ドラゴンクエストLー勇者と魔王ー   作:賀楽多屋

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水の底で再び目覚めた竜神

 その洞窟のことを、どうして私は忘れていたのだろう。レックス君が母親を探して旅している道中の中に、天空城を探す下りがあったことをこの皺の少ない脳味噌は覚えていなかったのだ。我が系譜に連なる勇者や英雄の手記は諳んじることが出来ると言った手前のこの有り様。流石に、我ながら呆れてどうこう言うのも億劫になってくる。

 

 とまぁ、自虐的になってる暇はない。

 

「ぎぃぃいいいやぁぁああっ!!」

 

「ひゃっふーーーー!!」

 

「うぉぉぉおおおっ!!」

 

 大体想像つくと思われるが一応説明しよう。上から順に私、レックス君、ユーリルさんの悲鳴である。因みに、レックス君だけ悲鳴の色が黄色い。私達は顔色も悲鳴も真っ青で、全身から血の気が無くなっているのを嫌でも感じる。

 

 至る所に設置されているトロッコとその下に敷かれているレールから推測するに、昔は炭坑だったらしいこの洞窟は思ったよりも深かった。トロッコとレールがどれ程の時間、放置されていたのかも分からないが、機能はしていた。

 

 そう、不幸なことにこのトロッコは機能してしまったのだ。

 私とユーリルさんの不幸はそこから幕を開ける。

 

 トロッコは兎に角ハイスピードで走る。たまに、地盤が崩れでもしたのか地面に穴が空いて、レールが途切れていることもあったが、それをスピードでゴリ押しして対岸に渡ることもあった。その度に心臓が更に不穏な音を鳴らして、二、三度息が詰まりかけたよ。しかも、トロッコの底は木板だけだから、凄くお尻が痛いし、トロッコが宙を飛ぶ時の衝撃なんか身体に凄い負担が掛かるし、それ以上に重力が内蔵に掛かるのがとてつもなく不愉快だった。

 

 詰まるところ、私にとってこのトロッコは不幸の産物でしかなかった。ユーリルさんにとってもそうだろう。

 

 だってユーリルさんは悲鳴を上げることしか出来ない私と違って、悲鳴を上げなら文句を叫んでるからね。

 

「いつになったらっ天空城に着くんだ!?」

 

「んーと、あと二階くらい降りないと駄目かな」

 

「・・・俺、もうそろそろ死ぬぞ!」

 

「もうユーリルは死んでるだろう」

 

 それにしても、イザさんは空飛ぶベッドと言い、このトロッコと言い全く動じない。両腕を組んで泰然自若とばかりに腰を据えてトロッコの行く先を見詰める彼の肝の太さには最早脱帽である。

「そうだな! 確かに俺はもう死んでるわな! くそっ! なんでレックスとイザはそんな普通な顔してられんだよ!?」

 

 ユーリルさんの自棄になった声が四方に響き渡り、次いでトロッコの車輪がまた穴の空いた地盤の上を舞う。

 

 

「「ぎぃいいいやぁあああっ!!!」」

 

 もう一生、このダンジョンには来ない! 決めた!!

 

 

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 

 天に居わすマスタードラゴンは、空の下に住む全生物を見守ってくださっている。

 それは、我々人間や犬や猫といった動物、草花やそこら辺に転がっている石のことを指しており、マスタードラゴンのご慈悲はそれら全てに行き届いているのだ。

 

 しかしーーーー魔物だけは別である。魔王によって人間界を支配せんために魔界から送られてきた魔物にはマスタードラゴンの鉄槌が下る。

 

 かの神にとって魔界の生物は、自身が作り上げた生物でないために、庇護すべき対象では無いのだ。

 

 

『神話伝承の考察3 マスタードラゴン編 ヤコブ・ハイフェッツ』より引用

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突然だが、私は子供の頃に御先祖様が残した手記に書かれた天空城の全貌を想像したことがある。

 

 その想像には、御先祖様の手記以外にも父さんの本棚に詰め込まれていた神話考察集などの影響も及んでいたので、まだ就学前の子供にしては結構いい出来栄えの空想の産物が出来たのではないだろうか。

 

 何の素材で出来ているのか分からない鎧を着た見張り兵が佇む玉座の間に続く扉の前。古代の書物が詰まった天井にまで届く書棚が居並ぶ図書館は、天空城にあるどの部屋よりも広く、天空人達は書棚の間を飛び回る。世界樹の葉を精製し、世界樹のしずくを作成する部屋に張り巡らされた水路に流れる水は、この世界の中で一等混じりっけのない純水であり、その純水はエルフに代々伝わるさえずりの密の材料でもある。

