IS〜古都国最凶と蛇と成りて舞う一夏〜   作:第八天黒鴉

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誠に申し訳ありませんでした!(開幕謝罪)
三日後投稿するとか言いながら結局三週間以上投稿をしてないクソからすです。
クズとかゴミとか好きなように罵ってください。
でも、どれだけ時間がかかっても完結はさせるので、そこだけは覚えておいてください。
言い訳は後書きにてお話します。

それではどうぞ


第8話 彼は色々と頭がおかしい

争奪戦の翌日、ジークは機竜格納庫でルクスとクルルシファーを呼び出していた。

 

「テメェ、何で取られてやがるんだよ」

「えっと・・・・・・、すみません」

 

自分にも効力をもつ優先依頼書が他人の手に。それを許容できるほど、ジークは優しくなかった。その証拠にこめかみはひくつき、くっきりと青筋が立っているのが分かる。

 

「百歩譲って取られたのは、まあいいとしよう。何で時計の針をいじられてるのに気づかない挙句、すんなり依頼書を渡してんだよ!?」

「ルクス君はちょっと優しすぎるわね。騙した私が言うのもなんだけど、少し心配だわ」

「少しは疑うことを覚えやがれ!人間なんて騙し騙されが常だぞ。出会って間もない人間なんか簡単に信用すんな!」

 

ジークからは容赦のない口撃と、騙した張本人による哀れみの視線が混じり、ルクスはなんとも言い難い居心地の悪さを感じていた。

 

「ところで、エーレンブルグ先生」

「あ?」

 

まだまだ続きそうな説教に待ったをかけたのは、以外にもクルルシファーだった。

 

「疑うことを覚えろや、簡単に信用するなと言っているのだから、私に疑われても文句はないわよね?」

「え?そればどういう・・・・・・?」

 

クルルシファーの質問の意図が分からず困惑するルクス。だが、ジークには理解できたらしい。

勘がいいクルルシファーに内心舌打ちをしつつ目を細め、警戒を少しだけ強める。

 

「生身で幻神獣(アビス)を討伐してみせた時の銀の機攻殻剣(ソード・デバイス)と『銀の厄災』の機体色との一致、タイミングを見計らったようなルクス君が現れてからの乱入。そして──、その時間帯に貴方を見た者がいないこと」

「・・・・・・・・・」

「もしかして貴方が『銀の厄災』なのではなくて?もし、違うと言うのならここでその機攻殻剣(ソード・デバイス)から神装機竜を召喚してもらえないかしら?」

 

そう言って警戒心をあらわにしながら、自分の機攻殻剣(ソード・デバイス)にクルルシファーは手を掛けた。

それに対し、ジークは無言で見つめ続ける。

何も図星だから黙っているわけではない。

むしろその逆である。

ジークにはこれを切り抜ける確信と自信があった。

 

「・・・・・・・一応聞くが拒否権は?」

「この依頼書を使うわ。それでも嫌だと言うのなら憲兵に突き出してから聞くことにするけれど?」

「正直これだけは譲れねぇ。例え給料が減らされようがな。」

 

一触即発の空気の中、先に折れたのはクルルシファーだった。

 

「・・・はぁ、ならこの依頼を受けてくれたら今後依頼はしない。──それならどうかしら?」

「・・・・・いいだろう。つってもこれが答えだ」

 

そう言いながらジークは、腰に差してある機攻殻剣(ソード・デバイス)をクルルシファーへと投げる。

 

「手練の機竜使い(ドラグナイト)は機体名を知らずとも高速無詠唱召喚ができるのは知ってるよな?」

「ええ、一応私もできるから」

「なら話が早い。──やってみろ」

「・・・・・・?」

 

ジークの口振りに疑問を感じるも、高速無詠唱召喚をしようとクルルシファーは、機攻殻剣(ソード・デバイス)のスイッチを押しながら振るう。

だが、何も起こらなかった。

 

「・・・・・・これはどういうこと?」

「な?何も起こんねぇだろ?俺にも反応しなかったんだ」

 

信じられず二度三度と振るうが、やはり何も起こらなかった。

本来ならば失敗したとしても何かしらの反応があるはずだが、この機体は何の反応もしなかった。

 

「こいつは担い手を選ぶらしくてね。どんな能力を持ってるのか、どんな見た目なのか。──俺は何も知らない」

「つまり──」

「俺は『銀の厄災』じゃねぇよ」

(まあ、俺が『銀の厄災』ですけどねぇ!?逃げ道の一つや二つ、用意せずに何が『死を想え(メメント・モリ)』か!)

