IS〜古都国最凶と蛇と成りて舞う一夏〜   作:第八天黒鴉

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前回のあとがきで言い忘れましたが、調律云々だの効率がどうだのは完全な捏造設定なので本気にしないでください。

今回からちまちまとオリ主無双が始まります。

それではどうぞ


第5話 波乱の幕開け・予期せぬ来訪者 その1

───荒野

 

城塞都市から少し離れたところにあるだだっ広い荒野。そこには小さな村や町があったはずだが、十余年前に発生した幻神獣(アビス)によって、その残骸が辺りに散らばるのみであった。

すでに第三砦までは突破され、残存する王国軍は周辺の機竜使い(ドラグナイト)を集め部隊の再編成中とのことだ。

城塞都市へ向かう幻神獣(アビス)を止めるのは『騎士団(シヴァレス)』の活躍次第だった。

 

「こいつが──例の幻神獣(アビス)か?」

 

目標から二百mほど離れた上空と大地から『騎士団(シヴァレス)』のメンバー十数名は幻神獣(アビス)を確認する。

粘着質の巨体を持ち、尖塔のような大きな腕が二本、そして紫色の眼球と思しきものが、浮いている。

 

ただそれだけの生物。

 

知性をほぼ持たないと言われる、スライム型。

しかし、大型という情報通り、城一つを呑み込まんばかりの途方もない巨体を誇っていた。

半透明の体の奥には、核と呼ばれるものが存在したが、それを攻撃するには分厚い粘液の層を突破しなければならない。

 

「さて──ぶっ放すか」

 

部隊長を任されたリーシャが、どう攻略するか悩んだ末に、ふっと口元に笑みを浮かべ、機竜息砲(キャノン)を構える。

 

「いきなり撃つ気ですか!?」

 

背後にいた『騎士団(シヴァレス)』の一人が慌てたようにそう叫ぶ。

 

「スライム型幻神獣(アビス)は威力を分散させ、致命傷を避ける性質がある。だから、ちまちま攻撃しても無駄だ」

 

何も適当に考えたのではないと言うかのように答えるリーシャ。

 

「で、作戦はどうする?部隊長殿」

 

隣に滞空するシャリスの問いに、リーシャは鼻を鳴らし、

 

【決まっている。核を目がけて、主砲での最大射撃だ。十分な距離を取って、構えろ。離れすぎると威力が落ちる。秒読みは私がやる。いいな?】

 

竜声を通して地上の『騎士団(シヴァレス)』たちにも声をかけると、リーシャは自らのキャノンにエネルギーを充填させる。

 

(これで、確実に倒せる。私達の勝ちだ)

 

リーシャは勝利を確信する。

十数機の機竜使い(ドラグナイト)による集中砲火。

如何に威力を分散させようとも、この威力なら貫けるはず。

 

「カウントを始める。ゼロで斉射だ。5、4、3・・・・・」

 

リーシャの指示に従い、全機が最大充填したキャノンを構える。

 

「2、1、発射──!」

 

──イィィィイィイイイイ!

 

そのとき。どこからか奇妙な笛の音が辺りに響いた。

 

(何だ、この音は?一体どこから──)

 

リーシャが頭の片隅でそう思ったとき、一斉射撃による衝撃と熱風が大気を震わせる。

同時に、目の前の幻神獣(アビス)に異変が起きた。

 

「何ッ・・・・・・!?」

 

照準を合わせていた、体内の赤黒い核。

それが破滅を孕んだ泡のように、急激に膨れ上がる。

 

「ゴァァァアアァァアアア!」

 

直後、砲撃が当たるより先に、幻神獣(アビス)が自ら弾け飛んだ。

 

核の爆発

 

一斉射撃を遥かに上回る高熱と衝撃が、キャノンの奔流を塗り潰して押し寄せる。

 

【障壁展開だ!機竜咆哮(ハウリングロア)も使え!】

 

リーシャの叫びは、轟音に掻き消されて吹き飛んだ。

 

 

●〇●〇●〇●〇●〇

 

 