 

 遠い過去に存在した天空城は、長い年月を経て再び湖の底で深い眠りについた。夢幻の大地の片隅で、ひっそりと永久の眠りに微睡む天空城と天空人達は、まさか再び勇者達によって叩き起こされることになるとは露にも想像せず、夢の世界で在りし日の夢を見続ける。

 

 トロッコに乗っていると、いつの間にか天空城に着いていた。途中でレールが無くなったり、湖に突っ込んだりして真面目に死ぬような道程を辿ってきたわけだが、私の胸はまだ上下に動いている。

 

「なんで俺、生きてるんだ?」

 

 さっきイザさんに死んでることを指摘されてたはずなのに、それでもまだ自分が死んでることを忘れているユーリルさんは、あの過酷な道程でボロボロになったトロッコから飛び降りるや視線を足元に落として生存確認をする。

 

「それは私も思うよ。私達、さっき湖にドボンって突っ込んでいったよね? なんかいつの間にか天空城に到着してるけど・・・」

 

「流石に最後の仕掛けは肝を冷やしたな」

 

 あのどんなことがあっても動じないイザさんでさえも、今回のトロッコの旅には肝を冷やしたらしい。コメカミに伝う冷や汗を拭って、安堵の息を吐くイザさんに彼にも怖いと思う感情があったんだなぁと恐れ多いことを思った。

 

 しかし、あんな死にそうな思いをしたのにも関わらず、ユーリルさんの次にトロッコを飛び降りたレックス君は、両手を振り上げて天空城の尖塔部分を見上げるや楽しそうな声を上げる。

 

「また湖の底の天空城に来ることが出来たんだ! 相変わらず水の中なのに息が出来るし、本当にこの空間は不思議だなあ。一体どんな魔法の仕組みで出来てるんだろう? 想像するだけでもワクワクするや!」

 

 大きな黒の瞳を煌めかせて両手を上げたままくるりと回転するレックス君の足取りは軽く、見てるこちら側も彼の陽気さが伝播しそうだ。

 

 つい口角が上がってしまうのを止められず、レックス君の微笑ましい様子を眺めているとそのすぐ側で青年組が並んでレックス君の話をしていた。

 

「やっぱり、アイツが一番勇者らしいよな」

 

「嗚呼。本来、勇者とはあの様に在るべきなのだろう。ゼニス王を信用していなかったり、そもそも自身の事すら分かっていないような者が勇者だということが可笑しい話でもあるしな」

 

「さらっと俺にまで毒づくんじゃねぇよ。『レイドックの王子様』」

 

「なんだ、王子として敬ってくれる気か?」

 

「残念ながら俺はレイドックっつー国の民じゃねぇからな。ブランカがレイドックの属国になったら考えてやってもいいぜ」

 

「そんな野蛮な政策は会議に上がる前に握りつぶすな、俺は」

 

「へー。脳筋の割には力技の治世はお好きじゃないってか」

 

「嗚呼、そういうのは嫌いだ」

 

 但し、若い見た目とは裏腹に中身は老獪さがたっぷり詰まっているようだ。魔王討伐というご立派な戦果を上げ、その後の人生も波乱万丈だったらしい二人の勇者の狸会話は、まだ生まれて十八年目の私には早かったようだ。

 

 あの二人もなんだかんだ仲良いよね。お互いに刺々しいことばっかり言い合ってるけど、表情は楽しそうだし。実は似たもの同士でしょ、彼処。

 

 とまぁ、天空城の入り口でこれ以上駄弁っていてもしょうがない。もうほぼ形を無くしているトロッコをあまり見ないようにして、真っ先に玉座の間に続く階段へと掛け上っていく。すると、レックス君が「あっ! アン姉ちゃん待って!!」と私の後を走って追っかけてき、あの青年組はと言えばやれやれとばかりにチンタラついてくる。

 

 あの二人はもう放っておくことにし、私は追いついたレックス君と手を繋いで玉座の間へと向かうことにした。

 

 湖の底に沈んでいるからか、天空城は違和感を感じるほど静かで、私達の足音がこの物寂しい空間に響いていた。

 

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 

 

 玉座の間に辿り着くまでに階段を何段登っただろうか?