 

当たり前のように嘘をつくジーク。心の中では勝ち誇った嘲笑を浮かべている辺り、ここまでくると清々しいまでの屑である。

 

「んじゃそういうことで、俺への依頼はもうなしだからな」

「分かってるわ。疑ってごめんなさい」

「・・・・・・僕、完全に忘れられてる?」

 

空気と化していたルクスの一言を皮切りに解散する三人。

一人は困惑を、

一人は疑念を、

一人は慢心を、

その胸に宿す。再びの邂逅はそう遠くない。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

時は移り翌日。ジークはレリィに呼び出されていた。

 

「じゃあ、今日からお願いね」

「ホントにやるんすか?これまでの成果を含めた実践訓練の参加」

「当たり前でしょ。みんな充分な知識が付いたみたいだし、そろそろ頃合だと思うのよね。そういうことで、今やってる実技訓練の次の時間からね」

「マジすか。まあ、仕事なんでやりますけど」

 

いきなり呼び出されて次の授業からお前も入れと言われてキレなかった俺を褒めて欲しい。

そんなことを思いながらも了承するジーク。

最近、自分は何のために新王国に潜伏しているのか、分からなくなってきているのが悩みらしい。

これも全部依頼主(イカレ野郎)のせいなんだ。

どうせ次から入るのだし、今から演習場に行こうと思うジーク。

だがこの時、演習場で何が起こっているのか知らないが故、素で半ギレすることになるとは思いもしなかった。

 

 

●〇●〇●〇●〇●〇

 

 

時は少し遡り、演習場ににて。整列する女生徒の前に三人の男が立っていた。

 

「ほう・・・・・・やはり来て正解でしたな」

 

三人の中心に立っていたリーダーと思しき男が、含みのある声を上げる。

 

「まったくだ。女だからといって甘やかされているのが見て取れる」

「いくら何でもこれはいただけない」

「・・・・・・まだ教育中の身ですので」

 

残りの二人も見下すような下卑た笑みを見せる。

それにライグリィは、努めて平静に返す。

 

「・・・・・・彼らは臨時で来てくださった講師だ。ここで、しっかりと学ぶように」

 

彼女も本心ではないのだろう。普段よりも数割増しで鋭い表情を浮かべている。

困惑する女生徒達だが、逆らってもどうともならないので大人しく従っていた。

彼らの指導は酷いの一言に尽きた。

回避訓練と称して三人で所構わず機竜息銃(ブレスガン)を撒き散らし、実戦訓練という名で見せ物のように負かされる。

そして、わからないことを聞けば、

 

「甘ったれるな!自分で考えろ!」

 

と言った。

彼らの目的は指導することではなく、王都での合同訓練の鬱憤を晴らしたいだけだった。

挙句の果て、講義をした一人の生徒の武装を弾き、追撃をかまそうとした。

だが、その追撃は《ワイバーン》を纏ったルクスによって止められた。

 

「何だ、誰かと思えば没落王子じゃないか。どうした、こんな所で?草むしりでも頼まれたか?」

 

リーダー格の男は侮蔑を込めた言葉を口にする。

それをルクスは淡々と聞き流して答えた。

 

「いえ、今は事情があって生徒として通っています。それはさておき、指導を代わっていただけますか?僕が教える約束になっているので」

「えっ・・・・・・?」

 

ルクスの言葉に驚く少女。咄嗟に思いついた嘘だが、ここを切り抜けるには充分だと確信する。ここから先はルクスの本領発揮だ。

 

