IS〜古都国最凶と蛇と成りて舞う一夏〜   作:第八天黒鴉

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またもや遅くなってすみません。
前回の串刺し公(カズィクル・ベイ)とか『ベイ中尉』とか、某チンピラシスコン変態アルビノ吸血鬼が出てきますが全く関係ありません。(迫真)
それと、乳房・タイラーのネタが分かった人はいますか?もしいたら私と握手しましょう。

それではどうぞ


第9話 ジークフリートは死ぬほどムカつく

先日の騒ぎから翌日、遂にジークは初の一日休みを謳歌していた。

労働基準法はどうしたって?そんなものこの時代にあると思うのか?・・・・・・という冗談は置いといて、いつもは週に二回ぐらいの半日休みがあるだけで一日中休みというものがなかっただけだ。

そんな休日も整備道具の買出しや傭兵としての根回しなどで既に日は暮れ、居酒屋でストレス発散をしている状態だった。

なぜ仕事先でも仕事をして苦労しているのだろうと半ばどうでもいい自問自答を繰り返しつつ、酒を煽るジーク。

 

「つか、何だよ。不穏な動きって・・・・・・。出処が信用できるってのは分かるがもう少し情報を整理してだな・・・・・・、いや、そもそもこの俺を顎で使うってのがまず許せねぇな、うん。ああ、ヤダヤダ。帝国を潰せればそれで良かったのに何で今も傭兵なんてやってんだろ。大体なぁ──」

 

酔いが回ってるのか普段は絶対に漏らさないほどの愚痴をジークは呪詛のように垂れ流していた。

その愚痴に付き合ってくれる友人などこの国にいるわけがないため、ただ延々と不吉なオーラを醸しつつ独り言を呟き続ける危ない男にしか見えなかった。そのオーラに当てられたのか周りの客も距離をとっていた。

 

カランッカランッ

そんな中、ジークの耳に響く来客を告げるベルの音。どうでもいいことではあるが、どんな奴が来たのか興味が湧いたジークは、音のした方へと視線を向け即座に後悔する。

 

「ここで構いませんか?」

 

訪れたのは数名の男女。先頭を歩いているのは肩口で切り揃えられた黒髪の少女。だが、問題はその後ろの人物達だ。それを知覚した瞬間、ジークは心中で盛大な悪態を吐いた。

ふざっけんなよクソがァ!何で休日にまでアイツらの顔なんか拝まなきゃなんねぇんだよチクショウ!

その人物とは学園の、ひいては己の仕事に大きく関わるであろう雑用王子(ルクス)御一行であった。

 

「お嬢・・・そち・・・方は?」

「わた・・・・・・人の・・・ス君よ」

 

席へ着いて居酒屋なのにコーヒーや紅茶なんかを注文した彼女らの話が所々聞こえてくる。

つまるところ、黒髪の少女は貧乳の方の蒼髪(クルルシファー)の従者か何かであり、そこら辺でばったり出会って恋人(ルクス)の紹介とかをしているのだろう。

 

「なんだ、つまらん。爆弾発言の一つや二つ、して見せろや」

 

あくまで他人事であるが故に面白いことを期待しているが、いざ起これば面倒事を持ち込むなとキレるであろうジーク。さすが理不尽の塊、横暴な振る舞いに対し妥協がない。

そんな和やか─に見えるだけ─な会話に水を差すかのように近づく一人の青年がいた。

 

「ありゃ、確か四大貴族の一角の・・・・・・どう見てもかませ犬だな」

 

何やら不遜な態度で、くだらない自分語りに入っている金髪の青年─バルゼリッド・クロイツァーをかませ呼ばわりするジークは平常運転どころか、妥当であった。

 

「どうせなら二対二の決闘をしましょう。当事者である私たちが傍観というのも、目覚めが悪いわ」

「ほう?良いのかな。俺は公式模擬戦(トーナメント)で三位に入り、『王国の覇者』と呼ばれているほどの実力を有しているのだぞ?」

「これはこれは、神装機竜を使ってもいまだに公式模擬戦(トーナメント)三位の『王国の覇者』殿ではありませんか。こんな居酒屋に一体なんの御用で?」

 

口の端を歪め、自信たっぷりに戦績を宣言するバルゼリッドに掛かる、嘲りを含んだ無粋な声。そう、新王国最大の脅威(味方)ジークフリート(偽名)である。

 

「・・・・・・誰だ、貴様は」

「ジークフリート・エーレンブルグ。なに、しがない整備士だよ。」

「そんな男が何の用だ」

「いやいや、さっきから黙って聞いていれば、やれ未来の妻だ、やれ格が違うだのさ、──ホントくだらない。死ねば?」

 