時は少し遡り、笛の音が響く前、どこか引っかかりを覚えるルクスは、格納庫で考え込んでいた。

短期間に三体の幻神獣(アビス)出現。

決闘のときの不意を付いた襲撃。

三年生の『騎士団(シヴァレス)』の留守というタイミング。

何か一つ、決定的な何かが足りない。

 

「よお、雑用王子」

 

そんなルクスに話しかける者──ジークはいつも通り、面倒くさそうな表情をしていた。

 

「・・・・・何か?」

「いやなに、笛の音が聞こえたもんだから一応な・・・・・」

「音?・・・・・僕には聞こえませんが──」

 

音が聞こえたと言うジークに対し、ルクスは聞こえないと答える。

だがそれすらも、ルクスは引っかかりを覚える。

 

「・・・・・そうかい。まあ、俺が五感も他より優れてるだけに過ぎんのかもな」

 

けど、と一度区切ったジークはルクスを見据える。そこには先程の気だるそうな表情はなく、核心を秘めた目をしていた。

 

「もし、幻神獣(アビス)を操れる笛が存在したとしたら。

もし、その笛をある連中が手にしたとしたら。」

「ッ・・・・・!?まさか──!」

 

幻神獣(アビス)を操る笛。

それこそがこの謎を解く鍵となった。

全ての歯車が噛み合ったとき、その答えに辿り着いた。

 

 

●〇●〇●〇●〇●〇

 

 

幻神獣(アビス)と交戦していた『騎士団(シヴァレス)』の部隊は、今や半壊状態にあった。

 

「く、ぁあ・・・・・!」

「う・・・・・くっ、あ・・・・・・!」

 

ジュウっと、酸で焼かれる音と共に、いくつもの機竜の装甲が溶ける。

手にしていた武装を盾代わりにしたメンバーも多く、その武装は最早、使い物にならなくなっていた。

飛翔していた機竜使い(ドラグナイト)も、爆発の衝撃で吹き飛ばされ、全員が大地に落とされていた。

 

「・・・・・・くッ!『騎士団(シヴァレス)』の小隊は全機待機だ!一度体勢を立て直す。武器が使えない者は一旦下がれ!」

 

予定していた攻撃の失敗。

及び多大な損害の現実に眉をひそめながらも、リーシャは叫ぶ。

 

「まだ十分に交戦可能だ!狼狽えるな!」

 

そう仲間たちに声をかけ、気力を奮い立たせようとする。

だが、

【ほう、随分と王女ヅラが板に付いてきたじゃないか、リーズシャルテよ】

 

ふいに竜声を通じて、頭に中にしわがれた男の声が聞こえてきた。

男であることから『騎士団(シヴァレス)』のメンバーではない。

周囲を見渡すと、幻神獣(アビス)を追っていた、新王国軍の警備部隊に所属する機竜使い(ドラグナイト)

灰色の機竜を纏った男が、爆散した幻神獣(アビス)の背後上空に佇んでいるのが見えた。

 

【だがな。お前はそんな器ではない。そのような誇りなどないのだよ】

「貴様、何を言って──ッ・・・・・・!?」

 

不遜な声の直後、その機竜使い(ドラグナイト)から、砲撃がリーシャに向かって放たれる。

 

【部隊長!】

【姫様!】

 

騎士団(シヴァレス)』たちの悲鳴が、竜声の通信上に響き渡る。

 

「くッ・・・・・・!」

 

完全な虚を衝いた砲撃だったが、リーシャは咄嗟に横に飛ぶことで、かろうじて直撃を回避。

だが、掠めた砲撃は装甲を砕き、《キメラティック・ワイバーン》は使用不可の大破に追い込まれた。

 

【うッ・・・・・く!一体、何の真似だ・・・・・!?王都から配備された、警備部隊の隊長が──】

 

リーシャが、上空で下卑た笑みを浮かべる男を睨んで、そう叫ぶ。

対する壮年の男は、落ち着いた様子で、

 

【それは間違いでございます】

 

そう、嘲るように言い切った。

 

【私がやってきたのは()()からでございますよ。リーズシャルテ王女殿下。アーカディア帝国近衛騎士団長、ベルベット・バルトが、私の名です】

【ッ・・・・・・!?】

 

