えっ?予告?あれを書くといいネタが思いついても上手く使えないんで勝手ながらやめました。←ホントどうしようもないなコイツ
皆さんも先がわからない方が楽しめますよね(押し付け)
それではどうぞ
第11話 私の矜恃
──とある日の夜
月明かりが灯り、風も穏やかなその日。二人の男女が見つめ合っていた。片方は口を開けて呆然と、もう片方はこの世の終わりを見たかのような絶望を浮かべていた。
否、二人の男女ではなく二人の男が正しい。
「ああ〜、雑用王子?」
呆然と口を開けていた男──ジークフリートは素で引きながら声をかける。
「な、なんですか・・・?」
「・・・・・・悩みがあるなら相談に乗るぞ?」
「違います!これには深い訳が──」
もう一人の男、女装しているルクス・アーカディアへジークは務めて優しく励ました。
ルクスの趣味を知ってしまったことで演技でも何でもなく本心で心配してしまうジーク。その顔には動揺がありありと見てとれた。
「そもそも、これは囮に必要だってシャリス先輩達が──」
「・・・・・・はあ。まったく、これで俺なんかより大層ご立派な意思があるってんだから皮肉なものだよな」
「えっ?何か言いましたか?」
「いや、何でもねぇ」
この前の戦闘のことを思い出して嫌になってくる。
あれだけ大層なご高説を垂れていた男が、己の前で女装をしているのだ。嫌になるなという方が無理な話だろう。
●〇●〇●〇●〇●〇
「それで、
「はい、ですのでこれは決して僕の趣味というわけではないんです」
「バカか貴様は。そういうのは教官の仕事だろ、学生風情で何ができる?」
お互いベンチに座り、話を聞くと最近、学園の敷地内で不審者がでるらしい。そこで正義感の強い
まったくバカバカしい。そんなことを思いつくあの
・・・別に俺のように
「ふむ、ところで気づいているか?」
「え・・・っと、何がですか?」
突然、周囲を軽く見渡しながらジークが問いかけてくる。いきなりのことに困惑しながらも、何のことかさっぱり分からないルクスは、遠慮がちに聞き返すと返答が返ってきた。
「やはり気づかないものか。そこと、あっちに、それぞれ一人づつ誰かいる」
そう言いながらベンチの後ろと少し離れた藪の中を、指で差しながら立ち上がる。
「えっ!?」
「出てこいよ。お前だろ、学園を騒がせてる不審者ってのは?」
気配に全く気づかなかったことに焦るルクスとは裏腹に、彼は冷静に藪へ近づき投降を促した。
藪の中まで後3mといったところで、影から何者かが飛び出してきた。
飛びかかってきた者はジークに近づくや否や、彼の顎に向けて鋭い蹴りを放ってくる。しかし、ジークは半歩後ろに下がるだけで躱す。目の前を足が通り過ぎても一切動じることはない。
空振りに終わったことを理解すると同時に、蹴りの勢いのまま半回転し、不審者は体勢を低くしつつ反対の足で足払いを掛けてきた。
それを予想しない訳がないジークは、バク転でルクスのいる場所まで交代すると、これ幸いと不審者の方も距離を取る。
不審者は黒いローブに仮面、帽子と正体がバレなくとも、いかにもな格好をしていた。
「危ないねぇ。まったく、
「だ、大丈夫ですか!?」
これっぽっちも本気を出さずに躱し、いつでも反撃できたのにしてこなかったことに疑念を感じる不審者。
ルクスは余裕の表情を崩さないジークを心配していたが、要らぬ気遣いであった。
「問題ない、それより俺から離れるな。一応お前はか弱い女生徒ってことなんだろ?」
「ぼ、僕も戦えます!」
「そこの不審者!今すぐ彼女から離れなさい!」
ルクスが自分も戦えると、二人で取り押さえましょうと提案しようとしたとき、凛とした女性の声と共に
「・・・・・・え?」
「は?」
うん、この独特な流線型のフォルムと太さはどう頑張っても