 思ったよりも縦に大きい天空城。玉座の間までに続く階段は果てしなく、神に会うための洗礼の一つなんじゃないかと穿った見方すらしてしまった。

 

 レッドカーペットが敷き詰められた玉座の間に辿り着いた頃には、激しい運動による発汗で全身汗塗れだ。レックス君と繋いでいた手も手汗でベタベタだけど、彼はそれでも構わないと言って結局最後まで手を握り合って玉座の間まで来てしまった。

 

「アン姉ちゃん・・・、あれ」

 

「うん。あれは気になるね」

 

 レックス君が私と繋いでいない方の手で指した先にあるのは、不思議な斑模様の入った白大理石のような光沢のある棺だった。蓋の部分には、天空城のいたる所で見かけた紋章が刻まれている。その人が一人入れるほどの大きさの棺は、玉座の前に鎮座しているのだ。

 

「相変わらず、無駄に玉座まで長いぜ。攻め入る奴も居ねぇんだから、もっと門から近場に作れよな」

 

「そう言えば昔、ハッサンとバーバラがどちらが早く玉座の間に辿り着けるかと競争していたな。それを見てチャモロが泡吹いていたような気がする」

 

「流石にそんなことはアリーナですらしなかったぞ」

 

 あ、チンタラ組が追いついた。異様な光景を前にどうすればいいのかを考え倦ねていた私は、此処は人生の先輩であるご先祖様にご教授を願おうと背後を振り返る。

 

 しかし、私が声を掛ける前に二人は棺の存在に気付いたようで、それぞれ真剣な表情を貼り付けていた。

 

「あれか」

 

「ダークドレアムに繰られていた時とはまた違った展開だな。あれはゼニス王自らが用意したものだろうか」

 

 やはり、イザさんにもマスタードラゴンとの思い出があるようで、眉間に縦皺が一本増える。そして、マスタードラゴンに思うことがありすぎるユーリルさんはと言えば、意外と行動的だ。立ち止まっている私とレックス君を追い越して、棺の前まで躊躇なく歩みを進めると棺を見下ろしている。ユーリルさんの背中しか見えないから何とも言えないけど、この時のユーリルさんの背中は何故かいつもよりも華奢に見えた。

 

 そう、もし何かに例えるとすれば、それはーーーーー途方に暮れた迷子の背中と言えばいいだろうか。ユーリルさんは最後までマスタードラゴンとの関係に解を見いだせなかった。だからこそ、もしかしたら今も実はその答えを探し求めているんじゃないかって私は勝手に想像する。

 

「行こう、アン」

 

 イザさんがマスタードラゴンの下に行こうと促してくるのに頷いて、三人で棺の前まで歩く。近づけば近づくほどにこの棺の中で眠る者の威圧でも受けているのか、気持ちが畏まっていくような気がする。薄い灰色の斑模様の入った白石で出来た棺は、蓋だけでもかなりの重量がありそうだ。

 ーーーーーってか、この棺って人間一人入れるくらいの大きさだけど、マスタードラゴンってそんなに小さいの?

 

 ドラゴンって言うからにはもっとご立派な体格をしているんじゃないかと思ってたんだけど、実は人間サイズのドラゴンなの?

 

 果てさて、そんな私の疑問はこの場に出されることなく、私達はそれぞれ棺の蓋の四方を持って持ち上げる。ギシッと軋むような音を立てて持ち上がった棺は、思ったよりもそんなに重たいものでもなく、私達は余裕で蓋を持ち上げることができた。

 

 そしてーーーーー、蓋の下から現れたのは一人の男。

 

 その男は、あまり特徴のない顔立ちをしていた。後ろに撫で付けられた黒髪の下にある顔は至って温厚そうなもの。棺の中でも掛けられた眼鏡は縁が細く、昔の流行なのかフレームは丸い。赤い蝶ネクタイを締めて、白シャツをズボンに入れ、そのズボンはサスペンダーで吊っている。

 

 バーのマスターとも言えそうな出で立ちの男が棺の中で眠っていた。

 

 あれ、マスタードラゴンは・・・?

 

「誰、この人ーーーー」

 

「プサン!!」

 

「え? プサン?」

 

 てっきり、マスタードラゴンが眠っているものとばかり思っていた私は、いざ棺を開けてみるとバーのマスターみたいな人とご対面することになって困惑した。しかし、そんな私と違ってどうやら知り合いだったらしいレックス君が声をひっくり返して彼の名を呼ぶ。

 

 ーーーーーん? ってか、プサンってそう言えば、マスタードラゴンの人間形態の時の名前じゃ・・・。

 

 その時、レックス君の声が呼び水となったのか、私の腰にぶら下がっているドラゴンオーブの入った袋がまた発光をし始めた。淡くも鮮烈な白い光を発し始めたドラゴンオーブは目が痛くなるような明滅を繰り返すので、つい目を守ろうと瞼を閉じてしまう。