「他の皆さんにも、放課後、僕が装甲機竜(ドラグライド)の操縦を教える先約があるので、補習は勘弁してもらいます」

 

ルクスは言外に、お前達の教えなんぞいらんから帰れと言っているようなものだった。

そんなことを言われてのこのこ帰るようなら、そもそも臨時講師で来たりはしない。それ故、軍人達は腹を立て、わかりやすい怒りをあらわにした。

 

「なんだと・・・・・・!?ならば貴様が教えるに足る実力者か見せてもらおうじゃねぇか・・・・・・!」

「ああ、そうだな・・・・・・!だが、俺達は訓練で疲れている。ハンデをつけさせ──」

「これはどういうことが説明していただけるかな?ライグリィ殿」

 

不穏な空気が漂うこの場に響いた男の声。

全員が演習場の入口付近へと意識を持っていくと、そこには普段の気怠そうな表情は何処へやら、静かな怒りを込めた表情をした一人の男が佇んでいた。

 

「・・・・・・誰だ、貴様は」

()()()()()()()()()()()()()()()()ジークフリート・エーレンブルグだ」

「何・・・・・・?ライグリィ殿ではないのか?」

「そうだ。基本はライグリィ殿に全て一任しているがね。自分の仕事が終わったので来てみれば何だこの有様は」

 

ぽんぽんと出てくる口からでまかせ。それに対し何かを言わんとするライグリィをジークは視線で黙っていろと念を押す。

それを察したライグリィは口を閉ざした。

 

「もう一度尋ねよう。これはどういう状況だ?」

「そこにいる没落王子が我々の指導の邪魔をした挙句、自分が教えるから引っ込んでいろというのでね。その実力があるかどうか試そうとしただけだ」

「別に貴様らには聞いてなどいない。俺は雑用王子に聞いているんだ」

「なっ・・・・・・!?貴様ァ・・・・・・!」

 

取り合う気などないと言わんばかりの塩対応に唖然とする軍人。

尤も、『死を想え(メメント・モリ)』としての彼を知るものからすれば、問答無用で斬り殺していないだけマシと答えるだろう。

 

「正直に答えろ雑用王子。どういう状況だ?」

「・・・・・・彼らの指導方法が明らかに悪影響だと思ったので僕が割って入りました」

「そうか・・・・・・、ならば雑用王子」

「はい」

「下がっていろ」

「はい、すいま──って、えっ?」

 

てっきり怒られると思っていたルクスは拍子抜けする。

決してあのジーク先生が罵倒しない!?などと失礼なことは考えていない。いないったらいないのだ。

 

「何を惚けた面をしている?下がっていろ、これは大人の仕事だ。──というわけで軍人共、俺が相手をさせてもらう」

「いいだろう。だが、俺達は疲れている。ハンデをつけさせてもらうぞ」

「構わん。結果は変わらないしな」

 

そう言って模擬戦の準備が進められた。

ジークは汎用機竜を持っていないので学園の《ワイバーン》を一機借りることとなった。

 

「何よ、あれっ!?あんなに重量パーツをつけたら飛翔どころか満足に動けないじゃない!」

「いくら何でもあれはやりすぎよ!」

 

生徒達はみな驚愕する。不満の声が挙がったとおり、彼の《ワイバーン》に搭載限界ギリギリまでパーツを積まれたことで、重量超過でまともに動くことすらできなくなっていた。

 

「重量もそうだが、あいつは正気か?装衣もなしで装甲機竜(ドラグライド)を扱うなど・・・・・・」

 

今リーシャが言った通り、ジークは装衣を着ていない。それはすなわち自分の身を守る障壁が展開されず、死に至る危険性があることを意味している。

 

「んじゃまあ、準備もできたし始めたいところだが・・・・・・幾つかいいか?」

「何だ、今更命乞いか?」

「そんな訳ねぇだろ」

 

小馬鹿にしたかのような含みのある笑みを見せるジークは観客席を見渡した。そして、用のある生徒を見つけたのか声をかける。

 

