自由に歩む【数多の記録】〇番目-オーバーロードの世界- 作:えーきち
とある世界に、1人の男が生を受けた。
名を刀道歩(とうどうあゆむ)。
一般的な家庭に生まれ、
父は会社員、母は主婦で兄弟はいない。
年を重ねる事に、父はそれなりの役職に昇格しながら、
日付けが変わってからの残業の日々を、
家族のためにめげずに過ごしていた。
そんな平凡な家庭には、
まだ覚醒前の幼子がいた。
再度、名を示す。
刀道歩。
この名は、この世界で両親から授かった名前ではない。
この世界での名前は、なんの因果か、
歩(あゆむ)である事は変わりなかったが、姓だけは異なった。
そんな姓もこの物語には、どうでもよい事なので、
山田(仮)とでもしておこう。
この山田歩(仮)は、5歳頃から覚醒し始める。
いや、正確には1歳頃から既に、
この世界の事を知らずに、
世界情勢など、この世界の知識の収集に励んでいたのである。
そして5歳頃の覚醒とは、
前世までに培った知識を元に、
この世界で起業する事である。
勿論、5歳の子供が起業などありえないが、
母親名義で起業をし、瞬く間に大手企業へと成り果てた。
両親は、歩の前世の記憶がある事などを、
最初は戸惑いもしたが、最終的に受け入れ、
彼の説得に応じ起業に力を貸した。
母は名前だけの社長となり、父は取締役の1席となった。
そんな彼が中学生となる頃に、
この世界がなんたるかを、示してくれるモノが現れた。
VRMMORPG-ユグドラシル-
ただし、彼はこの世界がなんたるかを、知らなかった。
時を経て、数年後
彼はそんなユグドラシルの世界に入り浸っていた。
するべき仕事をこなしながらではあったが、
元より多少寝ずとも稼働出来る肉体であったため、
寝る時間を削りプレイしていた。
お金は溢れる程にあるため、課金もほどほどに費やし、
今は、ある目的のために動いていた。
「眠い…さすがにそろそろ眠いな…。」
ユグドラシル内にある1つの町では、
プレイヤー商人の出店が多く溢れていた。
そんな商店を徘徊しながら、眠たげに彼は呟いていた。
ゲーム内の彼は、姿形はほぼ現実と変わらない見た目で、
服装だけは、一般的な服や、鎧などではなく、
死覇装に身を包み、腰に見える2本の刀は、
侍を彷彿とさせる姿であった。
職業:死神
そんな恐ろしい響きの職業とは思えぬ、
今も寝ながら歩いているのではと思うほどの、
眠そうな表情でふらふらと町を徘徊し、
そのままの足で近くの丘まで歩いていった。
この丘は、敵もノンアクティブで数も少なく、
プレイヤー同士の遊び場·休憩場所として使われているような安全地帯である。
彼はアイテムボックスから、枕を取り出すと、
ゲーム内で寝始める。
大人しくログアウトして寝れば良いものを、
たまにこうして仮眠をとるのが、
最近の彼のゲームの楽しみ方のひとつであった。