人間よりも遥かに強く、速い機竜の一撃が、ジークの顔面直撃コースを狙っていることに二人は素っ頓狂な声を上げつつも、認識するが早いか大慌てでジークは回避行動をとる。
先程まで二人が座っていたベンチの後ろから出てきた彼女は、この学園の制服を纏った金髪の女性で、リボンの色からして三年であることが見て取れる。そんな彼女の背後には、威圧感の強い黄金の神装機竜が部分的に展開されていた。
「無詠唱高速召喚に部分接続。相当の手練のようだが──」
くっそ、なんでそんな高等技術使えんだよ。俺だって未だにどっちもできねぇのに。
こういうところで自分と比べるあたり、やはり彼は根っからの自己愛なのだろう。
あまりにいきなりだった為、転がるように回避をする羽目になった。結果として躱すことはできたがルクスと離れてしまった。
最も、彼女の目的はルクスから不審者だと思い込んでいるジークを引き離すことであるのだが。
「大人が二人がかりで彼女を攫おうだなんてこの私が許しません」
「え、え、えっ・・・・・・?」
彼女はルクスを庇うように自分の後ろに隠し、鋭い目付きで二人を睨む。
戸惑う様なルクスの声が聞こえるが、ジークとて正直自分の神装機竜で今すぐ逃げ出したい気分だった。
「いや、あのだな金髪の三年生よォ?俺、一応ここの教官なんだけども?そこのところはどういう認識なわけ?」
「この学園は整備士以外は女性しかいません。少なくとも教官に男性はいない。よって、貴方が教官な筈がありません」
まったく、ぐうの音も出ない正論だ。王都に演習に行っていたという三年生は男の教官が雇われたことなど知る由もないのだから。
(ぶっちゃけぇ?新王国にとっての不審者は俺なわけでェ?そこの金髪巨乳が
外面は余裕の笑みを浮かべているが、内心、かなり不満タラタラで刀を抜きそうになっているジーク。
それを見抜いているのか彼女は特にジークを警戒しているようだった。
構図的にはジークと不審者の二人が彼女とルクスを挟むように離れて立っている為、どちらか片方に意識が向いてしまうのは仕方ないといえた。
「抵抗は不許可です。腰に差している
「そうはいかねぇ、こっちも仕事なんでなァ!」
そう言った瞬間、駆け出したジークへと彼女が槍を叩き付けてくる。
だが、ジークの標的は金髪の女ではなく、不審者の方。バックターンで躱し、止まることなく不審者との距離を詰める。
その時、槍を叩き付けたことで無防備となった女へと不審者がナイフを投げてくる。
「危ない!」
装甲を纏っていない部位に刺さりそうになったナイフは、寸でのところでルクスが間に入ったことで彼の肩口を切る結果に終わった。
不審者がルクス達に意識を割いた隙を狙って肉迫したジークの拳が顔を捉えようとした刹那、予め逃げるつもりだったのか、煙幕を使ってジークの視界を奪い逃走した。
「ちっ!逃げやがったか」
(足音と呼吸音から追えそうだが、そうしたら俺まで逃げたと思われて面倒だな。・・・・・・ここに残っても槍を向けられる未来しか見えない。うっわ、二択に見える一択かよ)
肩を切ったルクスの心配より先に、自分の心配をするジークが煙幕からでてくる。二人に近づくと案の定槍を向けられて辟易とする。
「あのなぁ、その心意気は構わないがそれよりもそいつの手当てをしてやれよ」
「・・・・・・そうですね。大丈夫ですか?」
「あ、はい。何とか」
彼女は警戒をしつつも機竜を解除して、ルクスの傷の具合を確かめる。
それに彼が大丈夫と答えると安堵した笑みを浮かべた。
「申し訳ありません。私がいながら──」
「どうだっていいが無事なんだな?なら俺はもう行くぞ」
そう言ってジークはその場を後にした。
●〇●〇●〇●〇●〇
時は少し遡り、ジークとルクスが女装の経緯を話し合っている頃、学園長室にクルルシファーとレリィがいた。
「それで?私を呼び出したのはもしかして──」