 

「くっそ! このオーブ、どんだけ元気なんだよ!?」

 

 ユーリルさんの悪態が耳に入ってきたかと思えば、レックス君の「眩しいようっ!」という声も聞こえてきた。どうやら私以外の皆もこの光には手間取っているようだ。

 

 ドラゴンオーブの光がどれほど長く部屋の中を満たしていたのかは分からない。私達が目を開ける口実となったのは、男の唸るような声だったからだ。

 

「う、うううむ。頭がクラクラする・・・」

 

 よっこらしょと気の抜けるような掛け声がその後続いて聞こえてき、その頃には私達の目の復旧も終わっていた。強烈な光を浴びたあとに生じる視界の中に黒の斑点が生まれる現象も収まった頃、棺の中で眠っていたバーのマスターみたいな格好をした男が上体を起こして頭を抱えているところであった。

 

 うん、どっからどう見ても普通の人間にしか見えない。ワイングラス磨いている姿が容易に想像できるもん。

 

 だが、彼が只者じゃないことは意図も簡単に証明されてしまった。

 

「あれ? 天空の勇者が一人、二人、三人・・・」

 

 プサンは私達に視線向けると、眼鏡の掛け心地が良くないのかくいっとブリッジを持ち上げる。そして、彼が私達の存在を認識出来てくると段々と彼の目が細まっていった。それは、爬虫類の目に似ており、彼の目が一瞬だけ金色に光る。

 

「懐かしい面々ですねー。イザ、ユーリル、レックス君。貴方達が揃うなんて、もしやまた世界が傾き始めてるんですか?」

 

 言葉は礼儀正しいのに、何処か軽薄じみているように感じるのはこの男の存在が偽物だからだろうか。口角を上げるや、棺から立ち上がった彼は両腕を組んで私達からの返答を待っているようだ。

 

「久しぶりだね! プサン! そうだよ、今度はエスタークがまた復活しそうなんだって。地獄の帝王が人間界に蘇るのはやっぱり不味いよね」

 

 異様な雰囲気漂うプサンに扮するマスタードラゴンに意気揚々と話しかけたのは我らが特攻隊長、レックス君だ。イザさんとユーリルさんに向ける視線とはまた違う色を持つレックス君に向けられたプサンの視線。プサンの目元が若干、懐古に垂れ下がっていた。

 

「その姿のレックス君と会うのは何千年前のことでしょうか。あの時は一緒に各地を巡りましたね。君と君の父親とした世界旅行は私の膨大な記憶の中でも印象深いものです。あの頃は、本当に楽しかった・・・」

 

 レックス君とマスタードラゴンが親しい仲にあることは、レックス君の手記や会話の中で知ることが出来たけど、まさかここまで気の置けない仲だとは思わなかった。彼等の和やかなやり取りをイザさんとユーリルさんは信じられないのか、目元を強張らせて凝視している。まるで、見てはいけないものを見てしまったかのような目だ。それ程、彼等の知るマスタードラゴンとは印象がかけ離れているのだろう。

 

「エスタークの復活ですか。あれは私の時代の後も息を残していましたが、まだ討伐されていなかったのですね。本当にしぶといものです」

 

 顎に指を掛けて、レックス君の話を思い返すプサンの口元が段々とへの字に曲がっていく。

 

「嗚呼、本当に目障りな。彼奴は何時の時代も私の手を煩わせますね。ねぇ、グランバニアの勇者王」

 

 プサンから人間味が消えたのはこの時だった。どう言い表せば良いのか分からないが、私の脳がプサンをナニモノなのかを認識できなくなったのだ。脳の片隅が偏頭痛を起こしたように痛くなる。プサンの実像が一瞬だけボヤけ、彼の顔が真っ黒に塗りつぶされてしまう。彼の表情が黒に隠れてしまった。

 

「何? プサン?」

 

「貴方、エスタークを見逃したでしょう?」

 

 プサンの問いかけに対して、レックス君はアハハハっと軽快に笑い飛ばした。

 

「流石にそこまでエスタークに余裕ぶれないよ。僕達だってエスタークを封印するので精一杯だったんだ」

 

 レックス君の笑顔はいつ見ても陽気さに満ちていて、見ている側にも温かさを齎せるものだ。この時のレックス君の笑顔もいつものように明るさが詰まっていて、影の欠片すら見当たらない。プサンはそれをじっくりと見通して、ハァと小さく溜息を吐く。

 

「・・・・・・ええ、そうですね。貴方は精一杯だった。まだ幼く小さな君にとってはね」

 

