「勇者がこの世界を救わないのは勝手だ。けどそうなった場合、誰が代わりに世界を救うと思う?」

「万丈だ」

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万丈だっつってんだろ

『万丈構文』とかいう世紀の玩具


万丈だ

 須美と園子は気絶。

 戦えるのは三ノ輪銀一人。

 銀以外に世界を、皆を守れる者はいない。

 世界を狙うは恐るべきバーテックス達。

 

「またね」

 

 銀は恐れを踏破する勇気を振り絞り、敵に立ち向かう。

 だがその足が止まる。

 一瞬、死の恐怖で足が止まる。

 戦いを避ける当たり前の心の動き。

 その時、樹海からブラッドスタークが生えてきた。

 

「銀。お前が戦わないのは勝手だ。けどそうなった場合、誰が代わりに戦うと思う?」

 

「……」

 

「万丈だ。万丈はお前に怪我をさせた件でお前に負い目を感じてるはずだ。

 だからお前がやらなきゃ、自分から戦おうとするだろう。

 けど、今のあいつじゃバーテックスには勝てない。

 そうなれば大赦の連中は寄ってたかってクローズを責める。……お前が戦うしかないんだよ」

 

「……」

 

「お前にも分かってるはずだ」

 

 

 

 

 

 最終決戦。鷲尾須美の満開ゲージが溜まりきる。

 須美の隣には園子。その隣にブラッドスタークが生えて来た。

 

「須美。お前が記憶を失わないのは勝手だ。

 けどそうなった場合、誰が代わりに記憶を失うと思う?」

 

「……」

 

「万丈だ。万丈はお前を国防芸人と煽った負い目を感じてるはずだ。

 だからお前がやらなきゃ、代わりに記憶を失おうとするだろう。

 けど、今のあいつじゃ人気ヒロインにはなれない。

 そうなれば視聴者の連中は寄ってたかってクローズを責める。……お前が戦うしかないんだよ」

 

「……」

 

「お前にも分かってるはずだ」

 

 

 

 

 

 最終決戦。

 記憶を失った須美を見て、悲壮な決意を固めた園子の横にブラッドスタークが降って来る。

 

「園子。お前が満開しないのは勝手だ。けどそうなった場合、誰が代わりに満開すると思う?」

 

「……」

 

「万丈だ。万丈はお前のサンチョをクソダサと笑ったことに負い目を感じてるはずだ。

 だからお前がやらなきゃ、代わりに二十回の満開をしようとするだろう。

 けど、今のあいつじゃあのバーテックス群は倒しきれない。

 そうなればバーテックスの連中は寄ってたかってクローズを責める」

 

「……」

 

「お前が戦うしかないんだよ。お前にも分かってるはずだ」

 

 

 

 

 

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 西暦勇者の乃木若葉や白鳥歌野も大活躍だ!

 

「歌野。お前がガチャで出ないのは勝手だ。けどそうなった場合、どうなると思う?」

 

「……」

 

「炎上だ」

 

 

 

 

 

 二年が経ち、東郷美森は勇者に変身することを躊躇っていた。

 

「美森。お前が勇者にならないのは勝手だ。

 けどそうなった場合、誰が代わりに勇者になると思う?」

 

「……」

 

「万丈だ。万丈はお前を愛国お笑い芸人と煽ったことに負い目を感じてるはずだ。

 だからお前がやらなきゃ、自分から勇者になろうとするだろう。

 けど、今のあいつじゃ巨乳需要を満たせない。

 そうなれば視聴者の連中は寄ってたかってクローズを責める。……お前が戦うしかないんだよ」

 

「……」

 

「お前にも分かってるはずだ」

 

 

 

 

 

 妹が勇者になり、人知れず三好春信は苦悩していた。

 

「まだ分かってないようだな。いいか?

 死んだ勇者も夏凜も勇者になった時点でもう人間じゃないんだよ。

 だからお前は兵器を戦場に投入したにすぎない。

 それに戦争になった今、遅かれ早かれ味わうことだ。

 それとも本気で誰も傷付かないとでも思ってたのか? だとしたら、能天気にもほどがある」

 

「……」

 

「夏凜が勇者にならないのは勝手だ。けどそうなった場合、誰が代わりになると思う?]