「ええ、貴方に頼まれていたジークフリート・エーレンブルグという男の素性、機竜適性とその神装機竜についての調査結果が出ました。」
先日の決闘の一件からジークフリートと
『
「あまり良くない話とかなり悪い話があるのだけれど、どちらから聞きたいかしら?」
「そうね・・・・・・。あまり良くない話から聞きましょうか」
レリィの声のトーンと強ばった面持ちからどれもいい話ではないことがわかり、クルルシファーは順番に聞くことにした。
「そう。では・・・・・・調査の結果、ジークフリート・エーレンブルグは機竜適性が全くないことが分かりました」
「・・・・・・・どういうこと?」
「そのままの意味よ。彼の機竜適性を調べたところ、神装機竜は疎か、汎用機竜すらまともに扱えないものでした。つまり、彼は常人の半分にも満たない適性しか持っていないの」
有り得ない、と、彼女は言いたくなった。現に彼は大勢の前で汎用機竜を纏い、高度な操作技術を以てディアボロスを討伐しているのだ。そんな彼が常人の半分以下だというのなら、自分達は何なのだと叫びたい衝動に駆られた。
「本来ならば彼は、汎用機竜を三十分でも使おうものなら、二度と動けない体になってもおかしくないそうよ。これは王都から招いた文官による報告だから信憑性については保証するわ」
「なら彼は、本当に身体能力だけで機竜を動かしているというの?」
正気ではない。そんな無茶を続ければいずれ死んでしまう。しかし、彼にとって自分の肉体がどうなろうが関係ないほどの目的がある。それを果たすまでは止まるつもりなどないし、止められない。
さながら狂戦士のように、ボロボロになっても進むだろう。
「次に彼の持っている神装機竜についてよ。あれについては何も分からなかったわ。男女混合の文官十数人の誰一人として、あの神装機竜を展開することすらできなかったわ。」
「私の時と同じね。私も一切反応がなかったもの」
「彼らが言うのには
彼の持つ神装機竜は、クルルシファーの時と同じように光の粒子が舞うことすらなかったそうだ。それはつまり、機能が正常に働いていないということであり、調査が進められなかったと言う。
「そう、ありがとう。じゃあ、かなり悪い話を聞こうかしら」
「ええ、正直、こっちが本題よ。初めに言っておきます。・・・・・・この新王国に
「・・・・・・嘘、でしょ?」
クルルシファーは耳を疑った。学園長の冗談かとも思ったが、この場面で冗談を言う理由が見当たらない。だからこそ、信じたくないという思いが顕著に現れた。
「言い方が悪かったわね。確かに、帝国軍にはジークフリート・エーレンブルグは在籍していました。しかし、彼は五年前のクーデターで死亡が確認されています。──革命軍の一人として」
「なら、この学園にいるジークフリートは一体誰なの?」
「それはまだ分からないけれど、帝国軍のジークさんを知る人と接触ができました。結果として、彼は中尉だけれど『
絶句する。クルルシファーの背筋に悪寒が走る。今までジークフリートだと思っていた人間は全くの他人だと言うのだ。素性のわからない人間がずっと傍にいたと思うと恐ろしいものがあった。
「そして何より、彼の経歴に書かれた店を訪れたところ、誰も彼を知らないそうよ。要するに、彼の経歴は嘘しかないのよ」
「あの男は・・・一体何が目的で・・・・・・この学園に来たというの?」
思考が定まらないのか歯切れが悪い。露見するかもしれない嘘で学園に忍び込み、いつ死ぬかも分からない危険を犯して機竜を纏い、何が彼をそこまでするのか。どれ程の目的がそこまで駆り立てるのか。クルルシファーはそれが分からなかった。
「一つ分かるのは、今のところ彼が敵ではないということ。だって彼は貴方達を守るように動いたのでしょう?今はそれで充分よ」
「ええ・・・・・・そうね。ありがとう、調査してくれて。助かったわ」