初対面ですら罵倒するジークには、流石のバルゼリッドも顔を引き攣らせていた。その後ろでは彼女達が三者三様の表情を見せている。特にルクスが青ざめているのがジークには見え、ますます口を弧に歪めた。

 

「整備士、何故貴様がここにいる?」

 

訝しんだ視線を向けているリーシャが問いかける。

 

「貴様は確か休暇に出ていたはずだ。何故こんなところにいる」

「だからこそだよ、お姫様。折角買出し含めて休日を満喫してたのにさぁ、痴話喧嘩なんか見せられてよぉ・・・・・・酔いも覚めるってモンだぜ?」

 

やれやれと、心底苦労しているとでも言うように肩を竦めるジーク。だが、その視線はバルゼリッドを見据えて逸らさない。

 

「それで?貴様は決闘がくだらないと?」

「ああ、そうだとも。お前の言いようじゃあ、まるで自分の実力を分からせてやるみたいに聞こえるんだよ」

「それの何が悪いと?」

「それがくだらないって言ってんだよ。テメェらみてぇな人種は唯我独尊だろ?欲しいものは奪って、邪魔するのなら潰して、都合の悪いことは隠して揉み消す。・・・・・・貴族ってぇのはそういうもんだろ。なら、力ずくで奪えばいいじゃねぇか」

 

極端でいて偏見。

だが、傭兵として雇われ、多くの貴族を見たジークは、九割そういう人種だと理解していた。そしてこの男もそれだと見抜いている。

ジークの冷たい目と極論を目の当たりにし、バルゼリッドは少しばかり怖気づき困惑する。

 

(なんだ・・・・・・この俺が恐怖している・・・・・・こんな男に・・・・・・?だが、この言い様の知れぬ感覚は一体・・・・・・)

 

バルゼリッドは理解できない。この男が何を考え、こんなことを口にしてるのか。

だがそれは、彼女たちも例外ではなかった。

彼が何故こんな考えを持つのか、何がここまで思わせるのか、過去に一体何があったのか。

何も知らない

故に誰も理解できない

この男の矛盾(絶望)を──

 

そんな彼等の思考を知ってか知らずか、ポケットから小さな紙箱を取り出す。箱を開けるとそこには、二十本ほどの筒のような物が詰まっている。そのうちの一本を取り出すと、咥えてから火をつけ、煙をはき出す。

それは世間一般で煙草と呼ばれる物に見える。

そして白い煙は、バルゼリッドの目の前にいるが故に、彼の顔に直撃し、端正な顔を顰めるが、ジークはお構いなしだった。

 

「・・・・・・煙草なら外で吸ってもらえるかしら?」

「アホか、ンな身体に悪ぃもん吸うわけねぇだろ。こいつは鎮痛だとかリラックス効果だとかがある薬草を乾燥させて、煙草と同じ要領で丸めたもんだよ。実際、無いよりかはマシぐらいだが、まあ、暇つぶし程度にはなる」

 

そう言いつつ煽るかのように煙をバルゼリッドにはき出すジーク。

 

「・・・・・・いいだろう。望み通り力ずくで貴様を潰してやろう」

 

煽りまくって満足したのか、踵を返し、代金を払って帰ろうとするジークに、逃すまいと低い声を浴びせるバルゼリッド。

散々煽られ、虚仮(こけ)にされたバルゼリッドはジークをただで返す訳にはいかなかった。四大貴族として、上に立つ者として、何より己のプライドが許さなかった。

近づいたバルゼリッドは懐に差してある短剣型の機攻殻剣(ソード・デバイス)を抜き放ち振り下ろす。

首席で卒業しただけあり、その一撃は鋭く速いものだった。

しかし──、

 

「・・・・・・遅せぇ」

 

最凶には遠く及ばなかった。

振り下ろされた一撃を半身を逸らすだけで躱され、首筋に何時の間にか抜き放たれていた機攻殻剣(ソード・デバイス)を突きつけられていた。

 

「あまりにもだよクソ貴族・・・・・・。もう少しできるかと思ったが・・・・・・所詮は恵まれた奴(貴族)か」

 

そう冷たく吐き捨てて、ジークは店をあとにした。

 

「あの〜、僕の意思は一体どこに・・・・・・?」

 

 

●〇●〇●〇●〇●〇

 

 

遺跡(ルイン)調査決行の日。格納庫には生徒達が集められバルゼリッドの紹介が行われていた頃、ジークは学園長室にいた。

 