 

「……」

 

「万丈だ。楠芽吹じゃない。

 万丈は夏凜のにぼしを勝手に全部食った件で負い目を感じてるはずだ。

 だから夏凜がやらなきゃ、自分から手を挙げるだろう。

 けど、今のあいつじゃフリフリの衣装は着こなせない。

 そうなれば四国の連中は寄ってたかってクローズを責める」

 

「……」

 

「お前が戦うしかないんだよ。お前にも分かってるはずだ」

 

「……ん?」

 

 

 

 

 

 夏凜が讃州中学勇者部に来てすぐの頃。

 勇者部に入らないといけないのか、と悩む夏凜の部屋にブラッドスタークが生えて来た。

 

「夏凜。お前が勇者部に入らないのは勝手だ。

 けどそうなった場合、誰が代わりに勇者部に入ると思う?」

 

「……」

 

「万丈だ。万丈はお前のにぼしをまた全部食ったことに負い目を感じてるはずだ。

 だからお前が入らなきゃ、代わりに勇者部に入ろうとするだろう。

 けど、今のあいつ(ビルド本編23歳)じゃ中学生は演じきれない。

 そうなれば学校の連中は寄ってたかってクローズを責める。……お前が入るしかないんだよ」

 

「……」

 

「お前にも分かってるはずだ」

 

 

 

 

 

 なんやかんやで皆が満開した頃。

 声を失った樹は、皆と一緒に海に来ていて、"この水着どうかな?"と今更にちょっと恥ずかしくなっていた。

 女子更衣室で水着を体に重ねて、鏡の前でじっと見つめる。

 そんな着替え中の樹の背後にぬっとスタークが生え、肩に手を乗せた。

 

「樹。お前が水着を着ないのは勝手だ。

 けどそうなった場合、誰が代わりに水着を着ると思う?」

 

(えっ)

 

「万丈だ。万丈はお前の歌に感動し勝手にようつべに上げたことに負い目を感じてるはずだ。

 だからお前が着なきゃ、代わりに水着を着ようとするだろう。

 けど、今のあいつじゃお前のかわいい系水着は似合わない。

 そうなれば男大赦連中は寄ってたかってクローズを責める。……お前が着るしかないんだよ」

 

(こ、ここ女子更衣室!)

 

「お前にも分かってるはずだ」

 

 

 

 

 

 同じく満開で味覚を失った友奈が食べていたうどんから、スタークが生えてくる。

 

「友奈。お前が味の感じられないうどんを食わないのは勝手だ。

 けどそうなった場合、誰が代わりにうどんを食べると思う?」

 

「……」

 

「万丈だ。万丈はお前に財布を拾ってもらったことに負い目を感じてるはずだ。

 だからお前が食わなきゃ、自分からうどんを食べようとするだろう。

 けど、早食いチャレンジ挑戦直後の今のあいつじゃもう一杯は食えない。吐く。

 そうなれば店の連中は寄ってたかってクローズを責める。……お前が食うしかないんだよ」

 

「お腹空いてるんだからそりゃ私が食べるよ……?」

 

「お前にも分かってるはずだ」

 

 

 

 

 

 とーごーさんとスタークさん。

 

「美森。

 大日本帝国がワシントン海軍軍縮条約に合わせて赤城と天城を改装するのは勝手だ。

 けどそうなった場合、誰が代わりに水上機母艦から航空母艦に建造変更されると思う?」

 

「龍驤よ」

 

「そうだ」

 

 

 

 

 

 妹の声が失われ、その夢が失われたという悲劇に『大赦を潰す』と暴走する風。

 それを止める夏凜、友奈、そして樹。

 涙ながらに膝を折り、大赦を潰すことをやめた風に悪魔が囁く。

 

「風。お前が大赦を潰さないのは勝手だ。

 けどそうなった場合、誰が代わりに大赦を潰すと思う?」

 

「……」

 