不安を拭うどころか不確定要素が増えてしまったが、進展がなかった訳ではない。今はそう納得することにした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
翌日、色々バレ始めていることに気づいていないジークは機竜格納庫にいた。もうすぐ行われる校内戦のために調整がしたいと、リーシャやルクスに捕まったせいだ。
「何で俺までなのさ、いらないでしょ」
何故だかリーシャに扱き使われる未来が見えたジークは帰って寝たかった。惰眠こそ正義、働かずにタダ酒を飲みたいを地で行く男は、今日も今日とてブレなかった。
「た、大変だよー!ルクっち、ジーク先生!」
「え、どうかしたの?」
そんな主に一人のせいでピリピリしだした空気を壊したのはティルファーだった。何やら慌てた様子で二人を探していたらしい。
「セ、セリス先輩が、二人を学園から追い出すために学園長に直談判してるんだよぉ!」
「はあぁぁああぁぁぁあァッ!?」
「え、ええぇぇええぇええェッ!?」
二人の驚く声が格納庫へ響き渡る。その五月蝿さはリーシャとティルファーが耳を抑えるほどであったと明記しておく。
●〇●〇●〇●〇●〇
「ちょっ、ちょっと通してください」
「どういうことか説明しろやァッ!」
学園長室の扉の前に集まる女子生徒を押しのけて二人が入室してくる。一人は既にキレている。
「二人とも、落ち着いて」
「そこの愚図で愚鈍で間抜けな雑用王子はともかく、何で俺まで追い出されなきゃなんねぇんだよ!」
「しれっとバカにされてる!?」
開口一番にルクスの悪口を言うジークはレリィに詰め寄った。
「まだそうと決まったわけではないわ。貴方達をこの学園から追い出すように具申してきたのは彼女よ。取り敢えず自己紹介を──」
「あ、貴方は先日の不審者!?」
「ちげーよバカ!整備士兼教官のジークフリート・エーレンブルグだ!」
自己紹介を促すレリィの言葉を切って驚きの声を上げる少女。その言葉についムキになって言い返してしまうジーク。
「本当にこの学園の職員だったのですか・・・・・・。っと、そちらの貴方がルクス・アーカディアですね。私の名はセリスティア・ラルグリス。私がいない間、この学園を守って頂いたことは感謝します」
「は、はい。僕にできることをしたまでです。」
(い、言えない!昨日会ってるなんて口が裂けても言えない!)
三年生の少女─セリスティアの当然とも言える対応に、ルクスは内心冷や汗をかいていた。
「ああ、もう。面倒くせぇ、本題に入るぞ。聞きたいことは一つ、俺たちを追い出す理由は何だ」
「この学園は女性のための育成施設です。貴方は共学のための試験生としての編入と聞いていますが、共学は創立後七年はしないという約束のはずです。」
「要するに、話が違うから出て行けと?つか、それなら追い出すのはコイツだけで俺は整備士に格下げで良くないか?」
「あれ、先生?僕の味方になってくれるんじゃないの!?」
セリスはルクスに向き直りながら理由を口にする。
要約すると、男であるお前はここに居てはいけないから出て行け、ということだ。だからこそ、ジークは生徒であるルクスだけ退学にして、自分は整備士として再就職という妥協案をだした。つまり、ルクスをトカゲの尻尾にしたのだ。正しくクズ
「何度も言ってるが問題はない!コイツ・・・はともかくルクスは信用できる。実力とて申し分ないはずだ!」
「私の不在の間に決められた編入を認めるわけにはいきません。例外を認めると、他の例外も認めることになります。確かに、学園を危機から救ってくれたことは感謝しますが、それでここに居ていい理由にはなりません。」
まず先にジークを見てからルクスを見つつ反論するリーシャ。それをピシャリと切って捨てるセリス。頑固者の引かぬ争いが始まりつつあった。
「ところでジーク先生、貴方がそこまで保身に回るのは珍しいわね?むしろ嬉々として出ていきそうなものだけど?」
