今回から物語が動き出します。
感想なんかを頂けたら嬉しいな〜、
とか思ってます。
誤字脱字報告も待ってます。
それではどうぞ
第1話 巡り逢う者・動き出す歯車
翌日───
「ここが新王国の
朝から賑わいを見せ始める街に、一人の大柄な男が立っていた。
この国では珍しい黒髪黒目に、これまた珍しい黒コートを着込み、物珍しそうに辺りを見回している。
目立ちそうなものだが、何故か人々は彼に目を向けない。
まるで──、
「さて、と。あの野郎に渡された紙によると、仕事場は
何とも無責任な物言いに若干苛立ちながらも、男─ジークフリートは歩き出す。
「仕事は仕事だ。しっかりこなしますかね。先ずは
そう言いながら、人混みに紛れるように姿を消した。
●◯●◯●◯●◯●◯
「はぁ・・・・やっちゃったなぁ」
薄暗い地下室で目を覚ましたルクスはそう言葉をこぼした。
石壁と鉄格子で囲われた、簡素な独房。
手枷や足枷は付けられていなかったが、所持品は全て没収されていた。
腰に差していた二本の
「まいったなぁ。今日も仕事の予約が入ってたのに・・・・、」
ため息を一つして、よくよく考えればそれどころではないことに気づく。
「ていうか、僕の正体も完全にバレたよなぁ・・・・」
ルクスの特徴的な白銀の髪。そして、新王国の恩赦を受けた『咎人』を示す、黒い首輪。
これだけで、既に素性は特定されてしまっただろう。
永きに渡り圧政を敷いたアーカディア旧帝国。
その生き残りの皇族であるルクスに課せられた釈放の条件とは、「あらゆる国民の雑用を引き受ける」というものだった。
雑用の内容は多岐にわたるが、『便利なヤツだ』と認められ、一ヶ月後のスケジュールまでみっちり詰まっていた。
今回も新しい依頼をこなすため、ある場所に向かう予定だったのだが──。
「どうみても、仕事に間に合わないよなぁ・・・・」
唯一没収されなかった手帳を見ながら、ルクスはぼやく
「一度約束した仕事をすっぽかすと、借金がまた増えちゃうしなぁ。一体どうしたら──」
「お目覚めかな?王子様」
「うわっ・・・・!?」
ふいに聞こえたこえに、ルクスはドキッとする。
声のした方に目を向けると、いつの間にか一人の少女が立っていた。
一部を黒のリボンでくくった金髪と、剣先のように鋭い真紅の瞳。
白を基調とした制服に身を包み、どこか影のある笑みを見せている。
「えっと、君は──」
やや身長が低めのルクスより、更に小柄な少女。
にも関わらず、少女の存在感は恐ろしく強かった。
不敵で、絶対的で、強烈な自身をまとっている。
「昨晩は助けてくれてありがとう。ついでに、素晴らしい口説き文句だったぞ?思わず惚れてしまいそうになるほどにな」
「・・・・ああっ!?」
瞬間、ルクスは声を上げる。
昨晩、ルクスが浴場に落ちた際に、勢いで組み伏せてしまった、
少女の怒気を孕んだ気配に、ルクスは冷や汗が流れた。
「ふっ。まあお前に言いたいことは死ぬ程あるけどな。その前に学園長から話があるそうだ。ついて来い」
金髪の少女は牢の鍵を開けながら告げる。
「・・・・学園長、って?」
「ほう。純朴そうな顔をして、口も立つようだな。知らずに忍び込んだとでも言うつもりか?この
「え、ええぇぇえぇえっ!?」
少女の返答にルクスは驚きの声を上げる。
慌てて手帳を開き、今日の日付を確認する。
【仕事場】
【依頼主】学園長、レリィ・アイングラム
【仕事内容】新王国・第4機竜格納庫の機竜整備
「ま、まさかここって。僕が今回、働きに来る予定だった──」
アティスマータ新王国が設立した、
昨日、襲い掛かってきた少女達が、機竜を使っていたのはそのせいか。
それに、今更気づいたルクスが、半ば呆然と立ち竦んでいると、
「リーズシャルテ・アティスマータ」
「え・・・・?」
「私の名だよ。新王国第一王女──通称、朱の戦姫。お前の帝国を五年前に滅ぼした新王国の姫だ。よろしくな、
ぽん、とにこやかに少女から肩を叩かれる。
その目は半分笑っていなかったが。
「ええぇぇえぇぇえっ!?」
再び、ルクスの絶叫が地下室に反響した。
●◯●◯●◯●◯●◯