 含みしかないプサンの言い分を深追いしないレックス君の判断は、まだ人生経験の少ない私にも正しいものだということが分かった。

 

 ーーーーーなんで、昔の神様と会った早々にこんな化かし合い合戦しているんだろう。しかも、片や見た目十歳児の少年。それを大の大人が尻尾を掴もうと大人気なく追求している様だ。シュール過ぎるでしょ、これ。

 

「それで、今回の選ばれし勇者は貴女ですか。今の私には万物を見通す力は無いので、自己紹介をお願いしても? あ、因みに私はプサンです。どうせお知りでしょうが、マスタードラゴンです。どうぞ、よろしくお願いしますね」

 

 なんか、すっごく投げやりな自己紹介を神様にされた。私が思っていた以上に癖しかないこの竜神様に私の目元が既に引き攣ってくる。

 

 けども、それでも神を前にした人間というのは矮小なもので、どんなに適当な自己紹介をされてもコチラはちゃんとした自己紹介をする他無いのだ。嗚呼、この世の無常さをまさかこんなことでも痛感するとは思わなかった。

 

「アン・アルバトロスです。アレキサンドラの国王様からエスタークを討伐するように勅命が下りまして、現在随意エスターク討伐の真っ最中です。どうぞよろしくお願いします」

 

「なるほど。貴女、この三人の他に、他の時代の勇者や英雄の召喚が行えるのですね。その条件として、自分の血脈に連なるものという条件があるみたいですが、アンさんの血は私も驚く程に特殊みたいですからね」

 

 なんでさっきの自己紹介で此処まで私のことを分析出来てるんだろう、この神様。見通す力は無いって言ってたけど、半分くらいはその力を保有してるでしょ、絶対。勿論、こんな文句は言えないのでお口チャックだ。黙ってプサンを見続けていると、彼も彼で私に対して思うことがあるらしい。

 

「他の勇者や英雄はともかく、イザとユーリル、それにレックス君やあのリュカさんの血まで継いでるんですねー。ってことは、こちら側に存在が近い筈なんですが、どっからどう見てもアンさんはごく普通の人間ですし。んー、嗚呼、そういうことですか。ははあ、こりゃまた厄介なことしてくれてますねー・・・・・本当に人間の親というものは子に甘い」

 

「私、その厄介なこととやらを聞いたほうがいいですかね?」

 

「おや? アンさんは気にならないんですか?」

 

「気になるっちゃ気になりますけど、私、勇者終えたあとも普通の暮らしに戻りたいんですよね。だから、人外の力とかそういうのが目覚め過ぎるのもちょっと困るというか・・・」

 

 パルプンテとかミナデインみたいな唱えないと出現しない魔法であれば、全然覚えても問題ないんだけどね。けど、実は人外みたいな要素がありましたっていう場合はあんまり顕現させたくないんだ。只でさえ、ご先祖様には天使とか精霊の子供やら、天空人や竜人のハーフがいたりするんだ。私はそのどちらの要素も開花されては困る。私は混じりっけのない人間のまんまで生を終えたいのだ。

 

「ほう。確かに実生活に戻るとき、その力はある種の枷になり得ますね。君は、死ぬことを想定してないんですね」

 

「一応、死ぬシミュレーションはしてますけど、死にたくはないので勝つつもりでいますよ」

 

 死亡フラグはそこら中に転がっているけど、私はそれら全てを見ないふりして根拠のない自信を絞り出す。

 

 死にたくないなんてのは当たり前の事。

 生きれるものなら絶対生き残りたいもの。

 

 プサンは私のそんな思いを透かし見たのか、それ以上言葉を連ねなかった。

 

 彼は漸く棺の中から出てくる気になったらしく、「よっ」と棺の縁を跨いでレッドカーペットに足を付ける。

 

 それから、プサンはというと徐に手を玉座の方に差し向けて人好きしそうな笑みを湛えたのだった。

 

「折角こんな場所まで来たんですから、天空城の核を見て行ってくださいよ。きっと、楽しんでもらえると思いますから」

 

 プサンの提案に否を唱える者はなく、私達は玉座の後ろに隠れるように設置されている梯子を下って玉座の間の下の広大な空間を降りて行くことにした。

 

 

 

 

 







6、4、5とプレイして思ったのは『マスタードラゴン、性格変わりすぎじゃね』ってことでした

4と5の間に何があったのかは分かりませんが、丸くなったのは良いことだと思います

しかし、作中では4の性格の悪さがチラリズムしてる気がしますが私はどっちのマスドラも案外好きです

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