「・・・・・・正直、働きたくない!部屋でゴロゴロしたいし、他人の金で飲み食いがしたい。けど、そういう訳にもいかないからな。ぶっちゃけ、整備士ってサボれる割に給料いいし」
「うわ、こいつクズだ」
異口同音。セリスを始め、この場にいる全ての人間が口を揃えてジークをクズと断定した。だが、ジークは反省しない。彼にとって有象無象の戯言など虫のさえずり程度でしかない。
「つーわけでだ、雑用王子が退学になるとそのまま俺までクビになりそうなんで、俺の為にもここはひとつ、雑用王子から何か言ってもらいましょうや」
「えっ!?えーと、セリスティア先輩。僕を
突然の振りに慌てながらもすぐに落ち着き、自分の言いたいことを口にする。
バルゼリッドが投獄されたことで次の討伐部隊の隊長はセリスであることは聞いていた。ならば、最悪退学にされることは良しとしよう。本当は良くはないし、寂しくもあるが自分のことよりも国のことだ。
てっきりセリスの説得をすると思っていたジークは宛が外れたと、内心舌打ちをした。このまま二人とも追い出されれば全てが水の泡となってしまう。
「・・・・・・そのことをどこで知ったのかは問いませんが、不許可です。私一人で十分です。必要ありません」
「なっ!?
当然、と言うべきかセリスは同行を拒んだ。彼女のことだ、意志を曲げることはないだろう。ならば、己が動くしかない。
「はあ、よせよ、雑用王子。言っても無駄だ」
「で、でも──」
「なあ、金髪?お前さ、
ジークが言い放った言葉はこの場を凍りつかせるには十分だった。それ程までに予想外であった。彼女の実力は国内でもトップクラス。その事はこの学園の生徒なら誰もが知っているが故に、それを驕りとは到底思えなかった。
そんな中、1番先に再起動したのセリスで言い返そうとするが──、
「違いま──」
「違わないさ。お前はただ運が良かっただけ。男は機竜適性の問題で長期戦になれば負けるし、女に至ってはまともな
そう言ってセリスへと近づいていくジーク。その目には既に侮蔑の念が灯っている。
「つまりだ、お前は強くなんかないのさ。自分よりも、弱い奴らの上に立って、お山の大将気取ってるただの──ガキなんだよ」
「そ、れは・・・」
言葉の意味を理解したセリスは言い淀む。国内で強いと言ってもまだこの国は歴史が浅い。実力のあった男はクーデターでほとんど死んだのだから比べるまでもないことだ。では他国はどうだ?新王国とは比べる必要がないほど昔から存在する国もある。その国の最高戦力に勝てるかと問われれば分からないと答えるしかない。
「何だ、言い返せねぇか?だからお前は──」
「そこまでよ、ジークさん?それ以上は貴方に対して処罰を与えなくてはならないわ。」
セリスの傷口を更に抉ろうとしたジークにレリィから制止の声が入る。学園長として、これ以上は看過できないと思ったのだろう。
「このままでは何時まで経っても平行線になりそうね。一度決まったことは、いくら四大貴族の貴方といえど、簡単には覆せない。いいわね?」
「無論です・・・・・・」
「宜しい。ではこうしましょう。今度行われる校内戦で、ルクス君派とセリスティアさん派に分かれて競い合い、勝った方の意見を通すというのは。ルクス君の意見は学園の残留、ならびに
「構いません」
「僕も同じくです」
平行線になることを察したレリィは、校内戦の勝敗でどちらの意見を通すかを決めることに決定し、二人はそれに同意した。
「で、俺はどうすればいい?校内戦に俺が混ざるのは色々と不味くないか?」
「うーん、貴方にも関係のあることだし今回だけは参加を許可します」
「ですよねー。ああ、面倒だ」
「それじゃあ、解散」
レリィの一言によってその場はお開きとなった。学園長室から去っていくジークを何人かじっと見つめていた。
●〇●〇●〇●〇●〇