「おい、貧乳の方の蒼髪」

「ひん・・・・・・っ!?それは私のことかしらエーレンブルグ先生?」

「ここにお前以外に貧乳の蒼髪がいるか?」

 

なんとも失礼なことを口にするジーク。クルルシファーにとって胸の話は禁句なのは共通認識だというのに、怖いもの知らずである。

 

「・・・・・・せめて名前で呼んでもらえない?」

「じゃあ、乳房・タイラーで」

「喧嘩を売ってるのなら表に出なさい」

「そんなつもりはない。・・・・・・お前の呼び方云々は置いておくとして、担架を三つ用意しといてくれ。念の為にな」

 

そう言ってクルルシファーの話をスルーしたジークは、軍人の方を向き次の目的を果たす。

 

「お前らにひとつ言っておく。テメェらなんかよりここの生徒の方が余っ程強いぞ」

「き、貴様ァ・・・・・・。言うに事欠いて小娘よりも弱いだと・・・・・・!?」

「別に機竜使い(ドラグナイト)としての腕が上ってことじゃねぇよ。精神的にお前らよりも上って話だ。技術はまだまだひよっこだが、後でどうとでもなる」

 

彼がここまで直接褒めることが珍しいのか周りが少しざわめく。あのリーシャでさえ目を丸くしていることからその異様さが伺えるだろう。軍人は顔を怒りからか真っ赤にして震えている。

 

「んで、最後にひとつ」

 

これが本題だというように間を開けるジーク。

 

「俺はこの模擬戦、動くと宣言するまで一切の移動をしない。推進器も蒸さない」

「何だと!?舐めているのか貴様は!」

「いいや、まったく。これで十分だからな」

 

そう言って脱力するジークからは動こうとする意志が感じられなかった。

 

「本当にいいのか?」

「勿論だとも」

 

心配するような表情を見せるライグリィにジークは不敵に答えた。

 

「それでは・・・・・・模擬戦(バトル)開始(スタート)!」

 

その掛け声と共に軍人は三方向に分かれて突っ込んでくる。

左右の二人は機竜息銃(ブレスガン)を構え、正面の男は機竜牙剣(ブレード)を上段に構えて斬りかかってくる。

 

なるほど、効果的だ。何処を防いでも何処かが空く。だがな──。

 

直線的な攻撃には直線で返す。互いの武装が交差するようにジークはブレードを真横に振るう。そして、男とジークのブレードが触れ合う瞬間、

 

ベキンッ!

 

と盛大な音を立てて男のブレードの方が触れた箇所から真っ二つにへし折れた。

 

「なっ!?」

「はァっ!?」

 

その場に居合わせて全ての人間が声を荒らげる。片方だけへし折れるなど到底理解できるものではないのだから。

それはこの中で一番実力の高いルクスですらそうだった。彼ですら何が起こったのか半分も理解できていない。

 

「驚くなよ、ただ武装が折れただけだぜ?」

 

さも当然だというように笑うジークの方がこの場では異常に写る。

全員があっけに取られる中、ブレスガンを転送し、高速で左右の二人も撃ち抜いた。《ワイアーム》の車輪と《ドレイク》の補助脚が一撃で砕けるという異常が再び起こった。

 

「そうか!解ったぞッ!」

 

この異常性にいち早く気付いたのはリーシャだった。

 

「えっ?あれってどういう原理なんですか?」

 

隣に座っていたルクスが尋ねると構ってくれたのが嬉しそうにリーシャは話し始めた。

 

「ああ、あれは恐らくだが調律の応用だな。簡単なことだよ。武装に大量のエネルギーを注いで強度や威力を無理矢理上げているんだろう。」

「そんなことって可能なんですか?」

「原理上はな。だが、一回やるだけでかなりのエネルギーを消費するはずだ。幾ら移動しない分を回せるからってすぐに底を・・・・・・ってまさか!?」

 

なまじ整備士としての知識があるが故にリーシャはその答えに行き着いた。

 