「それじゃ結局、今回のは不幸な事故、ということでいいのよね?ルクス・アーカディア君?」
学園長室へ通されたルクスはこれまでの経緯を話すと同時に、仕事場であるこの学園の説明を、学園長のレリィから受けていた。
ここは、新王国が管理する、
いわゆる士官を育成する場所であり──。
「
「そういうことになるわね」
だがそれでも、『技術が解明しきれていない』という理由から使用を控えるには、あまりに途方もない力を秘めていた。
「
レリィが言葉を区切ったところで、ルクスの隣に立っていたリーズシャルテが口を開く。
「五年前のクーデターで新王国が設立したのを境に、その認識は一変。操縦に使う運動適性はともかく、機体制御自体の相性適性は、女の方が遥かに上というデータが報告され、以後、専門の育成機関で、他国に負けない
「ええ、その通りです」
その辺の事情や、
「で、でも、何で僕なんかが呼ばれたんですか?」
仕事の依頼について、困惑した表情で聞くと──、
「あらあら。かの『無敗の最弱』ともあろうものが、随分と謙遜するのね」
『無敗の最弱』とは、王都のコロシアムで定期的に行われる
戦績によっては賞金も出るその場で、最多の出場回数を誇り、その戦闘スタイルからルクスに付けられた異名であるが──。
「この学園でも屈指の実力を使い手であるリーズシャルテさんにも劣らない実力でしょう?決して場違いな仕事じゃないと思うけれど?」
「ほう・・・・」
レリィの言葉が不服だったのか、リーズシャルテの肩がぴくっと震える。
(あ、これ。地雷踏んだかも・・・・)
「そ、そういうことじゃなくて、ここって女学園ですし、僕が仕事なんて──」
「残念だけど、人手が足りないのよ」
ルクスが反論する前にレリィが答える。
「
「・・・・僕は、整備の方はほとんどできませんよ?」
「これから覚えてくれればいいわ。使い手として予備知識があるだけでも貴重なのよ」
レリィは即答する。何がなんでもここで仕事をして貰いたいようだ。
まるで、婚期目前の女が男を狙う、必死さのような執念を感じる。
「この学園の敷地内にある、新王国第4機竜格納庫。あなたの働き口はそこだから、今日から週三回、通ってもらうわ。汚れるし、重労働だし、怪我の危険もあるわ。良家のお嬢様達にそんな仕事させられないでしょう。あなたも
からかうような声で、レリィは微笑んだ。
「・・・・・・・」
(相変わらず、強引な人だなぁ・・・)
と、ルクスは苦笑いを浮かべる。
内心でため息をついてると、レリィはひとつ、深呼吸をして、
「
そう、話がまとまろうとしたとき、
「学園長。少しいいか?」
ふいに、リーズシャルテが手を突き出し、話に割り込んできた。
「話は分かった。だが、
その口端は、微かな笑みを作っていた。
「・・・・・・」
ほんとにお姫様何だろうか、この子。などと、失礼なことを考えるルクスをよそに──、
「私の疑いは晴れていないぞ。この男は覗き魔、痴漢、下着ドロの変態で犯罪者だ。そんな『男』をこの学園で働かせるなど有り得ないな。というか、先ずは軍に突き出す方が先だ。司法の場で裁かれ、臭い飯を数年食ってから外の空気を吸うがいい!」
「い、いえっ、ですからそれは誤解で──!?」
ルクスは反論しようとするが、一睨みされただけで、口を噤んだ。
「なるほど、猫を追って偶然風呂場に乱入したと言っていたな。だが、それはどう証明する気なんだ?学園長。信用に足らない犯罪者を匿うのは、かえって危険だと思うが?」
「そうねぇ。私は付き合いがあったから、ルクス君のことはよく知っているけど──」
レリィは、苦笑しながら答える。
「今回の騒ぎを、本当に偶然起こしたと、断言はこれっぽっちもできないものね」
「そこは断言してくださいよ!?」
やや涙目で、ルクスは訴える。
ここに味方はいないようだ。
「でも実際、故意かどうかと言われると、誰にも証明できないのよね。なら、本件の被害者でもあり、二年の首席であるリーズシャルテさん。彼の処分は、あなたの裁量に任せてもよろしいかしら?」
「えええっ!?」
(何で任せちゃうんですか!?)