「なんで俺まで遺跡(ルイン)の調査に駆り出されなきゃなんねぇんだよ」

「貴方が予想以上の実力を持っていたからよ。期待しているわ」

 

当初予定されていない仕事を次々と押し付けられて辟易するジーク。

なんだか社畜に近づいている気がするんだけど。

 

「まあ、程々にやってきますよ。あくまで彼女達の護衛でいいんですよね?」

「ええ、そうよ。よろしくね」

 

その言葉を皮切りにジークは学園長室を出た。

 

「そんなこんなで箱庭(ガーデン)に到着しましたー」

「何を言っているんだ貴様は・・・・・・?」

「何か分からんが言わなきゃいけない気がした」

 

状況説明をありがとう。

よくわからないことを言い出すジークにリーシャは呆れの表情を見せる。

 

「と、まあ、色々言ってるうちにゴーレムのお出ましだぜ」

「私が出るわ。みんなは下がって」

「おい、待てクルルシファー!・・・・・・ああ、クソッ!全員いつでも援護できるようにしておけ!」

 

箱庭(ガーデン)の近くでは、迎撃体制なのかは分からないが比較的多数の人数で近づくと幻神獣(アビス)が出現する。

今回出現したのはゴーレムと呼ばれる個体。飛行能力がない代わりに高い腕力を誇る幻神獣(アビス)で、近づかなければ危険度が低い個体としても知られている。

 

「まったく、仕方ねぇな」

 

クルルシファーの駆る《ファヴニール》は高い機動性と精密射撃が特徴の飛翔型神装機竜。彼女自身の腕もあってか、関節部などを狙って確実にゴーレムを消耗させていた。

だが──

 

「ッ・・・・・・!」

「おお、あっぶねぇ・・・・・・」

 

突如、ゴーレムの頭部が開き、そこから閃光が放たれる。この個体最大の脅威である熱線。その威力は神装機竜の障壁であっても容易く貫くだろう。

 

「別に私には『財貨の叡智(ワイズ・ブラッド)』があるから問題ないのに・・・・・・」

「数秒先が見える神装だったか?だからってはいそうですかって訳にもいかんのよ、コチラとしても」

 

自分は大丈夫だと、頑なに告げるクルルシファーにルクスは僅かな違和感を感じるも、すぐにゴーレムへと意識を移しつつバルゼリッドを警戒していた。

汎用機竜では幻神獣(アビス)は倒せなくとも、彼なら抑え込めるだろうと思っていることに、ルクスは驚きを隠しきれずにいた。

 

「貴方、ブレスガン(そんなもの)でどうする気?」

「確かにコレじゃあ倒せんが、モノはやり用ってね」

 

エネルギーを充填したブレスガンをゴーレムへ向けると、反射行動なのか熱線を放とうと頭部が開いた。

その刹那を見切り、ジークは思いっきり()()()()()()()()()()()

 

「『零落・絶──『神速制御(クイックドロウ)』」

 

ブレスガンを投げた勢いをそのままに、推進器を蒸して一回転。それと同時にダガーを神速で投げる。

放たれた二つの物体は、一直線に開いたゴーレムの頭部へと飛んでいく。露出した核へ到達する頃には、ダガーは寸分狂わずブレスガンへと突き刺さり、爆発した。

爆煙から出てきた幻神獣(アビス)は核が破壊され崩れ去っていった。

 

「・・・・・・貴方は、本当に何者なの?」

「いや、違う。今のトドメは俺じゃねぇ。見えたか?雑用王子」

 

クルルシファーの疑念の声にジークは頭を振り否定する。

そして、見ていたであろうルクスへと確認する。

 

「はい。今のはバルゼリッド卿が──」

「危なかったな、未来の我が妻よ」

「その未来の妻というの、やめてもらえないかしら?」

 

神装機竜《アジ・ダハーカ》を纏ったバルゼリッドが不敵な笑みでクルルシファーの肩へ手を置く。その機体の両肩に付いている砲門からは、僅かに煙が出ていた。

 

「・・・・・・おい、うだうだ言ってねぇで向こう見ろ。次来るぞ」

 

そう言って警戒を移したのも束の間。高速で飛来した黒い巨体が同行していたノクトへと襲い掛かる。

 

「くッ、はっ」

「ルクス・・・・・・さん・・・・・・?」

 

間一髪。いち早く飛び出したルクスがブレードを盾にして幻神獣(アビス)の剛爪を凌いだ。

だが、その威力は高く、たった一撃でブレードに罅が入っている。

 

「早く・・・・・・離れてッ・・・・・・!」

「ッ!分かりました」

 