竜声を介して聞いた慇懃な声に、『騎士団(シヴァレス)』一同が、はっと息を呑む。

クーデターにより帝国が滅びた後、戦力不足を補うために、忠誠を誓い、身の潔白を証明された人間は、新王国の機竜使い(ドラグナイト)として、再び士官として釈放されていたが──。

『帝都から来た』、という一言を聞いて、リーシャは男の正体を察する。

この国の敵。

旧帝国の復権を目論む、信奉する反乱軍。その意志を身に宿す男なのだと。

 

「この国を裏切った、というわけか?わざわざ遺跡(ルイン)から、幻神獣(アビス)を引っ張ってきて──」

【裏切ったなどと、人聞きの悪いことを。正道に立ち返ったのだよ。力を得てな】

 

勝ち誇ったような男の声が、竜声を介して、頭の中に聞こえてくる。

 

【不意打ち一発で私に勝てると思っているのか?傲慢は身を滅ぼすぞ、ベルベット】

 

《キメラティック・ワイバーン》が大破してなお、リーシャは泰然と構える。

それを見たベルベットも、変わることなく余裕の表情だった。

 

【勝てますとも。勝算もなくおびき出すなど、愚の骨頂。そのようなことは犯しませんよ】

 

旧帝国の象徴たる塗装を施された、強化型飛翔機竜《エクス・ワイバーン》。

ベルベットはドロドロに崩れた幻神獣(アビス)の前で、小さな黄金色の笛を手に取った。

 

【さあ、還れ。卵よ】

 

そして、酷薄な笑みを浮かべ、笛に口を当てる。

聞くに耐えない不協和音が、荒れた大地に鳴り響いた。

直後。

破裂して崩れ落ちていた幻神獣(アビス)の表面に、無数の気泡がぷくりと浮かぶ。

小さな泡は、ぷつぷつと高速で大きさを増し、一斉に弾け飛んだ。

 

「あれは──!?」

 

騎士団(シヴァレス)』のメンバー達が、恐怖と驚愕により目を見開く。

出てきたのは、黒い金属の鳥人。

数日前に学園を襲った、ガーゴイル。その群れが、幻神獣(アビス)の体内から生まれていた。

 

竜声の回線に、無数の声が重なる。

幻神獣(アビス)を中に孕んだ泡が、音を立てて弾ける。

ぷつぷつと、悪寒を感じるほどの異音。

本来は美しいはずの朝焼け空を、黒き災厄の化身が覆っていく。

ガーゴイルの数はおよそ、三十体。

一人前の機竜使い(ドラグナイト)に換算して、百機以上の敵戦力が、この荒野に突如として生まれることとなった。

 

「──目覚めろ、開闢の祖。一個にして軍を為す神々の王竜よ《ティアマト》!」

 

リーシャが、大破した《キメラティック・ワイバーン》の接続を解除し、神装機竜《ティアマト》を纏う。

 

決死の覚悟で挑むリーシャと『騎士団(シヴァレス)』の戦いはじきに幕を上げる。

だが、今日、彼女らは反乱軍を遥かに超える暴威と狂気を目の当たりにすることとなる。

 

 

●〇●〇●〇●〇●〇

 

 

「──以上が、私が遠距離から視認し、ノクトさんから竜声を介して聞いた、現在の戦況よ」

 

神装機竜《ファフニール》の速度を以て、クルルシファーが持ち帰った事実に、待機中の生徒達は、静まり返っていた。

機竜格納庫に重い沈黙が満ちる。

まんまと策にはまり、現状での城塞都市の最大戦力、『騎士団(シヴァレス)』が壊滅寸前であること。

その事実を突きつけられ、士官候補生の生徒達は、言葉を失っていた。

 

尤も、最大戦力はジークの持つ神装機竜なのだが、知る由もないことなので割愛しておくことにする。

閑話休題(話は戻して)

 

「・・・・・・」

 

そんな中、ルクスは一人、格納庫の外に出ようとする。

外へと続くその扉の前に、思い詰めた表情のアイリが、立っていた。

 

「どこへ行くつもりですか?兄さん」

 

覚悟を決めた顔つきのルクスに、アイリは尋ねる。

必死に感情を押し殺した、悲痛な表情で。

 