という魂の叫びは、誰にも聞かれることなく、ルクスの中で消化される。
ルクスは新王国設立時の恩赦として、仮釈放されてはいるが、同時に交わした契約で、国家予算の五分の一に相当する額の借金を負わされている。
そんな『咎人』のルクスが、更に犯罪者になるのは、とても都合が悪いのだが──。
「ふっ」
ルクスが慌てるのを見たリーズシャルテは、小さく鼻で笑い、
「じゃあ、そうだな。ではお前にも一度、名誉挽回の機会をくれてやろう」
「・・・・えっ?」
「お前が本当に『男』の
「それは、あまりにも横暴な勝負だな。新王国の姫さんよぉ?」
『っ!?』
突如、学園長室に響く若い男の声。
全員が入口に顔を向けると、扉はいつの間にか開いており、一人の男と少し離れたところに学園の生徒が大勢立っていた。
「貴様、何者だ!侵入者かっ!」
リーズシャルテが、男に問うと──。
「あ?・・・・整備士の面接に来たモンだ。門番には話を通してるぞ」
そう言って、男は許可証を掲げた。
「あら、もうそんな時間?ごめんなさいね少し、待ってもらえるかしら?」
「・・・・私が横暴とはどういうことだ?」
レリィは悪びれずに答え、リーズシャルテが先程の男の発言に突っかかる。
「どうもこうもねぇよ。てめぇは試すと言った。それはつまり、そこの雑用王子が勝とうが負けようが、認めないと言えばそれでお終いなんだよ。」
確かにその通りだが、リーズシャルテがそんな
「・・・・いいだろう。私に勝てば無罪放免で働いてよし。勝負は
最後の一言は部屋の外にいた生徒達に向けて放たれたものだろう。
「学園の皆に伝えろ。観客は多いほどいいぞ。新王国の姫が、旧帝国の王子をやっつける見世物はな」
きゃああああっ。
と、それを聞いた女生徒たちは楽しそうな声を上げて去っていく。
「自信満々だねぇ?負けたときに恥ずかしいぞ」
「いちいち癪に障る男だな・・・・、貴様は」
いやらしい笑みを見せる男に、一言残してから部屋から出ていくリーズシャルテ。
(何か、この二人の喧嘩みたいになっちゃってない・・・?)
話に置いてかれ、ルクスは諦めつつも苦笑する。
「ところで、ルクス君。彼の面接があるから、貴方にも出ていってもらわなきゃなんだけど、決闘の前に寄って欲しい場所があるの」
「えっと・・・・どこにですか?」
「すぐ近くの応接室よ。あなたの妹さんが、そこで待ってるわ」
「──えっ?」
驚きの声を上げるルクスに、レリィはただ、微笑を返した。
●◯●◯●◯●◯●◯
ルクスも退室したことで、この場に残ったのは学園長とジークフリートの二人のみ。
お互い、面接をするとは思えないほど自然体だった。
「それじゃ、面接を始めましょうか。ジークフリートさん?」
「はい。そうですね」
先程の会話が嘘のように丁寧な口調で返すジークフリートに、レリィは少し驚いた表情を見せる。
「──切り替えがはっきりとしてるのね」
「よく言われますよ。最低限の礼節ぐらいなら、出来て当然かと・・・・」
すぐに顔を引き締めて彼に聞くと、この程度は当り前と返ってきた。
「機竜の整備経験はあるかしら?」
「標準的な調律から、微調整、複雑な調律など一通りはできます」
「へぇ・・・・。それは頼もしいわね」
想像以上の腕前に、少々粗暴なところが目立つがメリハリのついた接し方。仕事場の人達とも上手くやれそうな彼は採用か。と、レリィはそこまで考えたところであることに気づく。
「その腰に差しているのって、
彼の腰には棒状の物が布に
その形状から
その事を彼に尋ねると、彼は懐かしいような、悲しいような表情を見せた。
「これは・・・・、知り合いに託されたモノなんです。確かに、神装機竜の
《
このとき、すでに男の策にはまっているとも知らずに──。
「そう・・・・。なら、大切にしなさい。それと、貴方は採用よ。今日から住み込みで、
「えっ・・・・?」
「えっ?」
驚愕の顔を見せるジークフリートに、疑問の顔を浮かべるレリィ。
「教官?俺がですか・・・・?」
「ええ。貴方には生徒達に整備の基礎を教えてもらいます」
さも当たり前のように告げるレリィにジークフリートは思わず詰め寄る。
「な、何でですかっ!?」
「調律って言葉はね、
「うっ・・・・」
図星をつかれたジークフリートはバツが悪そうな顔をする。
「・・・・分かりました。教官の件、
「そろそろ模擬戦が始まる頃ね。私達も行きましょうか」
「はい・・・・」
最後の最後で出し抜かれたことに意気消沈しながらも、レリィと共に歩き出すジークフリート。心なしか目が死んでいる。
(面倒なことになったぞクソがっ!この仕事が終わったら一回?????をぶっ飛ばすっ!!)
心に誓う《
今回はここまでです。
次回、戦闘シーン・・・だと思います。
それでは、
また次回会えることを楽しみにしています。