「まさかアイツ、障壁のエネルギーも攻撃に回しているのか!?」

 

そう。ジークは移動と防御に使われる筈の出力を切って、攻撃に回していたのだ。つまり現在、彼の身を守る障壁は一切展開されないということだ。

また、似たような技にブラックンド王国の騎士団長が使う戦陣が存在するが、ジークのは完全な力押しであり非効率であった。

 

「この、化け物め!」

 

こちらの攻撃は全て弾かれ、宣言通り一歩も動くことなく終始圧倒するジーク。痺れを切らした軍人が三方向からブレードで一斉に襲いかかった。

これならば確実に一撃は入るだろうと甘い考えを巡らせるが、現実は非情であった。

 

「『()()()()』」

 

ニヤリと弧を描く笑みを浮かべたジークはブレードを視認不可の速度で一閃。手首の装甲を吹き飛ばされる結果に終わった。

そして、それに驚くのはルクスとリーシャの二人だった。

 

「あれは旧帝国の機竜三大奥義!?何故あいつが使える!?」

「あ、疑問に思ってるやつも多いだろうから、改めて全員に名乗っておくよ。元旧帝国軍中尉ジークフリート・エーレンブルグ。現役時代はとある親友からはその戦い方に因んで『串刺し公(カズィクル・ベイ)』なんて呼ばれてたが、どうでもいいことだな」

「ッ・・・・・・!?」

 

ジークの口より放たれた言葉により彼女達は息を呑む。

旧帝国軍。それが意味することなどひとつしかない。この男は旧帝国の人間だ。

消え掛かっていた警戒心が再び漂い始める。

勿論、こんなものは依頼主(クライアント)に予め用意されていた嘘であることを彼女達は知る術など持たない、

 

「親しみを込めて『ベイ中尉』と呼んでくれよ」

 

嘲り、それでいて煽るかのようなねっとりとした声を出すジーク。()()に聞かれたらキモいと言われること待ったなしのクソだった。

 

「ふっ!」

 

息を吐く声と共に機竜爪刃(ダガー)が三本、同時に投げられる。破損していない方の装甲腕で弾くが体勢を崩してしまう。

 

「クソがァ!?」

 

《ワイアーム》に搭乗する男が崩れた体勢のままブレスガンを放つが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

次に《ドレイク》を駆る男がブレスガンを撃とうとすると、『神速制御(クイックドロウ)』による超速で投げられたブレードでブレスガンが砕かれてしまう。

 

「はぁ、はぁ・・・・・・何で、一回も攻撃が当たらねぇ!?」

「何なんだよ!?コイツは!」

「クソっ!計画が台無しだ!?」

 

口々に文句を垂れる軍人達をジークは興味を失った無感動な瞳で見ている。

 

「さて、準備もできたし始めますかな」

 

そう言ってジークは両手にブレスガンを構えた。そして、彼らに銃口を向け引き金を引く。無論彼らとて軍人。いかに精細さに欠けていようがその程度躱すことは造作もない。

 

「今更こんな攻撃が──ぐァッ!?」

 

認識外からの衝撃が軍人を襲う。衝撃のした方に意識を向けるとそこにあったのは地面に突き刺さったブレードやダガー。何故衝撃を受けたのか理解できていないようだった。

 

理屈はこうだ。

武装にはそれぞれ少量だがエネルギーを蓄えておくことができる。そこにブレスガンなどで衝撃を加えた際、威力が強すぎるとエネルギーごと武装を吹き飛ばしてしまうが、弱すぎると衝撃が霧散してしまう。

だが、適正な威力で武装に衝撃を加えた場合、威力は減衰するが弾丸を弾くことができる。

もしも、武装と射撃のエネルギーの適正値を導き出せたら。威力の減衰率を把握できたら。入射角と反射角を全て計算できたら。

 

それら全ての“もしも”を理解出来た場合、反射を利用した攻撃を可能とする。

 

これこそ、地形も武装も思考させも利用し、意のままに翻弄するこの男の真骨頂。

 