「万丈だ。万丈はお前を泣かせたことに負い目を感じてるはずだ。

 だからお前がやらなきゃ、代わりに大赦を潰そうとするだろう。

 けど、今のあいつじゃ普通に大赦を潰せる。

 そうなれば警察の連中は寄ってたかってクローズを責める。……お前が潰すしかないんだよ」

 

「大赦を……潰す……!」

 

「風先輩!?」

 

「お前にも分かってるはずだ」

 

 

 

 

 

 ガシャン。

 ブラッドスタークの両腕に冷たい鉄の輪が嵌められた。

 外界との連絡を断ち切る契約の印だ。

 

「友奈。お前が警察に通報するのは勝手だ。

 けどそうなった場合、俺の手に何が嵌まると思う?」

 

「……」

 

「手錠だ」

 

 

 

 

 

 アニメ一期終了。悪魔は囁く。

 

「美森。お前が壁に穴を空けた罪を償わないのは勝手だ。

 けどそうなった場合、誰が代わりにお前の罪を償うと思う?」

 

「……」

 

「万丈だ。万丈はお前の気持ちを分かってやれなかったことに負い目を感じてるはずだ。

 だからお前がやらなきゃ、代わりに罪を償おうとするだろう。

 けど、今のあいつじゃ罪は償いきれない。

 そうなれば神の連中は寄ってたかってクローズを呪う。……お前がやるしかないんだよ」

 

「腹を切ります……」

 

「東郷さん聞いちゃ駄目だよ! この人誰でもいいから煽ってるだけだよ!」

 

「お前にも分かってるはずだ」

 

 

 

 

 

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 結城友奈は勇者である、鷲尾須美は勇者である、乃木若葉は勇者である、参戦済み!

 芽吹? 知らん。

 名探偵そのっちは本当に可愛かった。

 

「俺がガチャ爆死するのは勝手だ。

 けどそうなった場合、俺の財布の中身はどうなると思う?」

 

「……」

 

「諸行無常だ」

 

 南無。

 

「夏凜。お前が自腹で、俺の端末で回さないのは勝手だ。

 けどそうなった場合、誰が代わりに自腹で俺の端末で回すと思う?」

 

「……」

 

「万丈だ。万丈は俺の前で『SSR 名探偵 乃木園子』を引いたことに負い目を感じてるはずだ。

 だからお前が回さなきゃ、自分からガチャを追加で回すだろう。

 けど、今のあいつじゃ財布が保たない。

 そうなれば俺は分身して寄ってたかってクローズを責める。……お前が回すしかないんだよ」

 

「なんでこいつこんな自作自演好きなの」

 

「お前にも分かってるはずだ」

 

 

 

 

 

 なんやかんやで神婚が始まったが、なんやかんやで東郷さんによって阻止された。

 神樹から芽のようにスタークが生えて来る。

 

「友奈。お前が神婚しないのは勝手だ。

 けどそうなった場合、誰が代わりに神婚すると思う?」

 

「……」

 

「万丈だ。万丈はお前を泣かせたことに負い目を感じてるはずだ。

 だからお前がやらなきゃ、自分から神樹と結婚するだろう。

 けど、今のあいつじゃ神樹様の需要には合わない。

 そうなれば神樹の神々は寄ってたかってクローズを責める。……お前がやるしかないんだよ」

 

「……」

「……」

 

「お前にも分かってるはずだ」

 

 東郷と友奈は無視をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんやかんやでハッピーエンド。

 それがゆゆゆ。

 最後に皆が笑って終われるよ、だから途中でどんなにエグくしてもいいよね?

 それがゆゆゆ。

 日常があるからこそ悲劇が映え、困難があるからこそ奇跡が際立つ。

 

「友奈。お前が自己犠牲をするのは勝手だ。けど本当に大事なものはなんだと思う?」

 

「ブラッドスタークさん」

 

「日常だ」

 

 ブラッドスタークはクールに去るのだ。今日もどこかで戦争を煽る。

 

「あばよ」

 

 マスターは夕焼けに消えていった。

 

「なんだったんだろう……」

 

 友奈のその呟きに反応する者は居らず。

 

 消えたスタークを追う者はなかった。

 

 

 




レオ・スタークラスター「やあ」ニッコリ

勇者「スタああああああクッ!!!」


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