その日の放課後、自分の担当した授業も終わり、整備室へと戻ろうとするジークに近づく影がひとつ。
「ああ、ようやく見つけましたエーレンブルグ先生。」
「あ?何だ雑用王子の妹かなにか用か?」
「はい、ひとつお願いがあってきました」
近づいてきたのはアイリ・アーカディア。ジークを警戒している一人であり、ほとんど会話したことのない相手であった。だからこそ、自分に話しかけたことが不思議に思うが、考えても分からんと、思考停止をする。
「へえ、お前が俺にお願いだなんて一体何が・・・・・・何だこの札束は?」
「あまり多くはありませんが謝礼です。引き受けてくれるのでしたら全額お渡しします」
アイリが手渡してきたのはお金だ、それも決して少なくない額。
それを理解しているジークは眉根を寄せる。確かに自分は傭兵だがお金が欲しい訳ではないし、ただでさえ多額の借金を持つアーカディア兄妹から金をせびるつもりもなかった。
「まあ、この金を受け取るかどうかは後にして──お願いってのは?」
「兄さんを、退学にはしたくないんです・・・・・・。だから、校内戦で勝ってください。まだ一度も全力を出していない貴方ならきっとセリス先輩にも勝てると思うんです!」
「・・・・・・理由は?どうしても退学にしたくない理由があるだろう?」
アイリが伊達や酔狂で自分にこんなお願いをしたのではないと、理解したジークは柄にもなく、受容的であることに驚きつつも理由を聞いた。
「兄さんは超がつくほどのお人好しで、私が心配しているのに無茶ばかりして・・・・・・、どうしようもない人ですけど、それでも、私に残されたたった一人の家族なんです。私の──大好きな人なんです」
「クッ、クク、クハッ、アーハッハッハッハッ!素晴らしい!素晴らしいよアイリ・アーカディア。君はまさしく自己愛だ。いや、君の場合は家族愛と言ったところか」
愉快そうに笑い、顔を近づけてくるジーク。ほんの少し動けば唇が触れてしまいそうなほど近づき、その瞳を見つめる。暗く、
初めて自分と似た存在を認識できて、嬉しそうな無邪気な目であった。
「あ、あの、それでお願いは聞いてくれるのですか?」
「あ?ああ、すまない。質問の答えはYesだよ。そのお願い、引き受けよう。・・・・・・それにしても、そうか、君の自己の定義は遺伝子的な繋がりを持った家族なのか。俺とは少し違うがそういう自己愛もあるのか──」
何やら哲学めいたことを口にするジークにちょっと怖くなって、アイリは距離を取る。
「一つ教えておこう、君のそれは自己愛と言われるものだ。君の場合は兄を、まるで自分のことのように大切に想えること。それは素晴らしいことだが、普通、君ほど純粋な人はそう居ない。その想い、大切にしたまえよ。
最も、殆どの自己愛を持つ人間は自分優位主義の糞共だが、人間とは得てしてそんなものだろう」
聞く人が聞けば正気を疑うであろう穏やかな声で、自己愛の塊である自分を否定しているとも取れる発言をするジーク。
答えは単純、彼の自己の定義が『自分が何よりも優先して守りたいと思えたもの』であるが故。そして、“自己嫌悪”も持っているためであった。
それこそがこの男の矛盾の正体、自分が何より大切なくせに、大切なものを何一つ守れなかった自分が何より嫌いなのだ。
「では、そろそろ行くよ。それとお金の件だが、必要ないよ。どうせなら二人で兄妹水入らずの時間を過ごすといい」
アイリはそう言って歩いていくジークの背中を見ながら呟いた。
「彼は、もしかしたらそこまで酷い人ではないのかもしれません・・・・・・。きっと何か訳があったのでしょう」
うん、今回長いですね。
三章は三話で終わらせるつもりだったので詰めすぎてゴチャゴャしてましたかね?意見を聞かせてくれると嬉しいです。
次回とその次は連続して戦闘回です。
出来るだけ早く投稿できるように頑張ります。
では、次幕の