(これが俺のやり方。『白人胡久美(しろひとこくみ)トハ国津罪(とはくにつつみ)』)

 

ここから先は語るまでもないだろう。

結果はジークの圧勝。最後まで一歩も動かすこともできず軍人は担架で運ばれていった。

しかし、その場に拍手喝采は起こらない。旧帝国軍だという事実が喜ぶことを躊躇わさせた。

 

 

●〇●〇●〇●〇●〇

 

 

模擬戦のあった放課後、リーシャやルクス、クルルシファーの他数名が学園長室を訪れていた。──ジークを呼び出して。

 

「何なんですかー、いきなり」

 

一番最後に入室し、開口一番に心底面倒くさそうに疑問の声を上げるジークに多量の含みのある視線が突き刺さる。

それを無視しながらジークはレリィを見据える。

 

「知っていたのか学園長!この男が()()()()だと!」

 

睨んだところで埒が明かないと思ったリーシャは単刀直入にレリィへ尋ねる。知っていて雇ったのかと。

 

「勿論知っていたわよリーズシャルテさん。履歴書に書かれていたのだから知らない方がおかしいわ」

「なら何故雇った!?コイツらが何をしたのか忘れた訳ではないだろう!」

「彼の人柄を見た上での決定事項です。いくら貴女と言えども異論は認められないわ」

「しかし!」

「まあ、落ち着けよお姫様。そうカリカリすんなって」

 

口を挟んだのは口論の元凶であるジークだった。髪をガシガシと音がするほど掻いて欠伸までするなんとも緊張感のない男だった。

昼間の大人な対応や威厳はどこいった。

 

「つまり、俺が他の帝国軍の連中と違うってことを証明すればいいんだろ?なら簡単だ」

 

話を聞いていないように見えてその実、相手の望むモノを的確に見抜く観察眼はさすが傭兵。

 

「元々俺が軍に入ったのはこんな男尊女卑な政治を変えたいと思ったからだ。けど、現実は優しくない。貴族でもなく、神装機竜を扱える適性もない俺じゃ中尉クラスが限界だった。だから軍を辞めて反帝国側についた、それだけのこと。

こんなもの世界を知らない青臭いガキの理想だったよ。結局クーデターも帝国とやってることは変わらない。対立する者を武力を以て制圧する。圧政を拒むはずのクーデターが、圧制と何ら変わらないなんて皮肉だよな」

「クーデターが間違っていたとでも言うのか!?」

「だってそうだろ?男尊女卑に染まってなくても帝国の方が(しょう)にあってた奴はいる。そんな奴らにとって新王国は果たして住みやすいと言えるか?その結果が今日の軍人達(ああいう奴ら)を生むんだ。無理だと分かっていても話し合いこそが真の解決策だなんて傑作だ。滑稽だよ。声を大にして嘲ってやる(嗤ってやる)

 

この場にいる者は改めて理解した。この男はどこかオカシイ。正気の沙汰ではない。

何故なら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

だが、この時。ジークは心の中で全く違うことを考えていた。

口を開けば虚偽だらけ。こんなんだから彼女(あいつ)に『嘘で塗り固められた男』とか『本音がない奴』だとか不名誉な渾名で呼ばれるんだ。

これは自分で変えられないと分かっていても、彼女から言われたことだから気にし始めているちょっと子供っぽいジークの一面であった。




はい、書き溜めが底をつきました。(これは酷い)

こんなに遅れた言い訳をさせてください。
まず、前回を投稿した時点で今回の一割も書けておらず、その後は部活や学校のことなどで手が回りませんでした。
毎日執筆時間が1時間程度しか取れず、全然進まなかったことが大きな原因です。
そして、部活で少々揉めまして、結果として退部をしました。なので、色々とやることがあったことも原因のひとつです。

最後に、私には書き溜めが不可能そうなので不定期に戻します。
できれば見捨てないで頂けると幸いです。
度々申し訳ありませんでした。7月はあと二本投稿できたらと思っています。(期待はしないでください)
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