自由に歩む【数多の記録】〇番目-オーバーロードの世界-   作:えーきち

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プロローグ3

「玉座まで散歩しません?」

 

この一言から、歩とモモンガは、

ナザリック内部を散歩していた。

 

散歩とは言っても、サービス終了まで残された時間は少ないため、

ほぼ玉座にまっすぐ向かっている形ではあるが。

 

モモンガの手には、アインズ·ウール·ゴウンを象徴する

スタッフ·オブ·アインズ·ウール·ゴウンという名の、

ギルド武器が握られている。

 

この武器は簡単に言ってしまうと、

ユグドラシルというゲーム内において、

【ちょっと頭おかしいレベル】

と思えるスペックをしており、

簡単に持ち出していい装備ではなかった。

 

最後だからと、大した理由もなく持ち出してはみたものの、

たまにしか触れる事のなかったギルド武器に

大きな威圧感を感じざるを得なかった。

 

このアインズ·ウール·ゴウンのギルド拠点である、

ナザリック地下大墳墓を守る、

至高の42人が作り上げたNPC達を、

道中スレ違いざまに引き連れ、先頭を歩くモモンガには、

ギルド長である事を強く感じさせるものがあった。

 

 

 

玉座の間に着くと、引き連れたNPC達を整列させた。

モモンガは玉座の前まで行き、歩をチラりと見た。

「モモンガさんが座って下さい」

歩はモモンガの意を汲んでか、

モモンガが言葉にせずとも、優しげに声をかけた。

 

このアインズ·ウール·ゴウンという、

色んな意味で癖のある集団の、

ギルド長という大役を担ったモモンガに、

歩は、少なからず、感謝の気持ちと尊敬の意を持っている。

 

玉座に座ったモモンガの少し横に、

歩はそっと胡座をかいて座り、

モモンガと2人、

玉座から、玉座の間入口に向かい左右に並ぶ、

至高の42人を示す旗を眺めていた。

 

 

 

「後3分ぐらいですね、最後まで歩さんが居てくれて助かったというか、

嬉しかったというか…本当にありがとうございました」

 

そう告げたモモンガのアバターは、

目の錯覚だとは思うが、震えているような気がした。

ゲーム終了まで、あと、2分30秒

 

あと2分…

 

あと1分30秒…

 

あと1分…

 

あと30秒…

 

モモンガの言葉に反応を示さなかった歩が、

「これからもお願いしますね」

と呟いた。

 

数十秒先の未来のことなど一切わからないモモンガは、

ユグドラシルが終わった後に、別ゲームでも誘ってくれるのかと、

この時は、少しの嬉しさを感じていた。

 

歩自身も、このまま終わってしまうという、

何か腑に落ちない気持ちから、

思わず口にしてしまったが、

ユグドラシルと仕事漬けの日々をおくっていた人間が、

他ゲームの事などわからず、別ゲームに誘うというような意味合いではなく、

本当に何気なく口にしていたに過ぎなかった。

 

あと10秒…

 

5

 

4

 

3

 

2

 

1

 

00:00:00

 

00:00:01

 

………

 

 

 

「ログアウトされない…?」

 

サービス終了とは何だったのか。

日付けが変わるまでだったはずが、

日付けが変わった後も、強制ログアウトされない。

 

「歩さん、まさかの自分達でログアウトしなきゃダメなやつですかね?」

 

通常であれば、

メンテナンス時などは、強制ログアウトされるが、

サーバー回線都合上、同時落ちせず、

数十秒~数分後にログアウトされるパターンなどもある、

が、サービス終了でそれは基本ありえないだろう。

 

モモンガは、疑問の感情と、最後の最後にユグドラシル運営は何をやっているんだという気持ちから、身に起こっている、否、このナザリック地下大墳墓に起きている異変に、まだ気付けていなかった。

 

「モモンガさん、ログアウトもGMコールもきかないどころか、コンソール自体出ませんよ」

冷静にそう語った歩は、そう言いながら、

整列したNPC達の姿を瞳に映していた。

 

そんな言葉に混乱しながら、

自分でも確認したモモンガは、歩の言葉が事実だと知る。

 

「歩さん、これってバグですかね?何か運営で問題でもあったんでしょうか」

翌日も朝早くから社畜生活が待っているモモンガにとって、

運営の最後の悪戯という名のバグで、夜更かしとなり寝不足になるのは、

大きな問題であったため、不安を拭うように歩へ問いかける。

 

すると歩は、至って冷静な表情で、

「ひとつ確かな事があります」

と何故かNPCの方を気にしながら、

小声気味に小さく口を開きそう言った。

 

 

(冷静な表情…小さく口を開き…

表情…?動く口?…?!)

モモンガに初めてユグドラシルをプレイした時の感覚に似た衝撃が走る。

 

何かに気づいたモモンガに、歩は、言葉を続けなかった。

 

 

「モモンガ様、至高の御方同士の会話に、

口を挟む無礼をお許しください。

何か問題でもございましたでしょうか?」

NPCの頂点である、階層守護者統括のアルベドが

意思を持って話すという、更にモモンガへ追い打ちとなる衝撃。

 

(動いているなんて、ギミック的にありえない。

ユグドラシルのサービス終了と同時にユグドラシル2の開始で、

これほどにリアルさを追求した?

高度なAIを導入?

いや、アップデートも何もしていない。

ありえないことだ。だが、ありえない事が起きている…。)

 

モモンガの心の中は、混乱の渦に巻き込まれる。

 

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