「リーシャ様を助けに行く」

「ダメです!」

 

そうきっぱりと、アイリは告げる。

 

「あの《ワイバーン》では、防御はできても、幻神獣(アビス)は倒しきれませんし、もう一方の剣もつかえない。今の兄さんに、できることなんてないんです」

「でも──」

「兄さんの気持ちは分かります。でも、この世界には、どうにもできないことだってあるんです。いくら頑張っても変えられないものが、いっぱいあるんです。私達は、それをいやというほど見てきたはずです!」

 

普段の澄ました表情をかなぐり捨てて、アイリは訴える。

それがどれほど本気なのかを、ルクスは知っていた。

 

「私達は、大義のために戦っているのではなかったのですか。目的を忘れないでください。ここで死ぬつもりなんですか?私達は、この国のために──」

「それは違うよ、アイリ」

 

ルクスは、アイリの言葉を切って、優しく微笑む。

 

「僕の目的は、帝国を討つことだ。僕らから何もかもを奪う、あの敵を倒すことだ」

「・・・・・・・」

「大丈夫だよアイリ。僕は君を、一人になんて、しないから──」

 

アイリはその言葉に、静かに俯く。

 

「あの機竜の調整はもう、済んでいます。あくまで候補生の私なりに、解析した程度ですが・・・・・。それでも、もって十分です。それ以上の保証は、できません・・・・・・」

「ありがとう」

 

ルクスは妹に微笑みかけると、ジークから声が掛かる。

 

「なあ、雑用王子」

「‥・・・・はい」

 

ジークからの声色は穏やかで、諭すような感じだった。

それには少々驚くも、ルクスは返事をする。

 

「お前が何を思い、何を考え戦ってきたのかは知らないが、後悔だけはするなよ。『何をしたいかじゃなくて、何をするか』、これは俺の座右の銘だ。いつだって、自分が歩んだ場所が道になるんだ。

・・・・・・だからよ、後悔だけはすんな。答えは必ず、見つかるんだからさ──俺みたいにはなるなよ

 

最後に呟いた言葉は聞き取れなかったが、言わんとしていることは、ルクスには理解できた。

だからこそ、ルクスは力強く頷いた。

そのまま扉の外にいた、クルルシファーに歩み寄った。

 

「クルルシファーさん。お願いがあります」

「・・・・何かしら?」

「あなたの力を貸してください。僕の援護ではなく、リーシャ様を救うために。今、それを十全にこなせる人はあなたしかいません。」

 

真っ直ぐな瞳を向け、ルクスがそう言うと、

 

「前にも言ったでしょう?私はユミル教国の命で、戦いに出向くわけにはいかないのよ」

 

あくまで冷静な口調で、クルルシファーは告げる。

だが──、

 

「『黒き英雄』の正体を、僕は知っています。『銀の厄災』についても、知っていることはお話します。取引です。お願いを聞いてくれれば、教えます」

 

アイリがルクスから視線を逸らしたのが、見えなくてもはっきりと感じ取れた。

 

「分かったわ」

 

クルルシファーが、少し考える素振りを見せ、頷く。

 

「では、行きましょう」

 

そして、二人は同時に、機攻殻剣(ソード・デバイス)を抜き払った。

 

それから数分。

念の為にと、待機していた生徒全員が移動した為、誰もいなくなった機竜格納庫にて黒いローブを羽織った男──■は一人反芻する。

 

「ああ、これでようやく動ける。お前の覚悟を見せてもらうぞ『黒き英雄』」

 

男は一切の光がなく、他者を認識していないとすら感じる、無機質な瞳で嘲笑を浮かべるのだった。

これこそがこの男の本質。“自己愛"の究極系である。

この境地に至った者は、万象あらゆるものが自分のための装飾品にしか見えていないだろう。

──いつか他者と向き合えると信じて()()()は祈る。




すいませんでした!
無双させるとか言って結局次回です!
許してください、何にもしませんけど。

最後のわたしとは誰なのか、
色々疑問が絶えませんね(すっとぼけ)

私の作品で名前のところなどに■がある場合は、
その文字数に当てはめれば答えが出るので、
埋めてみてください。

それではまた次回お会いしましょう。
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