといえば、わからんから選択肢もらえるのは嬉しいんだけど…)

 

でもこれだけは言える。

いまのままでは、1つ目は選ぶことができないということ。

 

村雨という刀は特殊だ。

始まりは偶然、そして今では自身で少しは制御できるが、村雨を使うことのできる主人とは、何かしらの契約を結ぶ必要がある。

もちろん、刀として侍るだけならなにもしなくても良いのだが、力を使うには何かしらの繋がりがあった方がよいのだ。

とはいえ、それは主人本人が村雨本体を使うときの条件。今回のように、村雨自身が自分を使う場合に繋がりが必要なのかはよくわからないのだが……。

 

「村雨は、普通の刀と違う…けど、自分を操ったことはないから、あなたの力になれるかわからない…」

 

少し申し訳なさそうにそう言葉を紡ぐ村雨を、牡丹は微笑みを浮かべながら聞いていた。

それに後押しされるように、村雨もまたじっとシワの浮かぶ優しげな老婆を見つめる。

 

「……わからないことがいっぱいある。話す必要のあることもいっぱいある、と思う。力になれるかわからないけど、村雨を呼んだのは…喚んで捕まえたのはあなただから、村雨はここにいる」

 

不安げに揺れる蜂蜜色の瞳に、確かな芯を感じさせながら、村雨はそう答えた。

そして、それに牡丹はゆっくりと頷き、目尻のシワを深くしながら嬉しそうに笑った。

 

 

これからよらしくね。

と、和やかに告げる新たな主人に、村雨もまた小さく笑みを浮かべた。

 

そんな柔らかくなった空気の中に、端末を持ってきた薬研は、あぁまた大将がタラシこんだのかとどこか失礼なことを考えながら部屋に戻ってきた。

 

「ほれ、端末もってきたぞ」

「あら…ありがとう、ちょうどよかったわぁ」

 

うふふと笑いながら端末を操作する牡丹。

ちょうどよいということは、今後の方針を決めたのかと薬研は村雨に声をかけた。

 

「これからについて、なにか決めたのか?」

 

その問いに、無言で首肯する。

そして少し困ったように村雨は口を開いた。

 

「ぁ…ゃ、薬研、藤四郎…?」

「ん?あぁ、長いから薬研で構わない。本丸には藤四郎が多くいるからな」

「そう…薬研、にあとで相談したいことがある…いい?」

 

表情は変わらないが、目は正直だと薬研は小さく笑った。それの笑みの意味がわからず首を傾げる村雨に小さく謝り、もちろんと答えた。

 

そんなやりとりをしていると、遠くから小さな走る音が近づいてきた。と思うと、「さにわさまぁぁ」という声とともに部屋に飛び込む小さな影。

朱い隈取りをした小さな狐──こんのすけだ。

端末で呼び出され、現れた部屋(審神者の仕事部屋)に、その本人はなく、急ぎ気配を探して走ってきたのだ。

 

「こちらにいらっしゃいましたか、審神者さま!」

「あらあら、こんちゃん、急がせちゃったみたいでごめんなさいね」

「いえ、お気遣いありがとうございます。して、本日はどのよう、な………」

 

はきはきと言葉を話すこんのすけは、視界に入った違和感に視線を向け、ぱかりと口を開いたまま固まった。

 

というのも、本丸とは主である審神者と政府が把握している刀剣男士以外はいないはずなのに、そこには見たこともない少女が座していたのだから。

そしてさらに、その少女がただの人間ではなく、どこか妖刀に近しい禍々しさと神々しさをあわせ持つ珍妙な気配をさせているのだ。

 

「…………………」(こんのすけ)

「…………………」(村雨)

 

見つめ合う両者。

 

「…………………」(薬研)

 

それを見守る刀剣。

 

さらに、にっこにこしながらお茶を暢気に啜る審神者が一人。

暫くの静寂が辺りを包むが、えっ、と我にかえり(混乱状態だが)お茶を啜る審神者と少女を見比べるこんのすけ。

そして恐る恐る少女に向かって声をかけた。

 

「………どちらさまですか?」

「…村雨、は、村雨という」

 

簡潔かつ説明にならない返答に、再度こんのすけは混乱している。なんだかかわいそうになり、あらあらと笑っている主の変わりに薬研がこれまでの経緯をこんのすけに語るのは暫し後になる。

 

 

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