このままでは足でまといだと理解したノクトは、その場を後退する。周りの『騎士団(シヴァレス)』のメンバーが射撃で引き離そうとするが、歯牙にもかけずにルクスを鏖殺しようとする。

 

「雑用王子!一瞬でいい、奴を押し返せ!」

「押し返すって、どうやって!?」

「推進器とブレードにエネルギーをありったけ注ぎ込め!調律で教えた筈だ!」

「わ、分かりました!」

 

言われた通り、推進器とブレードにエネルギーを注ぎ、一瞬で解放して押し返す。その反動でブレードは折れてしまったが構わない。

押し返したのを見計らったジークが、ブレードを幻神獣(アビス)の横っ腹に突き立てて吹き飛ばした。

致命傷ではないにしろ、傷を付けられたことに評価を改めたのか、一旦距離を取る。

これ幸いと、ジーク達も距離を取り仕切り直しのつもりだ。

赤茶けた肉体に、幾つもの捻れた角。一体で小国を滅ぼすと言われる中型幻神獣(アビス)ディアボロス。神装機竜の使い手といえど単騎で戦うことは避けられているほどの怪物。

 

「どうだ、一つ勝負をしないか?」

「勝負だと?貴様、こんな時に何を言っている!」

「あのディアボロスを貴様が先に倒せれば、決闘の件はなかったことにしてやろう」

「アホくさ。別の連中が倒したらどうすんだよ」

 

くだらないことを言い出すバルゼリッドにリーシャは噛み付くが、ジークは()()()正論を小さく呟いた。

 

「ギィエェェエエェエェエエッ!」

 

埒が明かないと感じたのか、絶叫を上げディアボロスは突っ込んでくる。

しかし、不意打ちならいざ知らず、真正面からならばいくら速くとも十分回避できる。

そして、方向を変えようと止まった隙に充填した砲撃を撃つ。

そんな単調な作業の繰り返しが続くかに思われた戦況は、バルぜリットによって崩される。

バルゼリッドがハルバードを振りかぶり、投げたのだ。

ディアボロスは一度回避を取り、方向転換をしようとしたため動きは止まっている。しかし、距離は少なからず離れており、気付かれれば躱されるだろう。

 

いいや、まさか

 

「ナイスパス。『慟哭・劫炎』『神速制御(クイックドロウ)』」

 

案の定気付かれ、躱されると思いきや、そのハルバードをジークが掴み、そのまま振り下ろした。

掴む前に竜尾鋼線(ワイヤーテイル)で足を縛っておいた。故に避けることは不可能。

調律による武装強化と神速による一閃。

それがトドメとなりディアボロスの核は砕け散る。

 

「んじゃあ、全員障壁張れ!あれは爆発するタイプだ」

 

幻神獣(アビス)には核が破壊されると爆発するものがいる。ディアボロスは基本爆発するタイプだ。だからこその判断は正しい。

だが、暴走しかけている《ファヴニール》では満足に障壁を展開することすらできず、とっさにルクスが間には入り、障壁を張るが防ぎきることはできない。

そんな時、箱庭(ガーデン)が光り輝き二人を包み込んでしまった。

 

「それでいい、お前らは真実を知る時だ」

 

ただ一人、ジークは静かに笑っている。

 

「くっ、どういうことだ!?あの二人はどこに行った!」

「さぁな。俺の仕事は遺跡(ルイン)内部に入るまでの護衛。捜索するにしろ、撤退するにしろ、俺の仕事は終わりだ。」

 

言うが早いか、狼狽える『騎士団(シヴァレス)』の面々を置いて帰路につくジーク。リーシャが睨むが気にしない。

 

 

 

「それで?碌に指揮も取らずに帰ってきたと?」

「はいそうですよ」

 

学園長室にて、今回の調査報告を淡々とするジークに、流石のレリィも青筋が立っていた。ここまで開き直って悪びれもしないと勢いが削がれてしまうのをレリィは感じた。

 

「・・・・・・今月は減給ね」

「解せぬ」




先日、と言っても1ヶ月くらい前のことですが感想にてヒロインを増やして欲しいとの要望がありました。
そこでもお答えさせていただきましたが、一応言っておきます。
私はハーレムが嫌いなので“絶対に”(←これ重要)増やしません。1体1以外は書きません。語ると書ききれないので聞きたい人が多ければ活動報告にでも書いておきます。

それと、感想繋がりですが活動報告にてアンケートを実施しています。そこで要望も受け付けていますので、そちらに書き込むようお願いします。(利用規約に引っかかるので)

では、次幕の悲喜劇(シェイクスピア)をご期待あれ
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